JAS材を購入する:建築主・工務店のための調達ガイド

JAS(日本農林規格)認証材は、強度・含水率・寸法精度が第三者機関により担保された木材で、構造計算の前提条件を満たす唯一の手段である。本ガイドでは、建築主・工務店が JAS材を「正しく購入する」ために必要な知識を、等級区分・含水率・規格・流通・価格・検品・トラブル対応まで体系的に解説する。スギ E70・E90、ヒノキ E110、ベイマツ E120 など樹種別の標準スペックから、押印 vs 刻印の見分け、検査票の読み方、認定工場の検索方法、海外同等規格との比較まで、現場で使える数値と手順を網羅した。

目次

1. JAS制度の歴史と意義

JAS(Japanese Agricultural Standards)制度は、1950年(昭和25年)の農林物資規格法に基づき制定された、日本における農林水産物・加工品の品質基準である。木材分野では1955年に最初の「製材の日本農林規格」が告示され、1967年に構造用製材、1974年に集成材、2007年に直交集成板(CLT)の規格が順次制定された。

木造建築の世界では、長らく「無等級材」での経験的設計が主流であったが、1995年の阪神・淡路大震災以降、構造計算における材料強度の信頼性が強く問われるようになった。2000年の建築基準法改正で性能規定化が進み、許容応力度計算において JAS等級区分材を用いることが事実上の標準となった。現在、構造用製材の JAS認証取得工場は全国で約180社、年間生産量は約120万㎥と推計される(林野庁統計、2024年度)。

JAS材を選ぶ意義は、単に「品質が良い」ということではない。第三者認証機関(登録認証機関)による工場審査・製品検査を経ているため、ヤング係数・含水率・寸法精度・節径比などの数値が「公的に保証された値」として構造計算書に記載できる点が決定的である。木造住宅のフラット35S 適合、長期優良住宅認定、ZEH 補助金、各種税制優遇においても、JAS材の使用が条件または加点要素となる場合が多い。

2. 構造用製材の等級区分

JAS構造用製材は、強度に対する区分方法として「目視等級区分」と「機械等級区分」の二系統がある。さらに無等級材(JAS外)を含めると、市場には三段階の信頼性レベルが存在する。

2.1 無等級材(JAS外)

JAS認証を受けていない製材で、強度値は建築基準法施行令第89条に定める「無等級材の基準強度」を用いる。スギの場合、曲げ Fb = 22.2 N/mm²、ヤング係数 E = 7.0 kN/mm²(推定値)と低めに設定されるため、断面寸法を大きく取る必要がある。住宅の小屋組や下地など非構造部材では今も多用されるが、許容応力度計算で梁・柱に用いるには不利である。

2.2 目視等級区分(甲種・乙種)

目視等級は、節の大きさ・丸身・割れ・繊維傾斜などを目視で測定して等級を判定する方法で、甲種(曲げ性能を重視・横架材向け)と乙種(圧縮性能を重視・柱向け)に分かれる。各々に1級・2級・3級の三等級がある。

区分 用途 代表的な節径比基準(1級) スギ Fb(N/mm²)
甲種1級 梁・桁・母屋 材幅の1/6以下 28.2
甲種2級 梁・桁(一般) 材幅の1/4以下 22.2
甲種3級 梁・桁(軽微) 材幅の1/2以下 17.7
乙種1級 通し柱・管柱 材幅の1/4以下 26.7
乙種2級 柱(一般) 材幅の1/3以下 20.7
乙種3級 柱(軽微) 材幅の1/2以下 17.7

2.3 機械等級区分(MSR:Machine Stress Rated)

機械等級区分は、グレーディングマシンと呼ばれる装置で全数の曲げヤング係数を測定し、その実測値に基づいて等級を付与する方法である。E70・E90・E110・E130・E150・E170 の6段階があり、E の数値はヤング係数(kN/mm²)の下限値を示す。例えば E90 と表記された材は、ヤング係数 9.0 kN/mm² 以上 11.0 kN/mm² 未満であることが保証される。

図1: 機械等級区分とヤング係数の関係 0 5 10 15 20 ヤング係数 (kN/mm²) E707.0-9.0 E909.0-11.0 E11011.0-13.0 E13013.0-15.0 E15015.0-17.0 E17017.0- 機械等級区分(数値はヤング係数の範囲)

