結論先出し
- 間伐強度は本数間伐率20-40%、材積間伐率15-30%が標準(林野庁ガイドライン)。樹冠長率(live crown ratio)40%以上維持が目安。強度間伐は本数50%超の積極的施業で、近年急速に普及中。
- 効果:残存木の直径成長で30-50%増(森林総研実証)、林床光環境改善、複層化促進、災害(風害・雪害)リスク低下、炭素貯留増、生物多様性向上。
- 気候変動下:強度間伐でレジリエンス向上の知見が国内外で蓄積。乾燥・風害耐性向上、ストレス分散、炭素クレジット創出(J-クレジット制度)、補助金拡充(森林環境譲与税、間伐推進事業)。
間伐は造林の中心的施業で、その「強度」が林分の将来を大きく左右します。本数の20-40%を伐採する標準間伐から、50%以上を伐採する強度間伐まで、目的により幅広い選択肢があります。日本のスギ人工林は約450万ha、ヒノキ人工林は約260万ha(林野庁2024年統計)に及び、その大半が間伐期を迎えており、施業選択の巧拙が森林の経済価値・公益機能・気候変動適応力を左右します。本稿では強度の決定要因、各レベルの効果、樹種別最適解、列状間伐と単木選別の比較、LiDAR/ドローン技術、AI選木、補助金制度、カーボンクレジット、北欧・北米の戦略、伐採コストまで、林業経営の観点から数値と出典を明示しつつ詳述します。
間伐の目的と強度の関係
間伐の主要目的は、残存木の成長促進と林分構造の最適化です。間伐しないと、樹冠閉鎖により個体が光合成効率低下、共倒れリスク増加、低品質材生産につながります。森林総合研究所(FFPRI)の長期試験地データでは、無間伐区のスギ40年生林で平均胸高直径が22cmにとどまるのに対し、適正間伐区では28-32cmに達し、収穫量で1.4倍、A材率で2倍以上の差が出ることが報告されています。
間伐強度の選択は、以下の要素で決まります:
1. 林分齢:若齢期(10-20年)は弱間伐(除伐主体)、中齢期(20-40年)は中〜強間伐(収入間伐の中心)、壮齢期(40年以降)は強間伐または主伐前間伐
2. 樹種:陽樹(マツ、カラマツ)は強間伐に適応、陰樹寄りの中庸樹(ヒノキ、ブナ)はやや弱め、極端な陰樹(モミ、ツガ)は弱間伐
3. 地位(地力):地位指数(基準林齢時の樹高)が高い林分は強間伐に耐え、低地位は弱間伐で個体保護
4. 経営目標:高品質材(節無し・通直)生産は中強度を多回、バイオマス・速生は強度1-2回、長伐期大径材は早期強間伐後に長期保育
5. 災害リスク:風害多発地域(沿岸・尾根筋)は段階的強度化、雪害多発地域(日本海側豪雪地帯)は風下側残存配慮、土砂災害危険箇所は急激な強間伐回避
6. 経済性:強度間伐は1回の収入大、弱間伐は複数回の継続収入、低質材市場価格と労働力確保状況も加味
7. 立地条件:林道密度(m/ha)と作業システム(架線、車両系)が搬出可能量を制約。100m/ha以上の高密度路網ではフル強度実施可能、30m/ha以下では弱〜中強度に限定
- 林野庁 森林・林業基本計画、間伐実施ガイドライン
- 森林総合研究所(FFPRI) 長期収穫試験データ
- 各都道府県林業センター(北海道立林産試験場、長野県林業総合センター、宮崎県林業技術センター 等)の地域試験成績
強度別の効果と特性
間伐強度を4レベルに分類し、それぞれの特性を比較します。表中の数値は森林総研および各県林業センターの長期試験地データの中央値です。
| 強度 | 本数間伐率 | 残存木成長 | 林床環境 | リスク |
|---|---|---|---|---|
| 弱間伐 | 20%以下 | 限定的(5-10%増) | 暗い・閉鎖 | 間伐遅れ |
| 標準間伐 | 20-40% | 中(10-25%増) | 中程度 | 標準的 |
| 強間伐 | 40-50% | 大(25-50%増) | 明るい | 風害リスク微増 |
| 超強間伐 | 50%超 | 極大(50%超) | 極明・草本侵入 | 形質低下リスク |
樹種別の最適間伐戦略
主要造林樹種のスギ、ヒノキ、カラマツでは、生理特性と用途の違いから最適な間伐戦略が異なります。
