国際的な木材需給|FAOデータと日本の位置

国際的な木材需給 | Forest Eight

世界では1年間にどれくらいの木が伐られているのか——答えはおよそ40億m³です(FAO Forestry Statistics)。その内訳がちょっと意外で、製材や合板・パルプになる「産業用丸太」が約20億m³、薪や木炭などエネルギー用が約20億m³と、ほぼ半々。木材というと建材を思い浮かべがちですが、世界全体では「燃やすための木」も同じくらい使われているのです。

この大きな市場のなかで、日本はどんな位置にいるのか。日本の木材需要は約7,000万m³で、世界生産の約1.7%。産業用丸太に絞れば3.5%ほどです。人口やGDPの規模からすると中位の存在感ですが、輸入面では世界トップクラス。この記事ではFAO・ITTO・林野庁のデータを束ねて、世界の木材需給と日本の立ち位置を整理します。

目次

世界40億m³はどの地域で生まれているか

地域別に見ると、アジアが約12億m³(30%)で最大、続いてアフリカ約8億m³(20%)、北米と欧州がそれぞれ約7億m³(17.5%)、中南米約5億m³(12.5%)、大洋州約1億m³(2.5%)という分布です。面白いのは用途の地域差で、アジア・アフリカは薪炭が中核なのに対し、北米・欧州は産業用丸太が中核。同じ「木材生産」でも、地域によって中身がまったく違います。

世界の木材生産の地域別構成 アジア・アフリカ・北米・欧州・中南米・大洋州の地域別生産量を棒グラフで示す 世界の木材生産40億m³の地域別構成(億m³) アジア 12.0(30%) アフリカ 8.0(20%) 北米 7.0(17.5%) 欧州 7.0(17.5%) 中南米 5.0(12.5%) 大洋州 1.0(2.5%) アジア・アフリカは薪・木炭が中核、北米・欧州は産業用丸太が中核という用途構成差。
図1:世界の木材生産40億m³の地域別構成(出典:FAO Forestry Statistics 2022)

産業用丸太に絞った上位生産国は、中国(3.4億m³)と米国(3.4億m³)が双璧で、ロシア(2.0億m³)、ブラジル(1.4億m³)、カナダ(1.3億m³)が続きます。日本は約2,200万m³で世界20位前後。薪炭を含めた全木材ベースだと、中国・米国・インド・ブラジルが4大生産国で、インドはほぼ全量が生活エネルギー用の薪・木炭という特徴があります。

日本は世界第3位の「輸入国」

世界の木材製品貿易額は2022年で約2,800億ドル規模。輸出国の上位はカナダ(約290億ドル)、米国(約220億ドル)、スウェーデン・ドイツ(各約180億ドル)、ロシア(約130億ドル、2022年制裁前)、フィンランド(約120億ドル)です。一方、輸入国の上位は米国・中国・日本・ドイツ・英国の順で、日本は世界第3位の木材輸入国の座を保っています。

世界の主要木材輸出入国 主要輸出国と輸入国を比較棒グラフで示す 世界の主要木材輸出入額2022(億ドル) 輸出国 カナダ 290 米国 220 スウェーデン 180 ドイツ 180 ロシア 130 フィンランド 120 輸入国 米国 320 中国 280 日本 120 ドイツ 115 英国 80 日本は世界第3位の木材輸入国。輸入額は120億ドル≒1.7兆円規模。
図2:世界の主要木材輸出入額2022(出典:FAO Forestry Trade Flows、UN Comtrade)

輸入額で世界第3位といっても、米国や中国とは事情が違います。米国は世界最大の輸入国でありながら世界第2位の生産国でもあり、自給率は90%超。中国は輸入を急拡大して世界の木材市場のバランサーになっています。これに対し日本は、自給率42%という構造のもと、世界の市場から大量に買い続ける「消費国」としての性格が際立っています。

森林率は高いのに輸入は上位、という日本の顔

FAO(国連食糧農業機関)は世界の森林資源・木材生産・貿易の包括的な統計を整備する国際機関で、5年ごとのFRA(森林資源評価)と毎年のForestry Statisticsを公表します。熱帯木材を専門に扱うITTO(国際熱帯木材機関)の本部が横浜にあり、日本は最大級の拠出国の一つ。つまり日本は、世界の木材データの主要プレイヤーでもあります。