機械等級は、目視では判別できない内部強度のばらつきを定量化できるため、構造計算の精度が大きく向上する。一般に E70 はスギ並材、E90 はスギ良材、E110 はヒノキ並材、E130 以上はベイマツ・カラマツの良材に対応する。

3. 含水率の基準と意味

含水率は、木材中に含まれる水分の重量割合(全乾質量に対する百分率)で、構造材としての安定性を左右する最重要指標である。JAS構造用製材では、表示される含水率により D15・D20・D25 の三区分が定められている。

記号 含水率上限 乾燥方法 用途
D15(KD15) 15% 人工乾燥(高温・中温) 化粧材・造作材・高精度施工
D20(KD20) 20% 人工乾燥 構造材(柱・梁・桁)一般
D25(SD20) 25%(天然乾燥は20%以下) 天然乾燥または軽度な人工乾燥 仮設・下地・非構造

「KD」は Kiln Dried(人工乾燥)、「SD」は Sun Dried(天然乾燥)の略である。木造住宅の構造材として一般的に推奨されるのは KD20 以下、化粧現しの梁や床材では KD15 以下が望ましい。含水率が高い材を施工すると、施工後の乾燥収縮により割れ・狂い・釘抜け・金物緩みを生じ、耐震性能の低下に直結する。

木材の繊維飽和点は約30%(樹種により25〜35%)で、これを下回ると木材は収縮し、上回ると膨張する。日本の住宅環境における平衡含水率は、室内で12〜15%、床下で15〜18%程度であるため、施工時にこの範囲に近い含水率に調整しておくことが理想である。

4. 集成材のJAS規格

集成材は、ラミナ(挽き板)を繊維方向を平行にして積層接着した木質材料で、JAS集成材の日本農林規格では用途別に四種類が規定されている。

  • 構造用集成材(同一等級構成):全ラミナが同等級。柱・小断面梁向け。E65-F225、E95-F315 など E と F(曲げ強度)の組合せで等級表示。
  • 構造用集成材(異等級構成・対称):応力の大きい外層に高強度ラミナを配置。大断面梁向け。E120-F330 など。
  • 構造用集成材(異等級構成・非対称):上下で構成を変える。床梁など片側引張に特化。
  • 化粧ばり構造用集成柱:柱用で表面ラミナを化粧仕上げ。

例えば「E105-F300」と表記された集成材は、ヤング係数 10.5 kN/mm²、曲げ強度 30 N/mm² が保証される。一般的な木造住宅の梁には E105-F300 または E120-F330 が広く流通し、大規模木造の柱には E120-F330 以上が指定されることが多い。

5. 合板のJAS規格

合板は、薄板(単板)を繊維方向を直交させて奇数枚積層接着した板材で、JAS合板規格では以下の区分が定められている。

  • 普通合板:内装下地・家具用。1類(耐水)・2類(準耐水)の二区分。
  • 構造用合板:耐力壁・床・屋根の構造下地。特類(屋外・常時湿潤)・1類(屋外・断続湿潤)の二区分。1級・2級の強度等級。
  • コンクリート型枠用合板:型枠工事専用。
  • 天然木化粧合板・特殊加工化粧合板:化粧表面材付き。

木造住宅の耐震性を確保する耐力壁では、構造用合板の特類または1類、厚さ9mm以上、N50釘@150mm以下打ちで壁倍率2.5倍を実現できる。F☆☆☆☆(Fフォースター)表示はホルムアルデヒド放散量規制で、シックハウス対策のため内装には F☆☆☆☆ 級が必須である。

6. LVL(単板積層材)のJAS規格

LVL(Laminated Veneer Lumber)は、単板を繊維方向を平行に積層接着した棒状材で、寸法安定性が高く長尺の梁・桁に適する。JAS規格では、A種(構造用)と B種(造作用)に分かれ、A種では曲げヤング係数の等級として 80E・90E・100E・110E・120E・140E が規定されている。

LVL の特徴は、(1) 節などの欠点が分散されるため強度ばらつきが小さい、(2) 単板厚を均一化できるため厚さ・幅・長さの自由度が高い(最大長さ24m超も可能)、(3) ヤング係数が天然材より高い(同樹種で1.2〜1.5倍)、の三点である。住宅の長スパン梁、化粧現しの登り梁、店舗の大開口の上枠などに用いられる。

