結論先出し
- 住友林業「W350計画」は2018年2月8日発表のR&D構想で、2041年(創業350周年)に向け高さ350m・地上70階建ての木造超高層ビルの技術開発ロードマップを示す。実際の建築事業ではなく「木の価値を高める技術で世界一」という長期ビジョンを実装する技術プラットフォーム。
- 構造は外周を耐震要素で構成するブレースチューブ構造を採用、木材:鋼材=9:1の木鋼ハイブリッド。使用木材量は185,000 m³(戸建住宅約8,000戸相当)、CO2固定量は約10万トン(100,000 t-CO2)と試算され、東京都心想定で住宅・オフィス・ホテル・商業の混合用途を計画。
- 事業体制は住友林業(事業者・木造技術)+ 日建設計(建築設計)。2019年10月に住友林業筑波研究所新研究棟が完成し、要素技術の実証拠点として稼働。当面ターゲットは5〜6階建て木造ビルの標準化と20階級木造の早期実用化、Port Plus(横浜44m・大林組)等の他社プロジェクトと並行で中大規模木造市場を形成中。
住友林業の「W350計画」は、2018年2月に発表された木造超高層ビル開発構想として日本の建設業界・木材業界に強いインパクトを与えました。世界最高の現存木造ビルが80m台にとどまる中での「350m」という野心的数値は、当初は実現可能性を疑問視する声も上がりましたが、その後の技術革新と業界全体の中大規模木造への流れの中で、構想の意義が改めて再評価されつつあります。本記事では公開情報を整理し、W350計画の構造システム・技術的挑戦・国際的位置づけ・社会的意義までを通して読み解きます。
クイックサマリ:W350計画の概要
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 計画発表 | 2018年2月8日(住友林業創業330周年) |
| 目標達成年 | 2041年(住友林業創業350周年) |
| 目標仕様 | 高さ350m、地上70階、住宅・オフィス・ホテル・商業混合用途 |
| 構造形式 | ブレースチューブ構造、木材+鋼材ハイブリッド |
| 使用木材量 | 約185,000 m³(戸建住宅8,000戸相当) |
| CO2固定量 | 約10万トン |
| 事業体制 | 住友林業(事業者)+ 日建設計(建築設計) |
| 所在地(仮想) | 東京都心想定 |
| 研究拠点 | 住友林業筑波研究所新研究棟(2019年完成) |
| 位置付け | R&D構想(実建築計画ではない) |
構想の背景:1691年からの350年
住友林業の起源は、1691年(元禄4年)の別子銅山開坑に伴う山林経営に遡ります。江戸期から続く事業者として木材と森林に関わり続け、戦後は住宅事業・木材建材事業・海外植林事業と多角化を進めてきました。2018年の発表時点で創業327年、計画達成目標の2041年は創業350周年の節目に当たります。「W350」という名称の「350」は建築物の高さ(350m)と創業からの年数(350年)のダブルミーニングを意図しており、企業のアイデンティティと長期ビジョンを直結させたシンボリックな目標設定です。
2018年は世界的に都市部の中高層木造建築が動き出した時期でもありました。前年の2017年にはカナダ・バンクーバーでBrock Commons(53m・18階)が竣工し、2019年にはノルウェーでMjøstårnet(85.4m・18階)、ウィーンでHoHo Wien(84m・24階)が相次いで竣工しています。日本国内でも2010年の「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」、2021年の「都市の木造化推進法」改正と続く政策の流れがあり、住友林業はこの世界的潮流の先頭に立つR&DビジョンとしてW350を打ち出した格好です。
「R&D構想」としての真意
W350計画の最大の特徴は、これが具体的な建築事業ではなく、住友林業のR&D(研究開発)の方向性を示す「マスタービジョン」として位置付けられていることです。住友林業の発表によれば、計画の真意は次の通り:
- 「世界一の木の価値を高める技術企業」という長期ビジョンの提示
- 木造超高層ビル建設に必要な要素技術の体系的開発
- 木材産業全体の市場拡大とイメージ向上
- 実際的な当面ゴールは5〜6階建て木造ビルの標準化と20階級木造の実用化
