活着率調査─植栽1-3年後の生残率と造林成否

植えた木は生きているか

苗木を植えたあと、その何割が無事に根づいて生き残っているか――これを示すのが活着率です。地味な数字に見えて、実は造林事業の合否を決める最重要指標。造林補助の完了確認では一定以上の活着(本数)が求められ、大きく下回れば補植や、場合によっては補助金の返還につながることもあります。植えた木がちゃんと育つかどうかは、日本林業の持続可能性そのものに直結しているのです。この記事では、活着率の測り方、樹種ごとの目安、失敗の原因、そしてドローン・AIによる調査の最前線までを整理します。

標準調査回数3-5Y1/Y3/Y5補助金成功目安80+%Y3植栽生残率補植義務70-%Y3生残率全国年植栽30,000+ha国直轄+県+民間
図1:活着率調査の主要諸元(出典:林野庁「森林整備事業統計」2024年度版・著者整理)
目次

3回に分けて測る

活着率は「植えた苗木のうち、調査時点で生き残っている割合」のこと。日本では通常、植栽後の節目ごとに三段階で測ります。Y1(1年後)は植え傷みや初期の干害をチェックする時期で、スギ・ヒノキなら90%以上が目安。Y3(3年後)が補助金評価のいちばん重要なタイミングで、80%以上が事実上の合格ラインです。Y5(5年後)は林冠が閉じる前の最終評価で、75%以上あればその後は年1〜2%程度の自然枯死に収まり、目標の林にほぼ到達できます。生死の判定はシンプルで、樹皮を爪で削って形成層が緑なら生、褐色なら死、と見分けます。

樹種で20ポイントも違う

活着率は樹種によってかなり差が出ます。森林総研や各県林業センターの長期試験データから、Y3活着率の代表値(露地苗・平均的な立地)を並べてみます。

樹種 Y1活着率 Y3活着率 Y5活着率 主要分布
スギ 92〜97% 85〜95% 80〜92% 東北以南
ヒノキ 88〜95% 80〜90% 75〜88% 関東以西
カラマツ 80〜92% 70〜90% 65〜85% 東北・中部高冷地
トドマツ 85〜93% 75〜85% 70〜82% 北海道
クヌギ・コナラ 75〜88% 65〜80% 55〜75% 全国
ケヤキ・ブナ 70〜85% 60〜78% 50〜72% 全国

20ポイントもの差が生まれる主な理由は、初期の成長戦略の違いです。針葉樹は植えてすぐ伸び始めますが、広葉樹は最初の1〜2年を根を張ることに使うため、地上部が貧弱に見え、雑草や乾燥に弱い時期が長く続きます。ですから広葉樹はY3で60〜70%でも「想定内」とされる地域が多く、針葉樹と同じ80%を機械的に当てはめると、失敗判定が続出してしまいます。

失敗の原因はだいたい決まっている

Y3で目標を割ったとき、原因を突き止めることが次の植栽計画に直結します。全国の失敗事例を見ると、要因はおおむね決まっています。

活着率が下がる主な要因乾燥害シカ食害雑草競合植え方不良苗木品質
図2:活着率が下がる主な要因(影響の大きい順のイメージ)

最大の敵は乾燥害です。植栽後の初夏の干ばつで枯れるケースが多く、九州・四国・中国地方でとくに目立ちます。次がシカ食害。本州・四国の中山間地や北海道のエゾシカ生息域で深刻で、林業のシカによる森林被害は依然として大きい規模で推移しています。3番目は雑草競合で、ススキ・クズ・ササが苗木を覆い、光を奪って枯らします。あとは植え傷みや根曲がりといった植え方の不良、輸送ストレスなどの苗木品質と続きます。乾燥もシカも雑草も、対策は分かっているのに手間とコストがかかる――そこが造林の難しいところです。

コンテナ苗という切り札

失敗を減らす有力な手が、苗木の作り方を変えることです。従来の露地苗(裸苗)からコンテナ苗(根鉢付き)への転換が2010年代以降進んでいます。各地の比較試験で、コンテナ苗は露地苗より活着率が明確に高いことが示されています。根鉢付きで植えるときに根を傷めにくく、春・秋・梅雨と植栽時期も選びやすく、機械植栽にも向く――この三拍子が効いています。苗木単価はやや割高ですが、補植コストの削減で十分に元が取れることが多く、いまではコンテナ苗が林業用苗木のおよそ半分を占めるまで普及しました。

