雪2メートルの町に、木で4階を建てる──南会津の林野庁宿舎、坪194万円の内訳

雪2mの町に、木で4階を建てる
📌 ポイント

  • 2026年9月9日、福島県南会津町で建設中の林野庁の職員宿舎が、内装で覆う前の骨組みが見える状態で報道公開された。木造4階建て・延べ床面積733.04㎡。
  • 関東森林管理局が公表した契約情報によれば、工事契約額は4億3,000万円(税抜)。延べ床面積で割ると1㎡あたり58万7,000円、坪にして約194万円になる。
  • ただしこれは「木造だから高い」の証拠ではない。同じ建物を木造・S造・RC造で積算した比較研究を7本並べると、構造による工事費の差は±10%以内に収まる。
  • 効いているのは規模と条件だ。屋根の設計雪荷重は6,000N/㎡で、林野庁の標準モデル(東京都23区外)の10倍。733㎡という小ささ、そして応札は実質1社で落札率99.74%。
  • 設計・工事監理は(株)高橋建築設計事務所(群馬県前橋市)、施工は製材業から出発した国分木材工業(株)(福島県本宮市)。完成は2027年2月15日の予定。

2026年9月9日、福島県南会津町で、林野庁の職員宿舎が骨組みのまま報道公開されました。柱も梁も木でできた4階建てで、接合部には専用の鋼製金物が使われている——報道が伝えたのは、そこまでです。

けれど、この建物についてもっとも情報量が多いのは映像ではなく、関東森林管理局が公表している入札公告と入札執行調書のほうでした。延べ床面積733.04㎡。契約額4億3,000万円。1㎡あたり58万7,000円、坪にして約194万円。そして、この工事に手を挙げられた会社は県内外あわせて2社しかいませんでした。

この記事は、その書類を読みます。

目次

まず、建物の素性

項目 内容
工事名 会津森林管理署南会津支署 南会津宿舎新築工事
工事場所 福島県南会津郡南会津町山口字村上867-8、867の一部
規模・構造 木造4階建て 延べ床面積 733.04㎡(各階の建築面積 約183㎡)/付帯施設 木造平屋 約6㎡
発注 林野庁 関東森林管理局(支出負担行為担当官=関東森林管理局長 松村孝典)
設計・工事監理 株式会社高橋建築設計事務所(群馬県前橋市粕川町新屋)
施工 国分木材工業株式会社(福島県本宮市)
契約金額 430,000,000円(税抜)/予定価格 431,100,000円(税抜)
契約日 令和7年(2025年)12月26日
工期 契約締結の翌日から令和9年(2027年)2月15日
入札方式 一般競争入札(総合評価落札方式・簡易型/賃上げ加点対象)

公表されている契約情報を見るかぎり、電気設備や機械設備を切り出した別契約は見当たりません。この4億3,000万円が、建物まるごとの値段とみられます。

坪194万円をどう読むか

契約額を延べ床面積で割ると、58万7,000円/㎡(税抜)。坪に直して約194万円になります。

工事費 1㎡あたり(万円・税抜) 南会津宿舎 58.7 RC造・全国平均 31.4 鉄骨造・全国平均 28.1 木造・全国平均 20.4
図1:南会津宿舎は契約額を延べ床面積で割った値。全国平均は国税庁「建物の標準的な建築価額表」令和5年(建築着工統計にもとづく構造別の全用途平均)。

国税庁が建築着工統計をもとに公表している「建物の標準的な建築価額表」によれば、令和5年の全国平均は木造20.4万円/㎡、鉄骨造28.1万円/㎡、鉄筋コンクリート造31.4万円/㎡。南会津の宿舎は、木造平均の2.9倍、RC平均の1.9倍にあたります。

ただしこの比較は、そのままでは意味をなしません。着工統計の「木造」は大半が戸建住宅で、平屋か2階建てです。4階建ての共同住宅と並べる相手ではない。以下では比べる相手を段階的に絞り込み、そのうえで、それでも残る差の中身を分解していきます。

① 10年で、いちばん上がったのは鉄骨造だった

まず同じ表を単年でなく10年分並べると、それだけで一つ分かることがあります。

構造別 1㎡あたり工事費(千円/㎡・全国平均) 100 200 300 RC造 314 鉄骨造 281 木造 204 2014 2016 2018 2020 2022 国税庁「建物の標準的な建築価額表」(建築着工統計にもとづく構造別の全用途平均)
図2:平成26年(2014年)から令和5年(2023年)までの10年間の推移。出典は図1と同じ。

