集成材とCLTのヤング係数|E105-F300の読み方

板の向きだけで剛性が変わる CLTの強軸と弱軸は3.8倍 | Forest Eight

集成材の伝票にある「E105-F300」。CLTのカタログにある「5層5プライ」。どちらもヤング係数にかかわる表記ですが、無垢材のE70などとは刻みも意味も別物です。とくにCLTは、板の向きを90度変えるだけで曲げ剛性が4倍近く変わります。

この記事では、集成材の強度等級記号の読み方、異等級構成というコスト戦略、CLTの強軸・弱軸がなぜあれほど違うのかを、JASの計算ルールに沿って整理します。無垢材の等級についてはJAS機械等級区分E50〜E150|目視等級との違いと基準強度を、ヤング係数そのものの意味は木材のヤング係数とはをどうぞ。

目次

「E105-F300」の読み方

構造用集成材の強度等級は、ハイフンでつないだ2つの数字で表されます。

  • E105:曲げヤング係数 10.5kN/mm²(=10.5GPa)
  • F300:曲げ強さ 30.0N/mm²

つまりE105-F300は「変形しにくさが10.5GPa、壊れにくさが30N/mm²」を保証した集成材です。Eだけでなく、Fも同時に指定されているのが製材の等級との大きな違いです。無垢材のJAS機械等級はEだけを区分し、Fbは告示の表から樹種と等級で引きますが、集成材は等級記号そのものに両方が入っています。

そしてもう一点。集成材のE値の刻みは E65/E75/E85/E95/E105/E120/E135/E150/E170 で、製材のE50〜E150(6段階)とはまったく別の系列です。E120という記号を見て「製材のE110とE130の間」と考えると混乱します。E120は集成材の等級で、対になるF値は330。E120-F330と書かれるのが正式です。

市場に出ている集成材の等級は、だいたい決まっている

カタログには十数種類が並びますが、一般流通材として手に入りやすい組み合わせはかなり限られます。

樹種 用途 よく流通する等級
スギ E65-F225
スギ E65-F255
ヒノキ E95-F270/E105-F300
ヒノキ E95-F315
カラマツ E95-F270(E105-F300)
ベイマツ E120-F330
オウシュウアカマツ E105-F300
ホワイトウッド E95-F315

構造計算で使う集成材のヤング係数は、日本建築学会『木質構造設計規準』(2002年版)が等級ごとに定めています。E0が一般の計算用、E0.05が変形をとくに重視する主要構造部材用です。

強度等級 E0(kN/mm²) E0.05(kN/mm²)
E120-F330 12.0 10.0
E105-F300 10.5 9.0
E95-F270 9.5 8.0

等級記号のE値がそのままE0になっている点に注目してください。無垢材では等級名(E70など)が実測値の区間を指すだけで、設計に使う基準弾性係数は別に定められていました。集成材は等級名とE0が一致するので、そのぶん扱いが素直です。E0.05との差も無垢材より小さく、ばらつきが抑えられていることが数字に表れています。

断面は幅105・120mm、せいは120mmから30mm刻みで450mm程度まで。集成材の含水率はJASで15%以下と定められているため、発注時に乾燥度合いを指定する必要はありません。ここは無垢材(SD20などの指定が要る)との実務上の違いです。

梁でE120以上、せい450mm超が必要になると、途端に特注の世界に入ります。納期と価格が読めなくなる境目がこのあたりだと考えておくと、設計の初期段階で判断を誤りません。

なぜ集成材は、無垢材より高い等級を名乗れるのか

同じスギから作っているのに、集成材のほうが安定した性能を出せる。理由は欠点の分散にあります。

無垢の梁は、たまたま大きな節が引張側に来ればそこで決まってしまいます。1本の材の性能は、その材の最弱点で決まる。一方、集成材は厚さ30mm前後のラミナを何枚も重ねているので、1枚に大きな節があっても、隣の層が健全なら断面全体としては効きが残ります。結果として、平均値はさほど変わらなくても、下位5%の値(5%下限値)が持ち上がる。構造計算が使うのはこの下限値なので、設計上の等級が上がるわけです。

加えて、丸太の直径と長さの制約から解放されるという利点があります。無垢材でせい600mm・長さ12mの梁を揃えるのは現実的ではありませんが、集成材なら断面も長さも設計側で決められます。

異等級構成──外に高い材、内に安い材

集成材のコスト戦略の中心が、この異等級構成です。曲げを受ける梁では、応力は断面の外側(上下の縁)でもっとも大きく、中立軸の付近ではほぼゼロになります。だったら中央部に高価な高等級ラミナを使う理由はない、という発想です。

外層に高ヤング・高強度のラミナ、中間層に低等級のラミナを配置すれば、断面全体としては高い見かけの性能を保ったまま、高等級ラミナの使用量を減らせます。これが対称異等級構成材で、E105-F300やE120-F330といった梁向けの等級はこの構成です。

対して同一等級構成材は全層を同じ等級で揃えたもので、柱のように断面内で応力が一様に近い部材に向きます。E65-F255やE95-F315といった柱向けの等級がこちらです。同じスギでも、梁向けのE65-F225と柱向けのE65-F255でF値が違うのは、この構成の違いによります。

応力の大きい外層だけを高等級にする=異等級構成異等級構成(梁)外層=高等級/中央=低等級例:E105-F300曲げ応力の分布圧縮 最大引張 最大中立軸=ほぼ0同一等級構成(柱)全層を同じ等級で構成例:E95-F315
図1:曲げ応力は断面の外側で最大・中立軸でゼロ。異等級構成はこの分布に材料を合わせる考え方