スギ(Cryptomeria japonica):成長旺盛・速生で、若齢期から積極的な間伐に応答します。標準的な施業体系では植栽密度3,000本/ha、15-20年生で1回目(本数率30%)、25-30年生で2回目(30-35%)、35-45年生で3回目(強間伐40-50%)、50-60年生で主伐。最終本数は400-600本/ha、平均直径30-40cm。九州(宮崎・大分)の早生スギ系統では45年伐期、東北の品種では60年伐期が一般的です。市場価格はA材(無節・通直)でm³あたり13,000-18,000円、B材で8,000-12,000円、C材(チップ用)で3,000-5,000円程度(2024年実勢、林野庁・木材需給統計)。
ヒノキ(Chamaecyparis obtusa):成長はスギより遅いが材価が高く、長伐期高品質材生産が中心。植栽密度3,000-3,500本/ha、20-25年生で1回目(本数率25-30%)、30-35年生で2回目、40-50年生で3回目、60-80年伐期。木曽・吉野・尾鷲では伝統的な弱・標準間伐多回施業(本数率20-25%×4-6回)で目無し化を促進。市場価格はA材30,000-50,000円/m³、目無し材は更に2-3倍の高値もありえます。陰樹的特性のため、強度間伐後の急激な日光は表皮焼け(日焼け被害)を起こすため、段階的強度化が推奨されます。
カラマツ(Larix kaempferi):典型的陽樹で強間伐への適応性高。落葉性で林床光環境を季節変動させ、混交樹種を呼び込みやすい樹種。北海道・長野・岩手で主要造林樹種、植栽密度2,500-3,000本/ha、15年生で1回目(30-40%)、25-30年生で2回目(40-50%)、40-50年伐期。CLT(直交集成板)需要拡大で材価上昇傾向、A材12,000-15,000円/m³。風害に弱いため、強度間伐後は林縁防風帯の確保が重要。
列状間伐と単木選別間伐の比較
間伐の手法は大別して2方式あり、それぞれメリット・デメリットが明確に異なります。
列状間伐(systematic row thinning):植栽列を一定間隔(2列残し1列伐、3列残し1列伐、5残2伐等)で機械的に伐採する方式。北欧・北米で主流、日本でも2010年代以降普及。
- 長所:選木不要で作業時間が単木選別の約60%、作業道の自動的形成、機械化適性高、労働力1.5-2倍効率化
- 短所:優良木も無差別に伐採される、林分の質的選別ができない、景観が機械的
- 適合:低質林、急傾斜地、労働力不足地域、バイオマス用材生産
単木選別間伐(selective thinning):個々の立木を評価し、形質不良・被圧木・将来性低い個体を選んで伐採。日本の伝統的方式。
- 長所:高品質材生産に有利、林分の質的向上、生物多様性配慮可
- 短所:選木技術者が必要、作業時間長、機械化困難、人件費高
- 適合:高地位林分、高品質材生産林、長伐期施業、優良大径材生産
折衷方式:列状+選別:作業道沿いを列状で開け、その上で隣接列内を選別する2段階方式が近年増加。コスト削減と品質確保の両立を狙ったもので、森林組合の標準施業に採用されつつあります。
利用間伐と保育間伐の経済性
間伐材の取り扱いで、林業経営の収支構造が決定的に変わります。
利用間伐(commercial thinning):伐採木を市場に販売し収入化。20年生以上の中・大径間伐材が対象、搬出費用を回収できる径級(末口14cm以上)が必要。1ha当たり収入は10万〜80万円程度(材価・搬出条件により変動)。林野庁の「間伐等推進対策」では利用間伐への補助加算(5,000-15,000円/ha相当)が継続。
保育間伐(pre-commercial thinning, PCT):伐採木を林内放置または林床利用、10-20年生の若齢間伐で実施。販売収益なし、補助金頼み(造林補助32,000-46,000円/ha、地域加算込み)。日本の20年生以下の若齢林で多用されてきたが、近年は林地残材バイオマス利用が広がり「収益的保育間伐」も登場。
搬出コストの目安:軽トラ運搬可能な近接林で3,000-5,000円/m³、車両系(フォワーダ・グラップル)で5,000-9,000円/m³、架線系(タワーヤーダ・スイングヤーダ)で8,000-15,000円/m³、急峻地のヘリ集材で20,000-40,000円/m³。林道整備状況が経済性を完全に支配します。林野庁目標の路網密度は林業専用道40m/ha・森林作業道100m/ha以上ですが、現状全国平均は20m/ha前後にとどまります。
