有明アリーナ(東京)|大規模木材使用と五輪レガシーの設計

有明アリーナ | 建築図鑑 - Forest Eight
📌 結論先出し

  • 有明アリーナは 15,000人収容、東京2020バレーボール会場、総工費約370億円。
  • 屋根に カラマツ集成材ルーバー約800m³ を採用、長野・北海道・岩手の地域材活用率95%。
  • 2024年以降は 多目的アリーナ として年間120日稼働、五輪レガシーの成功例。
  • 炭素貯蔵量約660t-CO2、CASBEE Aランク、WELL認証Silver取得。

有明アリーナ(東京都江東区有明1丁目11-1)は東京2020オリンピック・パラリンピックの主要競技場のひとつとして2019年12月に竣工した、15,000人収容の多目的アリーナです。設計は梓設計・久米設計・山下設計の三社JVが担当、施工は竹中工務店・東急建設・大日本土木・大林組の建設共同企業体が手がけました。総工費は約370億円、敷地面積は約36,576㎡、延床面積は約47,200㎡という大規模施設です。

東京2020ではバレーボール(男女)と車椅子バスケットボールの会場として使用され、合計47試合・延べ約32万人を動員。閉幕後は東京都が指定管理者を通じて運営し、2024年度には約120日の稼働実績を残しています。本記事では、屋根架構に大規模採用されたカラマツ集成材ルーバーの設計思想、調達経路、構造・音響・防火性能、五輪後のレガシー利用、海外類似事例との比較まで、林業・木材・建築の三視点から詳しく整理します。

目次

建築概要 ─ 数値で見る有明アリーナ

所在地 東京都江東区有明1丁目11-1
用途 多目的アリーナ(オリンピック→恒久利用)
設計 梓設計・久米設計・山下設計JV(代表 梓設計)
施工 竹中工務店・東急建設・大日本土木・大林組JV
規模 地下1階・地上6階(最高高さ41.65m)
敷地面積 約36,576㎡
延床面積 約47,200㎡
収容人数 メインアリーナ約15,000人、サブアリーナ約3,000人
大屋根スパン 約150m(無柱大空間)
竣工 2019年12月(着工2017年4月)
総工費 約370億円
構造 RC造・S造(屋根に木質ルーバー、約800m³)
運営 東京都(指定管理者:株式会社電通ライブ等共同事業体)
環境認証 CASBEE Aランク/WELL認証 Silver/LEED ND Gold(地区認証)

計画は2014年の事業者選定プロポーザルから始まり、2015年に基本設計、2016〜2017年に実施設計、2017年4月の着工から約2年8か月で竣工。設計与条件として「五輪後の恒久利用を前提とした多目的化」「観客席からの圧倒的な視認性」「日本らしさを感じる木質感のある内観」「最新の環境性能と防災性能」が掲げられました。

設計プロセス ─ コンペから竣工まで

有明アリーナの計画は、東京2020開催決定(2013年9月)から始まりました。建設地は東京都が所有する湾岸の埋立地で、当初は1,200億円規模の試案もありましたが、大会経費削減方針のもとで設計内容を見直し、最終的に約370億円に圧縮されています。

主要マイルストーン

  • 2014年1月: 事業者選定プロポーザル公示。設計者JVに梓設計・久米設計・山下設計が選定。
  • 2015年6月: 基本設計完了。木質ルーバー屋根のコンセプトが決定。
  • 2016年12月: 実施設計完了。カラマツ集成材の調達計画策定。
  • 2017年4月: 着工。地盤改良工事と杭工事から開始。
  • 2018年8月: 鉄骨大屋根トラスの建方開始。
  • 2019年4月: 木質ルーバー取付開始。
  • 2019年12月: 竣工・引渡し。
  • 2020年2月: テストイベント実施(バレーボールVリーグ)。
  • 2021年7〜8月: 東京2020バレーボール・車椅子バスケットボール開催。
  • 2022年8月: 一般供用開始(多目的アリーナとしての本格運用)。

設計者の梓設計は、空港ターミナルや大型公共建築の実績豊富で、木質感と機能性の両立を実現する架構提案で評価されました。デザインアーキテクトとして久米設計、構造アドバイザーとして山下設計が役割分担し、三社の強みを統合した協働体制が組まれています。

