国産家具ブランド大図鑑|飛騨・大川・松本・徳島・旭川の特徴

国産家具ブランド大図鑑 | Forest Eight

同じ「国産家具」でも、産地が変われば顔つきがまるで違います。曲木の椅子で知られる岐阜の飛騨、日本最大の集積地・福岡の大川、民藝の血をひく長野の松本、仏壇づくりから転じた徳島、北欧と手を組んだ北海道の旭川――この5地域が日本の木製家具づくりを背負ってきました。合計の出荷額はおよそ2,800億円。それぞれに歴史も樹種も技も違うので、選び方しだいで「一生もの」にも「数年で買い替え」にもなります。各産地の個性を、順に見ていきましょう。

積層された木材
家具をかたちづくる無垢材 (Photo by Oscar Salgado on Unsplash)
目次

まずは5大産地を俯瞰する

産地 所在 主要樹種 規模・性格
飛騨 岐阜県高山市 ナラ・ブナ・ヒノキ 約100社・曲木と職人技、海外OEM多数
大川 福岡県大川市 ナラ・タモ・カエデ 約500社・日本最大、業務用に強い
松本 長野県松本市 クルミ・ナラ 約30社・民藝、英国伝統技法ベース
徳島 徳島県 ヒノキ・スギ・ケヤキ 約120社・仏壇から現代家具へ転業
旭川 北海道旭川市 ナラ・タモ・カバ 約100社・北海道広葉樹、北欧OEM

事業所数では大川が圧倒的ですが、1社あたりの規模では飛騨と旭川が突出しています。大川は中小工場の集合体、飛騨と旭川は中堅以上のブランド集中型、松本は職人工房型、徳島は仏壇からの転業型――産地ごとに産業の成り立ちそのものが違うのです。

飛騨 ─ 曲木椅子のふるさと

飛騨の家具づくりは1920年、飛騨産業(当時の中央木材工業)の創業に始まります。創業者の冨田岩松が、オーストリア・トーネット社の曲木椅子に着想を得て、ブナを蒸気で軟化させて曲げる技術を日本に持ち込みました。標高1,000m級の高地で育つナラ・ブナといった広葉樹の宝庫であることも、この地に家具産業が根づいた理由です。戦後は柏木工やシラカワといった椅子専業メーカーが続々と生まれ、いまの集積地が形づくられました。

飛騨産業のほか、北欧モダンと相性のよい柏木工、国産材100%・無垢オイル仕上げを哲学に掲げるオークヴィレッジなど、個性ある作り手が揃います。価格はダイニングチェアで4〜10万円、テーブルで15〜50万円と中〜高価格帯。量販店の椅子の3〜5倍はしますが、20年使う前提なら1年あたりのコストはむしろ安くなる計算です。近年は軟らかい国産スギを高温高圧で硬化させる「スギ圧縮材」の特許技術でも注目され、林業需要の喚起という意味でも一目置かれています。

大川 ─ 約500年つづく日本最大の産地

福岡県大川市は、事業所数約500社・出荷額約1,300億円という、5大産地で群を抜く規模を誇ります。起源は江戸時代の1530年頃、船大工の技術から木工業が興ったこととされ、約500年の歴史があります。筑後川河口の水運を活かして建具や指物の集散地として栄え、明治期には箪笥で全国市場を獲得。戦後の住宅ブームで本格的な家具産地へと転じました。

大川の最大の強みは、オフィス・ホテル・飲食店向けの業務用OEMです。大量受注に応える生産体制があり、量販ブランドの一部商品も大川産。住宅向けではダイニングチェア2〜6万円、テーブル8〜30万円とリーズナブルで、東南アジアのアカシアや北米のウォルナットなど海外材も駆使してコストパフォーマンスを実現しています。関家具やレグナテック、広松木工といった自社ブランド型メーカーと、約400社の中小工房が共存する、層の厚い産地です。

松本 ─ 「100年使える家具」の思想

松本民芸家具の始まりは1948年、池田三四郎の創業です。柳宗悦の民藝運動に影響を受け、英国のウィンザーチェアと日本の和家具を融合させた独自スタイルを確立しました。掲げる理念は「100年使える家具」。ミズナラ材を10年以上自然乾燥させてから使うという徹底ぶりが、その品質を支えています。事業所数は約30社と小規模ながら、職人一人あたりの付加価値額では国内トップクラス。皇室や各国大使館への納入実績も持ちます。

ホゾ組や蟻組といった伝統接合を基本に、釘や金物を最小限に抑え、オイル仕上げに拭き漆を重ねた独特の質感が魅力です。価格はダイニングチェア6〜12万円、テーブル20〜60万円。注目すべきはリセールバリューの高さで、製造から30年以上経った中古でも新品価格の50〜70%で取引される例があり、家具好きの間では長期保有の対象として評価されています。

徳島 ─ 仏壇の技を現代家具へ

徳島は仏壇・神具の伝統産地で、徳島仏壇は経済産業大臣指定の伝統的工芸品です。江戸時代から徳島藩の保護を受け、ヒノキ・スギ・ケヤキを使った金箔押しや漆塗りの技術で発展しました。ところが1990年代以降、住宅様式の変化で仏壇需要は半減。そこで職人たちは、漆塗りや金物加工の腕を活かして、和モダン家具や神棚一体型収納などへと転換を進めています。

