住友林業、木造の複合型賃貸併用住宅「FOREST MAISON PORT」発売──住まいと賃貸事業を一棟で

FOREST MAISON PORT 木造賃貸併用住宅 | Forest Eight
📌 ポイント

  • 住友林業が2026年5月21日、木造の複合型賃貸併用住宅「FOREST MAISON PORT(フォレストメゾンポート)」を発売。
  • 住まい・賃貸住宅・店舗・オフィスを一棟に混在でき、独自のビッグフレーム(BF)構法で通し柱のない大空間をつくれる。
  • 注目は「遮音50」仕様の床。9層構造の床+防振吊天井+吸音材を組み合わせ、生活音を約50dB低減するという。
  • 構造躯体最長60年保証ZEH-M Oriented以上に対応。2〜3階建ての木三共=1時間準耐火レンジ。販売目標は2026年25億円、2030年に50億円。

自宅の一部を賃貸に回して家賃収入を得る「賃貸併用住宅」は、ローン負担を抑えつつ土地を活かせる手法として人気が高まっています。住友林業が発売した「FOREST MAISON PORT」は、ここに木造ならではの設計自由度と性能を持ち込んだ意欲作です。明るい話題として、その中身を見ていきましょう。

目次

「住む・貸す・商う」を一棟で

いちばんの魅力は、オーナーの住居と、賃貸住宅・店舗・オフィスといった複数の用途を一棟に自由に組み合わせられること。1階を店舗に、上階を賃貸とオーナー住居に――といった構成が一棟で完結します。商品名の「PORT(港)」には、人やビジネスが行き交う拠点というイメージが込められています。

これを支えるのが住友林業独自のBF構法。「日本初の木質梁勝ちラーメン構造」(特許取得・型式適合認定)で、太いビッグコラム(断面105×560mm)とメタルタッチ接合により、通し柱なしの大空間・大開口を実現します。すでに9万棟以上の採用実績があり、将来の間取り変更にも対応しやすいのが、長く運用する賃貸事業と好相性です。

主な標準仕様 遮音50 生活音 約50dB低減 床9層+防振吊天井 60年 構造躯体 最長保証 外装・設備・白蟻防除 ZEH-M Oriented 以上 省エネ基準に対応 9万棟+ BF構法の 採用実績
図:主な標準仕様(住友林業プレスリリースより編集部作成)

目をひく「床」──9層+防振吊天井の遮音

とくに目をひくのが床の遮音性能です。賃貸併用で上下階のトラブルの種になりやすいのが、まさに床を伝わる音。床衝撃音には、スプーンを落とす・椅子を引くといった軽い高音(軽量床衝撃音/LL)と、子どもが走り回る・飛び跳ねるといった重く低い音(重量床衝撃音/LH)の二種類があり、一般に木造で対策が難しいとされるのは後者の低音域です。

FOREST MAISON PORT の「遮音50」仕様は、階上の床を9層構造として質量と制振を確保し、さらに天井側を躯体から切り離す防振吊天井吸音材(グラスウール)を組み合わせる三段構えで、生活音を約50dB低減するとしています。これまでRC造(鉄筋コンクリート)の重い床が得意としてきた領域に木造で近づこうとする構成で、住まい手の暮らしを思った丁寧な作りがうかがえます。床仕上げにはオーナー住居・賃貸ともに木質感ある「PRIME WOOD」を採用し、性能と心地よさの両立をめざしています。

「遮音50」床・天井の断面イメージ 仕上げ「PRIME WOOD」 床下地 9層構造 (質量+制振で衝撃音を抑える) 構造躯体(梁・床) 空気層+グラスウール(吸音) 防振吊木で絶縁 防振吊天井(下階の天井) 上階の音 → 9層で受け、躯体から絶縁した天井でさらにカット 軽量床衝撃音(LL)だけでなく、低音の重量床衝撃音(LH)にも効かせにいく構成
図:遮音50仕様の床・天井断面イメージ(住友林業プレスリリースより編集部作成)

防火も安心──「木三共」をしっかり押さえた設計

2〜3階建ての賃貸は、いわゆる「木三共(木造3階建て共同住宅)」の領域で、主要構造部を1時間準耐火とすることで成立します。住友林業は、国土交通省に公表されている1時間準耐火構造の大臣認定(外壁 QF060BE-9225、間仕切壁 QF060BP-9072 など)を実際に保有しており、木造マンションづくりの確かな下地があります。告示仕様と自社の大臣認定を使い分けられる点は、設計の自由度という意味でも頼もしいところです。

編集部の視点

FOREST MAISON PORT は、「木三共=準耐火」の範囲を着実に押さえながら、ラーメン構造ならではの自由度を活かせる商品だと受け止めました。なかでも床の遮音は印象的で、9層の床と防振吊天井によって、木造でも静かな住環境をめざせることがうかがえます。遮音・60年保証・ZEH-Mと、賃貸事業を長く続けるうえで心強い要素が揃い、AI・ビッグデータによる事業プラン提案まで含めて「賃貸経営」を支えようという姿勢も伝わってきます。

今後さらに知りたいのは、仕様書で見えてくる細部です。床衝撃音の具体的な等級(とくに重量床衝撃音の数値)、1時間準耐火を告示と大臣認定のどちらで成立させているか、そして1階に店舗を入れたときの大開口スパン――このあたりは、実例が出てくるのを楽しみに待ちたいところです。

そして、こうした商品が登場すること自体が、木造の中大規模化が“事業用”の賃貸住宅へと広がってきたあらわれだと感じます。炭素を長く蓄える木造が、街なかの賃貸マンションとして自然に並ぶ未来は、林業にとっても、まちの景観にとっても明るい話。木造の賃貸住宅がこれから少しずつ広まっていくのが、楽しみです。

出典・参考

※ 本記事はプレスリリース等の公表情報をもとに編集部が要約・再構成したものです。床の断面構成は概念図であり、耐火区分・スパン・遮音等級などの詳細仕様は、住友林業の公式情報・仕様書をご確認ください。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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