【ウダイカンバ/マカバ】Betula maximowicziana|日本産カバノキ最高級家具材、国際市場の戦略樹種

ウダイカンバ | Forest Eight

カバノキの仲間といえば、白い幹のシラカンバを思い浮かべる人が多いでしょう。でも木材の世界で「カバの王」と呼ばれるのは、別の種――ウダイカンバ(マカバ、Betula maximowicziana)です。樹高25〜30m、太いものは直径1mを超える日本産カバノキ最大の木で、緻密で赤みを帯びた美しい材は、北海道・旭川の高級家具を支える主役。欧米では「Monarch Birch(君主のカバ)」と呼ばれ、世界市場でも最高値クラスで取引されます。

最大樹高 35 m 通常 25〜30m 大径木 1.5m級 気乾比重 0.68 平均 範囲 0.62〜0.74 硬質広葉樹 原木流通量 5 万m³/年 北海道4万m³ 東北1万m³ 最大樹齢 200 年超 記録樹齢 250年 伐期 80〜100年
図1:ウダイカンバの主要諸元
霧立ち込める北海道の森
霧の森 (Photo by Jachan DeVol on Unsplash)
目次

カバノキ三兄弟のいちばん大きな木

ウダイカンバは日本産カバノキ属で最大の種です。同じ仲間のシラカンバ、ダケカンバと並べると、樹高も幹の太さも材の密度もひと回り上。樹皮は白でも赤褐色でもなく、暗灰色〜黒褐色で縦に薄く剥がれるのが特徴で、林の中でも比較的見分けやすい木です。葉も10〜14cmと大きめ。秋には金色から黄褐色に色づき、北海道の冷温帯林の紅葉を彩ります。

項目 ウダイカンバ シラカンバ ダケカンバ
樹高 25〜30m(最大35m) 15〜25m 15〜20m
胸高直径 60〜120cm 30〜70cm 30〜80cm
樹皮 暗灰色・縦に剥離 白色・横に紙状剥離 赤褐色・横剥離
気乾比重 0.62〜0.74 0.50〜0.55 0.55〜0.62

分布は北海道全域と、本州中部以北の山岳冷温帯林(標高800〜1,500m)、サハリン南部・千島列島南部。四国・九州には自生しません。ブナやミズナラ、トチノキ、ホオノキなどと混じった林をつくり、純林になることは稀です。和名「鵜松明樺(ウダイカンバ)」は、樹皮が油分を含んでよく燃え、鵜飼いの松明に使われたことに由来するとされます。

日本産広葉樹で最高級の材

ウダイカンバ材の魅力は、淡い桃褐色〜赤褐色の温かみのある心材と、緻密で滑らかな木理にあります。気乾比重0.68前後と硬く重く、強度も十分。切削・接着・塗装のどれもよくこなし、仕上げの美しさは広葉樹随一です。耐久性は屋外には向かないので基本は屋内用途ですが、家具・床材・楽器・木製玩具・工芸品と幅広く使われます。特に椅子の脚や座板、テーブル天板、ベッドフレームでその強さと美しさが生きます。床材としてはウォールナットやチェリーと並ぶ高級グレード。原木価格は径級・等級により幅がありますが、大径の特等材ならm³あたり15〜25万円と、スギ・ヒノキの5〜10倍にもなります。大径木が少なく希少なこと、材質が最高級であること、北海道産という産地ブランドが、この高値を支えています。

旭川家具とウダイカンバ

「家具のまち」旭川は、ウダイカンバの主産地であると同時に、日本を代表する高級家具産地です。カンディハウス(1968年創業)はミラノサローネなど世界の展示会に出展し、ウダイカンバやナラを使った椅子・テーブルを欧米・アジアへ輸出。コサイン(1986年創業)は「木の温もり」をコンセプトに、デザイン性の高い椅子や木製玩具で知られます。旭川の年間家具生産額は約300億円規模で、その素材の2〜3割をウダイカンバなど道産広葉樹が占めます。木材が地域経済とブランドの核になっている好例です。

択伐で守り育てる天然林

ウダイカンバは種子が風で母樹から半径50〜100mほどに散らばり、明るく地表が露出した場所で発芽します。ただし種子寿命は1〜2年と短く発芽率も10〜30%と高くないため、安定した更新には工夫が要ります。北海道の道有林・国有林では、成熟木の一部だけを選んで伐る「択伐」を基本とし、林冠にできた隙間から天然更新を促す持続的な施業が行われています。発芽から80〜120年で直径60cm以上の大径木になり、最大樹齢は200〜250年に達する長命な木です。FSCやSGECといった森林認証材も流通し、生物多様性と両立した利用が進められています。

よくある質問

ウダイカンバとマカバは同じものですか?

はい、同じ樹種です。「ウダイカンバ」が標準和名で、「マカバ(真樺)」は木材・家具業界での流通名。店頭では「マカバ」「カバ材」と呼ばれることが多いです。

なぜそんなに高価なのですか?

大径木が少なく希少なこと、日本産広葉樹のなかで最高級の材質であること、家具・楽器・内装といった高付加価値の用途で需要が高いこと、そして北海道産という産地ブランドの強さが重なっているためです。

家具の手入れは難しいですか?

一般的な高級広葉樹家具と同程度です。直射日光・極端な乾燥・水濡れを避け、ときどき家具用ワックスやオイルで仕上げてやれば、数十年単位で長く使えます。

本州でも見られますか?

北海道が圧倒的な主産地ですが、青森の白神山地、山形の朝日連峰・月山、長野の戸隠・志賀高原などの標高800〜1,500mの山岳林でも観察できます。秋の紅葉期は金色の葉と暗灰色の樹皮の対比で見分けやすく、おすすめの時期です。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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