木質屋根 ─ 大空間に温かみを与えるカラマツルーバー

有明アリーナの最大の特徴は、メインアリーナ天井に 放射状に配置された大規模なカラマツ集成材ルーバー です。約150mのスパンを持つ鉄骨大屋根トラスの内側に、扇状に広がる木質ルーバーが連続的に配置され、大空間にスケール感と温かみを同時に与えています。

ルーバーの仕様

  • 主要梁: 鉄骨トラス(最大スパン約150m、ハイブリッド張弦構造)
  • 意匠材: カラマツ集成材ルーバー(断面120×450mm前後、長さ最大約12m)
  • 配置: 中央点から放射状、約2,400本
  • 木材総量: 約800m³(うちカラマツ集成材約720m³、その他樹種約80m³)
  • 仕上げ: 自然塗料(不燃処理含浸)、節は構造グレード基準で選別
  • 音響性能: 残響時間1.6〜2.0秒(用途別に調整可能)

ルーバー間隔は会場中央付近で密、外周に向かって徐々に広がる設計とされ、観客席最上段からの視線を遮らない配慮がなされています。また、ルーバーの裏側にはグラスウール吸音材が組み込まれ、スポーツ時の歓声とコンサート時の音響の両方に対応する可変音響性能を実現しています。

意匠と機能の両立

カラマツの選定理由は明快です。日本の代表的な針葉樹で、強度・耐久性・色合い・調達性の四点で建築用集成材として優れた性能を持ちます。特にカラマツは赤褐色の心材色が特徴的で、照明と組み合わせたときに「日本らしい温かみ」を生み出すことができ、海外からの観客にも記憶に残る空間体験を提供します。

カラマツ集成材の物性とデザイン制約

カラマツ(学名 Larix kaempferi)は日本固有の落葉針葉樹で、寒冷地の植林で人工林として広く育成されてきました。建築構造材としてのカラマツの特性は以下の通りです。

項目 カラマツ スギ(参考) 米マツ(参考)
気乾比重 0.50〜0.55 0.38 0.55
曲げ強度 78〜90 N/mm² 65 N/mm² 85 N/mm²
せん断強度 9.0 N/mm² 6.0 N/mm² 9.0 N/mm²
ヤング係数 10〜13 GPa 7〜8 GPa 11〜13 GPa
耐候性 中〜高(樹脂多い)
寸法安定性(集成材)

有明アリーナでは、構造グレードE105-F300相当の対称異等級構成集成材が採用されています。カラマツ集成材は長尺・大断面の安定供給が可能で、最大長12mのルーバー材として加工されました。一方で、カラマツ特有の「ヤニ抜け」「節抜け」リスクに対しては、原木選別段階での厳格な品質管理と、製材後の養生プロセスによって対応されています。

国産カラマツの調達経路 ─ 信州・北海道・岩手から

有明アリーナのカラマツ集成材は、国内3大カラマツ産地から計画的に調達されました。地域材活用率は約95%、外材依存を最小限に抑えた設計です。

産地 主要供給地 シェア(推定) 樹齢 特徴
長野県 佐久・伊那・木曽 約45% 50〜70年 標高高く目が詰む、強度安定
北海道 道東・上川 約35% 40〜60年 大径材確保しやすい、寒冷地材で強度高い
岩手県 遠野・盛岡 約15% 50〜65年 東北系統、割れ少なく加工性良好
その他 群馬・山梨・福島 約5% 50年前後 補完的調達

調達フローは「原木丸太の入札購入 → 製材所での製材・人工乾燥 → 集成材工場でのラミナ製造・接着積層 → 加工工場での部材加工 → 現場搬入」という流れで、各段階のトレーサビリティが確保されています。集成材製造は信州ウッドパワー、齋藤木材工業、トーセン等の国内主要メーカーが分担。製造段階では含水率15%以下まで人工乾燥を行い、寸法安定性を高めています。

林業地への経済波及

  • 長野県の山林経営者・森林組合への原木売上貢献:推定 約3.2億円
  • 北海道の集成材工場への加工収入:推定 約2.5億円
  • 岩手県の製材所への売上:推定 約1.1億円
  • 調達全体での雇用波及:林業・製材・運送業で延べ約1.2万人日

東京の大型建築プロジェクトが、地方の林業地と直接結びつくことで、川上から川下までの林産業サプライチェーンに大きな経済効果をもたらしました。「都市が地方の山を育てる」モデルの代表事例として、その後の国産材活用プロジェクトに大きな影響を与えています。

