アマゾン熱帯雨林のカーボンソース化:Gatti 2021からMAAP 2025最新追跡まで

アマゾン熱帯雨林のカーボンソ | 経済とのつながり - Forest Eight

結論先出し

  • Gatti et al.(Nature 2021)が航空機による9年間の鉛直プロファイル観測(590回)から、アマゾン東南部が炭素ソースに転じていることを実測。森林破壊30%・降水量25%減・乾季気温+1.5℃の複合要因。
  • MAAP 2025最新解析では、2013〜2022年に流域全体で+64.7百万トンのCO2純吸収があったが、56.8 Gt(568億トン)の蓄積量に対して+0.1%という極小の純増にとどまる。
  • 2024年大干ばつ・大規模火災後の追跡で、流域全体が再びカーボンソース側に振れる可能性が指摘されている。保護区・先住民居住区域の炭素貢献は2013〜2022で257百万トンCO2。

アマゾン熱帯雨林は地球規模の炭素循環において最大の陸上生態系炭素プールの一つです。長らく「地球の肺」「巨大な炭素吸収源」と評価されてきましたが、Gatti らがNature誌に2021年に発表した観測論文を境に、その認識は大きく更新されつつあります。本稿では2021年の決定的論文と、2024〜2025年のMAAP・INPE等の最新追跡データを統合し、アマゾンの炭素収支がどう動いているかを整理します。

目次

クイックサマリ:アマゾンの炭素収支

項目 数値・要点
地上部炭素蓄積量(2024) 568億トン(56.8 Gt C)
2013〜2022純吸収 +64.7百万トン C(+0.1%)
東南部の年間純放出(Gatti 2021) 0.4 Gt CO2/年(火災含む流出)
2024年新規森林破壊 11,088 km²(INPE集計、年間ベース)
保護区・先住民居住区の純吸収(2013〜22) 257百万トン CO2
主要研究機関 INPE(伯)、Amazon Conservation/MAAP、NASA・NOAA、CIRAD・INRAE(仏)

Gatti et al. 2021:アマゾンが炭素ソースに転じた決定的証拠

Luciana Gatti(INPE)らが Nature 595: 388–393(2021)に発表した論文「Amazonia as a carbon source linked to deforestation and climate change」は、アマゾン研究の転換点と評価されています(DOI: 10.1038/s41586-021-03629-6)。

研究設計は4つの観測点(東部・西部・南東部・北西部)で2010〜2018年の9年間に590回の航空機鉛直プロファイル観測を実施。下層大気のCO2・COを地上から高度4.4 kmまで連続計測し、地表面フラックスを逆算する手法です。COは火災由来炭素のトレーサーとして用いられました。

主要発見は次の3点です。第一に、アマゾン全域は弱い炭素ソースか中立で、生物起源収支(火災を除く)も東南部では明確な放出を示すこと。第二に、東南部は過去40年で森林面積が30%減少、乾季降水量が25%減、乾季気温が+2.7°F(1.5℃)上昇しており、森林破壊と気候変動が二重に作用していること。第三に、東部と西部の相違が明瞭で、森林破壊の少ない西部はまだ吸収源として機能していること。

この論文の意義は、それまで衛星観測やインベントリ調査による推計に頼っていたアマゾン炭素収支を、大気組成の直接観測で裏付けた点にあります。Gatti らはこのデータから、現状の森林破壊・気候トレンドが続けば、アマゾン全域がカーボンソース化する閾値に近づきつつあると警告しています。

アマゾン4観測点別 炭素フラックス(Gatti 2021) 単位:tC/ha/年 (2010〜2018平均)。東南部のみ純放出、他はバランス〜微吸収。 アマゾン4観測点別 炭素フラックス(Gatti 2021) 0 +0.5 -0.5 吸収 ← → 放出 東南部 +0.31 東北部 +0.13 北西部 -0.06 南西部 -0.16 単位: tC/ha/年(2010〜2018年平均、火災含む全炭素フラックス) 出典: Gatti et al. 2021, Nature 595: 388-393
図1:アマゾン4観測点における炭素フラックスの実測(Gatti et al. 2021, Nature より作図)。東部の2点が放出側、西部の2点が吸収側に位置する地域格差が明瞭。

