結論先出し
- Treet Bergen(ノルウェー、2015年完成)は当時世界最高層級の木造アパート。14階建て、高さ49 m、CLTモジュール+集成材構造。
- 構造:CLTモジュールユニット(7階建てまで)+外周集成材フレーム+鉄骨補強。Mjøstårnet(85 m、2019年)以前の世界記録保持者。
- 意義:木造高層化の先駆事例。北欧森林資源を活かした木造商業展開のモデルで、その後の世界中の中・高層木造建築に影響。
- 規模:62戸、住戸面積34〜66 m²、CLT使用量約1,200 m³、Glulam約800 m³。
- 耐火:90分耐火(REI 90)相当をスプリンクラー併用で達成、Passivhaus基準準拠で年間暖房需要15 kWh/m²未満。
Treet Bergenは、2015年にノルウェー第二の都市ベルゲンに完成した、当時世界最高層級の木造アパートです。14階建て・高さ49 mで、CLTモジュール構造と集成材フレームを組み合わせたハイブリッド構造を採用しました。後のMjøstårnet(85 m、2019年)以前の世界記録を持ち、世界の木造高層化の先駆として歴史的な意義を持ちます。本稿ではこの建築の設計・構造・意義を、設計者Artec、構造SwecoによるBOB Eiendomsutvikling向けプロジェクト資料、ベルゲン市建築許可記録、ノルウェー国土省(KMD)木造建築報告書をもとに詳述します。
建築計画と設計者
Treet Bergen(「ベルゲンの木」の意)は、ノルウェーの大都市ベルゲン市中心部、Damsgårdsundet地区の旧造船所跡地に建設されました。敷地はBergen湾に面する再開発エリアの一角で、建築面積約425 m²、延床面積約5,830 m²、対岸からブリゲン地区(UNESCO世界遺産の木造倉庫群)を望む象徴的なロケーションです。ノルウェーは長年、木造建築の先進国であり、地域材(スプルース・ヨーロッパアカマツ等)の豊富な資源を活かした木造化の伝統があります。Treet Bergenはこの伝統と現代的なエンジニアリングを結合した記念碑的作品です。
発注者は地域開発会社BOB(Bergen og Omegn Boligbyggelag、1942年設立、ベルゲン地域最大の住宅協同組合で組合員約7万人)、設計はArtec Prosjekt Team AS(オスロ拠点、住宅・公共建築を主軸とする中堅事務所)、構造設計はSweco Norge AS(北欧最大級のエンジニアリング会社、従業員約17,000人)、CLTモジュール製造はオーストリアのKLH Massivholzおよびスウェーデンのモエルベン(Moelven Töreboda)、施工はBOB BBL/Veidekkeチーム。総事業費は約2億3,000万ノルウェークローネ(当時レートで約32億円)で、従来RC造比でおおむね10〜15%増のプレミアムでした。
計画段階で設定された目標:
1. 世界最高層木造:技術的挑戦としての象徴性。前任記録保持者であったStadthaus(ロンドン、9階)を5階層上回る目標。
2. 商業的実用性:賃貸アパートとして経済的に成立。家賃は1ベッドルームで月13,000〜16,000 NOK程度に設定。
3. 地域材活用:ノルウェー産木材の活用とサプライチェーンの近距離化。
4. 製造プレファブ:工場でCLTモジュール製造、現地で組立。短工期。
5. 環境性能:省エネ・カーボンネガティブ。Passivhaus(NS 3700)認証取得を視野に設計。
結果として、これらすべての目標が一定水準で達成され、世界の木造建築の歴史に残る作品となりました。Artec代表のRune Abrahamsen氏(後にMoelven Limtre AS技術ディレクター)は「Treetは木造高層化の証明書だ」とコメントしています。
構造システム