どう調べる? 手法とコスト

活着率の調査方法は、面積・求める精度・予算で選びます。代表的な手法を比べてみましょう。

方法 適用面積 精度 コスト目安 所要時間/ha
全数調査 〜0.5 ha ±0% 2〜3万円/ha 4〜8時間
標準地法(10×10m) 0.5〜3 ha ±5% 1〜2万円/ha 2〜4時間
ライントランセクト 1〜5 ha ±10% 0.7〜1.2万円/ha 1〜2時間
サンプリング法 5+ ha ±5〜10% 0.5〜1万円/ha 0.5〜1.5時間
ドローン空撮+AI解析 0.5〜100 ha ±5〜15% 0.3〜0.8万円/ha 0.3〜0.8時間
衛星RS+GIS 100+ ha ±10〜20% 0.05〜0.2万円/ha 0.05〜0.1時間

もっとも普及しているのは標準地法。10m×10mの標本区画を植栽面積1〜3haあたり3〜5か所設け、その中の苗木をすべて調べます。林野庁の標準仕様書でも原則これで、斜面の上下や尾根・谷でばらつきが出ないよう、層化抽出が推奨されています。

ドローンとAIが現場を変える

近年急速に広がっているのが、ドローン空撮とAI画像解析です。1haあたり数十分で空撮が終わり、地上調査より大幅に速い。急斜面や崖地など人が入りにくい場所も上空から俯瞰でき、同じ座標で撮り続ければY1・Y3・Y5の変化を画像で追えます。YOLOやU-Netといった深層学習モデルで苗木を自動検出する研究も進み、幼齢期の調査では人手を大きく減らせることが報告されています。

ただし万能ではありません。林冠が閉じた中〜大径の苗(Y5以降)では個体の見分けが難しく、ササが茂った場所では精度が落ちます。AIは「広く当たりをつける」ために使い、怪しいところは地上調査で確かめるハイブリッド運用が現実的。補助金申請の証拠としてはAI単独では弱いため、地上調査の併用が原則です。手法はあくまで、幼齢期のY1〜Y3に最も向いている、と覚えておくとよいでしょう。

気候変動が活着率を押し下げている

気になるのは、温暖化の影響です。夏の極端な高温が浅根性の苗を乾かし、梅雨が「空梅雨」と「集中豪雨」に二極化して水分供給が不安定になる。シカ・イノシシの分布が温暖化で北へ・標高の高い方へと広がり、これまで被害の少なかった東北・北海道道南でも食害が増えています。こうした条件のもと、活着率は下がりやすくなっていると考えられます。対策としては、地域に適合した産地・系統の苗木(エリートツリーなど)を選ぶこと、コンテナ苗で植栽時期を柔軟にすること、複数樹種の混植でリスクを分散することが研究・実証されています。活着率調査はいまや、単なる出来高検査から、気候変動への適応戦略の最前線データへと役割を広げつつあります。

よくある質問

Q. 活着率はいつ測るのが標準?

Y1(1年後)、Y3(3年後)、Y5(5年後)が標準です。Y1で初期の干害や植え傷みが、Y3で補助金の合否(80%以上が目安)が見え、Y5が林冠閉鎖前の最終評価になります。

Q. 活着率が低いと必ず補植が必要?

造林補助の完了確認で定める基準を下回れば補植が必要になり、著しく低ければ失敗として扱われることもあります。ただし広葉樹は初期の生残率が低めでも継続観察するなど、樹種・地域で運用が変わるので、都道府県の補助要綱を必ず確認してください。

Q. コンテナ苗と露地苗、どちらを選ぶ?

活着率を安定させたいならコンテナ苗が有利です。各地の試験で露地苗より明確に高い活着率が報告されています。苗木単価はやや割高ですが、補植コストの削減で回収できるケースが多いです。広葉樹はコンテナ化技術がまだ発展途上で、樹種により判断が分かれます。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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