10年で、1㎡あたりの工事費は木造が163.0→204.1千円(+25%)、RC造が228.0→314.3千円(+38%)、鉄骨造が176.4→281.1千円(+59%)。いちばん値上がりしたのは鉄骨造です。林野庁の資料も、2023年4月からの1年で工事原価が鉄骨造(事務所)+5.9%、木造(住宅)+4.9%と、鉄骨の上昇幅のほうが大きいことを記録しています。

構造どうしの相対的な高さは、この10年、木造に有利な方向へ動いてきました。それでも南会津が58.7万円/㎡になったのなら、理由は構造の選択とは別のところにあることになります。

② 同じ建物を木・S・RCで積算すると、差は1割以内に収まる

もっとも公平な比べ方は、同じ建物を複数の構造で積算してみることです。この種の比較設計は、CLTの普及事業を通じて何本も公表されています。

調査 対象建物 木造 非木造 木造/非木造
住木センター R6 CLT実証9事例(1〜3階・平均257㎡)概算 218.3 212.1RC8・S1 +2.9%
住木センター R6 事務所併用飲食店(2階・82.8㎡)比較設計 417 433RC −3.8%
住木センター R6 高齢者福祉施設(2階・995.5㎡)比較設計 182 186S −2.3%
岡山県 H29 事務所付寄宿舎(3階・562㎡) 249 237RC・S +5.1%
岡山県 H29 保育施設(平屋・301㎡) 297 308/297RC/S −3.6%/±0
岡山県 H30 CLT建築コスト調査 201 218/211RC/S −7.8%/−4.7%
林野庁 R6 事務所(4階・3,000㎡・1時間耐火) — —S造基準 +9%

単位は千円/㎡。住木センター=公益財団法人日本住宅・木材技術センター。林野庁R6は金額が公表されておらず比率のみ。岡山県H30は対象建物の用途・規模を公表資料から確認できなかった。

数字はばらつきますが、方向はそろっています。構造の違いによる工事費の差は、±10%の中に収まる。木造が1割高いことも、1割安いこともある。倍になることはありません。

用途と規模がもっとも近いのは、岡山県が平成29年度に調べた事務所付寄宿舎(3階建て・延べ562㎡)です。用途が寄宿舎、階数が3、面積が562㎡。CLT造249千円/㎡に対してRC造・S造は237千円/㎡で、差は5%でした。

階数がもっとも近いのは、林野庁の補助事業で公益財団法人日本住宅・木材技術センターがまとめた『中規模ビルの木造化のすすめ 令和6年度版』の標準モデル——延べ3,000㎡・4階建て・1時間耐火の事務所ビルです。木造と鉄骨造の両方を積算した結論は、木造の建設費は鉄骨造の9%程度の増。この表のなかでは木造がいちばん不利に出た数字ですが、それでも1割に届きません。

③ 構造による「効き方」は、どの調査でも同じ

事務所付寄宿舎(3階建て・562㎡)の工事費内訳(千円/㎡) 249 237 237 CLT造 RC造 S造 基礎 躯体 躯体以外 設備 仮設等
図3:岡山県「CLTの建築コスト調査」平成29年度より。躯体だけを見ればCLT造はRC造の2倍以上だが、基礎と仕上で取り返し、設備は構造によらず同額。

内訳を見ると、どの調査でも同じパターンが出てきます。

基礎は木造が安い。建物が軽いので基礎梁を小さくでき、地盤改良も浅くて済みます。岡山の寄宿舎では基礎がCLT造21千円/㎡に対しRC造27千円/㎡。住木センターが9事例を概算した比較でも、基礎は木造32.2に対し非木造51.4千円/㎡でした。