Treet Bergenの構造は、当時としては革新的なハイブリッドシステムです。基本コンセプトは「クルチタワー方式」と呼ばれる、外周集成材フレーム(Glulam exoskeleton)の中にCLTモジュール住戸ユニットを4〜5階単位で積層する手法で、Sweco構造チームのRune Abrahamsen氏とKjell Arne Malo氏(NTNU教授)が中心となり開発されました。
| 階 | 構造方式 | 特徴 |
|---|---|---|
| 地階 | RC基礎 | 土壌・震動分離 |
| 1-4階 | CLTモジュール | 工場プレファブ |
| 5階(剛性床) | 集成材+鋼板 | 中間補強層 |
| 6-9階 | CLTモジュール | 上層モジュール |
| 10階(剛性床) | 集成材+鋼板 | 上部補強層 |
| 11-14階 | CLTモジュール | 最上層 |
| 全階 | 外周集成材フレーム | 縦荷重・横揺れ対応 |
主要部材寸法:外周Glulam柱は最大495×650 mm、対角ブレースは最大405×650 mm、5階・10階の「パワーストーリー」はGlulam+プレストレス鉄筋+150 mm厚コンクリートスラブで構成され、上層モジュール群の自重を集約して外フレームに伝達します。CLT壁厚は内壁80〜120 mm、戸境・耐火壁160〜200 mm、床CLTパネルは200〜220 mm(5層〜7層構成)。CLT総使用量はおよそ1,200 m³、Glulamはおよそ800 m³で、これらの木材だけで約1,400トンのCO2を貯留している計算になります(炭素換算でおよそ自家用車300台が10年走行する分の排出量に相当)。
振動制御では、上層階で風荷重時の加速度が居住性能基準(ISO 10137の住宅クラス)を上回るリスクがあったため、屋上に約14トンのバラスト(コンクリート)を載せて固有周期を約2.0 Hz付近に調整。風洞実験はSP Technical Research Institute(スウェーデン)が担当し、ベルゲンの強風(年最大風速30 m/s級)に対する応答が検証されました。
プレファブ・モジュール工法
Treet Bergenの大きな特徴は、CLTモジュールユニットの工場プレファブと現地組立です。1モジュールはおおむね幅3.7 m×奥行8.4 m×高さ3.0 m、重量18〜22トンで、一住戸を1〜2モジュールで構成します。
1. 工場プレファブ:CLTパネルでアパート1戸分を組立、内装・配管・電気もある程度施工した状態で完成モジュールを工場から搬出。完成度は約85%(バスルーム陶器・キッチン家電含む)。
2. 現地搬入・吊上げ:ベルゲン中心部の狭隘地で、最大吊上能力40トンのリーブヘル(Liebherr)大型クレーンで完成モジュールを吊上げ・所定階に設置。1日あたり3〜4モジュールの設置ペース。
3. 現地接続:モジュール間の接合はSPAX製スクリューおよびSimpson Strong-Tieアングルプレート、外周集成材フレームとの接続にはBMF鋼板+ボルト。配管・配線の連結はモジュール間ジョイント部のサービスシャフトに集約。
4. 工期短縮:従来工法の半分以下で建設完了。基礎着工2014年4月、構造体竣工2015年6月、引渡し2015年12月の約20ヶ月。
5. 品質安定:工場環境での施工により、品質ばらつきが少ない。寸法精度±2 mm以内。
6. 騒音・振動軽減:現地施工が短く、周辺住民への影響が小さい。クレーン作業時間も近隣協定で09:00〜16:00に限定。
このモジュール工法は、その後の世界の中・高層木造建築(Mjøstårnet、Sara Kulturhus等)にも影響を与えました。
工事年表(2014-2015年)
主要マイルストーン。
| 時期 | 工程 | 備考 |
|---|---|---|
| 2010年 | BOB社内検討開始 | 木造高層の事業可能性調査 |
| 2012年春 | Artec+Sweco設計契約 | 基本設計開始 |
| 2013年 | 建築許可申請・取得 | ベルゲン市建築局 |
| 2014年4月 | RC基礎・地下躯体着工 | Damsgårdsundet現地 |