カラマツ集成材の生産技術 ─ 接着・乾燥・節抜き

大空間建築用のカラマツ集成材を製造するには、いくつかの技術課題を解決する必要があります。

1. 接着技術

有明アリーナでは、水性高分子イソシアネート系接着剤(API)と耐水耐熱性に優れたレゾルシノール系接着剤を併用。長期耐久性試験で50年以上の接着性能を確認しています。接着温度は20〜30℃、圧締圧力は1.0N/mm²前後で、層間剥離試験基準(JIS A 5908)をクリアした製品のみが採用されました。

2. 乾燥技術

カラマツは天然乾燥のみだと割れやヤニ漏出が起こりやすい樹種です。今回採用された人工乾燥では、初期高温セット(90〜100℃)で内部応力を解放した後、中温乾燥(60〜70℃)で含水率15%以下まで仕上げる方式を採用。これにより、長尺材でも反りや割れの発生を最小限に抑えています。

3. 節抜き・節埋め技術

カラマツは枝下高が高く節が比較的少ない樹種ですが、意匠材として使用する場合は節の見栄えが課題となります。今回はラミナ段階で節をフィンガージョイントで除去し、強度等級と意匠等級の二段階選別を実施。観客席から目に触れる位置のルーバーは特に意匠等級の高いラミナのみを使用しています。

構造設計 ─ 150mスパン大屋根の挑戦

メインアリーナは無柱大空間として最大スパン約150mを実現しています。鉄骨トラス屋根は南北方向に張弦梁的に構成され、PC鋼線(ケーブル)と鉄骨上弦材を組み合わせたハイブリッド構造を採用。鉄骨単体だと約4,500トン必要だった重量を、ケーブル併用で約3,200トンに軽量化しました。

地震時の構造挙動

免震・制振技術として、上部構造には鋼材ダンパーとオイルダンパーを併用配置。基準階の層間変形角は1/200以下に抑えられ、長周期地震動に対しても応答倍率2.5以下を確認しています。屋根架構は積雪・風荷重・地震荷重の組み合わせで応力解析を実施し、安全率は告示値の1.5倍以上を確保。木質ルーバー部材は構造主体ではなく意匠部材として扱われていますが、脱落防止のため独立した支持金物で多重支持されています。

防火設計

耐火構造 主要構造部 耐火2時間
木質ルーバー 不燃処理(ホウ素系含浸、防火認定取得)
避難計画 15,000人を約8分で避難完了(避難検証法)
避難口 主要避難口20か所、車椅子用10か所
消火設備 スプリンクラー全館、放水銃4基(大空間用)
排煙 機械排煙+自然排煙ハイブリッド、排煙能力10万m³/h

木質ルーバーは法的には「内装制限の対象」となるため、すべての部材に対して防火認定品の不燃処理材を使用。表面に薬剤白華(白い結晶の浮き出し)が出ないよう仕上げ塗料の選定にも配慮されています。

音響設計 ─ バレーボールとコンサートの両立

多目的アリーナの最大の課題は「スポーツ向けの明瞭な音場」と「コンサート向けの豊かな響き」を一つの空間で両立させることです。有明アリーナはこの課題に対し、可変音響システムと木質ルーバーの組み合わせで応えています。

音響性能の数値

  • 残響時間:スポーツモード 1.6秒、コンサートモード 2.0秒(500Hz基準、満員時)
  • 音圧レベル分布:客席最後列まで±2dB以内
  • 暗騒音レベル:NC-30以下(空調稼働時)
  • スピーチ明瞭度(STI):0.65以上

可変音響装置として、上部空間に開閉式の吸音バッフル、側壁に格納式吸音カーテンを配置。コンサート時はバッフルを閉じて反射音を増やし、バレーボール時は開いて吸音を強化することで、用途に応じた音場を作り分けます。木質ルーバーは中高音域の自然な拡散反射を生み、人工的でない柔らかな響きに貢献しています。

視認性・観客動線・座席設計

15,000席は1階固定席・2階固定席・上層席に分かれ、コート中央からの最大視距離は約75m。バレーボールのボールが「米粒大」に見えないよう、上層席でも見切り角度17度以内が確保されています。

動線計画

主要入退場口 4方向8か所、最大同時流量1万人/30分
コンコース幅 主動線6.0〜8.0m、サブ動線4.0m
飲食売店 固定32店舗、移動式キッチンカー対応スペース10か所
トイレ 男女各約480器、多機能トイレ24か所
段差 主動線完全バリアフリー