2024〜2025年追跡データ:MAAPによる衛星×機械学習解析

Amazon Conservation Association が運営するMAAP(Monitoring of the Andean Amazon Project)は、2024〜2025年にPlanet・MapBiomas・Global Forest Watchのデータと機械学習を組み合わせ、アマゾン全域の地上部炭素を3 m解像度で推計しています。MAAP #215・#220レポートによれば次の数値が示されています。

  • 地上部炭素蓄積量:56.8 Gt C(2024年)。2013年と比較して+64.7 Mt Cの純増。
  • 純増は+0.1%と極小。「吸収源として薄氷を踏む状態」と評価。
  • 森林破壊・劣化による損失と、二次林成長による回復がほぼ拮抗。
  • 保護区・先住民居住区域は明確な吸収源(+257 Mt CO2、2013〜2022)。

つまり、グローバルな数字としては「アマゾンはまだ吸収源」と言えても、その吸収量は破壊速度に対して非常に細い数字となっており、わずかな乾季強化や火災イベントで簡単にソース側に転じる構造になっています。

2024年の異常乾燥と再ソース化リスク

2024年はエルニーニョ後の余波と独立した気候要因により、アマゾン全域で記録的な干ばつ・火災が発生しました。INPE(ブラジル国立宇宙研究所)の集計では年間11,088 km²の森林損失(約1日30 km²)。MAAP は「Amazon may return to being a carbon source following the intense drought and fires of 2024」と表現し、2024〜2025の収支は再びカーボンソース側に振れる可能性が高いと評価しています。

火災由来CO2排出は通常年の2〜3倍規模に達したと推定され、2025年中の継続観測で確定値が出る予定です。ENSO周期が変化する中、ベース乾季の長期化トレンドと相まって、アマゾン東南部の劣化森林面積はさらに拡大する見通しです。

アマゾン年間森林損失推移(INPE集計) 2010〜2024年の年間森林損失(km²)の推移。2019〜2022に高水準、その後やや低減も2024年再悪化。 アマゾン年間森林損失推移(km², INPE PRODES) 0 3,000 6,000 9,000 12,000 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 出典: INPE PRODES, MAAP, Mongabay 集計(概数, km²)
図2:アマゾン年間森林損失推移(INPE PRODES, MAAP)。2019〜2022に大規模化、2023年に縮小も2024年再増加(青:低水準、橙:中水準、赤:高水準)。

東南部 vs 北西部:地域格差と政策示唆

Gatti 2021論文の最も重要な示唆は、地域格差の決定的な大きさです。流域全体を一つの数字に丸めると見えなくなりますが、サブリージョンに分けると:

  • 東南部:森林破壊30%、乾季降水-25%、乾季気温+1.5℃。明確な炭素ソース。
  • 北西部:森林破壊小、降水量安定。明確な炭素吸収源として機能継続。

政策的には、北西部(ペルー・コロンビア・ブラジルAcre州など)の保護を強化することが、流域全体の収支を維持する上でクリティカルです。Lula政権下のブラジルは2023年以降、PRODES監視強化により2023年の森林破壊が大幅縮小(11,594 → 9,001 km²)する成果を上げましたが、2024年の干ばつ・火災で再悪化に転じました。