| 2014年9月 | 外周Glulamフレーム建方開始 | Moelvenプレカット部材 |
| 2014年11月 | 下層CLTモジュール設置 | 1〜4階分 |
| 2015年2月 | 5階パワーストーリー打設 | 剛性床完成 |
| 2015年4月 | 中層モジュール完了 | 6〜9階 |
| 2015年6月 | 構造体最上階に到達 | 14階・49 m |
| 2015年9月 | 外装・内装仕上げ完了 | 金属パネル+ガラス |
| 2015年12月 | 引渡し・入居開始 | 62戸 |
防火性能の詳細
木造高層で最大の関門となるのが防火性能です。Treet Bergenはノルウェー建築技術規則TEK10(当時)の建築クラスBKL3、火災クラスRBK3を満足し、主要構造部に90分耐火(REI 90)相当を確保しています。
1. 燃えしろ設計:CLT・Glulam主要部材は火災時の炭化速度を0.65〜0.80 mm/分と仮定し、90分間の表面炭化を許容したうえで断面の構造性能を維持できるよう、外周柱で約60 mm、CLT壁で約40 mmの燃えしろを上乗せしています。
2. 二重スプリンクラー:住戸内および共用部に湿式スプリンクラーを設置、上水・井水(再生水)の二系統供給で信頼性を担保。総ヘッド数は約750基。
3. 区画化:戸境壁はEI 60、共用廊下とのEI 30扉、各階防火区画は500 m²以下に抑制。
4. 外装による被覆:木造躯体を金属サンドイッチパネル(不燃A2クラス)とガラスカーテンウォールで覆い、外部火災進展を抑制。
5. 火災試験:SP Fire Research(現RISE Fire Research、トロンハイム)にて1/3スケールおよび実大部材の燃焼試験を実施し、設計クライテリアを検証。
6. 避難計画:2方向避難+階段室加圧による煙制御。最上階から地上までの避難時間は健常者で約4分と設計。
環境性能とPassivhaus
Treet BergenはノルウェーのPassivhaus規格NS 3700に基づくロー・エネルギー基準を満たし、年間正味エネルギー需要は床面積1 m²あたり約76 kWh(暖房・給湯・換気・照明・家電合計)と試算されています。これは同規模のノルウェー標準集合住宅と比べて約45%の削減です。
主な対策は次の通りです。
1. 高気密外皮:気密試験n50=0.6 回/h以下を達成。CLT壁+外断熱250〜300 mm(鉱物繊維およびセルロースファイバー混合)。
2. 高性能サッシ:トリプルガラス(U値0.8 W/m²K以下)、フレームはアルミクラッド木製。
3. バランス型熱回収換気:効率85%以上の熱交換器を住戸ごとに設置。
4. 区域熱供給接続:ベルゲン市の地域熱供給網(BKK Varme、廃棄物発電熱主体)から温水供給を受け、暖房・給湯のCO2排出を実質ゼロ近くに。
5. 太陽光発電補助:屋上に約45 kWpのPVを後付、共用部電力をまかなう。
6. 木材の炭素貯留:CLT+Glulam合計2,000 m³前後の木材で約1,400 tCO2eを長期貯留、ライフサイクル評価では同規模RCマンション比で約50%のGWP削減と報告されています(NTNUグリーンチェアラボ試算、2017年)。
同時期の他mass timber事例
Treet Bergen完成前後に世界で展開した主要mass timberプロジェクトとの比較。
| プロジェクト | 所在地 | 竣工 | 規模 | 主要構造 |
|---|---|---|---|---|
| Stadthaus(Murray Grove) | ロンドン、英国 | 2009 | 9階・29.7 m | CLTパネル |
| Forté Living | メルボルン、豪 | 2012 | 10階・32.2 m | CLTパネル |
| Treet Bergen | ベルゲン、ノルウェー | 2015 | 14階・49 m | CLTモジュール+Glulam |