7. CLT(直交集成板)のJAS規格

CLT(Cross Laminated Timber、直交集成板)は、3層以上の奇数層のラミナを繊維方向を直交させて積層接着した面材で、2007年に「直交集成板の日本農林規格」として制定された。建築基準法上の取り扱いは、2016年の関連告示整備で構造材として正式に位置づけられた。

CLT等級 曲げヤング係数(外層) 代表的構成
S60-3-3 6.0 kN/mm² スギ標準・3層3プライ
S90-3-3 9.0 kN/mm² スギ良材または異樹種混合
M120-5-5 12.0 kN/mm² カラマツ・ベイマツ系・5層5プライ

CLT は壁・床・屋根を一体的に構成できる面材で、中高層木造(4階以上)や大空間建築の主要構造材として急速に普及している。日本の CLT 認定工場は2024年時点で7社、年間生産能力は約3万㎥である。

8. 樹種別の標準スペック

建築主・設計者が JAS材を購入する際に把握しておくべき、主要樹種の標準スペックを下表にまとめた。

樹種 気乾比重 標準ヤング係数 機械等級代表 用途 参考価格(製材所)
スギ 0.38 7.0-10.0 kN/mm² E70-E90 柱・羽柄・造作・内装 5.5万円/㎥前後
ヒノキ 0.44 9.0-12.0 kN/mm² E90-E110 通し柱・土台・水回り 8.5万円/㎥前後
カラマツ 0.55 10.0-13.0 kN/mm² E90-E110 梁・桁・耐久部位 7.0万円/㎥前後
ベイマツ 0.52 11.0-14.0 kN/mm² E110-E130 梁・桁・大スパン 9.0万円/㎥前後
ベイヒバ 0.49 9.0-11.0 kN/mm² E90-E110 土台・水回り(防腐性) 11.0万円/㎥前後
アカマツ 0.53 10.0-12.0 kN/mm² E90-E110 梁・桁・敷居・床板 7.5万円/㎥前後

※ 価格は2024〜2025年度の構造材グレード・KD20・3m材の参考値で、産地・工場・時期により大きく変動する。

9. 認定機関と認定工場の検索

9.1 登録認証機関

JAS認証は、農林水産大臣の登録を受けた「登録認証機関」が、認定工場の審査・製品検査を行う。木材分野の主要登録認証機関は以下の通りである。

  • 公益財団法人 日本住宅・木材技術センター(HOWTEC)
  • 一般社団法人 全国木材検査・研究協会
  • 一般財団法人 建材試験センター
  • 一般社団法人 日本木材総合情報センター
  • 一般財団法人 林業・木材製造業労働災害防止協会(一部規格)

9.2 認定工場の検索方法

認定工場は、各登録認証機関のウェブサイトで都道府県別・規格別に公開されている。建築主・工務店が活用すべき主要データベースは次の二つである。

  • 農林水産省「JAS認証取得者検索」:全規格を横断検索できる公的データベース。事業者名・所在地・取得規格・認定年月日を確認可能。
  • 日本住宅・木材技術センター「JAS認定工場一覧」:構造用製材・集成材・CLT 等の取得工場を地図上で表示。

地域材を活用したい場合は、都道府県の森林組合連合会や林業普及指導員に問い合わせると、その地域の認定工場リストと標準スペックを案内してもらえることが多い。

10. JASマークの見方

JASマークは認定工場により製品に表示されるもので、表示方法には「押印」「刻印」「印刷」「ラベル」の四種類がある。表示されるべき情報は規格により異なるが、構造用製材では以下が必須である。

  • JASマーク(ひし形にJAS)
  • 規格名(例:構造用製材)
  • 等級(例:機械等級区分 E90・甲種2級)
  • 含水率区分(例:D20)
  • 樹種(例:すぎ)
  • 認定工場名または認定番号
  • 登録認証機関名

押印はインクスタンプによる表示で、化粧現し材ではそのままでは目立つため、隠れ部位に押すのが通常である。刻印は焼印または機械刻印で、塗装後も視認可能。ラベルはシール貼付で、結束ごとに付与される場合と、1本毎に貼付される場合がある。

注意点として、JASマークが「材の小口端面のみ」に表示されている場合、現場で切断するとマークが失われる。化粧現し梁などで切断後も認証を主張したい場合は、納品時に検査票・出荷証明を必ず保管しておく必要がある。

11. 検査票・出荷証明の取り方

JAS材を構造計算書や住宅性能評価で活用するためには、現物の JASマークに加えて「出荷証明書」または「検査票」の取得が望ましい。証明書には以下の情報が記載される。