香りが強く硬い徳島産ヒノキは、ダイニングテーブルや床框に好まれます。ジョージ・ナカシマ家具の日本での製造拠点として知られる桜製作所もこの地にあります。価格はダイニングチェア3〜8万円、テーブル10〜35万円と中価格帯です。

旭川 ─ 北海道広葉樹と北欧の出会い

北海道旭川市は、ナラ・タモ・カバ・センノキといった北海道広葉樹の集散地です。家具産業の起源は明治の屯田兵入植にさかのぼり、戦後は進駐軍向け家具の製造で技術を磨きました。1980年代からデンマークのフリッツ・ハンセンなど北欧・米国ブランドへのOEM供給が本格化し、北欧モダンの設計言語を取り込んだ独自スタイルを築きます。3年に1度の「国際家具デザインフェア旭川(IFDA)」を通じて、国際的な認知も獲得してきました。

代表格のカンディハウス(創業1968年)は、ドイツ・ケルンの国際見本市に毎年出展し、欧州で売上の3割を稼ぐ国内屈指のグローバルブランド。東川町に約100haの自社林を経営する北の住まい設計社のように、森から一貫管理する作り手もいます。価格はダイニングチェア5〜15万円、テーブル15〜50万円。北海道産ナラ材の安定調達が強みです。

樹種で変わる、家具の性格

家具の使い心地と寿命は、樹種選びでかなり決まります。代表的な木の硬さ(気乾比重)を比べてみましょう。

樹種 気乾比重 硬さ 代表用途
ミズナラ 0.68 硬い テーブル・チェア
タモ 0.65 硬い 椅子・床材
ブナ 0.65 硬い 曲木椅子
クルミ 0.53 中庸 テーブル・収納
ヒノキ 0.41 柔らかめ テーブル・建具

比重0.65以上のミズナラ・タモ・ブナは硬く傷つきにくいので、座面や脚に酷使されるダイニングチェア向き。クルミは加工しやすく上品な色味で松本家具の主役、ヒノキは柔らかく傷つきやすいぶん香りと調湿性に優れ徳島で多用されます。そして家具の耐久性を本当に左右するのは、見えない部分――製材後の乾燥工程です。松本民芸家具が屋外天然乾燥3〜10年+人工乾燥という二段階にこだわるのは、乾燥不足の家具が数年で脚のぐらつきや天板の反りを起こすから。購入時に乾燥履歴を確認できるブランドは安心です。

量販家具と比べて、本当に得なのか

「国産家具は高い」という印象は、買った瞬間の値段だけを見た話です。使う年数と修理のしやすさまで含めて考えると、景色が変わります。

カテゴリ ダイニングチェア価格 想定使用年数 修理サポート
量販(ニトリ・IKEA) 5,000〜25,000円 5〜10年 限定的
中堅国産(大川・徳島) 20,000〜60,000円 10〜25年 パーツ交換可
高級国産(飛騨・松本・旭川) 50,000〜150,000円 30〜50年 修理・張替え対応

差が一番大きいのは修理サポートです。飛騨産業は本社内に修理工房を持ち年間約2,500件を受け、80年以上前の製品でも修理可能と公表しています。松本民芸家具も創業以来の全製品に対応。旭川のカンディハウスは座面張替えや脚部交換を有償で永続提供します。座面の張替えは布地で1脚8,000〜15,000円、天板の研磨・再塗装は2〜8万円ほどで、新品の1〜2割の費用で家具が生まれ変わる。「直して使い続けられる」ことこそ、国産家具の最大の価値です。

家具を買うことは、森を支えること

家具産業は、林業にとって最大級の「出口」のひとつです。国産広葉樹の用材消費のうち、家具・建具用は約2割を占めます。住宅用が針葉樹中心なのに対し、家具用はミズナラやタモなどの希少な広葉樹。伐採から製品化までのリードタイムが長く、計画的な森林経営が欠かせません。

だからこそ、産地の作り手は森と直接つながろうとします。北の住まい設計社は東川町の自社林で伐採から製造まで一貫管理し、皆伐ではなく択伐で持続可能性を確保。飛騨産業は岐阜県森林組合と直接契約し、市場価格より2割高い「ブランド材」価格でナラを買い取って山主の経営を支えています。1990年代まで7割を占めた輸入材は、ロシア産ナラの輸出規制や円安で価格が2〜3倍に高騰し、いまや国産ミズナラが競争力を取り戻しました。国産家具を選ぶことが、国内の森の手入れに直結する――そんな構造が、年々はっきりしてきています。

よくある質問

Q. 飛騨と旭川、どちらを選べばいい?

住宅のテイストで判断するのが近道です。和モダンにも洋風にも合わせやすいのが飛騨、北欧志向で明るい木目が好きなら旭川。座面高は北欧系が430mm前後、飛騨は400〜420mmと低めで日本の住宅に合わせてあります。ショールームで両方に座り比べるのが確実です。

Q. 無垢材と突板(つきいた)はどう違う?

無垢材は木そのもの、突板は薄い天然木を合板に貼ったものです。無垢材は重く高価ですが寿命が長く、突板は軽く安価で大型家具に向きます。30年使うなら無垢、コスト重視なら突板という選び方になります。

Q. 中古でも価値は残りますか?

飛騨・松本の家具は中古でも新品の50〜70%程度の価格を保ちます。修理サポートが続いていることが大きな理由です。相場はフリマアプリや専門中古業者で確認できます。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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