| Brock Commons Tallwood House | バンクーバー、加 | 2017 | 18階・53 m | CLT床+Glulam柱+RCコア |
| HoHo Wien | ウィーン、墺 | 2019 | 24階・84 m | RCコア+木造ハイブリッド |
| Mjøstårnet | ブルムンダル、ノルウェー | 2019 | 18階・85.4 m | Glulamトラス+CLT |
| Ascent MKE | ミルウォーキー、米 | 2022 | 25階・86.6 m | CLT+Glulam+RCポディウム |
Treet Bergenはこれらの中で「世界初の14階級木造アパート」かつ「外周エクソスケルトン+CLTモジュール」というユニークなアプローチを採用した点で、後続事例の構造的バリエーション(フレーム+コア型、ハイブリッド型)に大きな影響を与えました。
居住者の体験と運用フィードバック
BOBおよびノルウェー国土省(KMD)住宅局が2017年と2020年に実施した居住者アンケート(回答率73%)から得られた主な所見。
1. 室内空気と温熱感:木材内装による調湿効果で「冬でも過乾燥を感じない」が78%、「夏でも涼しく安定」が64%。
2. 香り・心理快適性:入居初期はスプルース由来のテルペン香が強く、「最初の半年は森の中にいるよう」とのコメント多数。3年以降は香りが穏やかに変化。
3. 振動感受性:強風時に最上階で「わずかな揺れを感じる」が18%、「気にならない」が77%。屋上バラスト追加後の苦情はゼロ。
4. 防音:戸境衝撃音はL’n,w=53 dBで国基準を満たすが、「上階の足音が聞こえる」とのフィードバックが入居初期に12%、追加吸音マット施工で改善。
5. メンテナンス対応:木製外装の塗装メンテナンス、屋上機器のアクセス、CLT継手部の湿気センサーチェックが年1回ルーチン化。
こうした運用データはその後のMjøstårnetやSara Kulturhusの設計にもフィードバックされています。
受賞歴と学術評価
Treet Bergenはmass timber先駆事例として国内外で多くの評価を獲得しました。
1. Statens Byggeskikkpris(ノルウェー国家建築賞)2016年選定候補:環境配慮と地域貢献が評価。
2. Treprisen(ノルウェー木材賞)2015年:木材産業界からの最高栄誉。
3. Bergen Architecture Prize 2016年:地元ベルゲン市の年間建築賞。
4. CTBUH(高層ビル都市居住評議会)「Innovation Award」2016年最終候補:高層建築界での認知。
5. 学術引用:Google Scholarでの論文引用は500件超(2024年時点)。NTNU・KU Leuven・UBC等が事例研究教材として採用。
課題:メンテナンスと湿気対策
運用10年弱で見えてきた課題と対応も率直に共有されています。
1. 外装塗装の周期:屋外露出のGlulam部材には防腐塗装(クレオソート系から水性アクリルウレタンに変更)を約10年周期で再塗装。塩害が強いベルゲン湾岸では7〜8年で再塗装が必要との報告も。
2. 接合金物の腐食:BMF鋼板や大型ボルトの腐食を防ぐためHDG(溶融亜鉛めっき)またはステンレスSUS316を採用。点検は5年に一度、サンプリング非破壊検査で実施。
3. 湿気センサーネットワーク:CLT継手部・基礎部・外装裏面に湿度センサー約120個を分散配置。閾値18% MC(含水率)超過で管理者にアラート。
4. 入居初期の含水率変動:竣工直後はCLT含水率が10〜14%で、暖房開始後3か月で平準化。床鳴り苦情はこの時期に集中。
5. 結露リスク:ベルゲンは年間降水量約2,250 mm(オスロの2倍)、外断熱の防湿層と通気層設計が継続的にチューニングされ、2018年に一部モジュール接合部の防湿テープ更新工事が実施されました。
ベルゲンの林業文化と都市計画
