JAS機械等級区分E50〜E150|目視等級との違い

E70は7.0ではありません JAS機械等級区分は6段階 | Forest Eight

構造用の製材を発注すると、伝票に「甲種2級」と書かれていることもあれば、「E70」と書かれていることもあります。どちらもJAS(日本農林規格)の等級ですが、決め方も、保証している中身も、まったく違います。そして構造計算で使う基準強度は、この等級と樹種の組み合わせで告示から引いてきます。

この記事では、目視等級区分と機械等級区分(MSR)の違い、機械等級のE50〜E150が実際に何を保証しているのか、そこから許容応力度をどう出すのかまでを、告示の原表に沿って整理します。ヤング係数そのものの意味や樹種別の代表値は、木材のヤング係数とは|樹種別ランキングと含水率・測定法にまとめてあります。

目次

JASの構造用製材には、2系統の等級がある

製材の日本農林規格(平成19年農林水産省告示第1083号)が定める構造用製材の等級は、次の2系統に分かれます。

項目 目視等級区分 機械等級区分(MSR)
何を見るか 節・丸み・繊維走向・割れなどの外観 曲げヤング係数の実測値
等級記号 甲種構造材/乙種構造材 の 1級〜3級 E50・E70・E90・E110・E130・E150
判定単位 1本ごと(人の目) 1本ごと(測定機)
保証している中身 欠点の大きさが基準以内であること ヤング係数が一定の範囲に入ること
設備 不要(検査員の資格が必要) グレーディングマシンが必要
主な用途 住宅一般・在来軸組 梁・桁、大スパン、中大規模木造

甲種と乙種の違いは、想定する応力の向きです。甲種構造材は主として曲げ(横架材=梁・桁・母屋)乙種構造材は主として圧縮(柱)に使うものとして区分されています。ですから「甲種2級」は梁向けの2級、「乙種2級」は柱向けの2級であって、同じ2級でも基準強度の数値は違います。

機械等級区分のE値は「以上」ではなく「範囲」

ここがいちばん誤解されやすいところです。E70は「7.0kN/mm²以上」という意味ではありません。JASの機械等級区分は、測定した曲げヤング係数がどの区間に入るかで等級を決めます。

等級 曲げヤング係数の区分(kN/mm²) 言い換えると
E50 3.9以上 5.9未満 3.9〜5.9GPa
E70 5.9以上 7.8未満 5.9〜7.8GPa
E90 7.8以上 9.8未満 7.8〜9.8GPa
E110 9.8以上 11.8未満 9.8〜11.8GPa
E130 11.8以上 13.7未満 11.8〜13.7GPa
E150 13.7以上 13.7GPa〜

等級はこの6段階だけです。E125やE170といった記号を見かけたら、それは製材の等級ではなく構造用集成材の強度等級(E120-F330 のような表記の前半)です。製材と集成材でE値の刻みが違うので、混同すると発注も構造計算もずれます。

もうひとつ。等級名の数字は区分の目安であって、実測値そのものではありません。E70の材の実測は5.9〜7.8GPaのどこかで、7.0GPaぴったりではないのです。単位は 1GPa = 1kN/mm² = 1000N/mm² で、どれも同じ値の別表記です。

JAS機械等級区分は6段階/数値は「区間」で決まる3.95.97.89.811.813.7曲げヤング係数(kN/mm² = GPa)E50E70E90E110E130E150スギの主戦場ヒノキ・ベイマツの主戦場
図1:機械等級区分の区分値(製材のJAS)。E70は「7.0以上」ではなく5.9〜7.8の区間を指す

基準強度Fbは、等級だけでは決まらない

構造計算に使う基準強度(Fc・Ft・Fb・Fs)は、平成12年建設省告示第1452号で定められています。ポイントは、同じE70でも樹種群が違えば数値が違うことです。機械等級区分の表は、次の3グループに分かれています。

  • あかまつ・べいまつ・ダフリカからまつ・べいつが・えぞまつ・とどまつ(E70〜E150)
  • からまつ・ひのき・ひば(E50〜E150)
  • すぎ(E50〜E150)

もっとも流通量の多いすぎの数値を挙げます(単位:N/mm²)。

等級(すぎ) Fc 圧縮 Ft 引張 Fb 曲げ
E50 19.2 14.4 24.0
E70 23.4 17.4 29.4
E90 28.2 21.0 34.8
E110 32.4 24.6 40.8
E130 37.2 27.6 46.2
E150 41.4 31.2 51.6

比較のために、目視等級区分のすぎ甲種構造材は1級 Fb=27.0、2級 Fb=25.8、3級 Fb=22.2。機械等級のE70(29.4)は、目視の甲種1級(27.0)より高いわけです。せん断の基準強度Fsだけは機械等級でも樹種ごとの値(すぎは1.8)を使います。

なお、たる木や根太のように並列して荷重を分担する部材(並列材)では、曲げの基準強度Fbを割り増しできます。目視等級区分では構造用合板等を張る場合1.25倍・その他1.15倍、機械等級区分では1.15倍です。

