木材市売市場の取扱量|上場本数と販売手数料の推移

木材市売市場の取扱量 | Forest Eight

伐り出された丸太が、どこを通って製材所や合板工場にたどり着くのか。その入口にあたるのが「原木市場(げんぼくしじょう)」です。生産者から丸太を集め、セリや入札で値段をつけて買い手へ渡す――欧米の長期契約中心の流通とはずいぶん性格が違い、日本ではこの市売市場が長らく価格の物差しと流通の主軸を担ってきました。まずは全体像を数字で見てみましょう。

国内素材生産量2,140万m³(2022)林野庁木材需給表市売市場数約400カ所系統+民営含むスギ中目丸太14,500円/m³(2024)全国平均市売シェア40-50%国産材流通中
図1:日本の原木市場主要諸元(出典:林野庁「木材需給表」「木材統計」、全国木材市売市場連盟調査)

国内の素材生産量2,140万m³(2022年)のうち、原木市場を経由する「市売」はおおよそ4〜5割と推計されています。市場は全国に約400カ所。大手では年間取扱量が5万〜10万m³を超え、スギ・ヒノキ・カラマツの全国的な価格指標をここで形づくっています。

目次

丸太が市場を通り抜けるまで

市場での一日は、だいたいこんな流れです。まずトラックで運び込まれた丸太を、重量計と画像計測で量目を記録し、樹種・長さ・末口の太さ・節の有無でヤード(土場)の区画に振り分けます。大手だと一日に数百本から数千本が入ってきます。

次に検量と等級格付け。JAS規格や市場独自の基準で「特一等/一等/二等/三等」「中目・大径・小径」といった区分を判定し、量目をm³で確定させます。仕分けられた丸太は数本単位の「玉(ロット)」に組まれて土場に並び、買い手は前日や当日朝に下見をして、目利きで品質を見極めます。

そしてセリ・入札。販売方式は大きく分けて、声や札で競り上げる発声セリ、金額を封筒に入れて投じる封入入札、PCやスマホから応札する電子入札の3つ。落札価格はその場で公表され、これが市況の指標になります。落札が決まると買い手が代金を市場に払い、市場は手数料(通常6〜10%)を差し引いて生産者へ送金。丸太はトレーラーで運び出されていきます。輸送費は買い手負担が原則なので、市場と工場の距離の近さがそのまま落札価格に効いてくるわけです。

径級と等級で値段が大きく動く

同じスギでも、太さ・長さ・節・曲がりで値段はかなり開きます。径級は末口(細い側)の直径で分け、小径木(14〜22cm、合板・集成材ラミナ向け)、中目(24〜30cm、柱・梁・板材)、大径(30cm以上、特殊用途・銘木)に区分。住宅向け需要の中心になる中目スギが、価格指標として代表値に使われます。

等級は特一等・一等・二等・三等の順で、節の少なさや通直さによって価格は1.3〜2倍以上も差がつきます。さらに1本の立木から複数の玉が切り出されるとき、根元側の「元玉」がいちばん高く、梢側へいくほど安くなる。元玉は柱や特一等候補、末玉はチップや小径用途、という具合です。節が大きかったり曲がりが強かったりする低質材(C材)は、チップやバイオマス燃料に回ります。FITのバイオマス発電需要が2010年代後半からこのC材価格を下支えし、低質材の市況改善につながった点は見逃せません。

スギ中目丸太 全国平均価格推移(円/m³)010,00015,00020,00025,00020172018201920202021202220232024ウッドショック
図2:スギ中目丸太 全国平均価格推移(出典:林野庁「木材価格動向調査」各年版を基にした近似グラフ)

ウッドショックが市場を揺らした

この5年ほど、原木市場は近現代でも珍しい価格変動を経験しました。2017〜2019年のスギ中目はおおむね12,000〜13,000円/m³で落ち着いていましたが、2021年のウッドショックで状況が一変します。輸入材の調達難から国産スギ・ヒノキへの引き合いが集中し、スギ中目は一時20,000円/m³超、ヒノキ柱角は40,000円/m³超に達しました。製材所が丸太を確保しようと、市場での入札が過熱気味になった時期です。

その後は世界的な需給の正常化と住宅着工の減少、金利上昇で価格は沈静化。2024年のスギ中目は13,000〜16,000円/m³(全国平均14,500円目安)、ヒノキは20,000〜25,000円/m³で安定しています。住宅着工は2024年で約80万戸見込みと需要は控えめです。価格が上がれば山元の手取りが増えて主伐・再造林の意欲につながる一方、製材所の収益は圧迫され、最終的には住宅価格にも跳ね返る。市場は需給変動の最前線にあるわけです。

手数料と運賃が手取りを左右する

市場を通すコストは、生産者の手取りと買い手の仕入れ値に直結します。市場手数料は販売価格の6〜10%が標準。たとえば14,000円/m³で落札されると、手数料8%で1,120円。これに山土場から市場までの運賃や検量費が乗ってきます。実際のお金の流れを図にすると、こんなイメージです。

スギ中目14,000円/m³落札時のコスト・手取り構造例市場落札価格 14,000円/m³(100%)山元手取 11,980円運賃手数料造材原価11,980円800円1,120円8,000円山主・素材業者ネット利益 3,980円/m³(造材原価控除後)
図3:原木流通コスト構造例(出典:林野庁「素材生産費等調査」・各市場ヒアリングを基にした概算)

運賃は山土場から市場まで500〜1,500円/m³、市場から工場まで300〜1,000円/m³ほど。トラック単価は燃料費・人件費の上昇で2020年比15〜25%上がっています。だからこそ、大型製材工場では市場を介さず生産者と直接契約する「直送」が増えています。手数料が浮き、量も安定確保できるのが直送の利点。一方で市売は価格の透明性と品質バリエーションの確保で優位です。どちらが得かは一概に言えず、大ロット・長期需要は直送、品質を選びたいスポット需要は市売、という使い分けが現実的なところです。

デジタル化と、市場のこれから

近年は市場のデジタル化も進んでいます。写真・寸法・GPS出材地情報をWebに載せ、買い手がPCから応札するオンライン入札は2018年以降に加速し、2024年時点で大手市場の8割超がオンライン併用に。遠隔地の買い手も参加しやすくなり、市場の流動性が高まりました。丸太の断面写真からAIが直径や節を自動計測する電子検量、伐採届出番号などをひもづけるトレーサビリティ(2017年施行のクリーンウッド法対応)も広がりつつあります。

もっとも、課題もはっきりしています。大型工場の直送比率が上がるなかで市売シェアは2000年頃の60%超から40〜50%まで下がり、市場の統廃合が進む地域もある。場長・売立人・検量人の高齢化と後継者不足も深刻です。オンライン化やAI化が進むほど、目利きや人的信用といったアナログな価値をどう残すかが問われる。原木市場は単なる売買拠点ではなく、森林資源を見える化し、地域経済と林業文化を支える結節点でもあります。その役割をどう再定義していくかが、これからの焦点になりそうです。

出典・参考

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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