Treet Bergenが立地する西ノルウェーは、フィヨルド地形と長雨気候のなかで木造文化を育んできた地域です。ベルゲン旧市街のブリゲン地区(1979年UNESCO世界遺産登録)は、ハンザ同盟期から続く木造倉庫群が今も商業用途で稼働し、年間約180万人の観光客を集めています。
ノルウェー国土の約38%(約12.4万km²)が森林で、ヴェストランド県の森林面積は約9,300 km²。年間素材生産量は全国で約1,200万 m³に上り、その60%以上がスプルース(Picea abies)です。ノルウェー森林局Skogkurs等の統計によれば、Damsgårdsundet地区の再開発計画では、Treet完成後10年で同地区に4棟の中・高層木造建築(うち1棟は12階)が追加で建設され、ベルゲン市は2030年までに新築公共建築の75%を木造化する目標を掲げています。
都市計画面では、Treet周辺は徒歩15分以内に旧市街・大学・主要公共交通(バイバネン軽軌)にアクセスでき、自家用車保有率の低い住戸タイプとして設計されています。1階および2階には共用ジムとコワーキングスペースが配置され、地域コミュニティ機能を兼ねた複合用途化が図られました。
ノルウェーの木造高層動向
Treet Bergen以降、ノルウェーは世界の木造高層建築のフロントランナーとして加速しました。
1. Mjøstårnet(2019、ブルムンダル):85.4 m・18階。Treetの設計者Rune Abrahamsen率いるMoelvenチームが直接発展させた次世代作品で、CTBUH認定の世界最高層木造建築(2019〜2022)。
2. Finansparken Bjergsted(2020、スタヴァンゲル):金融機関本社、Glulam+CLT、延床23,000 m²。北欧最大級の木造商業ビル。
3. Karlatornet周辺木造プロジェクト:オスロ・ベルゲン・トロンハイム各都市で2020年代に複数の10階超木造プロジェクトが進行。
4. 政策的後押し:ノルウェー政府は2019年に「Trebyggeri」戦略を発表、公共建築の木造化補助、CLT工場新設へのEU EEA基金補助、技術者育成プログラム(NTNU、HVL)を強化。
5. 輸出産業化:MoelvenやSplitkonなどのCLT・Glulam製造企業は、英国・ドイツ・日本にも輸出を拡大。日本ではCLTパネルの一部がノルウェー製。
木材調達とサプライチェーン
Treet Bergenの木材は、ノルウェーおよびスウェーデン・オーストリアの認証林(PEFCおよびFSC認証)から調達されました。供給網の概要は次の通りです。
1. 立木調達:CLT用ラミナ材は、スウェーデン中部Värmland県・Dalarna県、オーストリアSteiermark州の認証林から伐採。樹齢60〜100年、樹高25〜30 mのスプルース材が主体。1棟分の木材として推定12,000〜14,000本の立木が使用されました。
2. 製材・乾燥:含水率12±2%まで人工乾燥(kiln dry)し、寸法精度・品質等級(C24以上)を確保。
3. CLTパネル製造:Stora Enso Wood Products(オーストリアYbbs工場)およびMartinsons(スウェーデンBygdsiljum工場)でCLTパネルを5〜7層構成で製造。
4. Glulam加工:ノルウェーMoelven Töreboda、Splitkon(Åmot)で外周フレームのGlulam部材をプレカット・接合金物プレ取付け。
5. モジュール組立:CLTパネルとGlulam半完成品をエストニアKodumaja工場(ノルウェーへ船便1日半)に運搬し、住戸モジュールとして仕上げ。
6. 輸送・現地:完成モジュールは特殊低床トレーラーで陸送・フェリー混載でベルゲンに到着、即日クレーン設置。在庫滞留はゼロのジャストインタイム調達を実現しました。
このサプライチェーン設計により、現地施工期間の短縮に加え、輸送ルート全体での総CO2排出を従来工法比で約35%削減したとMoelvenの2017年サステナビリティレポートで報告されています。