  • 発行日・出荷日
  • 発行者(認定工場名・認定番号・登録認証機関)
  • 納品先(工務店名・現場名)
  • 樹種・規格・等級・含水率・寸法・本数
  • ロット番号または検査番号
  • 機械等級材の場合:個別ヤング係数測定値(求めれば添付可能)

注文時に「JAS出荷証明書を発行してください」と一言添えるだけで、認定工場は無償または軽微な手数料で発行する。長期優良住宅・住宅性能表示制度・公共建築では、原則として証明書の保管が求められる。

12. 主要供給ルート

JAS材の調達ルートは、(A) 製材所直販、(B) 木材市場・卸商社、(C) 森林組合・地域材プロデューサー、(D) プレカット工場一括、の四経路がある。それぞれの特徴を整理する。

12.1 製材所直販

JAS認定工場から直接購入するルート。価格が最も安く、樹種・等級・寸法・含水率の指定が細かく可能。最小ロットは1〜10㎥程度から受け付ける工場が多いが、配送コストが上乗せされるため遠隔地の工務店には不利。製材所のウェブサイトや展示会、業界紙の広告から問い合わせる。

12.2 木材市場・卸商社

地域の木材市場や全国規模の木材商社を経由するルート。多様な樹種・等級・寸法が小ロットから入手可能で、急ぎの需要に対応できる。価格は製材所直販に5〜15%上乗せされるが、配送・与信・在庫リスクを商社が負うため、中小工務店にとってはトータルコストで有利な場合もある。

12.3 森林組合・地域材プロデューサー

都道府県の森林組合連合会や、地域材ブランドのプロデューサーを通じて、地域材限定で発注するルート。トレーサビリティ(伐採地・伐採年月・搬出経路)が明確で、補助金(地域材活用助成・木造化推進事業など)と紐付けやすい。価格は地域・銘柄により幅があるが、ブランド材(吉野杉・尾鷲ヒノキ・天竜杉・木曽ヒノキなど)はプレミアムが付く。

12.4 プレカット工場一括発注

住宅工務店の最も一般的な調達経路で、構造材・羽柄材・面材を含めて一括でプレカット工場に発注する。プレカット工場が JAS材を選定・加工するため、工務店側で個別の樹種・等級指定をするには事前協議が必要。コストは平均的だが、現場手間が大幅に削減される。

13. 都道府県別の主要産地

地域材を活用する場合、産地の特性を把握しておくことが望ましい。主要な産地と銘柄を以下に示す。

地域 主要樹種 代表銘柄
北海道 トドマツ・カラマツ・エゾマツ 道産材・ひがし大雪材
東北(秋田・岩手) スギ・アカマツ 秋田スギ・南部アカマツ
関東(栃木・茨城) スギ・ヒノキ 八溝スギ・栃木ヒノキ
中部(長野・岐阜) ヒノキ・カラマツ 木曽ヒノキ・東濃ヒノキ・信州カラマツ
東海(静岡) スギ 天竜スギ
近畿(奈良・三重) スギ・ヒノキ 吉野スギ・尾鷲ヒノキ
中国(岡山・島根) ヒノキ・スギ 美作ヒノキ・石見スギ
四国(高知・愛媛) スギ・ヒノキ 魚梁瀬スギ・久万ヒノキ
九州(宮崎・大分) スギ・ヒノキ 飫肥スギ・耶馬渓ヒノキ

地域材を構造材として用いる場合は、(1) 認定工場が当該樹種・等級で認証を取得しているか、(2) 構造計算上必要なヤング係数・基準強度を満たすか、(3) 流通安定性(同一規格・同一樹種で必要量が確保できるか)、を事前に確認する必要がある。

14. 価格構造を理解する

JAS材の最終価格は、産地価格・流通費・加工費・取引マージンの合計で構成される。標準的なスギ柱材(120mm角・3m・E90・KD20)を例に、価格構造の目安を示す。

段階 価格(円/㎥) 備考
原木(山元) 12,000〜15,000 立木価格+伐出費
原木市場 15,000〜18,000 運材費+市場手数料
製材品(工場渡し) 45,000〜55,000 製材歩留約50%+乾燥・等級
プレカット入荷 55,000〜65,000 商社マージン+運送
建築現場(材工別) 75,000〜95,000 プレカット加工費+建方費

