木質ペレット生産|燃料用ペレット市場の年率成長

木質ペレット生産 | Forest Eight

木質ペレットは、製材廃材や林地残材を粉砕・乾燥して固めた直径6〜8mmの円筒状の木質燃料です。家庭用ストーブから業務用ボイラー、大型バイオマス発電所まで幅広く使われます。国産の生産量は2023年で約26万t、工場は全国に約160。数字だけ見ると順調に伸びているように見えますが、実は輸入が年間約500万tと国産の20倍もあり、日本のペレット市場は圧倒的な輸入依存で成り立っているのが実情です。

国産生産量 26 万t/年(2023) 2010比4倍 2015比2倍 生産工場 160 工場(全国) 中堅20工場 小規模140工場 輸入量 500 万t/年 国産比20倍 ベトナム45% 2030目標 50 万t(国産) 現状の2倍 林野庁目標
図1:木質ペレットの主要諸元(出典:林野庁、日本木質ペレット協会、財務省貿易統計)
目次

国産は13年で4倍に伸びた

国産ペレットは2010年の約6万tから2023年の約26万tへ、13年でおよそ4倍に増えました。引き金は2012年のFIT制度(固定価格買取制度)です。木質バイオマス発電所が一気に増え、家庭用ストーブや業務用ボイラーも広がって、燃料需要が押し上げられました。工場約160のうち、年産1万tを超える中堅は約20工場で、この20工場だけで全生産量の6割を占める、わりと集中した構造です。

地域で見ると、北海道・東北(岩手・福島・秋田)・九州(宮崎・大分・熊本)が中心で、ここだけで全国の約7割。素材生産が盛んな地域に製材廃材や林地残材が多く出るので、ペレット工場もそこに集まる、という自然な分布です。

輸入が国産の20倍という現実

消費量526万tのうち500万t、つまり95%が輸入。これがこの産業のいちばんの特徴です。なぜここまで輸入に偏るかというと、FIT発電所が必要とする量が桁違いだから。国産の生産能力(最大でも30万t規模)では到底まかなえず、海外の大規模工場に頼らざるを得ないのです。供給元はベトナムが45%でトップ、続いてカナダ25%、米国15%と並びます。

輸入元 輸入量(2023) シェア 主要産地・特徴
ベトナム 約225万t 45% 南部、アカシア・ユーカリ製材廃材
カナダ 約125万t 25% ブリティッシュコロンビア州、針葉樹
米国 約75万t 15% 南東部、針葉樹・広葉樹混合
タイ 約40万t 8% 南部、ゴムノキ・ユーカリ
マレーシア 約25万t 5% EFB(パーム椰子空房)等
その他 約10万t 2% 韓国・インドネシア等

輸入ペレットは苫小牧・横浜・名古屋・神戸・広島などの港から、各地のバイオマス発電所へ運ばれます。価格はトン3.5〜5万円ほどで、国産(4〜6万円)よりやや安い。ただし品質は国産が勝る場面も多く、安さと品質はトレードオフです。

原料は製材廃材6割・林地残材3割

国産ペレットの原料は、製材廃材が約6割、林地残材が約3割、低質材が約1割。おが粉や端材といった製材所の副産物を、近くのペレット工場が安く引き取るのが王道です。枝条や先端部などの林地残材、市場価値の低い小径材・曲がり材を燃料に変えることで、これまで山に捨てられていた材にお金がつく——林業の収益を底上げする仕組みでもあります。原料調達はトン8,000〜15,000円、これに乾燥・粉砕・成形の加工費1.5〜2.5万円が乗って、製造原価はトン3.5〜4.5万円ほどになります。

そのため工場の立地はかなりシビアです。年産1万t超の中堅でも原料の調達半径はおおむね50km圏内。これを超えると運搬コストが原価を圧迫して採算が崩れるので、製材所の集積地に大きな工場が育ち、林地残材型の小工場は地域に分散する、という棲み分けになります。

用途は発電7割・業務用と家庭用で各1.5割

ペレットの行き先は、発電燃料が約7割、業務用ボイラー約1.5割、家庭用ストーブ約1.5割。発電向けはFIT制度で急増した分野で、輸入ペレットの大半がここに吸い込まれます。全国で約100カ所のバイオマス発電所が稼働しており、その燃料需要こそが輸入急拡大の正体です。業務用は温泉施設や病院・福祉施設のボイラー、家庭用は長野・北海道・岩手・福島など寒冷地のストーブが中心です。

家庭用ペレットストーブは累計で約13万台普及しています。長野が約2.5万台でトップ、北海道約2万台、岩手約1.2万台と続きます。本体は20〜45万円、工事込みで30〜60万円と灯油ストーブ(5〜15万円)より初期投資はかさみますが、ランニングコストは灯油より2〜3割安く、長く使えば元が取れる計算です。1台あたり年500〜800kgを消費し、13万台で年約8万tの家庭用需要を形づくっています。

燃料の優等生、でも輸送は重い

製造工程は、原料受入・粉砕・乾燥・成形・冷却・選別・包装の7段階。なかでも肝は乾燥で、含水率を10〜12%まで落とします。乾燥が甘いと保管中に劣化し、乾かしすぎると成形不良を起こすため、ここの精度が品質を決めます。成形時には木材中のリグニン(天然の接着成分)が高温高圧で固まり、接着剤なしでしっかり固まるのが面白いところです。

同じ木質燃料でも、粗く砕いただけの木質チップとは性格が違います。チップは乾燥・成形がいらないぶん安い(トン1〜2万円)一方、含水率が高く発熱量はペレットの半分程度。家庭用ストーブには使えず、大規模発電所や工場ボイラー向きです。

項目 ペレット チップ
粒径 直径6〜8mm・長さ10〜30mm 20〜80mm程度
含水率 10〜12% 20〜50%
発熱量 約4,500kcal/kg 約2,000〜3,000kcal/kg
製造コスト トン3.5〜4.5万円 トン1〜2万円
主要用途 家庭用ストーブ・業務用・発電 大規模発電・工場ボイラー
保管性 長期保管可(含水率低) 短期保管が原則(劣化早い)

2030年・国産50万tへ

林野庁は2030年の国産ペレット生産を約50万t、いまの倍に引き上げる目標を掲げています。鍵を握るのが林地残材です。年間約2,000万m³発生するうち、いま活用されているのは1割程度。これを2割まで引き上げられれば、原料を50万t規模まで確保できると試算されています。それが実現すれば、輸入依存度は95%から85%程度まで下がり、エネルギー安全保障の面でも一歩前進します。

国産ペレットの拡大は、単なる燃料の話にとどまりません。年産1万t規模の工場ひとつで、原料費が地元の製材所・森林組合に年1〜1.5億円流れ、雇用や配送業も含めれば地域に年5〜10億円規模の経済効果が生まれます。地元の森林資源から地元の燃料をつくり、地元で使う——長野や北海道、岩手の先進地域ではこうした「地域内エネルギー循環」がすでに動き出しており、脱炭素と地域経済を同時に支える産業として、これからも注目が続きそうです。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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