木材ヤング係数の樹種別ランキング|JAS等級・MSR・集成材の構造設計指標

木材ヤング係数の樹種別ランキ | 木と暮らす - Forest Eight
結論先出し

  • 木材のヤング係数は同一樹種でも気乾比重と直交関係で2〜3倍のばらつきがある。設計許容値は5%下限値を用いる。
  • JAS構造用集成材のE等級E65〜E170は単位GPa表記で、上位等級ほど高ヤング・高強度。
  • 機械等級区分(MSR)で個別ラミナを選別すれば、無等級材より1.5倍以上の材料効率が得られる。
  • 含水率15%→25%でヤング係数は約20%低下するため、施工時の含水率管理が設計性能の前提条件となる。
  • CLT(直交集成板)の強軸ヤング係数は構成ラミナ平均の0.85倍、弱軸は0.05倍とほぼ20倍の異方性を持つ。

木造建築の構造設計において、ヤング係数(弾性係数、Young’s modulus、記号E)は変形量とたわみを規定する最重要パラメータです。同じ樹種・同じ含水率でも、個体差・応力方向・節の位置で実測値は大きく変動します。本記事では、樹種別ヤング係数のランキング、JAS集成材の等級区分、機械等級区分(MSR)と目視等級の使い分け、CLTのヤング係数、海外規格との比較、測定方法、そして実務での扱い方を、林業経済との関連も含めて約10,000字で網羅的に解説します。設計実務者・林業関係者・木造建築主の双方が、樹種選定と等級発注の判断基準として活用できる構成です。

目次

ヤング係数とは ─ 弾性係数の物理的定義と単位

ヤング係数とは、弾性域における応力(σ)とひずみ(ε)の比例定数であり、材料の「変形しにくさ」を表します。フックの法則 σ = E × ε の比例定数 E がヤング係数で、単位はパスカル(Pa)または GPa(=10⁹ Pa)が用いられます。応力はN/mm²、ひずみは無次元量(変形量÷元の長さ)であり、ヤング係数の数値が大きいほど同じ荷重で変形が小さくなります。

木材は異方性材料であり、繊維方向(縦方向、L方向)・半径方向(R方向)・接線方向(T方向)の3方向で物性値が異なります。実用上、構造材として最も重要な縦方向ヤング係数(曲げヤング係数 EL)が「ヤング係数」と称される一方、半径方向 ER と接線方向 ET は縦方向の 1/15〜1/30 程度の値しか持ちません。木材のこの強い異方性は、繊維(仮道管・道管)の縦方向配列に由来します。

金属材料との比較で見ると、軟鋼のヤング係数は約205GPa、アルミ合金は約70GPa、コンクリート(普通強度)は約30GPaです。スギの縦方向ヤング係数約7GPaは鋼の1/30程度に過ぎませんが、比強度(強度÷比重)で見るとスギは鋼に匹敵し、構造材として極めて優秀な特性を持つと評価されます。

樹種別ヤング係数ランキング ─ 主要構造材20樹種の数値比較

気乾比重と曲げヤング係数(縦使い)の関係は概ね線形で、比重が大きい樹種ほどヤング係数も大きくなる傾向があります。日本の主要構造材および世界の代表的な構造材で、森林総合研究所・林産試験場・北米FPLデータをもとに整理すると次の通りです(含水率12%基準・代表値)。

順位 樹種 気乾比重 曲げヤング係数(GPa) 圧縮強度(N/mm²) 主用途
1 レッドオーク 0.70 12.3 52 家具・床材・梁
2 ベイマツ(ダグラスファー) 0.51 12.0 50 梁・桁・大断面集成材
3 ホワイトアッシュ 0.62 12.0 50 建具・運動用具
4 ハードメープル 0.71 12.6 54 床材・楽器
5 サザンイエローパイン 0.55 11.7 49 梁・桁(北米)
6 カラマツ(ニホンカラマツ) 0.50 10.5 43 梁・桁・集成材ラミナ
7 ホワイトオーク 0.68 10.4 51 家具・床材・洋樽
8 ケヤキ 0.69 9.8 55 大黒柱・神社建築
9 ヨーロッパアカマツ 0.52 10.1 45 欧州構造材
10 ヒノキ 0.44 8.8 40 柱・土台・社寺建築
11 ベイヒバ(イエローシダー) 0.46 9.5 43 土台・水回り
12 クリ 0.55 8.5 38 土台・枕木
13 ベイツガ(ヘムロック) 0.45 9.0 41 梁・桁(汎用)
14 ヨーロッパトウヒ(スプルース) 0.43 8.5 38 欧州集成材ラミナ
15 アカマツ 0.53 8.5 40 梁・桁(伝統)
16 SPF(スプルース・パイン・ファー) 0.42 8.0 34 枠組壁工法
17 ホワイトスプルース 0.40 7.5 33 北米枠組材
18 スギ 0.38 7.4 34 柱・梁・羽柄材
19 ラジアータパイン 0.42 7.0 30 NZ集成材ラミナ
20 キリ 0.30 5.5 22 家具・装飾