建築主の支払う「住宅価格」のうち、構造材費は概ね総工費の8〜12%である。30坪の住宅で構造材使用量は約12〜15㎥、構造材費は120万〜180万円程度が目安となる。等級を E70 から E90 に上げると 5〜10%、E110 にすると 15〜25% の単価上昇となる。

15. 注文時のチェックリスト

建築主・工務店が JAS材を発注する際、以下の項目を発注書または仕様書に明記することで、納品トラブルの大半を未然に防げる。

  1. 樹種(例:すぎ・ひのき・からまつ)
  2. 規格名(例:構造用製材/構造用集成材)
  3. 等級(例:機械等級 E90、甲種2級、E105-F300)
  4. 含水率区分(例:D20 または KD20以下)
  5. 断面寸法(例:120×120)と長さ(例:3000mm)
  6. 本数または㎥数
  7. 表面仕上げ(プレーナー仕上げ/無加工)
  8. JAS出荷証明書の発行依頼
  9. 納期・納入場所・荷姿(バンド結束/パレット)
  10. 不適合品発生時の対応条件(返品・交換期限)
  11. 地域材使用の場合:産地証明書または合法木材証明(クリーンウッド法)
  12. 支払条件(前払い/月末締翌月末払い等)

16. 受取時の検品方法

納品時の検品は、(1) 数量確認、(2) JASマーク確認、(3) 寸法・含水率の抜取検査、(4) 外観検査の四段階で実施する。

16.1 JASマーク確認

結束ごとに JASマークの有無、樹種・等級・含水率の表示を確認する。1ロットごとに最低1本は端から端まで JASマークを目視確認する。マークが全くない、または部分的にしかない結束は、その場で写真を撮影し、出荷元に確認の連絡を入れる。

16.2 寸法測定(抜取)

JIS B 7507 規格のノギス(最小目盛0.05mm)または金尺で、各ロット10本に1本程度を抜取り、断面寸法と長さを測る。許容差は規格により異なるが、構造用製材で断面の許容差は ±2mm、長さは ±5mm が目安である。

16.3 含水率測定(抜取)

静電容量式または高周波式の含水率計(HM-520型・MR-200型など)で、各ロット5本に1本程度を測定する。測定は材の中央部・端部から30cm内側で実施し、表示値が KD20 規格なら20%以下であることを確認する。表面と内部で含水率差が大きい場合は、納品後の再乾燥で安定するまで数週間養生する。

16.4 外観検査

大きな欠け・割れ・腐れ・カビ・染み・反り・ねじれを目視確認する。特に長尺の梁材は、両端を支点として中央のたわみを測り、全長の1/200を超える曲がりがあれば不合格として返品交渉する。

17. 不適合品への対応

納品された材が JAS規格を満たさない場合の対応は、契約書および JAS制度上の手続きの両面から進める。

  • 軽微な不適合(数量不足・軽微な寸法外れ):出荷元と協議し、追加納品または値引きで対応。発注後14日以内が交渉の目安。
  • 等級・含水率の不適合:返品交換が原則。出荷元の認定工場が再検査を実施し、結果を文書で回答する義務がある。
  • JASマーク偽装が疑われる場合:登録認証機関または農林水産省消費・安全局表示・規格課に通報。認定工場の認定取消につながる重大事案として処理される。
  • 納品後の構造性能トラブル:建築瑕疵担保責任保険(住宅瑕疵担保履行法)の対象となる場合あり。設計事務所・施工会社と協議のうえ、瑕疵保険会社に相談する。

18. 海外のJAS同等規格

建築輸入材を扱う場合、海外の同等規格を理解しておくと選定がスムーズである。主要な海外規格を以下に示す。

地域 規格名 等級表示例 JASとの主な対応
米国・カナダ NLGA / WCLIB / WWPA / NIST PS 20 Select Structural / No.1 / No.2 機械等級 MSR(1650f-1.5E等)はJAS機械等級と類似
欧州 EN 14081-1(強度等級 EN 338) C16 / C18 / C24 / C30 C24 ≒ E90クラス、C30 ≒ E110クラス
豪州・ニュージーランド AS/NZS 1748 F4 / F5 / F7 / F8 / F11 / F14 F等級は曲げ強度ベース、JASのF表示と類似
中国 GB 1929 / GB/T 50329 I級 / II級 / III級 目視等級主体・含水率規定あり