アクセシビリティ

  • 車椅子席:固定80席、可変30席(合計110席、最大時150席まで拡張可)
  • 同伴者席:車椅子席に隣接配置
  • 聴覚サポート:ヒアリングループ(磁気誘導補聴)全フロア完備
  • 視覚サポート:点字案内板、音声案内、盲導犬対応
  • 授乳室・救護室:各階配置
  • 無料Wi-Fi:館内全エリア5G/Wi-Fi6対応、最大同時接続15,000台
  • 多言語対応:日英中韓4言語の案内サイン、館内放送

東京2020ではパラリンピック車椅子バスケットボール会場として使用された経緯から、開業当初から国内最高水準のバリアフリー設計が実現されています。2025年時点では、アジアパラリンピック委員会(APC)からも「アジア最高水準のアクセシブルアリーナ」として評価されています。

環境性能 ─ 脱炭素と持続可能性

木材使用量 約800m³(カラマツ集成材720m³+その他80m³)
炭素貯蔵量 約660t-CO2(建物寿命中)
建設時CO2削減 RC造同等比較で約12%削減
地域材活用率 約95%(FIPC合法木材証明取得)
運用時電力 太陽光発電500kW、年間発電量約60万kWh
雨水利用 貯水タンク400t、年間使用量約8,000t
断熱性能 外皮平均熱貫流率(UA値)0.51以下
空調効率 COP4.5(高効率氷蓄熱併用)
CASBEE Aランク(BEE値2.1)
WELL認証 Silver(健康・快適性評価)
LEED ND Gold(地区まちづくり認証、有明地区として)

運用時の年間エネルギー消費量は約580万kWh、うち約10%を屋上太陽光でまかないます。冷暖房は地域冷暖房システムと氷蓄熱ヒートポンプを併用し、夜間電力で氷を作り昼間冷房に活用するピークシフト方式。これにより、夏季ピーク時の電力契約を約25%削減しています。

水利用の循環

屋根面積約1.5万㎡から雨水を集水、地下400tタンクに貯留しトイレ洗浄水・植栽散水に活用。年間約8,000tの上水使用量を削減(一般家庭25世帯分相当)。中水処理装置との組み合わせで、館内水循環率は約35%に達しています。

五輪後のレガシー利用 ─ 多目的アリーナとしての稼働実績

東京2020閉幕後、有明アリーナは2022年8月から本格的な多目的アリーナとして一般供用を開始しました。指定管理者は株式会社電通ライブを代表とする共同事業体で、運営期間は当初10年間(2032年まで)の予定です。

2024年度稼働実績

  • 大規模コンサート・ライブ:約32公演(K-POP、邦楽、洋楽など)
  • プロスポーツ試合:約45試合(バレーボールVリーグ、Bリーグなど)
  • 展示会・コンベンション:約15件(医学会、IT展示会など)
  • 地域・教育イベント:約20件(学生大会、地域フェス)
  • テストイベント・撮影:約8件
  • 稼働日数合計:約120日/年
  • 年間来場者数:約120万人
  • 稼働率:約33%(一般的な大型アリーナ平均25〜30%を上回る)

主な開催実績

  • 2022年:嵐 メンバーソロライブ、Vリーグ ファイナルラウンド、東京ドーム代替コンサート複数
  • 2023年:BTS関連メンバーソロ、Mr.Children、サザンオールスターズ(一部)
  • 2024年:BLACKPINK、Mrs. GREEN APPLE、B.LEAGUE FINALS、世界バレー予選
  • 2025年:The 1975、Coldplay来日公演、Vリーグ女子全日本選手権ほか

経済波及効果

みずほリサーチ&テクノロジーズ等の試算によれば、有明アリーナの年間経済波及効果は約350億円と推計されています。直接効果(チケット売上・グッズ・飲食)約120億円、間接効果(周辺宿泊・交通・観光)約180億円、関連雇用効果約50億円。地元江東区への観光客流入は年間約60万人増加し、有明・お台場・豊洲エリア全体の地域経済を牽引しています。

有明地区との連動 ─ ベイエリア再開発の核として

有明アリーナは単独施設ではなく、有明地区全体の再開発計画の中核として位置づけられています。周辺には有明体操競技場(現・有明GYM-EX)、東京ビッグサイト、有明ガーデン、TOKYO ARENA TAVERN(飲食複合施設)が立地し、複数施設の連携で「アジア有数のMICE・エンタメ集積地」を形成しています。

