集成材生産量168万m³|構造用集成材市場の動向

集成材住宅から中大規模木造へ

日本の集成材の国内生産は、2023年で約168万m³(農林水産省「木材統計」、前年比1.0%増)。このうち構造用集成材が約159万m³と、実に9割以上を占めます。輸入分を合わせた構造用集成材の市場規模は200万m³を超え、木材産業のなかでは製材が大きく減った30年間に、数少ない拡大セグメントであり続けてきました。

原動力になったのは、住宅の構造材が無垢の柱・梁から集成材へと置き換わっていった流れです。原料の「ラミナ」(薄板)は長らく北米SPFや欧州ホワイトウッドなどの輸入材が主流でしたが、2010年代以降は国産材の比率が上がり、2023年には集成材生産に使われた原料の45.9%(約77万m³)が国産材になりました。この記事では、集成材市場を用途・原料の国産化・メーカーの集約・CLTやLVLとの関係・生産工程・今後の展望という切り口から見ていきます。

集成材の梁が積まれた様子
集成材・無垢梁の積層 (Photo by Oscar Salgado on Unsplash)
目次

そもそも集成材とは、そして市場拡大の道のり

集成材は、厚さ20〜50mmほどの薄板(ラミナ)を繊維方向にそろえて並べ、接着剤で積層した木質構造材です。無垢材に対する強みは、おもに4つ。強度のばらつきを統計的にならして均質にできること、大断面や長尺の寸法を自由につくれること、乾燥させたラミナを使うので寸法が狂いにくいこと、そして節や割れのあるラミナをはじいて品質を安定させられること。こうした性質が、住宅構造材での無垢材置き換えを着実に進めてきました。

集成材づくりの技術そのものは1900年代初頭にスイス・ドイツで生まれ、戦後に北米・北欧で育ち、日本には1950年代に入ってきました。当初は意匠用・造作用が中心で、構造用に本格展開し始めたのは1970年代の住宅市場拡大期から。1990年代後半以降、住宅品質確保法(品確法)や長期優良住宅制度といった性能規制が強まるなかで、含水率の管理された集成材が住宅構造材としての地位を固めていきました。

集成材の国内生産量の推移 1990年代から2023年までの集成材国内生産量のおおまかな推移 集成材の国内生産量の推移(万m³・概況) 200 150 100 50 0 1995 2005 2015 2023 50万m³前後(1990年代半ば) 170万m³前後(2000年代半ば) 168万m³(2023) 1990年代後半に急拡大。リーマン・ショックで落ち込み、2010年代後半に180万m³近くへ回復。近年は横ばい。
図1:集成材の国内生産量の推移(概況。出典:農林水産省「木材統計」歴年版)

1990年代後半の急拡大、リーマン・ショックでの落ち込み、2010年代後半の180万m³近くへの回復、そして近年の横ばい――住宅着工の波と、住宅構造材の集成材化・JAS規格整備・大断面化への対応が重なって、市場はここまで動いてきました。製材(この30年でおよそ3分の1に縮小)や横ばいの合板と比べると、長期の伸びは際立っています。

主役は構造用集成材

2023年の集成材168万m³の中身は、構造用集成材(住宅・建築の柱・梁・桁・大断面構造材)が約159万m³で全体の9割超、造作用集成材(家具・建具・カウンター・階段・内装下地)が残りという構成です。構造用は住宅市場との結びつきが強く、新設住宅着工(年80万戸前後)の動きで需要が決まります。在来軸組工法の新築では、柱・梁・桁といった主要部位の集成材化が広く進んでいます。

部位別にみると、需要の中心は管柱(階高1階分の柱)と梁・桁です。管柱の標準寸法は105mm角・120mm角で長さ3m、通し柱(2階建ての全長を通る柱)は同じ角材で5.5〜6.0m長と、住宅性能表示・長期優良住宅の基準に合わせた規格化が進んでいます。梁・桁は105×210mm・105×240mm・105×300mmで長さ3.6〜4.0mあたりが標準。集成材梁の強みは、長尺・大断面でも品質が安定する点で、無垢材では手に入りにくい断面300×400mm級・6m長の梁もつくれます。