つまり、350m単体の建築物そのものよりも、その実現に必要な技術プラットフォーム(木材高強度化・接合詳細・耐火・耐震・防音・施工技術等)を整備することが本質的目標です。完成形を「商品」として売るのではなく、目標物に到達するまでの技術群を一つひとつ実用化し、中規模・中高層木造ビル市場で収益を上げ続ける—これがW350のビジネスモデル上の発想です。長期R&Dの行動指針としての側面が強く、達成すれば企業価値と業界全体の底上げに直結する設計といえます。
構造設計:ブレースチューブと木鋼ハイブリッド
計画されている構造形式はブレースチューブ構造(braced tube structure)。これは超高層ビルで一般的な構造で、外周を「チューブ」状に剛性高く構成し、内部はオープンスペースとする方式です。鉄骨造の現代超高層ビル(東京駅周辺超高層、米国のシアーズタワーやジョン・ハンコックセンター等)でも標準的に使われています。チューブの外周面に斜め部材(ブレース)を配置することで、地震や強風による横力(水平力)に効率よく抵抗します。
W350計画の独自性は、このチューブを木材+鋼材ハイブリッドで実現する点。具体的には:
- 柱・梁:木材(集成材・LVL)と鋼材の組み合わせ。木材で意匠性・断熱・カーボン貯留、鋼材で構造強度・接合精度を担保。
- ブレース(耐震ブレース):鋼材で耐震性能を確保。地震大国日本では純木造ブレースのみで350m級を成立させるのは困難なため、鋼材を要所に組み合わせる。
- 床・壁:CLT(直交集成板)または木質構造パネル。床版は遮音・防振性能を確保するため複層構成。
- 外装:木材を意匠的に露出した「環境木化」デザイン。ガラスカーテンウォールに加え、木製ルーバーやバルコニー樹木で街路から見えるグリーン感を演出。
純木造で350mを目指すのではなく、「比率9:1で木材を主体としつつ、必要箇所に鋼材を使う」ハイブリッド設計が現実的解として位置付けられています。鉄骨造の従来型超高層と比較すると、木材を主用構造材として用いることで建築工程中・運用中のCO2排出を大幅に削減し、解体時には木材を別用途に再利用できる可能性も拓けます。
必要技術:8つの開発テーマ
W350実現に向けた技術開発テーマ:
| 分野 | 主要開発テーマ |
|---|---|
| 材料 | 高強度集成材、超大断面LVL、新CLTパネル |
| 耐火 | 燃え止まり層・燃えしろ設計、3時間耐火 |
| 耐震 | 制振・免震構造、木鋼ハイブリッド接合詳細 |
| 接合 | 大スパン木造接合金物、プレファブ接合 |
| 音響 | 木造の遮音性能、振動伝達制御 |
| エネルギー | ZEB対応、断熱、再エネ |
| 環境 | 木材調達のサステナビリティ、LCA |
| 施工 | 大規模プレファブ、高層作業の安全 |
これらのテーマは、住友林業筑波研究所(2019年新研究棟稼働)を中心に研究実施。一部は早期実用化され、住友林業の中規模木造ビル(5〜10階建て)にすでに適用されています。新研究棟自体が4階建ての中規模木造で、燃えしろ設計や木鋼ハイブリッド接合、環境制御等の研究成果を実装した「フルスケール実験棟」としての性格を持ちます。
技術的挑戦:350m木造で何が壁になるか
木造超高層を阻む技術課題は、単に「木材は弱いから」というレベルでは整理できません。350m級の超高層では、構造・耐火・耐震・施工の各分野で連立方程式を解く必要があります。住友林業と日建設計が公開資料で挙げている主な論点を整理します。
挑戦1:超大断面材の入手と品質保証
350m建物の柱断面は1階で1m角を超える規模が想定されます。これだけの大断面集成材を国内外で安定供給するには、製材技術・接着技術・乾燥管理・寸法精度のすべてで現状の数倍のスケールアップが必要です。集成材の接着剤層が長期荷重・高温・湿度変化下でクリープせず性能を保つかも、超高層では数十年単位の検証対象になります。同時にラミナ(薄板)の樹種・等級・水分率の品質バラつきを抑える生産管理が、製材所単位ではなく木材産地単位で再構築される必要があります。
挑戦2:3時間耐火と「燃え止まり」
建築基準法上、超高層は最上位の耐火性能(3時間耐火)が求められます。従来の木造で耐火等級を達成するには、構造材の周囲に石膏ボード等の被覆を厚く積み、火災時に燃えしろ層が燃えても芯材まで火が達しないよう「燃え止まり層」を設計します。350m建物では避難に時間が掛かるため、性能規定型評価でさらに余裕を見た設計が要求される見込みです。住友林業は耐火集成材「FRウッド」「燃エンウッド」系等の製品開発をすでに進めており、この延長線上に超高層対応の耐火部材が開発されます。
挑戦3:制振・免震との両立