CLTの強軸と弱軸──直交する層は「無い」ものとして計算する

CLT(直交集成板)は、ラミナを1層ごとに90度向きを変えて積層接着した面材です。強軸(外層の繊維方向)と弱軸(その直交方向)で性能が大きく違うのですが、その理由はJASの計算ルールを見るとすっきり分かります。

直交集成板の許容応力度の算定では、荷重方向に対して繊維が直交している層の弾性係数を「0」とみなすと定められています。つまり、強軸方向に曲げるときは強軸に平行な層だけが働き、直交層は効きに数えない。弱軸方向に曲げるときはその逆です。

5層5プライで各層30mm(総厚150mm)の断面で計算してみます。曲げ剛性は断面二次モーメントに比例し、中立軸から離れた層ほど効きが大きくなります。

  • 強軸:1・3・5層目が働く(うち2層は最外層)→ 全断面比 約0.79
  • 弱軸:2・4層目が働く(どちらも中立軸寄り)→ 全断面比 約0.21
  • 強軸と弱軸の曲げ剛性比 = 約3.8倍

効いているのは層の枚数だけではありません。外層にあるかどうかが決定的です。強軸側は最外層の2枚を含むので、断面二次モーメントの大部分を稼げる。弱軸側は働く2層がどちらも中立軸に近い位置にあるため、枚数の比(3対2)以上に不利になります。

もうひとつCLT特有の指標が転がりせん断(ローリングシア)です。直交層は繊維に対して横向きに力を受けるため、繊維同士が転がるようにずれる。この方向のせん断剛性は繊維方向の10分の1程度しかなく、短スパンの床版では曲げよりこちらが効きを決めることがあります。

なお、CLTに使うラミナの等級記号は M30A・M60A・M90A・M120A といった系列で、数字が弾性係数(M60なら6.0kN/mm²)に対応します。製材のE値とも集成材のE値とも別系列なので、ここも取り違えに注意してください。

海外規格との対応

規格 地域 表記の例 読み方
JAS 構造用集成材 日本 E105-F300 E=GPa、F=N/mm²
EN 14080(GLT) 欧州 GL24h/GL30c 数字=曲げ強度特性値N/mm²、h=同一等級・c=異等級
MSR Lumber 北米 1.5E/2.0E ×10⁶psi。1.5×10⁶psi ≒ 10.3GPa

北米のpsi表記は、1psi=0.00689MPaで換算します。1.4×10⁶psiなら約9.65GPa、2.0×10⁶psiなら約13.8GPa。欧州のGL表記はEではなく曲げ強度で名前が付いている点が日本と逆なので、GL24hを「E24」と読み替えないよう気をつけてください。末尾のhはhomogeneous(同一等級構成)、cはcombined(異等級構成)の略です。

高等級材が実際に使われた建物

建物名 規模 竣工 主要構造
Port Plus 大林組横浜研修所 11階・44m 2022年3月 日本初の高層純木造耐火建築物。3時間耐火の柱梁
住友林業 筑波研究所 新研究棟 木造3階 2019年10月 木質ハイブリッド集成材、燃えしろ設計であらわし
Mjøstårnet(ノルウェー) 18階・85.4m 2019年3月 集成材+CLT。当時の世界最高の木造建築
Brock Commons Tallwood House(カナダ) 18階・53m 2017年 CLT床+集成材柱、コアはコンクリートのハイブリッド

並べてみると、高層になるほど純木造かハイブリッドかで設計の性格が分かれるのが分かります。Brock Commonsは水平力をコンクリートコアに負担させ、木は鉛直荷重を受け持つ割り切った構成。Port Plusは柱も梁も壁も木で、耐火被覆までを木で構成しました。Mjøstårnetは大断面集成材のトラスで全体を組み上げています。世界一の座は2022年8月に米ミルウォーキーのAscent MKEへ移りました。

よくある質問

Q. 集成材のE105と、無垢材のE110はどちらが強いですか?

A. 数字だけでは比べられません。系列が違ううえ、集成材のE値は完成した集成材としての値、無垢材のE値は1本の材の実測区間だからです。設計で比較するなら、告示・JASから引いた基準強度と基準弾性係数を並べてください。

Q. 異等級構成の梁を、上下逆さまに取り付けても大丈夫ですか?

A. 対称異等級構成なら上下対称なので問題ありませんが、非対称の構成もあります。集成材には上下を示す表示があるので、それに従ってください。梁の上下を逆にすると、想定と違う層が引張側に来ることになります。

Q. CLTの床を弱軸方向に架けてもいいですか?

A. 計算上は可能ですが、曲げ剛性が約4分の1になるので、同じスパンならたわみが4倍近くなります。基本は強軸方向に架け、やむを得ず弱軸を使うならスパンを大幅に詰めるか厚みを増す判断が必要です。

Q. 集成材は何年もつのですか?

A. 接着層の耐久性が論点になりますが、JAS構造用集成材は使用環境に応じた接着性能区分(使用環境A・B・C)が定められており、屋外や高湿度の環境ではより厳しい区分の製品を選びます。屋内乾燥環境での劣化は無垢材と同程度に緩やかです。

まとめ

集成材の「E105-F300」は、ヤング係数10.5GPaと曲げ強さ30N/mm²を同時に保証する記号です。刻みは製材のE50〜E150とも、CLTラミナのM30〜M120とも別系列で、ここを取り違えると発注も計算もずれます。

異等級構成は、曲げ応力が外側で最大・中立軸でゼロという分布に材料の等級を合わせる考え方。CLTの強軸・弱軸の差は、直交層を「無い」ものとして数えるJASの計算ルールと、外層ほど断面二次モーメントに効くという幾何から出てきます。5層5プライなら約3.8倍。板の向きひとつでこれだけ変わることを知っていれば、床版の割り付けで迷う場面は減るはずです。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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