大断面集成材が拓く中大規模木造

断面が大きい集成材は、オフィスや商業施設、公共建築、倉庫、工場といった中大規模木造の構造体として需要が伸びています。木造ホールや体育館、木造オフィス・商業施設で長スパンを実現でき、コンクリート・鉄骨に対する木造の競争力の中核を担う存在です。2010年の公共建築物等木材利用促進法(現・脱炭素社会に資する建築物等木材利用促進法)以降、こうした建築事例は各地で増えています。

ラミナの国産材比率が45%を超えた

この産業のいちばんの構造変化は、原料ラミナの国産化です。2010年頃には2割前後だった国産材比率は、2023年には45.9%まで上がりました。理由は3つ。スギ・カラマツの構造用ラミナの品質・供給が拡大したこと、国産材ラミナを自社製造する集成材工場の立地が進んだこと、そして円安と物流費の上昇で北米・欧州産が割高になったこと、です。

集成材原料の国産材比率 2010年頃から2023年までの集成材原料の国産材比率のおおまかな推移 集成材生産に使われた原料の国産材比率(%) 50 33 17 0 2010年頃 2017年頃 2023 約20% 約30%台 45.9%(2023) 国産ラミナは段階的に上昇。スギ・カラマツの構造用ラミナ供給の拡大が背景。
図2:集成材生産に使われた原料の国産材比率(出典:農林水産省「木材統計」、令和6年版 森林・林業白書)

国産ラミナはスギとカラマツが中心です。スギラミナは柱や横架材の意匠面・一般部に、カラマツラミナは強度を生かして梁・桁の引張側や大断面構造材に、ヒノキラミナは耐朽性を生かして土台まわりに、という具合に使い分けられています。輸入ラミナはオーストリア・ドイツ・フィンランドなど欧州産と、米国・カナダの北米産が中心。欧州産はホワイトウッド(ドイツトウヒ)やレッドウッド(ヨーロッパアカマツ)が主で、寸法精度の高さが評価されてきました。なお、ロシア材は2022年以降の制裁で輸入が止まり、欧州・北米産と国産材へのシフトが進んでいます。

メーカーは全国143工場、大手に集中

集成材工場は2023年末で全国143工場(前年比増)。年産数万m³級の大手工場に生産が集中し、製材業よりも集中度の高い装置産業です。代表的なところでは、岡山県真庭市の銘建工業、住友林業グループ、齋藤木材工業(長野)、山佐木材(鹿児島)などが挙げられます。新設には大規模な投資と用地が必要で、参入障壁は高い産業です。

製材から集成材・CLTまで一貫で

大手メーカーの典型は、原料ラミナの自社製造(製材一体型)から集成材・大断面構造材・CLT製造、プレカット加工、設計支援までを一気通貫で手がける体制です。原木の調達から製品づくり、副産物の燃料化までをひとつの流れにまとめます。その代表格が銘建工業で、集成材に加えてCLT、木質バイオマス発電、プレカット工場を併設し、地域のスギ・ヒノキの需要を生み出しながら林業・木材産業を底上げする「林業の6次産業化」の好例として、中山間地域の参照モデルになっています。

CLT・LVLとの関係

集成材とよく比較されるのがCLTとLVLです。集成材はラミナを繊維方向にそろえて積層した直線材(柱・梁・桁)が主体で、住宅構造材の主流。CLT(直交集成板)はラミナを直交させて積んだ大判パネル(壁・床)で、中大規模木造の構造体向け。国内のCLT生産能力は令和3年度末で9工場・年8万m³規模、政府は「CLTの普及に向けたロードマップ」で年50万m³の生産能力を目標に掲げています。LVL(単板積層材)は薄い単板を平行に積層した直線材で、梁・横架材向け。2023年の国内LVL生産量は23万m³でした。用途も形も市場も違い、互いを補い合う関係にあります。

生産工程と品質基準:薄板から構造材へ

集成材は、厳密な工程と品質管理を経てつくられます。原木入荷 → ラミナ製材(厚さ20〜50mm) → 人工乾燥(含水率15%以下) → 欠点除去(フィンガージョイント) → 強度等級区分 → 接着剤塗布 → 積層プレス → 寸法切削 → 検査 → 出荷。各段階にJAS(集成材の日本農林規格=平成19年農林水産省告示第1152号)の基準・認証要件がかかります。接着剤はレゾルシノール樹脂・水性ビニルウレタン樹脂・イソシアネート系などを用途で使い分け、構造用には耐水性が最も高い「使用環境A」(特類相当)が標準です。