日本の地震環境下で350m級を建てるには、構造の固有周期を長周期側に逃がし、制振ダンパーや免震装置と組み合わせる必要があります。木材は鋼材に比べ単位体積当たりの重量が軽い反面、減衰性能は鋼材より小さい場合があり、超高層特有の長周期地震動に対する応答評価が重要です。木鋼ハイブリッド接合部の繰り返し性能・残留変形・修復性も、地震後の機能継続性(レジリエンス)の観点で長期実験が必要です。
挑戦4:強風下の居住性能
350m級超高層は強風時の揺れ(居住性振動)が大きな設計課題です。木造ハイブリッドでは構造減衰が低くなりがちで、頂部にチューンドマスダンパー(TMD)等を設置して人体の感じる加速度を抑える必要があります。木質感を残しつつ可動装置を内蔵する意匠と、長期保守を両立する設計が要求されます。
挑戦5:プレファブ施工と高層揚重
地上70階、約350mの高さに重量級木質パネルや集成材柱・梁を運び上げる施工計画も大きな設計対象です。ユニット化・モジュール化されたプレファブ部材を、タワークレーン+専用ジブで揚重し、レーザートラッキング等のIT施工技術で位置決め誤差を mm 単位で管理します。木材は鋼材に比べ寸法安定性が湿度・温度に敏感であるため、現場の含水率管理・養生計画もスケジュールクリティカルになります。
世界の木造高層ビル比較
| 建築物 | 所在地 | 高さ | 階数 | 竣工 |
|---|---|---|---|---|
| Mjøstårnet | ノルウェー | 85.4 m | 18階 | 2019 |
| Ascent MKE | ミルウォーキー米 | 86.6 m | 25階 | 2022 |
| Hoho Wien | ウィーン | 84 m | 24階 | 2019 |
| Brock Commons | バンクーバー | 53 m | 18階 | 2017 |
| Sara Kulturhus | スウェーデン | 75 m | 20階 | 2021 |
| Port Plus | 横浜 | 44 m | 11階 | 2022 |
| W350(構想) | 東京想定 | 350 m | 70階 | 2041目標 |
現在世界で建っている最高の木造ビルは80m台。W350の350mは、現状の4倍以上の野心的目標です。実現には今後10〜20年の継続的R&Dと、世界全体での中大規模木造の経験蓄積が必要となります。北米・北欧・中欧では政策的後押し(補助金・規制緩和・公共発注)と豊富な針葉樹資源が組み合わさり、20階級木造が次々竣工しています。日本は耐震・耐火要件が世界最厳格レベルである反面、住友林業・大林組・竹中工務店・清水建設など総合建設業のR&D投資が厚く、要素技術の蓄積では世界トップクラスにあります。
SOMの構想Timber Towerとの比較
米国Skidmore, Owings & Merrill(SOM、シアーズタワー・ブルジュ・ハリファ等を手がけた超高層設計の世界的事務所)は、2013年に「Timber Tower Research Project」と題したホワイトペーパーを発表し、シカゴの既存超高層集合住宅「Dewitt-Chestnut Apartments」を木造で再設計する仮想スタディを公開しました。このSOMスタディでは、80%以上を木材で構成する42階・約120mのコンクリート/木材ハイブリッドが提案され、CO2排出量を在来鉄骨造と比較して大幅削減できると試算しています。W350はこのスタディの倍以上の高さに踏み込んだ大胆な構想であり、「木造超高層は世界各地のR&Dテーマである」という潮流の中に位置づけられます。
関連実建築:住友林業の中規模木造ビル
W350自体はR&D構想ですが、関連技術は次の中規模木造ビル建設に展開されています:
- 大林組Port Plus(2022年竣工、横浜):高さ44m・地上11階の純木造オフィスビル。住友林業の研究成果が一部反映。
- 住友林業 つくば研究所新研究棟(2019):W350の研究拠点として、自社のR&Dの実装事例。
- 住友林業の中規模木造マンション:複数案件で5〜6階建ての木造集合住宅を実現。
- 万博 大屋根リング(2025、前C01記事参照):日本の中大規模木造の市場形成に大きく寄与。
関連補助金・税制
中大規模木造ビル建設では、以下の制度が活用可能:
| 制度 | 所管 | 対象 |
|---|---|---|
| サステナブル建築物等先導事業(木造先導型) | 国交省 | 先進的木造建築の設計・建設 |
| グリーン建築物等推進事業 | 国交省 | ZEB対応木造建築 |