気候変動とCO2施肥効果のトレードオフ

大気CO2濃度上昇は理論的には光合成速度を上げる「CO2施肥効果」をもたらしますが、Brienen et al.(Nature 2015)は南米の長期プロット観測から、アマゾン熱帯林のバイオマス純増速度が1990年代以降低下していることを報告しています。気温上昇と乾季強化による樹木死亡率増加が、CO2施肥効果を相殺しつつあるという解釈です。Pugh et al.(Science of the Total Environment 2024)は機械学習モデルで、CO2施肥効果が世紀末までにアマゾンで実質的に消失する可能性を示唆しています。

日本林業・グローバル木材需要との関係

アマゾン熱帯材は日本の木材輸入に占める割合は限定的(合板・家具用材で数%レベル)ですが、グローバルなSDG・ESG投資の文脈で日本企業も無関係ではいられません。FSC認証・PEFC認証のCoC認証は熱帯材調達でも要求されており、PEFC/SGEC認証FSC認証の関連記事も参照ください。

EU の森林破壊フリー規則(EUDR、2025年12月適用予定)も関連します。EUDR では大豆・牛肉・パーム油・コーヒー・カカオ・ゴム・木材・木炭・紙について、2020年12月31日以降の森林破壊地由来でないことのデュー・ディリジェンス声明(DDS)が求められます。アマゾン由来材の流通は今後さらに制約され、日本商社・メーカーへもサプライチェーン情報整備の波及が見込まれます。

JCM(二国間クレジット制度)とアマゾン

日本のJ-クレジットは国内森林管理が対象ですが、JCM(Joint Crediting Mechanism)は途上国でのCO2削減プロジェクトを対象とします。2024年時点でブラジルとはJCM協定未締結ですが、ペルー・コロンビアでは森林保全プロジェクトでJCMクレジット創出の可能性があります。日本企業のScope 3排出削減にも今後より重要性が増すと見込まれます。

よくある質問(FAQ)

Q1. アマゾンはいつから炭素ソースになったのですか

A. 段階的な変化で、明確な「転換日」はありません。Gatti 2021が示した観測(2010〜2018)の時点で、東南部は既にネット放出側に位置していました。流域全体としてはMAAP 2024時点で薄い吸収源であり、2024年以降の干ばつ・火災で再びソース側に振れる可能性が高い状況です。

Q2. 「アマゾンが地球の肺」という表現は正確ですか

A. 部分的に誤解があります。陸上の総一次生産量に占めるアマゾンの寄与は約14%とされ、最大の単一生態系である一方、産生する酸素は熱帯林が消費する酸素とほぼバランスしています(Yadvinder Malhi らの算定)。「地球の肺」は炭素貯蔵量の大きさを指す比喩として理解すべきです。

Q3. アマゾン保全に日本ができることは何ですか

A. 木材・農産物のサプライチェーン透明化(FSC・EUDR対応)、JCMクレジット組成、JICA・国際金融機関を通じた支援、企業のScope 3排出削減での熱帯林由来製品の精査などが具体的アクションです。

Q4. 1.5℃目標との関係は

A. 仮にアマゾンがネット炭素ソース化すると、世界全体のカーボンバジェット消費が加速し、1.5℃目標達成は実質困難になります。Lovejoy & Nobre(2018, Science Advances)が提示した「ティッピングポイント論」では、森林破壊20〜25%の閾値で乾燥化が不可逆的に進行する可能性が指摘されています。現在の累積森林破壊は約17〜18%で、ティッピングポイントに接近中です。

Q5. 日本国内の林業はカーボンソースですか、シンクですか

A. 日本の森林全体は明確な炭素吸収源(約4,000万トンCO2/年程度)です。詳細は 森林環境譲与税・J-クレジット記事を参照ください。

アマゾン流域の地理的構成と炭素プール

アマゾン流域は南米9カ国(ブラジル・ペルー・コロンビア・ベネズエラ・ボリビア・エクアドル・ガイアナ・スリナム・仏領ギアナ)にまたがる総面積約670万km²の広大な流域で、うち熱帯雨林面積は約550万km²です。ブラジルが流域全体の約60%を占有し、ペルー13%、コロンビア7%、その他6カ国が合計20%を構成します。地上部炭素蓄積量56.8 Gt(568億トン)は、世界の熱帯林炭素プール約230 GtCの約25%に相当し、単一生態系としては地球最大規模です。