ベイマツ・ベイヒバ・ベイツガなど北米材の構造性能は、日本のJASに換算するための「樹種群別基準強度表」が告示で定められている。例えば北米産ダグラスファー(ベイマツ)の Select Structural は、JAS の機械等級 E110 相当として構造計算で用いることができる(建築基準法施行令第89条および告示第1452号)。

19. クリーンウッド法と合法木材

2017年施行の「クリーンウッド法(合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律)」により、木材関連事業者には合法性確認の努力義務が課されている。JAS材の調達においても、合法性が確認できる木材を優先することが推奨される。

合法木材の証明方法は、(1) 業界団体による「合法木材供給事業者認定制度」、(2) 森林認証制度(FSC・PEFC・SGEC)、(3) 個別企業のサプライチェーン管理、の三系統がある。公共建築物の木材利用促進法の対象工事では、合法木材証明が必須となるケースが多い。

20. 補助金・税制優遇

JAS材・地域材を使用する木造建築では、複数の補助金・税制優遇が利用可能である。代表的なものを下記に示す(年度により内容が変動するため、必ず最新の公募要領を確認すること)。

  • 地域型住宅グリーン化事業:長期優良住宅・ZEH・低炭素住宅などに対する補助、最大100〜140万円。
  • 子育てエコホーム支援事業:省エネ住宅の子育て世帯向け補助、最大100万円(2024年度)。
  • 都道府県・市町村独自の地域材活用補助:地域材使用量に応じて10〜50万円程度の助成。
  • 住宅ローン減税:認定長期優良住宅は借入限度額が一般住宅より引き上げられる。
  • 登録免許税・不動産取得税の軽減:認定住宅は税率軽減の対象。

21. JAS材活用の現代的意義

2050年カーボンニュートラルの政府方針により、建築物の木造化・木質化は今後さらに加速する。鉄骨・RC造から木造への転換、木造非住宅(中高層・大規模)の普及、内外装木質化の促進が国土交通省・林野庁の重点施策となっており、その全てにおいて JAS認証材の活用が前提条件となる。

建築主・工務店にとって、JAS材を「選ぶ」「買う」「使う」スキルは、もはや特殊技能ではなく標準業務である。本ガイドで解説した等級区分・含水率・規格・流通・価格・検品・トラブル対応・海外規格の知識を体系的に身につけ、設計事務所や構造設計者と対等に技術協議できる調達担当者を社内で育成することが、これからの工務店の競争力を左右する。

22. FAQ

Q1. JAS材と無等級材の構造計算上の違いは?

JAS等級区分材は告示第1452号で定める「樹種・等級別基準強度」を用いる。例えばスギ機械等級 E90 では曲げ Fb = 28.8 N/mm²、ヤング係数 E = 9.0 kN/mm²。無等級材は施行令第89条の値(スギなら Fb = 22.2 N/mm²、E = 7.0 kN/mm²)を使うため、同じ断面でも許容応力度・変形量が大きく異なる。

Q2. KD材とSD材で価格差はどれくらい?

同じ樹種・等級・断面で、KD20(人工乾燥含水率20%以下)はSD材(天然乾燥)に対して概ね15〜30%の価格上乗せが一般的。乾燥にエネルギーと時間(高温乾燥で48〜72時間、中温乾燥で1〜2週間)がかかるため。

Q3. 集成材と無垢材、どちらを選ぶべき?

長尺・大断面・高強度・寸法安定性が必要なら集成材(梁・桁・大開口の上枠)。化粧現し・経年変化を楽しみたい・調湿性を重視するなら無垢のJAS製材(柱・床・内装)。一棟内で適材適所に併用するのが現代の標準的な設計手法。

Q4. 機械等級材は本当に強度が保証されるのか?

機械等級区分は全数のヤング係数を測定するため、ロット内でのばらつきは目視等級より小さい。ただし機械測定は曲げヤング係数(剛性)を測るもので、引張強度や圧縮強度の保証は等級の組合せ(F値)で別途規定される。E90-F300 のように E と F が明示された等級材を選ぶのが構造設計上は最も確実。

Q5. 認定工場でも品質トラブルが起きるのは何故?

JAS認証は工場の品質管理体制を認証するもので、個別ロット全数の品質を保証するものではない(抜取検査が原則)。乾燥工程の不調、原木材質のばらつき、運搬時の劣化など、認定工場でも稀に不適合品が混入する。検品体制を発注側でも整える必要がある。

Q6. 地域材を使うメリットは?