| 木造公共建築物等の整備に向けた取組支援 | 林野庁 | 地方自治体の木造公共建築 |
| 木材産業・木造建築物連携強化対策 | 林野庁 | 地域材活用の木造建築 |
| 森林環境譲与税 | 総務省 | 市町村事業(公共施設木造化等) |
W350が実建築化する場合、これらの補助金活用+カーボンクレジット創出(J-クレジット制度)+ESG投資・グリーンボンド資金等の組み合わせが想定されます。
国際的位置づけ:CTBUH・AIJの議論
世界の超高層ビル協議会CTBUH(Council on Tall Buildings and Urban Habitat)は、2010年代後半から木造超高層を「Mass Timber Tall Buildings」として体系的に分類し始めました。CTBUHのデータベースでは木造率の閾値(純木造/ハイブリッド木造/部分木造)でビルを区分し、各カテゴリの世界記録を更新する形でランキングが公開されています。W350は、現時点で世界の超高層プロジェクトの中でも飛び抜けて高いハイブリッド木造構想として、ヨーロッパ・北米のメディア・学術文献にも参照されています。
日本国内では日本建築学会(AIJ)の木質構造運営委員会・各研究小委員会が、CLT構造設計指針の整備、木鋼ハイブリッド接合の実験データ集積、長周期地震動下の木造応答評価などの取りまとめを進めており、住友林業や大学(東京大学・京都大学・京都工芸繊維大学・信州大学・北海道大学等)の木質構造研究室と密接に連携しています。AIJ大会・木質構造研究発表会には毎年W350関連や中大規模木造関連の研究発表が掲載されており、W350構想は「個別企業の構想」ではなく学術コミュニティ全体の研究プラットフォームとして機能している側面があります。
社会的意義:脱炭素・林業活性・都市景観
W350計画は単に「高い木造ビル」を目指すだけのプロジェクトではありません。社会的には三つの大きな意義が想定されます。
意義1:脱炭素の象徴と実装
木材は成長過程で大気中のCO2を吸収して固定し、建材として用いることで都市にCO2を「ストック」する効果があります。W350は約10万トンのCO2を一棟で固定する計画で、これは中規模火力発電所の年間排出量の何分の一かに相当する規模です。さらに、鉄骨造・RC造に比べて建設工程中のCO2排出(エンボディドカーボン)が大幅に少ないため、建材の選択そのものが脱炭素戦略の中核要素になり得ます。住友林業はScope 1+2+3の排出実質ゼロ(ネットゼロ)を2050年に掲げており、その達成手段の象徴がW350です。
意義2:国産材需要創出と林業活性化
戦後造林された日本のスギ・ヒノキ人工林は伐期を迎えていながら、住宅需要の頭打ちで利用が伸び悩んでいます。中大規模木造ビル市場が拡大すれば、国産材の用途が住宅以外にも広がり、林業の経済性が改善します。W350の185,000 m³という木材使用量は、戸建約8,000戸分に相当し、一棟で大規模団地一つ分の木材需要を生む計算です。林業の経済性が高まれば、間伐・主伐・再造林のサイクルが回り、CO2吸収源としての森林機能が長期的に維持されます。
意義3:都市景観と心理的効果
「環境木化都市」というキャッチフレーズが示す通り、W350の意義は都市景観そのものを「コンクリート・ガラスの都市」から「木と緑の都市」へとシフトさせる点にもあります。木材は人間の視覚・触覚・嗅覚にポジティブな心理効果(バイオフィリック効果)をもたらすことが心理学・建築環境工学の研究で示されており、オフィス・住宅・商業空間の生産性・快適性・健康指標を改善する可能性があります。350mのランドマークが街路から見えることで、「木の街」というアイデンティティが市民に浸透する波及効果も期待されます。
住友林業のCO2戦略との接続
W350計画は単体の建築構想ではなく、住友林業の長期CO2戦略の中核要素です。同社は2050年までにScope 1+2+3の全排出を実質ゼロ化する目標を掲げ、木材調達・植林・木造建築普及を統合した「環境木化都市」モデルで地球規模のCO2固定貢献を目指しています。
具体的KPI:
- 森林管理面積の拡大(国内・海外)
- 木造ビル普及率向上
- 国産材利用率の向上
- FSC・PEFC・SGEC認証材率向上
これらの長期目標達成のためのR&Dシンボルとして、W350計画が機能している構造です。ESG投資・サステナビリティリンクローン・グリーンボンドといった資金調達手段とも親和性が高く、住友林業のIR資料でもW350は「企業ビジョンの可視化」として繰り返し言及されています。投資家にとっては、長期R&Dロードマップが具体的数字(350m・2041年・185,000m³・10万トン)で示されることで、企業のサステナビリティ戦略の「真剣度」を測る指標になり得ます。