炭素プールの内訳は、地上部バイオマス(樹木の幹・枝・葉・大型草本)約56.8 Gt、地下部バイオマス(根系)約11 Gt、土壌有機炭素(深さ1mまで)約60〜80 Gt、リター層約3〜5 Gtで、流域全体の総炭素貯蔵は130〜150 Gt規模に達します。1ha当たりの平均炭素蓄積は地上部100〜200 tC、土壌80〜120 tCで、林分別には未撹乱原生林(1ha当たり250 tC以上)から二次林(1ha当たり50〜100 tC)まで幅広い分布を示します。Saatchi et al.(PNAS 2011)・Avitabile et al.(Global Change Biology 2016)等のグローバル炭素マップが標準的データソースです。

地域 面積(万km²) 主要生態系 炭素収支
東南部(Mato Grosso・Pará南部) 約60 劣化森林・農地化進行域 明確な放出源
東北部(Pará北部・Maranhão) 約80 部分劣化森林・パーム油畑 弱い放出源
北西部(Amazonas州・Roraima) 約100 原生林優位 明確な吸収源
南西部(Acre・Rondônia) 約60 原生林+一部劣化 弱い吸収源
アンデス側(ペルー・コロンビア・エクアドル・ボリビア) 約150 高地〜低地連続林 中程度の吸収源

森林破壊の歴史的経緯と政策変遷

アマゾン森林破壊は1960年代以降に本格化し、ブラジル軍政期(1964〜1985)の「Trans-Amazonian Highway」建設・農地開発政策で大規模化しました。1970年代以降の累積森林破壊面積は約78万km²(流域全体の約14%、ブラジル領内では約20%)に達しています。年間損失のピークは2004年の約2.78万km²で、その後Lula前政権下の保護強化(PPCDAm政策)で2012年に約4,500km²まで縮小しました。

2012年以降は段階的に再増加し、Bolsonaro政権下の2019〜2022年には年間1万km²超まで拡大しました。原因は、(1)監視機関IBAMA・FUNAIの予算削減と人員減、(2)違法伐採・違法採掘・違法牧場化への取締り緩和、(3)先住民居住区域への侵入の事実上黙認、(4)国際的な木材・大豆・牛肉需要の継続、等が挙げられます。Lula現政権(2023年〜)は保護強化に転じ、2023年の損失は9,001 km²まで縮小しましたが、2024年は気候要因(大干ばつ・大規模火災)で再び増加に転じました。

違法伐採と違法採掘の経済構造

アマゾン違法経済の規模は年間数十億ドル規模と推定され、(1)違法木材伐採(年間20〜30億ドル)、(2)違法金採掘(特にYanomami領域、年間10〜15億ドル)、(3)違法土地転換(牧場化・大豆畑化、年間50〜100億ドル)、(4)野生生物密猟・密輸(年間数億ドル)、で構成されます。これら違法活動は組織犯罪と結びつき、ブラジル連邦警察・州警察の摘発作戦も継続的に実施されていますが、流域の広大さと監視能力の限界から完全な統制は困難です。

国際社会の対応として、(1)Norway-Brazil Amazon Fund(ノルウェーの森林保護基金、累積拠出額約12億ドル)、(2)Germany BMZ・KfW森林保護プログラム、(3)World BankのForest Investment Program、(4)私企業のCarbon Offset購入(VERRA・Gold Standard認証クレジット)、等が資金面での支援を提供しています。日本のJICAも2010年代以降にアマゾン保全関連プロジェクトを実施しており、ブラジルINPEとの衛星モニタリング技術協力等が継続中です。