これらは5%下限値ではなく代表平均値であり、設計時の許容応力度はこれの約60〜70%として扱います。スギ目視等級1級でE70(7.0GPa)、機械等級区分E70で同等以上の保証を得られます。針葉樹(コニファー)の中ではベイマツとカラマツが上位、広葉樹(ハードウッド)ではメープルとオークが上位を占めます。注意すべきはケヤキで、比重は0.69と高いものの、繊維走向の乱れと内部応力が原因でヤング係数は針葉樹のベイマツに劣る9.8GPaに留まります。

JAS機械等級区分(E50〜E170)の詳細

JAS(日本農林規格)の構造用製材における機械等級区分は、E50・E70・E90・E110・E125・E150・E170 の8段階に分類されます(E50を最低として2.5倍刻みで設定)。各等級の意味と保証曲げヤング係数は次の通りです。

等級 曲げヤング係数(GPa) 基準曲げ強度 Fb(N/mm²) 主な対象樹種
E50 5.0以上 19.5 低密度スギ・キリ等
E70 7.0以上 23.5 スギ標準・ラジアータパイン
E90 9.0以上 28.0 ヒノキ・ベイツガ
E110 11.0以上 32.0 カラマツ・アカマツ
E125 12.5以上 36.0 ベイマツ・カラマツ上位
E150 15.0以上 42.0 選別ベイマツ
E170 17.0以上 48.0 北米選別材・LVL等

等級判定は1本ごとに行われ、ライン速度は毎分30〜120mで全数検査が可能です。E125以上のグレードは原木段階で20%以下しか含まれないため、選別歩留まりが価格を決定する要因となります。中大規模木造のラミナ用途では、E105〜E120の中位等級が需要の中心です。

目視等級と機械等級の違い ─ 設計許容値の比較

JAS構造用製材は目視等級区分機械等級区分の2系統が並立しています。それぞれの特徴を比較します。

項目 目視等級区分 機械等級区分(MSR)
判定方法 節・丸み・繊維走向の目視 曲げヤング係数の機械実測
等級数 1級・2級・3級 E50〜E170の8段階
個体差 大きい(同等級内CV20%) 小さい(同等級内CV5%)
許容応力度 等級ごと固定値 実測値ベース
検査コスト 低(人件費のみ) 中(機械設備投資)
主用途 住宅一般・在来軸組 大スパン・中大規模

現場で節の位置・大きさ、丸みの有無、繊維走向などを目視確認する目視等級は、1級・2級・3級に区分され、計算で使う基準強度は等級ごとに固定値が与えられます。表中の代表値より20〜30%下回る安全側の数値が標準的に採用されます。一方、機械等級区分(MSR)は個別の製材1本ずつをローラ式またはマイクロ波式の検査装置で曲げヤング係数を実測し、その実測値を基準に等級を決めます。E125は12.5GPa以上を保証する意味です。MSR材は個体差を排除した安定供給が可能で、大スパン梁や中大規模木造の主要部材に採用されます。

含水率とヤング係数の関係 ─ 乾燥がもたらす剛性変化

木材のヤング係数は含水率に大きく依存します。含水率30%(繊維飽和点)以上では含水率変化に対しほぼ一定ですが、繊維飽和点以下になるとヤング係数は含水率1%低下につき約2%上昇します。代表的な変化を表で示します。

含水率 状態 ヤング係数比(含水率15%を100とした場合)
30%以上 繊維飽和(生材) 70
25% 未乾燥材 78
20% JAS乾燥規格D20 87
15% JAS乾燥規格D15 100(基準)
12% 気乾標準 106
8% 暖房環境平衡 113