W350までのマイルストーン(2026〜2041)
| 時期 | 主要マイルストーン(予測) |
|---|---|
| 2026〜2030 | W200級(200m級)の中間ステップ構想化、要素技術の実証 |
| 2030〜2035 | 15〜20階木造ビルの実建設、規制改正 |
| 2035〜2040 | 30〜50階クラスの木造ビル、世界各地で並行開発 |
| 2041 | 住友林業創業350周年、W350相当のシンボリックプロジェクト |
これは予測であり、技術的・経済的・規制的要因で大きく変わる可能性があります。一方、世界の木造高層化トレンドは2020年代に明確化しており、2041年までに50〜100m級の木造ビルが世界各都市で並ぶ景観は十分に現実的です。日本国内でも2030年頃に20階級の木造ハイブリッドが商業竣工、2035年前後に30階級が登場、というロードマップは多くの専門家が共有する見通しです。
よくある質問(FAQ)
Q1. W350は本当に建つのですか
A. 住友林業自身が「事業計画ではなくR&D構想」と明言しており、350mが具体的に建設されるかは未確定です。一方、5〜10階クラスの木造ビルや20〜30階クラスの木造高層化は、計画関連技術を活用して順次実現されつつあります。「W350そのもの」が建つかどうかではなく、「W350に必要な要素技術が中規模建築に展開されるか」がより重要な評価軸です。
Q2. なぜ「350」なのですか
A. 住友林業の創業年1691年から2041年が350年目に当たることから、シンボリックな数字として「350m高さ」が選ばれました。技術的・建築的に最適化された数値ではなく、企業ブランディング上の象徴です。「Wood」と「350」を組み合わせた「W350」という記号が、企業のアイデンティティと長期R&Dの方向を一語で示します。
Q3. 純木造ではなくハイブリッドなのはなぜですか
A. 350m級の超高層を純木造で実現するには技術的・コスト的ハードルが高すぎるため、現実的解として木材:鋼材=9:1のハイブリッドが採用されています。これでも十分な木材使用量とCO2固定が達成され、純木造への意欲的なステップとして機能します。鋼材は耐震ブレースや要所の接合部に限定して使うことで、構造の合理性と意匠の木質感を両立する設計戦略です。
Q4. 大林組Port Plusとの違いは
A. Port Plusは2022年実建設の純木造11階オフィスビル(44m)。W350はR&D構想で、2041年目標の70階建てハイブリッド木造ビル。Port Plusは現実、W350は技術開発のロードマップ。両者は補完的関係であり、Port Plus等の中規模実建築で蓄えた知見がW350に向けた段階的検証の場として機能します。
Q5. 日本の建築基準法でこのような超高層木造は許可されますか
A. 現行法では特例措置・性能規定型評価等の組み合わせで対応する必要があります。建築基準法・消防法・劇場法等の段階的改正と、性能評定機関による個別認定の蓄積で、2041年に向けて法的整備が進む見通しです。2010年の公共建築物木材利用促進法、2021年の都市の木造化推進法といった法整備が下地となり、超高層木造の認定ルートも徐々に整備されつつあります。
Q6. 火災時の安全性はどう確保されますか
A. 木造超高層では「燃えしろ設計」と「燃え止まり層」を組み合わせ、火災時に表層が炭化しても芯材まで火が達しない構造とします。3時間耐火性能の確保、避難計画の冗長化、初期消火・スプリンクラーシステムの強化、煙制御設備の高性能化など、複数の防火戦略を重ね合わせる設計が想定されます。耐火集成材(FRウッド・燃エンウッド系)の開発成果がそのまま展開される予定です。
Q7. 木材調達のサステナビリティはどう担保されますか
A. 住友林業は国内外で約28万ヘクタールの森林を管理し、FSC・PEFC・SGEC等の森林認証を取得しています。W350に必要な185,000 m³の木材は、認証材を中心に、合法木材調達・トレーサビリティ確保・LCA評価のフルセットで運用される計画です。間伐・主伐・再造林のサイクルを回す前提で「使うことで森林を守る」モデルが追求されます。

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