許容応力度は「1.1/3」──1/3ではない

基準強度から許容応力度への換算は、建築基準法施行令第89条が定めています。よく「長期は1/3」と略されますが、正しくは1.1/3です。

  • 長期に生ずる力に対する許容応力度 = 1.1F / 3
  • 短期に生ずる力に対する許容応力度 = 2F / 3
  • 積雪時(長期)はさらに1.3倍、積雪時(短期)は0.8倍
  • 基礎ぐい・浴室など常時湿潤状態の部分は70%に低減

すぎE70(Fb=29.4N/mm²)で計算すると、長期許容曲げ応力度は 1.1×29.4÷3 = 10.78N/mm²、短期は 2×29.4÷3 = 19.6N/mm² となります。

この係数には根拠があります。短期許容応力度は基準強度を安全率1.5で割った値、長期はそこに0.55を掛けた値で、荷重の継続時間が長いほど木材が支えられる応力は下がるという性質(マディソンカーブ)を反映しています。長期は50年、積雪長期は3か月、積雪短期は3日間の継続時間を想定しています。

「5%下限値」がなぜ出てくるのか

基準強度の数値は、平均値ではありません。同じ等級の材を何百本も試験すると値はばらつくので、下位5%を切り捨てた5%下限値(5パーセンタイル値)を基礎にしています。ばらつきの大きい材料ほど、平均が同じでも下限値は低くなる。だから「平均で強い」ことにはあまり意味がなく、「下限が保証されている」ことに意味があるわけです。

機械等級区分の値打ちはここにあります。1本ずつ測って区間に振り分けるので、同じ等級のなかでのばらつきが小さく、下限値を高く取れる。目視等級では節や繊維走向という外から見える欠点しか判定できず、内部の材質差は等級に反映されません。長スパンの梁やたわみで決まる設計に機械等級材が使われるのは、この差によるものです。

実務では、手に入る等級が先に決まっている

等級表を見ると上位等級を指定したくなりますが、現実には市場に出てくる本数のほうが先に決まっています。岐阜県が県産スギの平角材459本を実大試験した結果では、機械等級の出現割合はE70が223本ともっとも多く、E90が150本、E110は38本、E50が45本。平均曲げヤング係数は7.82kN/mm²でした。

県産ヒノキ200本の試験では、E90が21%・E110が46%・E130が30%と、ほぼこの3区分に収まっています。平均は10.90kN/mm²。樹種によって分布そのものが違うということです。

一般に流通しやすい構造材は、スギならE70か無等級、ヒノキならE90、ベイマツならE90〜E110。せいの大きな材ほど年輪幅が広く未成熟材の割合も上がるため、ヤング係数は下がる傾向があります。せい300mm超でE110を大量に、といった指定は現実的ではありません。必要なら集成材で対応するほうが、納期もコストも読めます。

よくある質問

Q. 製材所から「E70の保証」と言われましたが、確認する方法はありますか?

A. JAS認定工場であれば格付の記録が残ります。発注時に、機械等級区分による格付であること、測定値と検査記録が確認できることを条件に入れてください。「E70相当」という言い方は、JASの格付を受けていない可能性があります。構造計算に告示の基準強度を使うなら、JAS格付材であることが前提です。

Q. 無等級材でも構造計算はできますか?

A. できます。告示1452号には無等級材(JASに定められていない材料)の基準強度も定められており、すぎ・えぞまつ・とどまつなどのグループでFc=17.7、Ft=13.5、Fb=22.2、Fs=1.8です。ただし数値はJAS材より低く設定されるため、断面は大きくなります。

Q. 甲種と乙種、どちらを指定すればいいですか?

A. 梁・桁・母屋など曲げが効く横架材は甲種、柱は乙種です。同じ樹種・同じ級でも、甲種のほうが引張と曲げの基準強度が高く設定されています。

Q. E値が高いほど強い材、という理解でいいですか?

A. おおむね相関しますが、一致はしません。ヤング係数は変形しにくさ、基準強度Fbは壊れにくさで、別の指標です。節の多い材はE値が高くても曲げ強度が伸びないことがあります。設計では、たわみで決まる部材ならE値、応力で決まる部材ならFb値が効いてきます。たわみとクリープの記事で具体的に扱っています。

まとめ

JASの構造用製材には、外観で分ける目視等級区分と、ヤング係数を実測して分ける機械等級区分があります。機械等級はE50からE150までの6段階で、それぞれが「以上」ではなく区間を指す。基準強度は告示1452号で樹種群と等級の組み合わせごとに定められ、許容応力度は長期が1.1F/3、短期が2F/3です。

そして実務では、告示の表よりも先にその等級が現実に何本手に入るかが効いてきます。スギならE70、ヒノキならE90あたりが厚い層で、上位等級は本数が細る。設計段階で必要等級を決めるときは、告示の数値と流通の実態を並べて見るのが結局いちばん早道です。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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