躯体は木造が高い。同じ寄宿舎で躯体はCLT造93千円/㎡、RC造45、S造37。2倍以上ひらきます。中層では耐火被覆の石こうボードもここに乗ります。

仕上(躯体以外)は木造が安い。CLTや構造材を現しのまま仕上げに使えるので、内装の下地と仕上げが減ります。寄宿舎ではCLT造90に対しRC造120、S造135。ただし共同住宅では例外があります。鉄骨造やRC造は床をコンクリートのスラブでつくりますが、木造は構造用合板なので軽く、上下階の足音が伝わりやすい。林野庁の標準モデルは、この遮音性能を補うために床の上にALC板を50mm敷いています。その分だけ、内部仕上は木造のほうが高くなります。

設備は同額。給排水も電気も空調も、構造では変わりません。寄宿舎ではどれも36千円/㎡でした。

つまり中層木造は、躯体で損をして、基礎と仕上で取り返す。その差引きが±10%というわけです。

④ 同じ発注者が、同じ年に建てた木造と並べる

もう一つ、比べる相手があります。東北森林管理局が令和6年に契約した木造の庁舎2件です。発注者も入札方式も同じ国有林の現場で、契約額と床面積がどちらも公表されています。

建物 用途 階数 延べ面積 ㎡単価
南会津宿舎福島県南会津町・R7契約 宿舎 4 733.04㎡ 58.7万円
安家森林事務所岩手県岩泉町・R6契約 庁舎 平屋 169.32㎡ 39.6万円
相馬・岩木合同森林事務所青森県弘前市・R6契約/解体を含む 庁舎 平屋 126.61㎡ 37.9万円
岡山県コスト調査モデルH29積算・CLT造 事務所付寄宿舎 3 562㎡ 24.9万円
ティンバードテラス石川県小松市・木造軸組+CLT 共同住宅 3 779.22㎡ 非公表
WIL-BU山王福岡市・1階RC+2〜5階CLT壁 共同住宅 5 824㎡ 非公表

㎡単価はいずれも税抜の契約額または積算額を延べ面積で除した値。ティンバードテラスとWIL-BU山王は工事費が公表されていないが、用途・階数・延べ面積が南会津に近い実在の中層木造共同住宅として並べた。

同じ森林管理局が、同じ総合評価落札方式で、同じ木造を発注しても、平屋の森林事務所は38〜40万円/㎡、4階建ての宿舎は58.7万円/㎡になります。ふつうは面積が小さいほど㎡単価が上がるのですから、169㎡の平屋より733㎡の4階建てのほうが5割高いというのは、規模の効果では説明がつきません。4階であること、宿舎であること(住戸ごとに台所・浴室・便所がつく)、そして雪が、この差をつくっています。

⑤ 733㎡は、小さい

ここからは、比較では埋まらない差の中身に入ります。まず規模です。林野庁が「+9%」を出した標準モデルは延べ3,000㎡で、南会津はその4分の1弱。仮設も現場管理も、床面積に比例しては減りません。実際、公表された積算内訳書では、直接工事費3億4,147万円に対し、共通仮設費・指定仮設・現場管理費・一般管理費の合計が8,949万円。直接工事費の26%が上に乗っています。

⑥ 屋根に、2メートルの雪が載る

屋根1㎡あたりにかかる重さ(N/㎡) 6,000 1,550 600 南会津の屋根雪 垂直積雪量200cm×30N 屋根自体の重さ 林野庁モデルの計算例 東京モデルの屋根雪 積雪深30cm×20N
図4:福島県が建築基準法にもとづいて定める南会津町の垂直積雪量は200cm。多雪区域では積雪の単位荷重が1cmあたり30N/㎡以上とされる。屋根自体の重さは林野庁標準モデルの荷重計算例による。

福島県が建築基準法にもとづいて定める垂直積雪量は、南会津町が200cm(町内の一部地区は300cm)。積雪量100cm以上の区域では、積雪の単位荷重は1cmあたり30N/㎡以上とされます。つまり屋根には、1㎡あたり6,000Nの雪が載る前提で設計しなければなりません。

一方、林野庁の標準モデルが想定したのは東京都23区外、垂直積雪深30cm。多雪区域ではないので単位荷重は1cmあたり20N/㎡で、雪の荷重は600N/㎡。ちょうど10倍の差です。

この6,000N/㎡がどれほどかというと、同じモデルの荷重計算例で、屋根そのもの(野地板・断熱材・耐火下地・天井仕上まで含む)の重さが1,550N/㎡。雪だけで、屋根4枚分弱が載る。柱も梁も基礎も、その前提で太くなります。同じ「4階建て木造」でも、東京の標準モデルと南会津はまったく別の建物になります。

