木造の工事額10.65兆円は4年で最大──床面積は4年連続減

工事額は過去最高面積は4年連続減
📌 ポイント

  • 国交省「建築工事費調査(令和7年分)」(2026年9月30日公表)で、令和7年に完成した木造の工事実施額は10.65兆円。令和4〜7年の4回で最大。
  • ただし木造の床面積は18.5%減(5,052万→4,116万㎡)。増えたのは㎡単価で+27.5%(編集部の試算)。
  • 調べて分かったこと:資材・労務の価格(国交省デフレーター)は同期間で+5〜11%。木材の指数は2022年度のピークから下落。単価上昇の大半は、投入価格では説明できない。

10.65兆円。見出しとしては景気がいい(住宅新報は「現行調査で最高」と報じた)。ただ、中身をよく見ると、増えたのは量ではなかった。

ちなみに、ディズニーランドでも同じことが起きている。客は増えないのに、売上は伸びる。ミッキーマウス戦略、というやつだ。木造の工事額も、読み取ると同じ構図をしている。

目次

額=面積×単価。増えたのは単価だった

木造の指数(令和4年=100・建築工事費調査) 120 100 80 単価 127.5 額 103.9 面積 81.5 令和4年 令和5年 令和6年 令和7年

図1:国土交通省「建築工事費調査」令和4〜7年分から編集部が作成。㎡単価は工事実施額÷工事実施床面積の編集部の試算で、公表値ではない。

額だけを見る見出しは、入園者数を伏せて売上だけを見せているのと同じだ。

「分からないこと」を調べてみた

① 資材・労務の値上がりで、どこまで説明できるか

木造 ㎡単価(完成) +27.5% 国交省デフレーター(木造住宅・非住宅)は +5〜7% 非木造 ㎡単価(完成) +27.3% デフレーター(非木造住宅・非住宅)は +8〜11% 資材・労務の価格で説明できる分 説明できない分

図2:単価は図1と同じ調査の値から編集部が試算。デフレーターは国交省 建設工事費デフレーター(年度次)の2022→2025年度の変化(2020年度=100、2023年度以降は暫定値)。デフレーターは資材・労務などの投入価格の変動だけを測る指数。

資材・労務の価格で説明できるのは、木造で2割前後、非木造で3〜4割ほど。残りは、投入価格では説明がつかない。

② 木材高騰が原因なのか

木造住宅デフレーターの採用指数(年度平均、2020年度=100) 合板・集成材 2022年度 187.4 2025年度 133.6(-28.7%) 製材・製材屑投入 2022年度 161.0 2025年度 133.7(-17.0%) その他の木製品 2022年度 164.5 2025年度 139.3(-15.3%) 賃金・社会保険料 2022年度 103.7 2025年度 110.9(+6.9%)

図3:国交省「建設工事費デフレーター(2020年度基準)の概要及び改定内容について」(2026年6月)の木造住宅の個別デフレーターの表から編集部が作成。

合板・集成材、製材などの指数は2022年度がピークで、2025年度は17〜29%低い。それでも木造の㎡単価は上がった。この指数を読み取ると、「木材が高いから木造が高い」とは言いにくい。

それでも分からないこと

資材・労務で説明できない分(木造で約20ポイント)の中身。仕様の高度化、規模や用途の構成、利益や間接費などが候補だが、この統計では切り分けられない。

木材を生産する人は、この数字をどう読むか

木造住宅の工事費の構成(ウエイト値の上位10項目・2020年度基準) 賃金・社会保険料 39,000 その他の木製品 8,331 卸売・商業マージン 7,450 土木建築サービス 6,738 製材 4,573 建築用金属製品 3,638 道路貨物輸送 2,601 合板・集成材 2,218 生コンクリート 1,440 建設機械賃貸 1,436

図4:国交省デフレーター概要(2026年6月)の木造住宅の個別デフレーターのウエイト値(上位10項目)から編集部が作成。橙が木材系。全体の合計は資料に明記がないため、各項目の大きさの比較のみ。

最大の項目は賃金・社会保険料。製材は、その約12%の大きさだ。木造の工事額の増減が、原木の需要にそのままつながるとは読みにくい。

① 見るのは「量」 木造の床面積は4年で18.5%減。 金額の増加は、木材の需要が 増えた印にはならない。 ② 建築費と木材価格は別物 木材の指数は下がったのに、 木造の㎡単価は上がった。 二つは連動していない。 ③ 価格の説明を確かめる 「木材が高いから木造が高い」 という説明は、指数と合わない。 取引の場で確認材料になる。 ④ 木材以外の収入も 林野庁は「森業アワード」で 体験・空間利用などの取組を 顕彰している(多角化が狙い)。

図5:本記事の分析から編集部がまとめた「読み方」で、個別の経営判断ではない。森業アワードは林野庁の紹介ページを参照。

編集部の視点

「過去最高」は、木造が増えた証拠ではなかった。増えたのは単価で、その原因は資材でも、木材でもなさそうだ。調べて、原因がまだ分からない。少し気持ちが悪い。

見るべきは量だ。国の政策目標も、金額ではなく国産材の利用量(2035年に4,200万m³)で置かれている(概算要求の記事)。

関連:南会津の木造4階建て/中大規模木造の構造設計/木材自給率

この記事の数字の扱い

  • 工事費調査は標本調査の推計値(令和7年分は回答率約77%)。㎡単価は編集部の試算
  • 令和3年以前は調査方式が違い比べられない。この記事の「4年」は令和4〜7年の4回。令和3年分は未確認
  • デフレーターは年度、調査は暦年・完成年で、期間が少しずれる。2023年度以降のデフレーターは暫定値
出典・参考

※ ㎡単価・変化率・各検証は、上記の公表値から編集部が計算したもので、国土交通省の公表値ではありません。「現行調査で最高」という報道の当否は、令和3年分を確認していないため検証していません。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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