JAS構造用製材ではD15・D20・D25 の3段階の乾燥規格があり、D15は仕上げ含水率15%以下、D20は20%以下、D25は25%以下を意味します。住宅用構造材ではD20以下が一般的、化粧梁や造作材ではD15以下が要求されます。施工後に含水率が変化すると収縮・反り・ねじれが発生し、剛性も変動するため、設計値と実性能を一致させるには含水率管理が不可欠です。

設計上の許容応力度 ─ 5%下限値と長期・短期

木造建築の構造計算では、ヤング係数の平均値ではなく5%下限値(5パーセンタイル値)を許容応力度の根拠に用います。母集団分布の下位5%以下を切り捨てた値で、確率的な安全側設計を担保します。代表値(平均値)と5%下限値の関係は概ね次の通りです。

  • 5%下限値 ≒ 平均値 × (1 – 1.645 × CV)
  • CV(変動係数)はスギ無等級材で約0.20、機械等級区分材で約0.08〜0.12
  • つまり同じ代表値でもMSR材の方が下限値は高くなる

許容応力度(長期・短期)は基準曲げ強度Fbに対して、長期で1/3、短期で2/3の係数を乗じて算出します。スギE70機械等級材(基準Fb 23.5N/mm²)の場合、長期許容曲げ応力度は7.83N/mm²、短期は15.7N/mm²となります。たわみ計算ではヤング係数の平均値を用いますが、長期荷重時はクリープ補正係数 kdef = 1.6〜2.0 を乗じて最終たわみを評価します。

集成材のヤング係数 ─ ラミナ等級と複合効果

集成材は複数のラミナを長さ方向(フィンガージョイント)と厚さ方向(接着)で接合した部材です。設計上の利点は次の通りです。

  • 大断面・長尺化:丸太径・長さの制約から解放され、20m級スパンも実現可能
  • 強度の均質化:個別ラミナの欠点を分散することで、5%下限値が無等級単材より高い
  • 異樹種・異等級の組み合わせ:外側に高ヤング材、内側に低ヤング材を配置する非対称構成(同一等級構成・異等級構成)

JAS構造用集成材は強度等級としてE65-F225・E75-F240・E85-F255・E95-F270・E105-F300・E120-F330・E135-F375・E150-F435・E170-F495などが規定されており、最初のEがヤング係数(GPa)、後ろのFが曲げ強度(N/mm²×10)の意味です。E150以上は北米産ベイマツやヨーロッパ産トウヒの選別ラミナを使うため、価格は同断面のスギ集成材の1.5〜2倍に上がります。

異等級構成集成材では、外層(応力集中部)に高ヤング・高強度のラミナを配置し、中央層(中立軸付近)には低等級ラミナを使用します。例えばE120-F330異等級構成材では、外側2層をE120相当のラミナ、中間層をE85相当のラミナで組み合わせ、断面全体としてE120の見かけヤング係数を実現します。これにより高等級ラミナの使用量を約40%削減でき、コストと性能のバランスが取れます。

CLTのヤング係数 ─ 直交方向と平行方向の異方性

CLT(Cross Laminated Timber、直交集成板)はラミナを直交方向に積層接着した面材で、強軸(外層繊維方向)と弱軸(外層繊維直交方向)でヤング係数が大きく異なります。5層CLT(厚さ150mm、各層30mm)の場合、構成ラミナがE95等級なら次の値となります。

方向 有効ヤング係数(GPa) ラミナ平均比 用途
強軸(曲げEx) 約8.0 0.84 主応力方向の床・壁
弱軸(曲げEy) 約0.5 0.05 従応力方向(補助的)
面内せん断G 約0.5 耐震壁の水平剛性
転がりせん断Gr 約0.05 厚さ方向の応力伝達

CLTの強軸ヤング係数は構成ラミナの平均ヤング係数の約0.85倍となり、弱軸はほぼ0.05倍です。設計上はγ法(ガンマ法)または有効剛性法でラミナ層構成を考慮した有効断面二次モーメントを算定します。CLTは中大規模木造の床版・壁版として用いられ、3層・5層・7層・9層の標準構成があります。

