【シウリザクラ】Padus ssiori|寒冷地のウワミズザクラ、北方山地の樹種

シウリザクラ(Padus ssiori)の葉

シウリザクラ(Padus ssiori)は、ウワミズザクラの寒冷地かんれいち版にあたる木である。初夏、枝先に白いブラシのような花を垂らす。和名「シウリ」は、アイヌ語に由来するとされる。名前は北の言葉、住所は涼しい山の渓流沿いけいりゅうぞいという、寒い土地の木だ。

バラ科ウワミズザクラ属の落葉高木らくようこうぼくで、高さは10〜18mになる。北海道と本州中部以北、隠岐おきに分布し、国外ではサハリンや南千島みなみちしま、中国東北部にも生える。

シウリザクラの主な特徴樹高10〜18m落葉の高木渓流沿いの斜面に多い葉基部が心形卵形〜楕円形互生する花期6月ごろ白い5弁の花長いブラシ状に並ぶ果実暗赤→黒7〜8月に熟す熟しても苦い
図1:シウリザクラの主な特徴
目次

ウワミズザクラ属の中の居場所

まず住所を確認しておこう。シウリザクラは、バラ目バラ科ウワミズザクラ属の木だ。サクラ属とは別の属で、花はソメイヨシノのように数輪がまとまらず、小さな花が長い軸にびっしり並ぶ。別名はミヤマイヌザクラ、シオリザクラという。

シウリザクラの分類上の位置目バラ目Rosales同じ目の別の科ニレ科(ケヤキ、ニレ)クワ科(クワ)、アサ科(エノキ)科バラ科Rosaceae同じ科の別の属サクラ属、リンゴ属、ナシ属バラ属、キイチゴ属属ウワミズザクラ属Padus同じ属の仲間ウワミズザクラ、イヌザクラエゾノウワミズザクラ種シウリザクラPadus ssioriこの記事の主役別名 ミヤマイヌザクラ和名も学名もアイヌ語由来※ ウワミズザクラ属を、サクラ属などと合わせて広義の Prunus 属とする立場もある。
図2:目・科・属・種の位置づけ

同じ属には、ウワミズザクラ、イヌザクラ、エゾノウワミズザクラがいる。近縁の木をまとめて見ると、違いは、花序かじょの長さ、おしべの長さ、葉の基部きぶの形、蜜腺みつせん(みつせん)のつく位置といった、細かい部分にある。逆にいえば、遠目では似ている。

どこに生えるか

シウリザクラは、北海道、本州中部以北、隠岐おきに分布する。国外ではサハリン、南千島みなみちしま、中国東北部やウスリー地方にも生え、山の渓流沿いけいりゅうぞいの斜面でよく見られる。同じ属の4種を並べると、住み分けがよく分かる。

同じ属の4種は、どこに生えるか北海道東北中部近畿〜九州シウリザクラPadus ssioriエゾノウワミズザクラPadus avium青森のみウワミズザクラPadus grayanaイヌザクラPadus buergeriana青森〜※ 概略の図。塗りは分布、点線は一部の地域のみ。イヌザクラは青森県の太平洋側から南に分布する。
図3:ウワミズザクラ属4種の分布の概略

ウワミズザクラは北海道から九州まで広く生え、イヌザクラは青森県の太平洋側から南に分布する。エゾノウワミズザクラは、北海道と青森県に自生する。北のほうの山で見かけたブラシ状の白い花は、まず、この3種との重なりを考えることになる。

見分け方のポイント

  • 花:6月ごろ、白い5弁の花が長いブラシ状に並んで咲く。
  • 葉:互生ごせいし、卵形から楕円形。基部きぶが心形になる。
  • 果実かじつ:暗赤色から黒へ、7〜8月に熟す。熟しても苦い。
  • 花序かじょの枝:葉がつく。イヌザクラは葉がつかないので、ここで区別できる。
早春のシウリザクラの幹と赤みを帯びた新葉
芽吹きのころのシウリザクラ(サハリン州、2025年5月)。写真: iNaturalist 観察記録 by Andrew Bazdyrev / CC BY 4.0, via iNaturalist(一部をトリミング、リサイズ・再圧縮)

近縁種との見分け方

迷ったら、花序かじょがついている枝に葉があるかを見る。シウリザクラとウワミズザクラは、どちらも葉のある枝に花序をつけ、イヌザクラは葉のない枝につける。シウリザクラとウワミズザクラの区別は、分布と、葉の基部きぶの形などに頼ることになる。

花序の枝に葉があるかシウリザクラ本記事の主役花序の枝に葉がある葉の基部は心形ウワミズザクラ同じく葉がある花序の枝に葉がある分布は九州まで広いイヌザクラ別名 シロザクラ花序の枝に葉がない若木の樹皮は白っぽい※ 模式図。ウワミズザクラとシウリザクラは、花序のつく枝に葉があり、イヌザクラは葉のない枝に花序がつく。
図4:花序の枝の葉の違い(模式図)
  • ウワミズザクラ:北海道から九州まで広く分布する。花序の枝に葉がつく。
  • イヌザクラ:花序の枝に葉がつかない。別名シロザクラ。
  • エゾノウワミズザクラ:北海道と青森県に自生し、ヨーロッパ北部やアジア北部にも分布する。

アイヌ語の名前と、魔よけの香り

和名の「シウリ」と、学名の種小名 ssiori は、どちらもアイヌ語に由来するとされる。和名と学名の両方がアイヌ語から来ている例は珍しい。語源については、アイヌ語の「苦い木」を意味する語から変化したという説明がある。果実かじつが熟しても苦いことと、話はつながる。

アイヌの人びとは、この木の強い香りを魔よけまよけに使った。病人が出たとき、寝る場所の上に吊るしたという。また、中国東北部では、乾燥させた果実を腹痛の民間療法みんかんりょうほうに使う。苦い木は、ほかの用途で、きちんと働いている。

よくある質問

Q. ウワミズザクラとの違いは?
花序かじょの枝に葉がつく点は同じで、見分けには分布が役立つ。ウワミズザクラは北海道から九州まで広く、シウリザクラは北海道と本州中部以北に分布する。

Q. 実は食べられる?
熟しても苦い。サクラの仲間の種子には青酸配糖体せいさんはいとうたいが含まれることが知られているので、生で食べることは勧められない。

Q. 「シュリザクラ」と「シウリザクラ」、どちらが正しい?
和名は「シウリザクラ」なので、この記事でもこの表記を使っている。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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