高知県南国市の双葉台に、木造の事務所建築があります。高知県森林組合連合会会館――通称「森連会館」。2016年3月竣工、延床約1,200m²の3階建て規模の建物ですが、床・壁・屋根のすべてにCLTを使い、その総量は約316m³に達します。県内の森林組合を束ねる組織の本部が、県産材CLTで建てられている。「木を売る組織が、まず自分の建物で木を使う」を実行した建築です。
まずは基本データ
| 所在地 | 高知県南国市双葉台 |
|---|---|
| 用途 | 事務所(高知県森林組合連合会 会館) |
| 竣工 | 2016年3月 |
| 延床面積 | 1,209.73m² |
| 構造 | 木造(軸組工法+CLT利用) |
| CLT使用量 | 床 91.70m³/壁 106.60m³/屋根 117.60m³ 合計 315.9m³ |
| 設計 | ふつう合班(鈴江章宏建築設計事務所ほか) |
| 施工 | 株式会社岸之上工務店 |
森林率84%の県が、CLTに賭けた理由
高知県は県土の約84%が森林という、全国屈指の森林県です(森林率は全国2位、全国平均は約66%)。平地が乏しく農地を広げにくかったぶん、古くから林業に依存してきた土地でもあります。
その高知が2010年代にCLTへ舵を切ったのには理由があります。CLTは厚い木質パネルで、床・壁・屋根を面で構成できる材料です。丸太から製材、ラミナ、そしてパネルへと加工度を上げていくほど、材の単価は跳ね上がります。スギ丸太がm³あたり1万数千円の水準であるのに対し、CLTパネルは10万円台。同じ木を伐っても、どこまで自県で加工するかで地域に落ちる金額がまるで違ってきます。
高知には2014年に稼働した高知おおとよ製材のCLT関連拠点があり、岡山県真庭市の銘建工業に次ぐ西日本のCLT供給地として位置づけられてきました。同じ大豊町では、2014年3月に国内初のCLT構造建築となる社員寮が竣工しています。森連会館はその2年後、CLTを本格的に使った事務所建築として建てられました。
床・壁・屋根、すべてをCLTで
この建物のCLT使用量の内訳が興味深いところです。
| 床 | 91.70m³ |
|---|---|
| 壁 | 106.60m³ |
| 屋根 | 117.60m³ |
| 合計 | 315.9m³ |
床・壁・屋根がおおむね拮抗しています。CLTを「耐震壁だけに使う」使い方――前述の高知おおとよ製材 社員寮がまさにこれでした――と比べると、建物全体をCLTの面で構成しようとする姿勢がはっきり読み取れます。構造形式としては木造軸組工法をベースにCLTを組み合わせたものですが、CLTが補助的な部材ではなく主要な構成要素になっている点で、社員寮から一段進んだ実装です。
延床1,209.73m²に対してCLT315.9m³という比率は、面積あたり約0.26m³/m²。中規模の事務所建築としては相当に高い木材使用密度です。
地域の設計者と工務店が建てた
設計を担当したのは「ふつう合班」という県内設計事務所の共同体、施工は高知の岸之上工務店です。大手組織設計事務所やゼネコンではありません。
これは意図的な選択だったと考えられます。CLT建築を地域に根づかせるには、地元の設計者と施工者がその設計・施工を経験している必要があるからです。県外の大手が建てて帰ってしまえば、技術は地域に残りません。森連会館の建設過程そのものが、高知県内のCLT設計・施工ノウハウの蓄積プロセスになっています。
「地材地建」のショーケースとして
森林組合連合会は、県内の森林組合を束ね、素材生産や共販、指導を担う組織です。その本部が県産材CLTで建てられているという事実は、対外的な説得力を持ちます。設計者や施工者、自治体関係者が視察に訪れる先として、実物が一棟あることの効果は大きい。
林野庁が掲げる「地材地建(地域材で地域を建てる)」の考え方――伐採・製材・加工・施工を地域内で完結させ、輸送距離とCO2を抑えながら地域に付加価値を残す――を、高知はかなり忠実に実装してきました。森連会館はその流れのなかで、CLT建築が実験段階から日常的な建築の選択肢へ移っていく過渡期を示す建物です。
CLT建築の初期史は、生産側の岡山県真庭市(銘建工業)と、使う側で先行した高知県という二つの地域を軸に語られます。森連会館はその高知側の代表例にあたります。
よくある質問
Q. 高知県森林会館という名前ではないのですか?
正式には高知県森林組合連合会の会館で、「森連会館」と通称されます。所在地は高知市ではなく南国市双葉台です。
Q. CLTパネル工法ですか?
木造軸組工法をベースに、床・壁・屋根へCLTを利用した構成です。すべてをCLTパネルで組み上げるCLTパネル工法とは異なりますが、CLTの使用量は合計315.9m³と多く、面としての構成が建物の骨格を担っています。
Q. 見学できますか?
森林組合連合会の事務所であり、常時一般公開されている施設ではありません。視察を希望する場合は事前の問い合わせが必要です。

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