海外規格との比較 ─ 米国LVL・欧州GLT・北米SCL

海外でも各国独自の構造用木材規格があり、ヤング係数の表記方法と許容応力度算定が国により異なります。主要規格の比較を整理します。

規格 国・地域 典型ヤング係数 特徴
JAS集成材 日本 E65〜E170 5%下限値ベース、kdef補正
LVL(PSL/LSL含む) 米国・カナダ 11.0〜14.0GPa 単板積層、極めて均質
Glulam 米国(AITC/APA) 9.7〜13.8GPa 等級区分Combination記号
GLT/GL24h〜GL32h 欧州(EN 14080) 11.5〜14.2GPa EN規格、特性値ベース
MSR Lumber 北米 E1.0〜E2.4×10⁶psi psi単位、1.4×10⁶ ≒ 9.65GPa
SCL(Structural Composite Lumber) 北米 10.3〜13.8GPa LVL/PSL/LSL/OSL総称

欧州規格EN 14080のGLT24h(均質構成・特性値24N/mm²)はヤング係数特性値Emean=11.5GPa、5%下限値E0.05=9.6GPaです。日本のE105-F300(10.5GPa保証)とほぼ同等で、相互換算により海外プロジェクトの仕様調整が可能です。北米のpsi単位(Pounds per Square Inch)は1psi=0.00689MPaで、E1.5×10⁶psi ≒ 10.3GPaとなります。

ヤング係数の測定方法 ─ 縦振動法・超音波法・MSR

木材のヤング係数測定には、用途と精度に応じて複数の手法が使い分けられます。

静的曲げ試験(破壊試験)

JIS Z 2101(木材の試験方法)に規定される伝統的手法で、3点曲げ・4点曲げ装置で実材試片に荷重を加え、荷重-変位曲線の弾性域勾配からヤング係数を求めます。最も信頼性が高い反面、試片を消費する破壊試験です。研究用途や規格の基準値設定で用いられます。

縦振動法(FFT共振法)

製材を打撃して固有振動数を測定し、共振周波数 f1、長さ L、密度 ρ から E = 4ρL²f1² でヤング係数を算出する非破壊試験です。1本あたり数秒で測定可能で、製材所での全数検査に広く採用されています。実測ヤング係数(Edyn)は静的ヤング係数(Estatic)の1.05〜1.10倍程度になります。

超音波法

製材の片端から超音波パルスを入射し、反対端での到達時間から音速 V を求め、E = ρV² でヤング係数を算出します。縦振動法と同様の非破壊試験ですが、節周りで超音波が屈折するため、節の少ない無欠点材で精度が高くなります。

機械等級区分(MSR)

製材を3点曲げで連続走行させ、ローラ間の中央点でひずみゲージにより曲げヤング係数を実測する全数検査装置です。ライン速度毎分30〜120mで、JAS認定工場で運用されます。E50・E70・E90・E110・E125・E150・E170 の8等級にリアルタイム選別され、検査票が個別の製材ロットに添付されます。

ヤング係数と建築物 ─ 中大規模木造の事例

近年の中大規模木造建築では、ヤング係数の高い材料を効果的に配置することで、長スパン・高層化が実現されています。代表的な事例を整理します。

建物名 規模 主要構造材 主要部材ヤング係数
Mjøstårnet(ノルウェー) 18階・85m GLTグルーラム GL30c(13.0GPa)
Brock Commons(カナダ) 18階・53m CLT+集成材 E120相当
仙台秋保木造ホテル 4階建 カラマツCLT・集成材 E120-F330
住友林業つくば本社 4階建 ベイマツ集成材 E150-F435
東京虎ノ門木造ビル計画 12階建(計画) ベイマツGLT E170-F495

中規模木造(4〜6階建)のオフィス・ホテル用途では、梁スパン6m以上が要求されることが多く、E120以上の集成材が必須となります。10階を超える高層木造ではE150〜E170の最高等級ラミナが採用され、北米産ベイマツや欧州産トウヒの選別材が国際物流で調達されます。

経年変化とクリープ ─ 含水率変化の長期影響

木材は荷重履歴によりクリープ変形(クリープひずみ)が進行します。瞬時弾性ひずみに対し、長期荷重下では含水率の周期変動に伴い、いわゆるメカノソープティブ・クリープが発生し、最終ひずみは初期の1.6〜2.0倍に達します。設計上は次のクリープ補正係数 kdef を乗じます。

  • 常時湿潤(外部・屋外):kdef = 2.0
  • 通常室内(含水率12〜20%):kdef = 1.6
  • 暖房乾燥環境(含水率8〜12%):kdef = 0.6

たわみ評価では、初期たわみ δinst にクリープ補正値 kdef × δinst を加算した最終たわみ δfin = δinst × (1 + kdef) を許容たわみと比較します。スパンの1/200〜1/300がたわみ限界として一般採用され、L=6mの梁ならδfin限界は20〜30mmです。

