日本の製材工場は、2023年末時点で3,749工場(農林水産省「木材統計」)。前年からさらに55工場減りました。2004年には9,420工場あったので、20年足らずで6割減ったことになります。ただ、これは単なる衰退ではありません。製材品の出荷量は減っても、生産は少数の大きな工場へ集まり続けています。出力規模300kW以上の工場が原木消費量の78.3%を占め、そのうち1,000kW以上の工場だけで39.6%。「集約」という産業の地殻変動が、工場数の減少の裏で進んできました。

20年で工場数6割減──淘汰の波
工場数の減り方を時期で追うと、いくつかの波がありました。1990年代後半〜2000年代前半は、住宅着工の減少と輸入材シェア拡大による全方位的な廃業局面。2010年以降は、合板用材への転換、JAS構造材化、人工乾燥(KD)工程の一般化といった設備投資の負担増に小さな工場が対応しきれず退出した局面です。1990年代に1万5千前後あった工場は、2004年に9,420、そして2023年には3,749まで減りました。
原木消費の8割は300kW以上の工場
いま残る3,749工場の中身を、出力規模で見てみましょう。原動機の出力が75kW未満の小規模層は2,131工場と数のうえでは多数派ですが、原木の消費量でみると、300kW以上の階層が全体の78.3%を占めます。さらにそのうち1,000kW以上の大規模工場だけで39.6%。「数では多いが原木消費はわずか」という小規模層と、「数は少ないが生産の主力」という大規模層に、はっきり分かれています。
大規模工場の主役は、住宅構造材中心のJAS製材所、合板原木と兼業する大型工場、集成材・LVL併設工場です。宮崎・鹿児島・大分・北海道・岩手・秋田などに集まり、KD設備や自動製材ラインを備えます。一方、小規模工場の多くは、東濃・尾鷲・吉野といった銘柄材の伝統製材や、造作・建具・家具向けの特殊材製材といったニッチに生きています。原木消費のシェアは小さくても、地域の工務店供給や付加価値市場では替えのきかない存在で、家族経営から従業員10名ほどの規模が一般的です。
なぜ大きくなければ続かないのか
背景にあるのは設備投資のハードルです。自動製材ラインやコンピュータ制御のカットソー、KD材需要に対応する乾燥設備、JAS構造材やプレカット材の規格化対応──これらはまとまった投資になります。一定以上の規模でなければ採算が合わないため、中小工場にとって参入・更新の壁が高くなりました。実際、大規模工場の国産材消費シェア(出力規模5万m³超の工場)は2004年の約7%から2023年には約35%へと大きく伸びています。「大きくなければ続けられない」という構造が、集約を後押ししてきたわけです。
市場の地殻変動が集約を駆動した
工場の集約は、それ単体で起きたのではなく、川下の市場構造の変化と連動しています。新設住宅着工は1990年の約170万戸から2023年の約80万戸へと半減し、製材の最大顧客である住宅構造材市場そのものが縮みました。同時に、集成材・LVL・CLTといったエンジニアードウッドが台頭。構造用集成材を含む集成材の生産は2023年で168万m³にのぼり、製材の代替・補完として住宅市場に食い込みました。
さらに決定的だったのがプレカットの普及です。かつて数%だったプレカット率は、いまや在来工法の9割超。住宅向け構造材は事実上、プレカット工場を経由するのが標準になりました。製材所は「丸太→製材→大工施工」という単線の流れから、プレカット工場や集成材工場への一次加工材供給者へと立ち位置が変わり、安定した品質と供給力を問われるようになったのです。プレカットに対応できない小さな製材所が流通から外れていったのも、集約を速めた一因でした。
これからの製材業
集約はまだ続くとみられます。高齢経営者の引退による自然廃業の圧力は根強く、工場数はさらに減っていく見通しです。一方で大規模工場は拡大を続け、原木消費に占めるシェアはさらに高まりそうです。
ただ、すべてが大型に飲み込まれるわけではありません。生き残るのは、輸出にも対応する超大型工業製材、地域工務店を支える中堅製材、吉野杉や尾鷲ヒノキのような銘柄材専門製材、建具・楽器・桶樽などの特用製材、残材をエネルギーに変えるバイオマス連動製材──おおむねこうしたタイプに収斂していくとみられます。近年は対中国・韓国・台湾向けのスギ製材輸出も広がりつつあり、国内市場の縮小を補う戦略として注目されています。

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