強度間伐の意義と実践
強度間伐(本数40-60%)は、近年の林業現場で注目される施業です。FFPRI、岐阜県森林研究所、九州大学等の長期実証で、レジリエンス・経済性両面の優位性が示されています。
意義:
1. 残存木の成長促進:個体が確保する空間・光・栄養が大幅増加し、直径成長率は無間伐の1.4-1.6倍に達することも。FFPRI多摩試験地では強間伐区(本数率55%)で10年後の胸高直径が無間伐区比165%、収穫材積で1.32倍を記録。
2. 林床光環境改善:林床光量が大きく増加し、地表植生・生物多様性の回復。広葉樹侵入で混交化進行。下層植生のシダ・草本被度が無間伐林の3-5%から強間伐林で40-60%に増加(環境省モニタリング1000調査)。
3. 災害レジリエンス:個別強化された残存木は風害・雪害に耐性。樹冠長率が高く、樹高/直径比(H/D比)が低い(80以下が目標)残存木集団は、台風時の幹折れ率が無間伐林の1/3以下に抑制。
4. 主伐収入の前倒し:強度間伐で得られる材は早期収入として林業経営に貢献。50年伐期想定の経営計画でも、35年生の強間伐収益で全期間収支のNPV(正味現在価値)を10-20%改善した試算あり。
5. 気候変動適応:低密度林分は乾燥耐性高い。立木間競合が緩和され、根系発達と土壌水分利用効率が向上。猛暑・少雨年における枯損率が無間伐林比で1/2-1/3に低下した事例(関東・東海の2022-2023年データ)。
6. 炭素貯留:間伐木をバイオマス燃焼にせず長期木材製品(CLT・集成材・建築構造材)に固定すれば、間伐後の残存木成長加速と合わせて、林分全体としての炭素貯留量が長期的に向上します。
実践上の注意:
1. 残存木選定:将来の主伐木として最適な個体(健全・通直・無節・樹冠均整)を選んで残す。フューチャーツリー(future crop tree, FCT)方式では1ha当たり200-400本のFCTを優先選定し、その周囲を強度間伐する手法が普及。
2. 風害リスク評価:強度間伐後、残存木の樹冠が個別化するため、風害リスクが微増。地形・気象を考慮し、尾根筋・卓越風方向には林縁防風帯(幅20-30m、低強度間伐)を残す。
3. 段階的実施:一度に超強度ではなく、複数回に分けて段階的に強度化。30%→40%→50%等、林分応答を見ながら強度を上げる。
4. モニタリング:強度間伐後の3-5年間、林分状態を継続観察。年1回の毎木調査、定点写真撮影、必要に応じUAV空撮で立木変化を記録。
LiDAR・ドローンによる林分把握と選木自動化
2020年代以降、リモートセンシング技術の急速な進歩で、間伐計画策定が効率化しています。
航空LiDAR:航空機搭載のレーザー計測機で、立木1本ごとの位置・樹高・胸高直径推定値が取得可能。林野庁の「森林資源情報把握高度化事業」で各都道府県のLiDAR計測が進み、2024年時点で全国の人工林の約45%がカバー済。1ha当たり1,000-3,000ポイントの解像度で、立木抽出精度(樹頂検出)は90-95%、樹高推定誤差は±50cm以内。
UAV(ドローン)LiDAR/写真測量:林分単位の高解像度計測。SfM(Structure from Motion)写真測量で50ha/日、UAV-LiDARで20-30ha/日の計測が可能。コストは10,000-30,000円/ha程度。間伐前後の比較で、間伐強度の実測値を即時確認可能。
AI選木システム:森林総研・民間企業(パスコ、アジア航測、フォレストデジタル等)が開発。LiDAR点群から立木の樹冠形状・直径・隣接競合を自動評価し、伐採推奨木を自動抽出。試験運用での選木一致率は熟練技術者比で75-85%、所要時間は1/5-1/10。中山間地の高齢者技術者不足問題への解決策として期待。
衛星リモセン:Sentinel-2、Landsat-9、ALOS-3等の衛星データで広域の林分密度・健全度モニタリング。間伐実施直後の林冠開放を10m解像度で検出可能で、補助金実施確認、違法伐採監視にも活用。
気候変動下の新しい考え方
気候変動下で、間伐強度の最適解が変化しつつあります。IPCC AR6(2022)でも森林管理戦略の適応的見直しが指摘され、日本の林業政策にも反映が進んでいます。
