北米材輸入|米松・ベイマツ・SPFの市場

北米材輸入 | Forest Eight

木造の家を建てるとき、梁や柱、土台に「ベイマツ」「SPF」といった名前を聞いたことがあるかもしれません。これらはみな北米から来た木です。北米材は欧州材と並ぶ日本の木材輸入の二大供給源で、2022年の輸入額は約3,000億円。輸入全体(約1.4兆円)の2割を占めます。

内訳はカナダが約60%、米国が約40%。1960年代から日本の住宅市場に深く根を張ってきた供給源で、用途ごとにしっかり役割分担ができあがっています。その中身を見ていきましょう。

目次

北米材の樹種と、それぞれの居場所

北米材輸入の樹種別構成 北米材輸入額3,000億円の樹種別シェア 北米材輸入3,000億円の樹種別構成 米マツ(ベイマツ)40% 約1,200億円・梁桁・土台 SPF 35% 1,050億円・ツーバイフォー ヒバ/WRC 15% 10% 主要樹種の用途 米マツ(ベイマツ・ダグラスファー):強度高い、梁・桁・土台・羽柄材 SPF:スプルース・パイン・ファー総称、ツーバイフォー寸法製材中心 ベイヒバ:耐水性高い、浴室・水回り・浴槽材・建具 WRC(ウェスタンレッドシダー):耐久性、外壁・デッキ・サイディング 米マツ40%が最大、SPFと合わせて75%が住宅構造材中核。 ベイヒバ・WRCの15%は付加価値の高い特殊用途分野。
図1:北米材輸入の樹種別構成(財務省貿易統計をもとに概算)

北米材の主役は米マツ(ベイマツ、ダグラスファー)です。北米西海岸産の高強度針葉樹で、強度が高く年輪が緻密、大きな丸太から長尺の梁・桁が取れます。日本の在来軸組工法住宅では梁・桁・土台・大引きの主役で、高強度を要する梁・桁では国産のスギ・ヒノキ・カラマツより選ばれることも珍しくありません。年間140万m³規模が製材の形で輸入され、価格は1m³あたり7万〜12万円。欧州産集成材と直接競合します。

次に多いのがSPF。これは「スプルース・パイン・ファー」の頭文字で、白っぽく加工しやすい針葉樹群の総称です。日本ではツーバイフォー(2×4)工法住宅の構造材として使われ、年間200万m³規模が輸入されています。日本のツーバイフォー住宅は年9〜10万戸(住宅全体の約20%)で、その構造材の大部分がSPFです。寸法は北米標準(38×89mm=2×4、38×140mm=2×6など)がそのまま日本でも採用されています。

そしてもう一つの顔が、耐久性・防水性に優れた特殊用途材です。整理すると次のようになります。

樹種 主要産地 特徴・用途
米マツ(ベイマツ) 米オレゴン・ワシントン・カナダBC 高強度、梁・桁・土台
SPF(スプルース等) カナダBC・東部 中強度、2×4構造材
ベイヒバ(Yellow Cedar) カナダBC沿岸・米AK 耐水性・浴室・水回り
ウェスタンレッドシダー カナダBC沿岸・米西海岸 耐久性・外壁・デッキ
ヘムロック(ベイツガ) カナダBC・米西海岸 羽柄材・建具

最大の供給地、カナダBC州

北米材の最大供給地は、カナダのブリティッシュコロンビア(BC)州。北米材輸入の約60%を占めます。沿岸部はWRC・ベイヒバ・ベイマツといった温帯雨林由来の樹種が中心、内陸部はSPF・ロッジポールパインが中心です。供給を担うのはウェイヤーハウザー、ウェストフレーザー、キャンフォー、インターフォーといった世界最大級の製材メガ企業群です。

北米主要製材企業の構造 主要企業の年間生産能力と特徴 北米主要製材メーカーの年間生産能力(億BF/年・概算) ウェイヤーハウザー 120億BF ウェストフレーザー 110億BF キャンフォー 75億BF インターフォー 45億BF ジョージア・パシフィック 40億BF ルイジアナ・パシフィック 35億BF トルコ・他 50億BF ウェイヤーハウザー・ウェストフレーザーが2大企業、両社で全体の30%超。
図2:北米主要製材メーカーの年間生産能力(各社公開資料・業界推計をもとに概算、BF=ボードフィート)

これら大手は日本市場向けに専用ライン・専用寸法・専用等級を整え、日本の輸入商社(住友林業、伊藤忠建材、双日建材など)と長期取引を続けています。バンクーバー港・ルパート港・タコマ港・ポートランド港などから横浜・大阪・名古屋・志布志港への定期コンテナ航路があり、航海日数は約12〜15日が標準です。