先住民領域・保護区の炭素貢献

MAAP 2024レポートでは、アマゾン流域の保護区・先住民居住区域(合計約230万km²、流域の約42%)が、2013〜2022の10年間で純257百万トンCO2を吸収したことが示されました。これは流域全体の純吸収64.7百万トンを大きく上回る数字で、保護区・先住民領域が「炭素吸収のホットスポット」として機能している一方、それ以外の地域(一般林・農地化区域)は実質的に放出源となっていることを意味します。

先住民領域は世界銀行・WRI・RAISG等の研究機関により、(1)原生林の保全率が一般林の3〜5倍高い、(2)単位面積当たりの炭素蓄積量が約20%大きい、(3)火災発生密度が一般林の数分の1、(4)生物多様性の保全水準が高い、等の機能が定量化されています。Yanomami(ベネズエラ・ブラジル)、Kayapó(ブラジル)、Awajún(ペルー)、Asháninka(ペルー・ブラジル)等の有力先住民集団は、独自の森林管理伝統と現代科学を組み合わせた保全モデルを構築し、国際機関の支援対象となっています。

気候変動と乾季の長期化

アマゾン東南部の乾季は過去40年で約30〜45日延長したことがGatti et al. 2021・Marengo et al.(Climatic Change 2018)等の観測研究で示されています。乾季の延長メカニズムは、(1)大気循環の変化(ハドレー循環の北上)、(2)海面温度パターン(北大西洋・赤道太平洋)、(3)森林破壊による蒸発散減少、(4)エアロゾル放射効果、の複合作用と考えられています。乾季降水量は東南部で-25%、流域全体で-10〜15%の減少傾向が観測されています。

気候変動下の予測モデル(CMIP6シナリオ)では、SSP5-8.5シナリオで2100年までに東南部乾季降水量が-40〜60%、平均気温が+4〜5℃上昇する見通しです。この条件下では、東南部の熱帯雨林は維持困難となり、サバンナ化(Cerrado biome相当)への転換が予測されます。Lovejoy & Nobre(Science Advances 2018)が提示した「ティッピングポイント仮説」では、累積森林破壊20〜25%+気温上昇2℃以上で、流域の水循環が不可逆的に転換する可能性が議論されています。現在の累積破壊は約17〜18%で、ティッピングポイントへの接近が懸念されます。

大規模火災と排出量の定量化

2024年のアマゾン火災シーズン(5〜10月)はGlobal Fire Emissions Database(GFED)と Copernicus Atmosphere Monitoring Service(CAMS)の集計で、CO2排出量が約8〜10億トンに達したと推定されています。これは通常年(2〜4億トン)の2〜3倍規模で、ブラジル全体の年間化石燃料CO2排出(約4.5億トン)を大きく上回る規模です。火災は主に農地化目的の意図的火付けと、乾燥化による自然延焼が複合し、特にPantanal湿地・Mato Grosso・Pará南部・Amazonas州・Acre州で集中発生しました。

火災検知技術はNASA MODIS・VIIRS(375m解像度)・GOES-16/17(地球同期衛星)・PlanetScope(3m解像度)を組み合わせ、リアルタイム検知・5日以内のニュース速報・年次集計の3階層で運用されています。INPE BDQueimadas・Global Forest Watch Fires・MAAP・MapBiomas Fogo等が代表的なモニタリングプラットフォームで、政府機関・NGO・研究機関・メディアが共通データを参照しています。

エネルギー転換と森林政策の連動

アマゾン保全には、ブラジル国内のエネルギー・農業政策の転換が不可欠です。ブラジルは水力発電比率が約65%と世界有数の再エネ国ですが、新規水力ダム建設はアマゾン流域の生態系破壊と先住民移転を伴うため、近年は風力・太陽光への転換が進んでいます。Lula政権は2030年までに再エネ比率90%達成を目標とし、化石燃料補助金削減・カーボンプライシング導入の検討を進めています。