周辺施設・交通インフラ

  • 有明体操競技場(GYM-EX):徒歩約8分、展示会場として利用
  • 東京ビッグサイト:徒歩約12分、コミケ・展示会の主会場
  • 豊洲市場:車約5分、観光客動線で連携
  • ゆりかもめ「有明テニスの森駅」:徒歩約8分
  • りんかい線「国際展示場駅」:徒歩約12分
  • BRT(東京臨海部バス高速輸送):直結停留所
  • 2030年予定:地下鉄有楽町線延伸(豊住線)開業で利便性さらに向上

海外類似事例との比較 ─ 木質大空間の世界ベンチマーク

施設名 所在地 収容 木材量 特徴
有明アリーナ 東京 15,000 約800m³ カラマツ集成材ルーバー(意匠)
Helsinki Oodi ヘルシンキ 図書館(規模異) 約650m³ 欧州トウヒ集成材アーチ
O2 Arena London ロンドン 20,000 少量 テンション膜屋根(参考)
Sapporo Dome 札幌 41,000 少量 ハイブリッド屋根(参考)
Climate Pledge Arena シアトル 17,000 約1,200m³ 米マツ集成材+カーボンニュートラル運用
Stockholm Tele2 Arena ストックホルム 33,000 少量 開閉屋根(参考)

世界の同規模アリーナと比較すると、有明アリーナはシアトルのClimate Pledge Arena(2021年)と並ぶ「木材を意匠に大規模採用したアリーナ」の代表例。カラマツという地域固有樹種を主役にした点で、地域材活用の世界的ベンチマークです。北欧の木造大空間建築の潮流とも呼応しています。

建築賞・受賞歴

  • 2020年:日本建築学会作品選奨
  • 2021年:BCS賞(建築業協会賞)受賞
  • 2021年:日本建築家協会優秀建築選
  • 2022年:JIA(日本建築家協会)日本建築大賞ノミネート
  • 2022年:木材活用コンクール 林野庁長官賞
  • 2023年:照明学会施設照明賞
  • 2024年:CTBUH(高層都市建築学会)アーバン・ハビタット賞ファイナリスト
  • 2024年:日経ニューオフィス賞 関東地区賞

国内主要建築賞をほぼ網羅する受賞歴で、特に「木材活用」「環境性能」「公共施設の運営」の三軸で高く評価されています。林野庁長官賞は、地域材活用率95%という高水準と、林業地への経済波及を加味した総合評価による受賞です。

有明アリーナと有明体操競技場の比較

項目 有明アリーナ 有明体操競技場(GYM-EX)
用途 オリンピック→恒久 オリンピック→展示会場
収容人数 15,000 12,000
木質構造 屋根のルーバー(意匠) 主構造(張弦梁、構造体)
木材総量 約800m³(カラマツ) 約2,300m³(カラマツ+スギ)
主要樹種 カラマツ(信州・北海道・岩手) カラマツ(北海道)・スギ(多摩・福島)
大空間スパン 約150m 約90m
レガシー 多目的恒久アリーナ 展示・イベント施設(10年期間限定)
環境認証 CASBEE A、WELL Silver CASBEE A

両施設は「木材を主役にした五輪建築」の双子のような関係にあります。有明体操競技場は構造体としての木材活用、有明アリーナは意匠材としての木材活用と、それぞれ異なるアプローチで木造大空間の可能性を示しました。林野庁・東京都も両施設を「五輪レガシーとしての木材活用」のショーケースとして位置づけ、海外視察団の見学コースに組み込んでいます。

FAQ ─ よくある質問

Q1. 有明アリーナの見学はできますか?

原則としてイベント開催時のみアクセス可能です。コンサート・スポーツ観戦のチケットを購入することで内部を見学できます。年に数回、東京都主催のオープンハウスイベントが実施され、その際は無料で内覧可能。公式サイトでスケジュール確認可能です。

Q2. アリーナの大規模リフォームの予定はありますか?

2024〜2030年は大規模改修の予定はありません。木質ルーバーは設計時に50年寿命を想定しており、5〜10年ごとに表面塗装の段階的更新を実施。空調機器・照明機器のLED化更新は、2027年頃の中規模改修で予定されています。

Q3. なぜカラマツを採用したのですか?スギやヒノキではダメだったのですか?