(1) 補助金・助成金の活用、(2) 産地ブランドによる住宅価値向上、(3) フードマイレージならぬウッドマイレージ削減(CO2削減)、(4) 地域経済循環への貢献、の4点が主なメリット。デメリットは流通量の制約と特定樹種への偏りで、設計時に等級・寸法・納期の事前確認が必要。

Q7. 個人住宅でJAS材を指定するにはどうすればよい?

建築請負契約書または工事仕様書に「構造材は JAS構造用製材 機械等級 E90以上、含水率 KD20以下、樹種スギまたはヒノキ、出荷証明書添付」のように明記する。設計事務所が標準仕様にしている場合も多いので、設計初期段階で工務店・設計者に確認する。

Q8. JAS材はインターネットで個人購入できる?

製材所・木材商社のオンラインショップで JAS材の小ロット販売は増えており、DIY向けには3m材・1〜10本単位での購入が可能。ただし建築構造材として使用する場合は、出荷証明書の発行と運送(一般宅配では取扱不可な4m超長尺材は専用便)の手配が必要なため、事前に問い合わせを推奨。

Q9. 古材・再生材にもJASはある?

2024年現在、古材・再生材を直接対象とするJAS規格は制定されていない。ただし、解体材から再製材したものを再度認定工場で等級区分すれば、新材としてJASが付く。古民家解体材の再利用は、設計者が個別に強度試験で確認するか、非構造部位(化粧材・家具)として使うのが現実的。

Q10. JAS材を使えば必ず長期優良住宅になる?

JAS材使用は長期優良住宅認定の必要条件のひとつだが、それだけでは不十分。耐震等級2以上、断熱等級5以上、維持管理対策・劣化対策・住戸面積など複数の基準を満たす必要がある。構造材のJAS化は「土俵に立つ条件」と理解すべき。

Q11. 集成材の接着剤は安全?

JAS構造用集成材で使用が認められる接着剤はレゾルシノール樹脂・水性高分子-イソシアネート系・フェノール樹脂など、いずれもF☆☆☆☆相当のホルムアルデヒド放散基準を満たす。耐水性区分も「使用環境A」(屋外曝露可)から「使用環境C」(屋内常温)まで規定されている。

Q12. 海外材でJAS認証を持つ製品は?

北米・欧州の一部メーカーは日本市場向けに JAS認証を取得している。米国西海岸のダグラスファー集成材、北欧スプルース構造用製材、ニュージーランドラジアータパインLVL などが代表例。輸入商社経由で日本国内のプレカット工場へ納入される流通が一般的。

23. まとめ

JAS材の購入は、単なる「製品の選択」ではなく、建築物の安全性・耐久性・資産価値を担保する根幹業務である。等級区分(目視・機械)、含水率区分(KD15・KD20・SD20)、規格別の特徴(製材・集成材・LVL・CLT・合板)、樹種別スペック、認定工場の検索、JASマークの見方、検査票の取得、流通ルート、価格構造、検品手順、不適合対応、海外規格との対応、補助金活用——本ガイドで解説した各論点を押さえれば、建築主・工務店として自信を持って構造材調達ができる。

木造建築の品質は、設計者の知見と施工者の腕前だけでなく、調達担当者の選材力で決まる。次の一棟、次の一現場のため、本ガイドを社内のチェックリストとして活用していただきたい。

📄 出典・参考

  • 農林水産省「日本農林規格(JAS)」公式ウェブサイト 構造用製材・集成材・直交集成板等の各規格告示
  • 農林水産省消費・安全局「JAS認証取得者検索」データベース
  • 公益財団法人 日本住宅・木材技術センター(HOWTEC)「JAS認定工場一覧」「木材規格・基準解説」
  • 林野庁「木材需給報告書」「木材価格統計」「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律 運用ガイドライン」
  • 建築基準法施行令第89条、告示第1452号「木材の基準強度」
  • 一般社団法人 日本集成材工業協同組合「構造用集成材の使い方」
  • 一般社団法人 日本CLT協会「CLT建築物の設計と施工の手引き」
  • 一般社団法人 全国木材検査・研究協会「JAS製材検査マニュアル」
  • 国土交通省・林野庁「公共建築物等における木材の利用の促進に関する基本方針」
  • EN 14081-1, NLGA Standard Grading Rules, AS/NZS 1748(海外規格)
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