山火事とキクイムシ——静かに進む供給リスク

盤石に見える北米材ですが、中長期で気がかりな構造的リスクを抱えています。一つがキクイムシ(Mountain Pine Beetle)被害。ロッジポールパインなどを食害する小型甲虫で、温暖化で越冬生存率が上がり、2000年代以降にBC州内陸で大発生。累計2,000万ヘクタール超の森林が被害を受けました。被害木は強度低下や色の変化で製材歩留まりが落ち、原木供給の長期的な減少要因になっています。

もう一つが山火事です。BC州の年間焼失森林面積は2017年に120万ha、2023年には280万haと、過去最大級の焼損が続いています。焼けた木は1〜2年以内に伐採・製材しないと使えないため、短期的には供給が増える一方、5〜10年スパンで見ると森林資源の供給能力を確実に削っていきます。

加えて、BC州政府の林業政策の転換も供給を絞ります。原生林(Old Growth)保護の強化、伐採可能量(AAC)の引き下げを進めており、年間素材生産量は2010年代の6,500万m³から2024年には4,500〜5,000万m³水準まで下がる見通しです。これらが重なり、2025〜2030年の北米材供給は緩やかに細っていくと業界は警戒しています。

ウッドショックと価格の正常化

北米材の価格は、ランバム指数(Random Lengths)が業界基準として参照されます。2010年代後半までは1,000ボードフィートあたり300〜400ドルで安定していましたが、コロナ禍の住宅需要急増とサプライチェーン混乱で、2021年5月に1,500ドル超まで急騰。その後の乱高下を経て、2024年は400〜500ドル水準で正常化に向かっています。

北米ランバム指数の推移 2018年から2024年の北米ランバム価格指数推移 北米ランバム価格指数(USD/1,000BF・概算) 1,600 1,200 800 400 0 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 1,500 450 2021年5月にピーク1,500ドル、その後段階的に正常化、2024年は450ドル水準。
図3:北米ランバム価格指数の推移(Random Lengths・業界資料をもとに概算)

2021〜2022年のウッドショックは、北米現地価格の急騰、コンテナ運賃の急騰、円安という3つが同時に効いて、日本到着価格を2倍以上に押し上げました。太平洋航路のコンテナ運賃は1,500ドル/FEUから最大8,000〜12,000ドル/FEUまで上昇し、これだけで木材到着価格に20〜30%の上乗せ要因に。住宅メーカー・プレカット工場は構造材コストの急増に直面し、住宅着工の延期や利益圧縮が広く起きました。

欧州材・国産材との棲み分け

日本の住宅構造材市場では、北米材・欧州材・国産材が用途別に競合しています。それぞれの「定位置」を見ると、棲み分けがよくわかります。

用途 主流供給材 代替・競合
梁・桁(在来) 米マツ製材 欧州産集成材・国産カラマツ集成材
柱(在来) 欧州ホワイトウッド集成材 国産スギ・ヒノキ集成材
土台 米マツ・ベイヒバ ヒノキ・スギ防腐処理材
2×4構造材 SPF 国産スギ2×4・欧州産2×4
外壁・サイディング WRC・ベイヒバ スギ・ヒノキ・人工外装材
浴室・水回り ベイヒバ 青森ヒバ・ヒノキ

梁・桁では米マツが先行しつつ欧州産集成材が拡大、柱は欧州産ホワイトウッド集成材が標準、ツーバイフォーはSPFが圧倒的。この棲み分けが2020年代の構図です。北米材依存のリスクが意識されるなか、住宅メーカー・建材商社は北米材・欧州材・国産材の3〜4供給源を併用するポートフォリオ戦略を強めています。林野庁が掲げる国産材自給率の中期目標(2030年に50%水準)も、こうした北米材依存の段階的低下と表裏一体の関係にあります。

よくある質問

米マツとSPFの違いは何ですか?

米マツ(ベイマツ・ダグラスファー)は北米西海岸産の高強度針葉樹で、梁・桁・土台などの主要構造材に使われます。SPF(スプルース・パイン・ファー)はカナダ内陸・東部産の中強度針葉樹群の総称で、ツーバイフォー材として広く使われます。強度・寸法・用途・産地が異なる位置付けです。

米マツが国産材で代替できないのはなぜですか?

米マツの「長尺・大断面・高強度」という組み合わせは、国産スギ・ヒノキ・カラマツでは完全には再現が難しいためです。とくに4〜6m長の高ヤング係数の梁は、国産材では集成材化しないと供給が困難。ただし国産カラマツ集成材・スギ集成材の品質向上で、代替可能な領域は少しずつ広がっています。

ベイヒバ・WRCはなぜ高価なのですか?

ベイヒバ・ウェスタンレッドシダーはBC州沿岸などの温帯雨林に分布し、樹齢200〜500年と成長が遅く生産量が限られます。耐久性・防腐性・芳香性という特殊価値があり、浴室・水回り・外装といった高単価用途で使われるため、製材単価は1m³あたり15〜30万円。SPF(5〜7万円)の3〜5倍で取引されます。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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