1. 乾燥耐性の重視:温暖化・乾燥化が進む地域では、低密度林分の方がストレス耐性高。強度間伐への支持。北米西部の研究(USFS, 2020)では、密度を50%削減した林分の樹木枯死率が無間伐林の1/3だった事例も。
2. 風害リスクの増大:台風強度・頻度の増加で、強度間伐後の風害リスクが懸念。バランス判断必要。気象庁の予測では2050年までに本邦への上陸台風数は変わらないが、強度(最大風速)は5-10%上昇見込み。
3. 多様性確保:単純林の脆弱性を補うため、間伐で混交化を促す方針。広葉樹混交率10-30%を目標とした間伐選木が広がる。
4. 炭素貯留評価:間伐木の利用方法(バイオマス、製品化)で炭素収支が変動。長期製品化なら炭素貯留増。J-クレジット制度では森林経営活動由来クレジットが2024年度に約30万t-CO₂発行され、価格は1tあたり3,000-8,000円で取引。間伐実施もクレジット算定対象。
5. 樹形誘導:気候変動下の樹形変化を見越した間伐選木。深根性個体、樹冠長率の高い個体を優先残存。
6. 自動化技術:ドローン空撮+AIによる林分構造解析、間伐木選定の自動化(前節参照)。
7. 病虫害適応:温暖化でカシノナガキクイムシ、マツノザイセンチュウ、スギカミキリ等の被害域が北上。健全度の低い個体を優先伐採し、林分全体の防御力を高める「衛生間伐」の重要性が増加。
国際的な間伐戦略:北欧・北米の事例
世界の主要林業国における間伐戦略は、日本の今後の方向を考える上で示唆的です。
スウェーデン:トウヒ・マツ単純林管理で世界最大級の精度。植栽密度2,000-2,500本/ha、25年生で1回目(25-30%)、35-45年生で2回目(30-35%)、60-80年生で皆伐。スウェーデン林業庁(Skogsstyrelsen)は1990年代から列状間伐とFCT方式を標準化、年間素材生産量約7,000万m³で日本の約2倍。
フィンランド:トウヒ・マツ・カバノキ混交林管理が中心。3-4回の中強度間伐(25-35%)+皆伐の体系。Metsä Group、Stora Enso等が認証林(FSC・PEFC)運用、ハーベスタ・フォワーダ完全機械化(作業の95%以上)。
ドイツ:Dauerwald(恒続林)思想の長伐期択伐主体。単木選別の中・強度間伐を多回繰り返し、複層化と樹種混交を促進。気候変動対応でトウヒ単純林の混交林転換が国家政策として進行中。
米国・カナダ:太平洋岸北西部のダグラスファー人工林では植栽密度1,000-1,500本/ha、20-30年生で強度間伐(40-50%)後に60-80年伐期で皆伐。USFSやBC州森林局はカーボンクレジット連動の長伐期管理にシフト中。
日本との比較で目立つのは、(1)欧米は植栽密度がやや低く強度間伐が前提、(2)機械化率が大幅に高い、(3)路網密度が桁違いに高い(北欧40-150m/ha)の3点です。
カーボンクレジットと間伐
2050年カーボンニュートラル宣言以降、森林吸収・貯留の経済的評価が進み、間伐が気候政策の重要施策となっています。
J-クレジット制度:森林経営活動由来のCO₂吸収量を認証し、クレジット化して企業へ販売する制度。間伐実施面積×単位吸収量(樹種・林齢別係数)で算定、平均的なスギ40年生林で1ha・年あたり3-7t-CO₂相当のクレジット創出。市場価格3,000-8,000円/t-CO₂、間伐1ha分で約2-5万円/年の付加収入。
森林吸収量カウントの拡充:環境省・林野庁は2024-2025年度に算定方法見直しを進め、長期木材製品(HWP: Harvested Wood Products)の炭素貯留も国の吸収量目録(NIR)に算入。間伐木をバイオマス燃焼でなく建材用途にすることで、吸収量目録上の貢献度が大幅向上。
森林環境譲与税:2019年導入、2024年度予算規模約670億円(林野庁)。市町村への譲与で、間伐実施・林道整備・人材育成に活用。森林経営管理制度との組合せで、私有林の集約化・適正間伐促進が政策的優先課題。
VCS・Gold Standardなど国際クレジット:日本の森林由来クレジットでも、国際認証(Verra・Gold Standard)取得事例が増加。海外企業のオフセット需要を取り込み、t-CO₂あたり1,500-3,000円程度のプレミアムが付くケースも。