加工方法(乾燥・プレーニング)の影響

製材後の加工工程はヤング係数に直接影響します。代表的な工程と影響を整理します。

  • 天然乾燥:3〜12カ月、含水率は20〜25%が下限。設備投資不要だが時間がかかる。
  • 人工乾燥(高温乾燥):60〜90℃で3〜7日。短時間でD15達成可能だが、内部割れ(ハニカム)と細胞壁損傷でヤング係数が3〜5%低下する場合あり。
  • 中温乾燥:40〜60℃で7〜14日。ヤング係数低下は1%以下、品質と効率のバランスが良い。
  • プレーニング(鉋削り):仕上げ厚さに調整する加工。ヤング係数自体は変化しないが、断面欠損で見かけ剛性が低下する。
  • 圧密処理:高温・高圧で密度を1.5〜2倍化。ヤング係数も比例して上昇するが、特殊用途。

JAS認定工場では乾燥スケジュール(温度・湿度・時間)が標準化されており、ヤング係数低下を最小化する配慮がされています。発注時には乾燥方式(天然・中温・高温)を確認することを推奨します。

国際的な木材規格 ─ JAS・JIS・ISO・EN

木材構造設計に関わる主要規格を一覧化します。

規格番号 所管 対象
JAS 構造用製材 農林水産省 無垢構造材の等級区分
JAS 構造用集成材 農林水産省 集成材の強度等級
JAS 構造用LVL 農林水産省 単板積層材
JAS 直交集成板(CLT) 農林水産省 CLTの等級・寸法
JIS Z 2101 経済産業省 木材試験方法(基準)
JIS A 3301 経済産業省 木造校舎の構造設計
ISO 13910 ISO 機械等級区分の国際規格
EN 14080 欧州標準化委員会 欧州集成材GLT規格
EN 338 欧州標準化委員会 欧州製材強度クラス
ASTM D245 米国材料試験協会 北米目視等級区分
ANSI/APA PRG 320 米国合板協会 北米CLT規格

JASは農林水産省所管、JISは経済産業省所管の国内規格で、木材分野ではJASが構造材の等級・寸法を、JISが試験方法と一般用途を担当する役割分担となっています。国際取引ではISO・EN・ASTMとの相互参照が頻繁に行われ、輸入集成材ではEN 14080表記がパッケージに併記されます。

経済性 ─ 材料単価×等級×プロジェクト規模

2026年5月時点の国産材集成材ラミナ価格は、スギE70等級が概ね 4.5万円/m³、E105等級で 5.8万円/m³、ベイマツE150等級で 9.2万円/m³、E170等級で 11.0万円/m³ のレンジで取引されています。中大規模木造プロジェクトでは、構造計算上必要なヤング係数を満たす最低等級を選定することがコスト最適化の鍵です。

例えば住宅用2階建ての梁伏では、E70スギで構造設計が成立する場合がほとんどであり、過剰にE105を選ぶ必要はありません。一方、6階建ての中規模木造オフィスでは、梁スパンが6m以上必要となるケースで E120以上が要求され、ベイマツやカラマツMSR材が選定されます。10階以上の高層木造ではE150以上が必要で、北米産または欧州産の選別ラミナが世界中から調達される構図です。

設計実務でのチェックポイント(FAQ 12項目)

Q1. 製材所から「E70の保証」と言われたが、本当に信頼できるか?

機械等級区分の検査記録(ヤング係数実測値とラインID)を発注時に要求してください。JAS認定工場であれば、個別の検査票が発行されます。目視等級のみで「E70相当」と称されるものは保証性能が低いため、構造計算には機械等級区分材を推奨します。

Q2. 同じスギでも、製材所が変わると性能が違うか?

育成地(地域・標高)や乾燥スケジュールでヤング係数の平均値・分散が変わります。同じ製材所・同じグレードで継続発注すると、品質が安定しやすくなります。秋田スギは比重がやや低く、高知スギ・宮崎スギは比重・ヤング係数とも相対的に高い傾向があります。

Q3. 集成材のE等級と無垢材のE等級は同じ意味?

厳密には違います。集成材のE等級は集成材として完成した状態の等級で、ラミナ単独のE等級とは異なります。E105集成材は、実際にはE65〜E120のラミナを最適配置して全体としてE105保証している、という構成です。

Q4. ヤング係数の単位GPaとkN/mm²、N/mm²はどれが正しい?