集成材の積層構造と強度等級 構造用集成材の積層構造とラミナ強度等級の組合せ 構造用集成材の積層構造(断面イメージ) 外層ラミナ(高強度) 中間層ラミナ(中強度) 中間層ラミナ(中強度) 中間層ラミナ(中強度) 中間層ラミナ(中強度) 外層ラミナ(高強度) 曲げ応力の大きい外層に強いラミナを配置 JAS構造用集成材の主な区分 対称異等級構成集成材(梁・桁) 同一等級構成集成材(柱) 主要規格 JAS構造用集成材 JAS化粧ばり構造用集成柱 JAS集成材(造作用)
図3:構造用集成材の積層構造と主な区分(集成材のJAS=告示第1152号より作成)

梁・桁向けの「対称異等級構成集成材」は、外層に高強度のラミナ、中間層に中強度のラミナを置く構成をとります。曲げ応力が最も大きい外層に強いラミナを集中させる、合理的な設計です。原木からの歩留まりは、ラミナ段階で欠点除去(フィンガージョイント)が必要なため、製材よりやや低くなります。長期の耐久性は接着剤次第で、構造用の接着剤は煮沸・浸水・温冷反復といった試験をクリアするものが使われます。海外には数十年〜100年級の集成材建築の例も多く、適切に設計・施工・維持すれば、無垢材と同等以上の寿命が期待できます。

これからの10年:住宅は縮み、中大規模木造は伸びる

今後10年は、住宅市場の縮小と中大規模木造市場の拡大が同時に進む局面になりそうです。住宅着工は年80万戸から2030年代には60〜70万戸へと減り、住宅向け集成材には減少圧力。その一方で、オフィス・商業・公共建築・倉庫向けの大断面集成材は伸びる見通しで、差し引きすると市場全体は現状水準で推移する、というあたりが妥当な読みでしょう。

原料ラミナの国産化はさらに進むとみられます。スギラミナの強度等級の向上、北海道の主伐期到来によるカラマツの供給拡大、ヒノキの高単価ニッチ拡大――この3つが国産供給力を押し上げます。加えて、これまで国内需要型だった日本の集成材産業でも、韓国・台湾・東南アジア向けの輸出開拓が始まっています。地域材を集成材に変えて都市の建築へ送り出す循環が、林業の出口づくりという意味でも重みを増しています。

よくある質問

集成材の国内生産168万m³は世界的に見てどのくらい?

ドイツやオーストリアといった欧州の集成材大国はそれぞれ数百万m³規模で、日本はそれに次ぐクラスです。住宅向けの構造用集成材市場としては東アジアで最大級ですが、輸出はまだ限定的で、基本は国内需要型の産業です。

なぜ長期的に伸びてきたの?

住宅品質確保法・長期優良住宅基準で含水率管理が事実上必須になり、品質の安定した集成材が選ばれやすくなったこと、大断面・長尺の需要に集成材が応えられたこと、プレカット化との相性がよいこと、JAS構造用集成材規格の整備で設計への適用が広がったこと。これらが住宅構造材での無垢材置き換えを押し上げ続けました。

集成材は無垢材より高いの?

住宅向けの柱・梁では、無垢材よりやや高いのが一般的です。その差を吸収するのが、品質の安定・大寸法対応・施工効率(プレカット適合)の3つで、資材費だけでなく施工や手戻りリスクまで含めたトータルで判断する住宅メーカー・工務店が多いのが実情です。価格は樹種・断面・産地・時期で大きく動くため、案件ごとの見積り比較が現実的です。

集成材の寿命はどのくらい?

きちんと設計・施工・維持すれば、無垢材と同等以上が見込めます。ポイントは、結露や浸水を避ける雨仕舞、使用環境に合った接着剤の選定、そして定期的な点検・補修の3つ。住宅品質確保法・長期優良住宅基準を守り、防腐・防蟻処理を適切に行えば、長期の建物耐用年数を確保できます。

おわりに

集成材は、無垢材に代わる住宅構造材として静かに、しかし確実に主役の座をつかんできました。これからは住宅市場が縮むなかで、大断面集成材を武器にした中大規模木造へと活躍の場を広げていく段階に入ります。同時に進むのが原料の国産化で、スギ・カラマツ・ヒノキのラミナが輸入材に置き換わっていく流れは、林業の出口づくりという意味でも大きな意義があります。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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