補助金と政策制度
間伐の経済性を支える主要補助金制度を整理します(2024年度予算ベース)。
- 森林整備事業(造林補助):間伐実施に対し1ha当たり32,000-46,000円(標準・強度別)、地域加算(豪雪・急傾斜・路網整備地)あり
- 間伐等推進対策:路網整備一体型で5,000-15,000円/ha加算
- 森林経営計画認定地:計画認定で補助単価15-30%増
- 森林環境譲与税:市町村事業で、私有林の集約化・所有者不明林対応費用
- 都道府県独自補助:高知県の長伐期施業補助、岡山県の路網密度補助等、地域特化型
- 緑の雇用事業:林業事業体の新規就業者育成、3年間の研修費補助
- 林業機械購入補助:高性能林業機械(ハーベスタ・プロセッサ等)導入費の1/2-2/3補助
補助金活用の留意点:森林経営計画の認定(5年計画、所有者複数共同可)で補助単価が大幅に上がり、計画的・連年的な間伐実施で高い投資効率が確保できます。
木材市場の影響と需給動向
間伐材の販売単価は、住宅着工数・輸入材価格・バイオマス需要で大きく変動します。
2021-2022年のウッドショック:輸入材価格が2-3倍に高騰し、国産材需要が急増。スギ正角材で平米5万円台、ヒノキで8-10万円台に達し、間伐収益性が一時大幅改善。
2023-2024年の調整局面:輸入材価格が落ち着き、スギ正角材は平時水準(3-4万円台/m³)に戻り、間伐材市場も平年並み。CLT需要・バイオマス需要は継続的に拡大。
バイオマス発電の影響:FIT制度下でバイオマス発電所が全国に増加、チップ材5,000-7,000円/m³。低質間伐材の出口確保で保育間伐の経済性も改善。
輸出市場:中国・韓国・東南アジア向け輸出が増加し、2024年度の木材輸出額は約700億円。スギ・ヒノキ中目材輸出も間伐材の販路として注目。
労働力・林道密度・機械化の課題
間伐の実施可能性を制約する根本要因は、労働力・路網・機械の3点に集約されます。
労働力:林業従事者は2024年度約4.4万人(林野庁)、ピーク時(1980年代14万人)の約3割。平均年齢52歳、若年層(35歳未満)約20%。緑の雇用事業で年間1,500人新規就業、5年定着率60%。
林道・作業道密度:全国平均22m/ha(2024)、欧州主要国の40-150m/haと比較して低水準。新設・改良に1m当たり1,500-3,000円。
高性能林業機械:ハーベスタ・プロセッサ・フォワーダ等の保有台数は約1.4万台(2024)。1台5,000万-1億円の高額投資で稼働率確保が課題。レンタル・共同利用組合が普及。
女性・外国人材:林業女子プロジェクト、外国人技能実習制度等で多様化進行。ICT活用・機械化による労働環境改善が定着促進に寄与。
コストパフォーマンスと将来
間伐強度の経済性は、収入と支出のバランスです。
強度間伐の経済性:1回の搬出量が大きく、1ha換算でも収益性高。労働投入も比較的効率的。30-40年生の中径材主体で1ha当たり50-100m³搬出、収入30-80万円、コスト20-50万円、純収入10-30万円程度(材価・条件で大きく変動)。
標準間伐の経済性:複数回に分けて行うため、長期安定的だが1回あたり収益は限定的。1ha当たり20-40m³搬出、収入10-30万円、コスト10-20万円、純収入0-10万円。
弱間伐の経済性:搬出コストが収益を圧迫し、補助金頼り。20年生以下の若齢林の保育間伐では基本的に支出超過、補助金充当で実施。
現代日本林業では、労働力減少・コスト圧力から強度間伐への移行傾向。一方、伝統的林業(吉野林業、北山林業、尾鷲林業等)では弱・標準間伐の高品質材生産モデルが残ります。
将来展望:気候変動・労働力・経済性・生物多様性・災害レジリエンスを総合考慮した「適応的間伐戦略」が求められます。AIによる林分シミュレーション、ドローン空撮による林分把握、自動化機械、カーボンクレジット連動の補助金制度等の技術と、伝統的な林業知見の融合が、次世代の間伐技術を形成していくと期待されます。Forest Eightでは、現地データと科学的根拠に基づく間伐計画策定支援を提供しています。
FAQ:よくある質問
Q1. 間伐強度は誰が決める?