1GPa = 1kN/mm² = 1000N/mm² で、いずれも同じ値の異なる表記です。日本のJAS集成材ではGPa(またはkN/mm²)が標準、海外ではpsi、MPa、N/mm² が併用されます。E105 = 10.5GPa = 10500N/mm² = 10.5kN/mm² となります。

Q5. 含水率が15%から12%に下がるとヤング係数はどれだけ上がる?

繊維飽和点以下では含水率1%低下につき約2%上昇するため、15%→12%で約6%増加します。ただし、施工後に含水率が再度上昇すると剛性は低下するので、平衡含水率(その地域・室内環境での平衡値)を設計値に用いるのが安全側です。

Q6. CLTの強軸方向と弱軸方向の使い分けは?

主応力方向にCLTの外層ラミナ繊維方向(強軸)を一致させて配置するのが原則です。床版では短辺方向、耐震壁では水平方向が強軸となるよう配置します。CLT寸法は強軸方向が長尺(6〜12m)、弱軸方向が短尺(2.4〜3.0m)として規格化されています。

Q7. クリープ補正係数 kdef はどう設定する?

建築基準法・公庫融資基準では概ね 1.6〜2.0 を用い、外部使用や高湿度環境ではkdef=2.0、通常室内ではkdef=1.6を採用します。乾燥環境(暖房継続)の屋内ではkdef=0.6まで小さくできますが、安全側の1.6で設計するのが一般的です。

Q8. 北米輸入材のpsi表記をGPaに換算するには?

1psi = 6.895×10⁻⁶GPa なので、E1.5×10⁶psi = 10.34GPa、E1.8×10⁶psi = 12.41GPa、E2.0×10⁶psi = 13.79GPa となります。北米のSPF MSR材ではE1.4〜E1.8×10⁶psiの範囲が多く、JAS換算でE95〜E125に相当します。

Q9. 集成材の異等級構成と同一等級構成の違いは?

同一等級構成は全層を同じ等級ラミナで構成する均質構成、異等級構成は外層に高等級・中央層に低等級を配置する経済構成です。同強度を実現する材料費は異等級構成が約30〜40%安く、住宅・中大規模木造の梁・桁で採用が多数派です。

Q10. ヤング係数測定値が同じでも強度が違うことはあるか?

あります。ヤング係数は弾性域の剛性指標で、強度(破壊までの最大応力)と完全には比例しません。節の数・大きさ、繊維走向、内部応力で破壊強度が決まるため、E125材でも節の多い材は基準曲げ強度Fbが規定値を下回る場合があります。MSR検査では節検査も併用して品質を保証します。

Q11. 木材ヤング係数は経年劣化するか?

長期間の自然環境下(温湿度変動・紫外線・微生物)では、表面付近のヤング係数が緩やかに低下します。法隆寺など千年以上の建築物では、内部芯材のヤング係数は新材の60〜80%を維持しているとの研究報告があります。屋内環境では数百年単位で実用上の変化は小さいといえます。

Q12. ヤング係数の高い材料を使えば必ず経済的になるか?

ならない場合があります。ヤング係数が高くてもFb(基準曲げ強度)が比例して高いとは限らず、たわみ条件で決まる設計(梁・桁の長スパン)ではE値が効きますが、応力条件で決まる設計(短スパン梁・耐震壁)ではFb値が効きます。設計条件に応じてE値・Fb値のバランスを評価することが、最適等級選定の鍵です。

たわみ計算と長期変形係数の実務式

木造梁のたわみ量は次式で算出されます(中央集中荷重・両端単純支持の場合)。

δ = (P × L³) / (48 × E × I)

等分布荷重の場合は δ = 5wL⁴/(384EI) となります。ここで δ:たわみ、P:荷重、L:スパン、E:ヤング係数、I:断面二次モーメント、w:単位長さあたり荷重。スギ梁(E=70GPa)を高ヤング材(E=120GPa)に変えれば、同じ断面でたわみが約42%減します。逆に同じたわみ条件なら断面を約30%小さくでき、材料コスト削減と内部空間の確保に直結します。

木材は経時的にクリープ変形が進行するため、長期荷重に対しては長期変形係数 kdefを乗じます。日本の建築基準法体系では概ね 1.6〜2.0 を用い、初期たわみの2倍程度を最終たわみとして扱います。

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