⑦ 競争は、事実上なかった

競争参加資格の確認を申請したのは、那須建設と国分木材工業の2社だけでした。開札の結果は、国分木材工業が4億3,000万円、那須建設が6億4,000万円。那須建設の札は予定価格4億3,110万円を大きく超えており、有効な競争相手にはなっていません。落札率は99.74%です。

なぜ2社しかいなかったのか。入札公告の競争参加資格に答えがあります。「延べ面積が400㎡以上の木造建築物の施工実績」を持ち、建築工事一式でA級またはB級の認定を受け、本店・支店・営業所が福島・宮城・山形・茨城・栃木・群馬・新潟のいずれかにあること。この三つを同時に満たして、なおかつ4億円規模の木造中層に手を挙げる会社が、北関東・南東北を見渡して2社だった、ということです。

⑧ そして、契約は令和7年12月

最後に時点差を差し引いておきます。ここまで並べた比較の材料は、国税庁の価額表が令和5年まで、岡山県の寄宿舎が平成29年度、森林管理局の庁舎2件が令和6年。南会津の契約は令和7年12月です。

木造の㎡単価は平成29年の166.7千円から令和5年の204.1千円へ、6年で22%上がっています。岡山の寄宿舎の249千円/㎡を同じ率で引き直せば305千円/㎡、令和7年末までの上昇をさらに見込んでも350千円/㎡前後でしょう。それでも南会津の586.6千円/㎡には届きません。物価上昇は差の一部を説明しますが、全部ではない。

つまり58.7万円/㎡という数字は、「木造だから高い」の証拠ではありません。733㎡という小ささ・4階建てという階数・積雪200cm・競争相手なし・そして令和7年末の建設物価の合計です。同時にそれは、中層木造を実際に建てられる施工体制が、地方にまだ薄いことの値札でもあります。

4階を木で建てるための、二つの仕掛け

継ぎ目を、金物に置き換える

在来の仕口 接合金物工法 梁 柱 ほぞ穴のぶん断面が減る 梁 柱 鋼板+ドリフトピンで留める 耐力が読みにくい 耐力を試験値で決められる
図5:在来の仕口と接合金物工法の違い。断面欠損を抑えたうえで、接合部の耐力を試験値として構造計算に乗せられるようになる。

柱に穴を掘り、梁のほぞを差して留める在来の仕口は、その部分で柱の断面が減ります。2階建てならそれでも足りますが、4階分の鉛直力と地震の水平力が集まる仕口では足りません。

接合金物工法は、その継ぎ目を鋼製の金物に置き換えます。柱と梁にスリットを切って鋼板を差し込み、ドリフトピンで貫く。断面欠損が小さいうえ、なにより接合部の耐力が試験値として数値で決まるので、構造計算に乗せられます。福島テレビの報道が「柱や梁などの接合部分に専用の金物を使うことで耐震性を高めている」と伝えたのは、この仕掛けのことです。

繊維を直交させて、「面」をつくる

報道はもう一つ、「木材は繊維の方向が直角に交わるように重ねることで強度を確保している」と説明しています。直交集成板(CLT)の考え方です。ひき板を繊維方向が交互になるよう積層接着すると、一方向にしか強くないという木材の弱点が打ち消され、床や壁として面で荷重を受けられるようになります。鉄筋コンクリートのスラブが担っている役割を、木で置き換える部品です。

ちなみに林野庁の標準モデルは、CLTの使い方を「床又は耐力面材としての利用」に限り、CLTで鉛直荷重も負担するCLTパネル工法は想定していないと明記しています。同モデルの骨格は、柱210×210mm・梁幅210mmの大断面集成材に木ブレースを組み合わせた軸組工法で、告示仕様による被覆型1時間耐火構造、構造設計ルート2。南会津の宿舎がこれとどこまで同じかは、公表資料からは読み取れません。

確認できていないこと。戸数、各戸の面積、階高、耐火・準耐火の区分、CLTや集成材の樹種・厚み・強度等級、県産材の使用率、採用工法のメーカー名、構造設計者。いずれも公表資料には記載がなく、本記事では推測していません。取材で埋めるべき欄として残します。