A. 森林経営者(個人林業者・森林組合・自治体・国)が決定。県の標準・林野庁ガイドラインを参考に、現地状況・経営目標で判断。森林経営計画の認定地では、計画書記載の強度に従って実施。
Q2. 強度間伐後に風害が出たら?
A. 強度間伐は風害リスクが微増します。風害頻発地域では段階的強度化、地形を考慮した選木で対応します。風上側に低強度の林縁防風帯(幅20-30m)を残すと、風害低減効果が確認されています。完全予防は不可能ですが、樹高/直径比80以下の健全木を残せば被害は限定的。
Q3. 間伐回数は何回が標準?
A. 1林分(植栽から伐採まで40-60年)で3-5回が標準。施業開始10-15年から開始し、5-10年間隔で実施。長伐期(80年以上)施業では4-7回に増えます。
Q4. 強度間伐の補助金は?
A. 県・市町村で「強度間伐補助」が設定されている地域あり。森林環境譲与税活用、林野庁の造林補助(標準32,000-46,000円/ha、強度型は加算)等の組合せ。森林経営計画認定で15-30%増。
Q5. AI・ドローンの活用度は?
A. ドローン空撮による林分構造解析、AI選木補助は研究・実証段階から実用段階へ移行中。LiDARカバー率は2024年で全国人工林の約45%。AI選木の熟練者一致率は75-85%、本格運用は今後3-5年で広まると予測されます。
Q6. スギとヒノキで間伐強度は違う?
A. 違います。スギは陽樹的特性で強間伐に適応、ヒノキはやや陰樹寄りで段階的強度化が安全。スギは標準30-40%、ヒノキは20-30%が目安。ヒノキで急激な強間伐を行うと、表皮焼け(日焼け被害)が発生する場合があります。
Q7. 列状間伐と単木選別、どちらが良い?
A. 経営目標による。バイオマス・低質材生産、労働力不足、急傾斜地は列状が有利。高品質材生産、生物多様性配慮、優良林分は単木選別が有利。両者を組合せた折衷方式も増加中。
Q8. 間伐木をバイオマス利用すると炭素的にマイナス?
A. 短期的にはCO₂排出ですが、化石燃料代替分はネット排出になりません。一方、建材等の長期木材製品に固定する方が炭素貯留期間は圧倒的に長く、HWP算入で気候政策上の評価も高くなります。
Q9. カーボンクレジットで間伐収入は増える?
A. 増加します。J-クレジットで1ha・年あたり1-5万円の付加収入が見込めます。森林経営活動由来クレジットの審査・認証手続きが必要で、森林組合や認証コンサルへの依頼が一般的。
Q10. 路網密度を上げるには?
A. 林野庁・都道府県の作業道整備補助を活用。1m当たり1,500-3,000円のコスト、補助率は事業区分で50-90%。森林経営計画と組合せた連年整備で、効率的に密度向上が可能です。
Q11. 間伐遅れの林分はどう挽回?
A. 一気に強度50%超の間伐を実施すると風害・倒伏リスク高。3-5年間隔で2-3回に分けて段階的に強度化するのが安全。間伐遅れ林分は樹高/直径比が高く(90以上のことも)、最初は本数率20-25%程度から開始。
Q12. 混交林化と間伐は両立する?
A. 両立します。針葉樹単純林の間伐後に広葉樹を侵入させる「侵入更新」、植栽による「人工混交化」、両者の中間など複数手法あり。間伐強度40%以上で広葉樹実生の発生が顕著に増加します。
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