シウリザクラ(Padus ssiori)は、ウワミズザクラの寒冷地版にあたる木である。初夏、枝先に白いブラシのような花を垂らす。和名「シウリ」は、アイヌ語に由来するとされる。名前は北の言葉、住所は涼しい山の渓流沿いという、寒い土地の木だ。
バラ科ウワミズザクラ属の落葉高木で、高さは10〜18mになる。北海道と本州中部以北、隠岐に分布し、国外ではサハリンや南千島、中国東北部にも生える。
ウワミズザクラ属の中の居場所
まず住所を確認しておこう。シウリザクラは、バラ目バラ科ウワミズザクラ属の木だ。サクラ属とは別の属で、花はソメイヨシノのように数輪がまとまらず、小さな花が長い軸にびっしり並ぶ。別名はミヤマイヌザクラ、シオリザクラという。
同じ属には、ウワミズザクラ、イヌザクラ、エゾノウワミズザクラがいる。近縁の木をまとめて見ると、違いは、花序の長さ、おしべの長さ、葉の基部の形、蜜腺(みつせん)のつく位置といった、細かい部分にある。逆にいえば、遠目では似ている。
どこに生えるか
シウリザクラは、北海道、本州中部以北、隠岐に分布する。国外ではサハリン、南千島、中国東北部やウスリー地方にも生え、山の渓流沿いの斜面でよく見られる。同じ属の4種を並べると、住み分けがよく分かる。
ウワミズザクラは北海道から九州まで広く生え、イヌザクラは青森県の太平洋側から南に分布する。エゾノウワミズザクラは、北海道と青森県に自生する。北のほうの山で見かけたブラシ状の白い花は、まず、この3種との重なりを考えることになる。
見分け方のポイント
- 花:6月ごろ、白い5弁の花が長いブラシ状に並んで咲く。
- 葉:互生し、卵形から楕円形。基部が心形になる。
- 果実:暗赤色から黒へ、7〜8月に熟す。熟しても苦い。
- 花序の枝:葉がつく。イヌザクラは葉がつかないので、ここで区別できる。

近縁種との見分け方
迷ったら、花序がついている枝に葉があるかを見る。シウリザクラとウワミズザクラは、どちらも葉のある枝に花序をつけ、イヌザクラは葉のない枝につける。シウリザクラとウワミズザクラの区別は、分布と、葉の基部の形などに頼ることになる。
- ウワミズザクラ:北海道から九州まで広く分布する。花序の枝に葉がつく。
- イヌザクラ:花序の枝に葉がつかない。別名シロザクラ。
- エゾノウワミズザクラ:北海道と青森県に自生し、ヨーロッパ北部やアジア北部にも分布する。
アイヌ語の名前と、魔よけの香り
和名の「シウリ」と、学名の種小名 ssiori は、どちらもアイヌ語に由来するとされる。和名と学名の両方がアイヌ語から来ている例は珍しい。語源については、アイヌ語の「苦い木」を意味する語から変化したという説明がある。果実が熟しても苦いことと、話はつながる。
アイヌの人びとは、この木の強い香りを魔よけに使った。病人が出たとき、寝る場所の上に吊るしたという。また、中国東北部では、乾燥させた果実を腹痛の民間療法に使う。苦い木は、ほかの用途で、きちんと働いている。
よくある質問
Q. ウワミズザクラとの違いは?
花序の枝に葉がつく点は同じで、見分けには分布が役立つ。ウワミズザクラは北海道から九州まで広く、シウリザクラは北海道と本州中部以北に分布する。
Q. 実は食べられる?
熟しても苦い。サクラの仲間の種子には青酸配糖体が含まれることが知られているので、生で食べることは勧められない。
Q. 「シュリザクラ」と「シウリザクラ」、どちらが正しい?
和名は「シウリザクラ」なので、この記事でもこの表記を使っている。

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