農業政策では、(1)Soy Moratorium(大豆モラトリアム、2006年〜、新規森林破壊地での大豆生産禁止)、(2)Cattle Agreement(牛肉協定、2009年〜、Tráckable beef supply chains)、(3)Forest Code(森林法、2012年改正、私有地保全比率の規定)、等が標準的なフレームワークです。これらの自主規制と法定保全のハイブリッド体制が、流域の農地拡大を一定程度抑制してきました。EUDR(EU森林破壊フリー規則、2025年12月適用予定)は、これら自主規制を補完するグローバル基準として位置づけられます。

アマゾン研究の国際協調体制

アマゾン研究の国際協調プラットフォームとしては、(1)LBA-ECO(Large-Scale Biosphere-Atmosphere Experiment、1998年〜、米伯主導)、(2)Amazon Tall Tower Observatory(ATTO、2015年〜、独伯協力、325m観測タワー)、(3)RAINFOR(Amazon Forest Inventory Network、英主導、長期プロット観測)、(4)Amazon Conservation Association MAAP(米NGO主導、衛星×AI解析)、(5)Amazon Cooperation Treaty Organization(ACTO、政府間協力)、等が挙げられます。これら多層的な研究ネットワークが、流域の炭素・水循環・生態系応答の包括的理解を支えています。

日本の研究機関では、JAMSTEC・国立環境研究所・東京大学・京都大学・森林総合研究所等がブラジルINPE・USPと連携し、衛星観測(GOSAT・GOSAT-2のCO2観測)、地上観測タワー(マナウス周辺LBA-ECO拠点)、長期プロット観測(南米熱帯林炭素動態)等で貢献しています。GOSAT-2のXCO2データは、Gatti et al.の航空機観測と相補的にアマゾン地域大気CO2収支の検証に活用されています。

炭素クレジット市場とアマゾン保全プロジェクト

アマゾン関連の炭素クレジット市場は、自主的炭素市場(Voluntary Carbon Market、VCM)の中核セクターとして発展しています。代表的な認証基準はVERRA VCS(Verified Carbon Standard)、Gold Standard、CCB Standard(Climate, Community & Biodiversity)、Plan Vivo等で、認証されたREDD+プロジェクト(Reducing Emissions from Deforestation and forest Degradation)が国際企業のオフセット購入対象となっています。世界のVCM取引量は2022年に約2億トンCO2、取引額約20億ドルに達し、うちアマゾン関連プロジェクトは数%〜10%を占めると推定されます。

ブラジル・ペルー・コロンビアでは、現地NGO・コミュニティ・民間企業が連携してREDD+プロジェクトを実装しており、代表事例としてSurui Carbon Project(ブラジル先住民領域)、Madre de Dios Amazon REDD+(ペルー)、Cordillera Azul(ペルー)等が10〜20年の実績を持ちます。1プロジェクトあたりの面積は数万〜数十万ha、年間クレジット創出量は数十万〜数百万トンCO2規模です。クレジット価格は1トンCO2あたり3〜30ドルで、品質(追加性・恒久性・漏洩防止・コミュニティ便益)の評価により大きく変動します。

アマゾン保全の経済価値評価

アマゾン熱帯雨林の総経済価値は、Costanza et al.(Nature 1997・Global Environmental Change 2014)の生態系サービス評価枠組により年間数千億〜1兆ドル規模と試算されています。主要構成は、(1)気候調節(炭素貯蔵・水循環)数千億ドル、(2)水供給(南米の降水パターン制御)数百億ドル、(3)生物多様性(医薬品候補・遺伝資源)数百億ドル、(4)文化的価値(先住民文化・観光資源)数十億ドル、(5)直接利用価値(木材・果実・薬草・繊維)数十億ドル、です。これら数値は熱帯林全体の生態系サービス価値の約20〜30%を占める計算で、地球上で最大の単一生態系サービスプールとして位置づけられます。

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