樹木の根系発達:主根型・水平根型・心根型の3パターン

樹木の根系発達 | Forest Eight

樹木の根は、地面の下に隠れていて普段は目にしませんが、木を支え、水と養分を吸い上げ、まわりの菌類と手を結ぶ複雑なシステムです。そして根の形は樹種や地形によってずいぶん違います。スギやヒノキのように浅く広がる木もあれば、アカマツのように真下へ深く伸びる木もある。この違いは、台風で倒れやすいかどうかという防災の問題に直結します。この記事では、根の形のタイプ、主要樹種ごとの違い、そして倒木リスクの考え方を整理します。

地下/地上比0.2-2.0樹種で大差主要根系型5主根・側根等根系深さ0.5-30+m樹種・地質依存細根長数百km/個体総延長推計
図1:樹木根系の主要諸元(FFPRI・土木学会データを統合)
目次

根の形は大きく5タイプ

樹木の根は形や機能から大きく5つに分けられます。中心の太い1本が真下に伸びる「主根型」、水平方向に多数広げる「側根型(浅根)」、その中間の「心根型」が基本の3タイプ。これに、環境に応じて派生する深根型と浅根型が加わります。

根系型 形態的特徴 代表樹種 典型的な深さ
主根型 中心の太い1本+細い側根 クヌギ、コナラ、ケヤキ 2〜10m
側根型(浅根) 水平方向に広がる多数の根 スギ、ヒノキ、トドマツ 0.5〜1.5m
心根型 主根+側根の混合・斜め下方 ブナ、ミズナラ、シラカバ 1〜3m
深根型 垂直方向に長く伸長 アカマツ、カラマツ、ハリエンジュ 2〜4m(記録30m超)
浅根型 表層0〜30cmに集中 湿地樹種、ハンノキ 0.3〜0.6m

意外に思えるかもしれませんが、根が水平に広がる範囲は樹冠の1.5〜3倍にもなります。直径20mの枝張りがあれば、地下では30〜60m径まで根を広げていることもあるのです。実際に機能の中心を担っているのは直径2mm以下の細い根(細根)で、その総延長は1本の木で数百km〜2,000kmに達し、表面積は地上の葉の面積を上回るほどです。

主要樹種の根を比べてみる

日本の主な造林樹種について、森林総合研究所の根系発掘調査(北海道〜九州、約230個体)の代表値を整理すると、樹種ごとの個性がはっきり見えてきます。

樹種 根系型 主要分布深 水平広がり 風倒抵抗
スギ 側根型(浅根) 30〜80cm 樹冠の1.5〜2.0倍 弱(湿潤地)
ヒノキ 側根型(浅根) 30〜70cm 樹冠の1.3〜1.8倍
アカマツ 主根+深根型 主根2〜4m 樹冠の1.0〜1.5倍
カラマツ 深根+側根 1.5〜3m 樹冠の1.5〜2.0倍
ブナ 心根型 1〜2m 樹冠の1.5〜2.5倍
ケヤキ 主根型 2〜5m 樹冠の2〜3倍
主要樹種の典型根系深さ(m)スギ0.5-0.8mヒノキ0.3-0.7mアカマツ2-4mカラマツ1.5-3mブナ1-2mケヤキ2-5m02m4m6m
図2:主要造林・街路樹樹種の典型根系深さ(FFPRI根系発掘調査統計より)

なぜスギ・ヒノキは倒れやすいのか

表を見ると、スギ・ヒノキの根が30〜80cmという浅い層に集中していることがわかります。とくに湿潤な土壌では深い根が育ちにくく、台風の強い風荷重に対して根の引張・剪断耐力が足りなくなりがちです。2018年の台風21号では、近畿のスギ・ヒノキ人工林で約1,200万m³もの被害材積が出ましたが(林野庁)、その約8割が浅根型の針葉樹でした。浅根型は根ごと持ち上がる「根返り」、深根型は「幹折れ」になりやすいという違いもあり、倒れ方から根の構造を逆算することもできます。

一方、深く根を張るアカマツやカラマツは強風には強いものの、マツ材線虫病による枯損という別のリスクを抱えています。北日本ではスギ・カラマツの雪倒(冠雪の重みによる根返り・幹折れ)も多く、東北だけで年平均約30万m³の被害が出ています。

根を強くする菌根菌

樹木の細根の8〜9割以上は、菌根菌という菌類と共生しています(森林総研)。菌根菌の菌糸は細根の100〜1,000倍もの表面積を持ち、リンや微量要素、水分を吸収する範囲を大きく広げてくれます。マツ・モミ・ブナ・コナラなどはマツタケに代表される外生菌根を、サクラ・ケヤキ・多くの広葉樹はアーバスキュラー菌根を結びます。林木育種センターの研究では、コンテナ苗の段階で菌根菌を接種しておくと、植栽後の活着率が15〜25%向上することが確認されています。植林の成否を左右する、地味だけれど重要なパートナーです。

都市の街路樹が抱える根の問題

都市環境は樹木の根にとって過酷です。国土交通省の街路樹実態調査(2019)では、根が原因のトラブルが管理コストの約25%を占めています。浅根性のケヤキやプラタナスでは歩道のアスファルトを押し上げる舗装隆起が起き、古い下水管やガス管には根が侵入して破損を招きます。対策としては、根の伸びる方向を誘導するルートバリアの設置、十分な植栽桝の確保(推奨2.0×2.0m以上)、狭い場所には心根型〜深根型の樹種を選ぶといった工夫が有効です。

よくある質問

Q. 樹木の根はどれくらい広がりますか?
A. 一般に樹冠(枝張り)の1.5〜3倍まで広がります。直径20mの樹冠なら、根系は30〜60m径まで広がることもあります。樹種や地形によって大きく変わります。

Q. 深根と浅根、どちらが優れているのですか?
A. 優劣ではなく、それぞれ異なる環境に適応した戦略です。深根は乾燥地や安定した土地に有利で、浅根は土壌が浅い場所や表層の水を効率よく使うのに向いています。気候変動で干ばつが増えると、根を深く伸ばす方向への適応が観察されています。

Q. 樹木の根は地中で他の木とつながっているのですか?
A. はい。同種・異種を問わず、菌根菌の菌糸ネットワーク(ウッドワイドウェブ)を介して、炭素・養分・シグナルが双方向にやり取りされることが確認されています(Simard 1997以降)。

出典・参考

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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