歴史的意義と影響
Treet Bergenは木造建築史において以下のような意義を持ちます。
1. 世界最高層木造の先駆:当時14階・49 mは木造として世界記録。それまでの中層木造(5-8階)の限界を大きく超え、高層化への可能性を示した。
2. CLTモジュール工法の実証:CLTパネルでの大規模アパート建設の経済性・実用性を証明。後のMjøstårnet、Sara Kulturhus、HoHo Wien等に影響。
3. プレファブ建設の革新:工場製造・現地組立というプロセスが、後の建設業界全体の効率化に影響。
4. 北欧木造ブランドの確立:ノルウェー・スウェーデンの木造技術が、世界の建築界で確固たる地位を獲得。
5. カーボンネガティブ建築のモデル:木材の炭素貯留+施工時CO2低減で、カーボンネガティブな建築が可能であることを実証。
6. 後続プロジェクトへの直接影響:Mjøstårnet(2019年、85 m)はTreet Bergenの技術を発展させた次世代作品。
現在、Treet Bergenの記録は他の作品に塗り替えられていますが、世界の木造高層化の歴史的出発点として、永続的な意義を持ち続けています。
FAQ:よくある質問
Q1. Treet Bergenはまだ世界最高?
A. いいえ。2019年完成のMjøstårnet(85 m)に抜かれ、2022年にはAscent MKE(米ミルウォーキー、86.6 m)が記録更新。しかし2015年当時の世界記録としての歴史的意義は不変です。
Q2. 見学・宿泊できる?
A. 賃貸アパートのため、内部見学は基本的に不可。外観は誰でも見られます。ベルゲン市中心部、観光地に近い立地。BOBが事前申請の専門家・学術ツアーを年数回受け入れることはあります。
Q3. 日本でも同様の建築は?
A. 住友林業W350研究、有明体操競技場、Port Plus(横浜、11階木造)等が日本の事例。Treet Bergen規模の純粋木造アパートはまだ少なく、Port Plusが最も近い構造方式です。
Q4. ノルウェーの森林資源は?
A. ノルウェーは国土の約38%が森林。スプルース(トウヒ)・ヨーロッパアカマツが主要樹種。年間素材生産量は約1,200万 m³。持続可能な林業の伝統が長く、世界的な木材輸出国でもあります。
Q5. コスト・収益性は?
A. 鉄骨・RC建築と比較し、木造は短工期・軽量等の利点があり、総合的には競争力があります。Treetは初期コストでRC比10〜15%増でしたが、施工期間短縮による金利負担減でほぼ相殺されたと報告されています。
Q6. 火災のリスクは大丈夫?
A. 90分耐火(REI 90)と二重スプリンクラー、外装の不燃被覆、加圧階段室で多重防御。竣工以降の重大火災事例はゼロです。
Q7. 地震に対する強度は?
A. ノルウェーは地震活動が低く、設計地震動はEC8でPGA 0.05 g前後。木造の軽量さで地震荷重は小さく、構造的余裕は大きいです。日本基準とは前提が異なります。
Q8. 木造で湿気は大丈夫?
A. ベルゲンは年間降水量2,250 mmと多湿ですが、外断熱+防湿層+通気層の三層対策、湿度センサーネットワークで管理。10年運用で重大な湿害は報告されていません。
Q9. CLTパネルはどこ製?
A. 主にスウェーデン(Stora Enso、Martinsons)とオーストリア(KLH)製。Glulamはノルウェー製(Moelven Töreboda、Splitkon)が中心です。
Q10. Treetの建築は今後増える?
A. 増える見込みです。EUタクソノミーや北欧諸国のグリーン公共調達で木造高層インセンティブが拡大、2025〜2030年には欧州だけで100棟以上の10階超木造プロジェクトが計画されています。

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