国産材丸太輸出|丸太流出問題と国内製材業の確保

国産材丸太輸出 | Forest Eight

「日本は木材を輸入する国」というイメージが長く続いてきましたが、じつは近年、丸太を海外へ輸出する動きも育っています。自給率がまだ42%(2022年)にとどまる国が丸太を売っている――と聞くと、ちょっと不思議に思えるかもしれません。そのあたりの事情を、数字をたどりながら整理してみます。まずは全体像から。

国内素材生産量2,140万m³(2022)林野庁丸太輸出量67万m³(2022)ピーク2018年140木材自給率42%2022年目標50%以上輸出比率3.1%生産量比2022年
図1:丸太輸出主要諸元(出典:林野庁「木材需給表」・財務省「貿易統計」)

丸太の輸出が本格的に再開したのは2000年代、中国の住宅建設ブームがきっかけでした。スギ・ヒノキの丸太需要が中国・韓国・台湾で高まり、2010年代に急増。2018年には140万m³というピークを迎えます。ところがその後はコロナ禍とウッドショック、さらに中国の不動産不況が重なり、40〜70万m³規模まで落ち着きました。2022年の輸出は67万m³。国内の素材生産量2,140万m³に対して3.1%ですから、量だけ見ればごく一部です。

丸太輸出量推移(万m³)0408012016020142015201620172018202020222024予ピーク140
図2:丸太輸出量推移(出典:財務省「貿易統計」を基にした近似グラフ)

輸出先の最大手は中国で、2010年代後半には丸太輸出の半分超を占めていました。木造構造材や家具、梱包材として使われます。次いで合板用ラミナや建築材で安定需要のある韓国(年20〜40万m³)、神社仏閣建築や家具向けに日本との文化的近さで根強い台湾(年5〜10万m³)と続きます。輸出のおよそ半分は九州産で、志布志港・油津港・伊万里港・八代港などから船積みされていきます。

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「国産材なのに輸出していいのか」という論争

この丸太輸出には、業界のなかで賛否があります。輸出が増えると国内の製材所や合板工場が原木を取り合うことになり、調達コストが上がる――というのが抑制論の核心です。実際、輸出が140万m³に達した2018年には、国内製材所からの不満がはっきり表に出ました。「自給率を上げたいのに丸太を海外に出すのは矛盾では」という声も根強くあります。

一方で林野庁の立場ははっきりしていて、「輸出は国内需給に大きな影響を与えない」「むしろ輸出が山元手取りの向上に寄与する」というものです。日本の森林蓄積は55.6億m³もあり、年間の成長量7,000万m³に対して素材生産は2,140万m³。未利用の資源が大量に眠っているなかで、輸出67万m³は資源量から見ればごく小さい。それよりも、輸出で山元の手取りが上がれば主伐・再造林の意欲が高まり、森林の若返りが進む――そういう見立てです。立場は層によって分かれていて、輸出商社や山元の素材業者は手取り向上を歓迎し、原木を市場で買う中小製材所は警戒する、という構図になっています。

過去には丸太輸出を禁止・規制した国もありました。インドネシアは1980年代に丸太輸出を全面禁止して合板産業を育て、ロシアは2007年から段階的に輸出関税を引き上げました。たしかに短期的には国内産業を保護できますが、違法伐採や密輸の増加、税収減といった副作用も報告されています。逆にニュージーランドは規制なしで中国向け丸太輸出大国(年2,000万m³超)になり、山元手取りの向上と林業の発展を両立させました。そもそも日本はCPTPPやRCECといった自由貿易協定の主要メンバーですから、安易な輸出規制は現実的に難しい、という事情もあります。

輸出には剥皮とくん蒸が欠かせない

丸太を輸出するには、相手国の植物検疫をクリアしなければなりません。中国向けはいわゆる「K-3条件」が標準で、樹皮を完全に除去する剥皮処理と、メチルブロマイド等によるくん蒸処理が求められます。マツノマダラカミキリなどの病害虫を海の向こうへ運ばないための措置です。くん蒸剤は環境負荷の問題から使用が段階的に減らされており、60〜70℃で数時間加熱する熱処理など、代替方法の開発も進んでいます。輸出港の近くには剥皮場やくん蒸場が整備され、ここを通って初めて船に積まれていくわけです。2017年施行のクリーンウッド法により、違法伐採材は輸出できず、合法性の証明も前提になっています。

価格の面では、円安が輸出を後押ししています。中国向けスギ丸太のFOB単価は2024年でおおむね15,000〜25,000円/m³。国内のスギ中目丸太(13,000〜16,000円/m³前後)と比べると、検疫や輸送費を引いた手取りで国内とほぼ同等か、やや上回る水準です。内需価格が高騰すると輸出が抑えられ、低迷すると輸出が活発になる――市場メカニズムがちゃんと働いているのが面白いところで、2022年以降の円安局面では輸出単価が国内価格を上回る場面が続いています。

これからの焦点は「製品輸出」へ

政府は林産物輸出を成長分野と位置づけ、輸出額を2022年の約500億円から2025年に650億円、2030年に1,000億円へ伸ばす目標を掲げています。ただ、その中身として重視しているのは丸太そのものより、付加価値の高い製材品・集成材・CLT・木製品の輸出です。丸太のまま売れば加工の利益は相手国の製材所が取る。それなら日本国内で挽いて、製品にして売ったほうが付加価値が国内に残る、という発想です。「Wood from Japan」といったブランドキャンペーンや、FSC・PEFC認証材の輸出拡大も、この戦略の一部になっています。

課題もはっきりしています。最大の輸出先である中国の不動産不況に左右されやすいので、韓国・台湾・東南アジア・中東へと市場を分散させる必要があります。EUの森林破壊規制(EUDR、2024年12月施行)など国際的なトレーサビリティ要件も強まっており、出材地から流通履歴までを記録する仕組みづくりが欠かせません。丸太輸出をめぐる議論は、つまるところ「輸出と国内供給をどう両立させるか」に尽きます。市場のメカニズムを土台に、山元の手取りを支えつつ製品輸出へ軸足を移していく――その舵取りが、これからの日本林業の持続性を左右していきそうです。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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