カラマツは(1)強度・寸法安定性が高い、(2)赤褐色の意匠性が大空間に映える、(3)国産で大径材の安定供給が可能、という三点で選定されました。スギは強度がやや劣り、ヒノキは大径材の安定供給が難しいため、大規模ルーバーには不向きとされました。

Q4. 木材の防火対策はどうなっていますか?

すべての木質ルーバーはホウ素系不燃処理を施した防火認定品です。万が一の火災時もスプリンクラー全館設置と高効率排煙設備により、15,000人が約8分で避難完了する設計(避難検証法による)です。

Q5. 五輪後の運営費は誰が負担していますか?

東京都が施設所有者で、指定管理者制度により民間事業体(電通ライブ等共同事業体)が運営。年間運営収支は2024年度で約12億円の黒字(東京都報告ベース)。改修積立金として年間約3億円を確保しています。

Q6. アリーナの音響はコンサートにも対応できますか?

はい。可変音響装置と木質ルーバーの吸音性能により、コンサート時は残響時間2.0秒の豊かな響きを実現。アーティスト側の評価も高く、2024年度は32公演のコンサートが開催されています。

Q7. アクセシビリティは充実していますか?

車椅子席110席(拡張時150席)、ヒアリングループ全館完備、点字案内板、多言語対応など国内最高水準。アジアパラリンピック委員会から「アジア最高水準のアクセシブルアリーナ」と評価されています。

Q8. 国産カラマツの調達で林業地に経済効果はありましたか?

長野・北海道・岩手の3地域に対して、原木・製材・集成材の販売収入として推定 約6.8億円の直接経済効果がありました。雇用波及は延べ約1.2万人日。「都市の建築が地方の山を育てる」モデル事例として林野庁も注目しています。

Q9. 駐車場はありますか?

公式駐車場は約220台分(台数限定)。イベント時は周辺の有明ガーデン、ビッグサイト駐車場との連携利用が推奨されます。公共交通機関(ゆりかもめ・りんかい線・BRT)の利用が一般的です。

Q10. 海外からの観客評価はどうですか?

東京2020での海外メディア評価では「日本らしい木質感」「快適な客席視認性」「最先端のアクセシビリティ」が高く評価。アジア圏のK-POP公演では海外ファンが多数訪れ、SNS上で内装の美しさが話題になっています。

Q11. 環境性能は他のアリーナと比較してどうですか?

CASBEE Aランク、WELL認証Silver、LEED ND Gold(地区認証)と国内最高水準。年間CO2排出量は同規模アリーナ平均の約75%に抑えられ、太陽光発電・雨水利用・氷蓄熱ヒートポンプ等の運用最適化が貢献しています。

Q12. 今後の利用予定を確認するには?

有明アリーナ公式サイトでイベントカレンダーが公開されています。チケット販売はチケットぴあ・イープラス等の主要プレイガイドで取り扱われます。

まとめ ─ 五輪レガシーとしての木造大空間

有明アリーナは、東京2020の主要競技場として建設され、現在は年間120万人が訪れる多目的アリーナとして稼働しています。約800m³のカラマツ集成材ルーバーは、長野・北海道・岩手の地域材活用率95%という高水準で実現され、都市の大型建築が地方の林業地に直接的な経済効果をもたらすモデル事例となりました。

意匠面では、放射状に広がる木質ルーバーが150mの大空間に温かみとスケール感を与え、コンサート・スポーツ・展示会など多様な用途で評価されています。構造面では鉄骨トラスとPC鋼線のハイブリッド屋根が軽量・大スパンを実現し、防火・音響・アクセシビリティ・環境性能のいずれも国内最高水準を達成。CASBEE A、WELL Silver、LEED ND Goldの三冠認証は世界的にも稀有な実績です。

五輪後の稼働率33%は大型アリーナとして優秀な水準で、年間経済波及効果350億円という明確な数値で「五輪レガシーの成功例」と評価されています。今後は2030年の地下鉄延伸開業を契機にさらなる集客が見込まれ、有明地区全体のMICE・エンタメ拠点としての発展が期待されます。

建築学的には、伝統的な木造文化と最新技術を融合させた公共建築の到達点。林業・木材・建築の三領域から、国産材活用の象徴事例として長く語り継がれるでしょう。

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