設計は前橋、施工は本宮の元・製材屋

設計と工事監理を担うのは、群馬県前橋市の株式会社高橋建築設計事務所。1969年設立で、庁舎や学校など官公庁施設の設計を主力にしてきた事務所です。工事監理業務の入札には3社が参加し、同社が385万円で落札しました。予定価格は798万8,419円でしたから、落札率は48.2%。工事側の99.74%とは対照的な数字です。

施工は、福島県本宮市の国分木材工業株式会社。本宮市白岩で製材業として始まり、いまは木造住宅と公共工事を手がける総合建設業に広がった会社で、事業にはいまも製材が残っています。丸太から建物までを一社で追える地場企業が、国の純木造4階建てを請け負った——この工事の性格を、これ以上よく表す組み合わせもありません。

この1棟が置かれている、空白

国が自分の建物を木でつくるのは、思いつきではありません。2010年の公共建築物等木材利用促進法を2021年に改正・改称した建築物木材利用促進法が、国や自治体に対し、整備する建築物の木造化・木質化を率先して進めるよう求めています。木を使う需要をまず公共がつくり、民間へ広げる——その順番でいえば、林野庁の宿舎は「隗より始めよ」の最前線にあたります。この宿舎には福島県産の木材が使われる、と福島テレビは伝えています。

林野庁の集計によると、令和6年度に着工した公共建築物の木造率は、全体で15.9%。3階建て以下の低層に限れば33.4%でした。床面積ベースで、低層では3分の1が木造になったのに、全体では6分の1にとどまる。差の分だけ、4階建て以上の木造化が遅れているということです。都心では高さ56mの木造ハイブリッドビルのような事例が出はじめましたが、4階建ての宿舎という日常的な建物で、しかも地方で、というのはまだ数が少ない。南会津の宿舎は、その空白に打ち込まれた杭です。

そして森林管理局のなかには、自分が建てた建物の木材使用量と炭素貯蔵量を公表しているところがあります。林野庁が令和3年に定めた「建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドライン」にもとづくもので、北海道森林管理局は庁舎9件についてこれを掲載しています。木材が炭素を蓄えるしくみは別の記事で整理しましたが、計算式はこうです。

材積(㎥)× 密度(t/㎥)× 炭素含有率 0.500 × 44/12 = 炭素貯蔵量(t-CO2)

密度はスギ0.331、カラマツ0.435、トドマツ0.348、合板0.542(t/㎥)。北海道森林管理局が公表した奥尻森林事務所(宿舎含む・延べ112㎡)の実績は、国産材利用量37㎥、炭素貯蔵量27 t-CO2。

奥尻の原単位(0.33㎥/㎡)をそのまま南会津の733.04㎡にあてはめると、木材使用量は約240㎥、炭素貯蔵量は約180 t-CO2になります。ただし奥尻は小さな森林事務所で、大断面集成材とCLTを積み上げる4階建てはこれより多く木を使うはずですから、この数字は下限の目安にすぎません。実数が出るとすれば完成後で、関東森林管理局が同じ表示を行うかどうかは現時点では分かりません。

完成後に、確かめたいこと

工期は2027年2月15日まで。内装で覆われたあと、この建物について答え合わせをすべき項目は四つあります。

  1. 実際の工事費と工期は、契約どおりだったか。設計変更がどれだけ出たかは、同じ契約情報の公表ページで追えるはずです。中層木造のコストを語るとき、予定価格ではなく決算額が要ります。
  2. 県産材は、何をどれだけ使ったか。樹種・材積・製材元。とくに集成材とCLTを県内で挽けたのかどうかは、地域林業にとって工事費より重い論点になります。
  3. 炭素貯蔵量の表示は出るか。733㎡・4階建て純木造の実数は、中層木造の炭素効果を語るうえで全国でも数少ない実測値になります。
  4. 次に、誰が建てるか。今回2社しか手を挙げられなかったという事実のほうが、建物そのものより後を引きます。中層木造を施工できる会社が東北・北関東で増えるかどうかが、この政策の本当の成否を決めます。
出典・参考

※ 1㎡あたり単価、坪単価、落札率、諸経費の比率、炭素貯蔵量の試算は、上記の公表資料をもとに編集部が計算したものです。工事費はいずれも契約時点の税抜額で、完成までに設計変更があれば変わります。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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