世界の木材市場における日本の位置 主要指標で日本の世界シェアと順位を比較表で示す 世界の木材市場における日本の位置 指標 世界・日本 日本順位・シェア 森林面積 40億ha / 2,500万ha 25位 / 0.06% 人工林面積 2.94億ha / 1,020万ha 15位 / 3.5% 産業用丸太生産 20億m³ / 2,200万m³ 20位 / 1.1% 木材輸入額 2,800億ドル / 120億 3位 / 4.3% 紙・板紙生産 4.2億t / 2,500万t 3位 / 6% 森林率 31% / 66.6% 世界10位前後 日本は森林率・輸入額・紙生産で上位、生産・面積では中位の存在感。
図3:世界の木材市場における日本の位置(出典:FAO Forestry Statistics、林野庁、UN Comtrade)

こうして並べてみると、日本のプロフィールがくっきり見えてきます。森林率(66.6%)は世界10位前後の高水準。なのに森林面積は世界25位、産業用丸太の生産も20位と中位。一方で木材の輸入額は世界第3位、紙・板紙の生産も世界第3位です。「森は豊かなのに、木は大量に輸入し、紙パルプは強い」——この一見ちぐはぐな組み合わせこそが、国際市場における日本の独特な立ち位置なのです。なお製品分野で日本のシェアが比較的高いのは紙・板紙(約6%)で、王子製紙・日本製紙などの大手が原料パルプを世界調達して存在感を保っています。

地域ごとに「主役の木」が違う

輸入元の地域によって、扱う樹種も用途もかなり異なります。日本が買い付ける木材の供給地を、樹種と用途で整理したのが次の表です。

地域 主要樹種 代表用途 年間生産(億m³)
北米 SPF・ベイマツ・SYP 構造材・合板 4.7
欧州 トウヒ・マツ・ナラ 集成材・CLT・家具 5.0
ロシア・CIS シベリアマツ・カラマツ・ナラ 針葉樹丸太・合板 2.0
南米 ユーカリ・ラジアータマツ パルプ・MDF・OSB 2.5
東南アジア フタバガキ・合板材 合板・型枠用合板 2.0
大洋州 ユーカリ・ラジアータマツ 構造材・パルプ 1.0

日本の輸入元の構成は、この数十年で大きく変わりました。1980年代は米加・南洋材・ロシア材が3大供給源でしたが、2023年には北米約35%、東南アジア約25%、欧州約20%、ニュージーランド・チリなど南半球約12%という分散型に。ロシア材は制裁で実質ゼロ近くまで落ち込み、その穴をフィンランド・スウェーデン・オーストリアからの製材・集成材が埋めています。

地域を分散させることは、リスクを分散させることでもあります。ただし為替・海上運賃・地政学リスクの影響を多面的に受ける構造でもある。2021年のウッドショック、2022年のロシア制裁、2023年の円安、2024年の中東紛争による海運リスク——これらが連鎖して輸入木材価格に複合的な圧力をかけ、結果的に国産材を使う経済的なメリットを相対的に高めてきました。

世界の需要はまだ伸びる

FAOの長期予測では、世界の木材需要は2030年に約45億m³、2050年には約55億m³まで拡大する見通しです。牽引役はアジア・アフリカの人口増と住宅建設、バイオマスエネルギー需要、紙パルプ需要、そしてCLTなど木造建築の広がり。供給側は、ブラジル・チリ・中国・東南アジアでのユーカリ・マツなど高速成長樹種の人工林が拡大して支える構図です。

ただし需給のギャップは、特定の地域・樹種で起きる見込みです。欧州針葉樹(キクイムシ被害で蓄積が大幅減)、ロシア材(制裁の長期化)、北米針葉樹(カナダの山林火災)——この3領域で供給制約が懸念されています。日本にとっては、合板原料・建築構造材・紙パルプ原料の輸入価格が中長期で上がりやすいということ。だからこそ、国産材の自給率を高める政策的な合理性が、年々増しているのです。

よくある質問

世界最大の木材生産国はどこですか?

産業用丸太では中国と米国がそれぞれ約3.4億m³で双璧、ロシア・ブラジル・カナダが続きます。薪・木炭を含めた全木材ベースだとインドが上位に入り、中国・米国・インド・ブラジルが4大生産国です。

日本は世界何位の木材輸入国ですか?

金額ベースで世界第3位(米国・中国に次ぐ)、約120億ドル(約1.7兆円)規模です。人口・GDPに対して輸入依存度が高く、自給率42%という低さが「輸入大国」の位置を決めています。

世界の木材需要は今後どうなりますか?

FAOの長期予測では、2050年までに約55億m³(現在の40億m³から約38%増)に拡大する見通しです。アジア・アフリカの人口増と住宅建設、バイオマス需要、CLTなど木造建築の拡大が主な要因で、人工林からの供給拡大がこれを支える構造です。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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