防護衣の規格:EN 381-5・JIS T 8125・耐切創Class 1-3の選定

防護衣の規格 | 育みと収穫 - Forest Eight

結論先出し

  • チェーンソー防護衣の主要規格はEN 381シリーズ(ズボン・チャップス・上衣・手袋・靴・脚部の包括)と、それを統合した国際規格ISO 11393(2018年改訂で全6部構成)、日本の対応版JIS T 8125-2。耐切創性能はClass 0〜3の4等級、対応チェーン速度16/20/24/28 m/sで段階区分。
  • 林野庁「チェーンソーによる伐木等の業務に係る安全衛生規則」(2019年8月改正・2020年8月施行)により、チェーンソー作業者は下肢切創防護衣(防護ズボン・チャップス)の着用が法的義務化。事業者は支給・点検・教育義務を負い、違反は労働安全衛生法第119条・第120条で処罰対象。
  • 素材技術:Avertic(Pfanner独自)、Dyneema(DSM/超高分子量ポリエチレン)、Kevlar/Twaron(アラミド)、Engtex(ポリエステル長繊維)を多層化。チェーンが食い込むと長繊維がほぐれてスプロケットに絡まり、0.1秒以下でチェーンを停止させる「ハイブリッド保護」が原理。1度切創を受けたら即交換が原則。

チェーンソー作業の防護衣は林業労災の中でも致死率が高い下肢切創・頭部直撃・キックバック顔面切創を防ぐ最後の砦です。林業の死亡災害は年間30件前後で推移し、約4割がチェーンソー関連、その約3分の1が下肢切創起因。本稿ではEN 381・ISO 11393・JIS T 8125・EN ISO 17249の規格構造、Class 0〜3の物理的意味、チャップスとパンツの選定、頭部・上肢・足部の付帯装備、林野庁の着用義務、メンテと寿命までを数値ファーストで整理します。

目次

クイックサマリ:防護衣規格の全体像

項目 内容
下肢防護衣(欧州) EN 381-5(チャップス・ズボン)/ISO 11393-2(国際統合版、2018)
下肢防護衣(日本) JIS T 8125-2(EN 381-5整合、2020改正)
下肢防護衣(北米) ASTM F1897(米)/CSA Z259(加)
防護靴 EN ISO 17249(欧・国際)/JIS T 8125-3(日)
防護手袋 EN 381-7/ISO 11393-4/JIS T 8125-4
上衣 EN 381-11/ISO 11393-6(樹上作業者用)
耐切創クラス(チェーン速度) Class 0:16 m/s/Class 1:20 m/s/Class 2:24 m/s/Class 3:28 m/s
主要保護繊維 Avertic、Dyneema、Kevlar、Twaron、Engtex、Cordura(外層)
保護原理 長繊維のほぐれ→スプロケット絡み→チェーン即停止(0.1秒以下)
主要メーカー Pfanner(オーストリア)、STIHL、Husqvarna、Clogger(豪)、Sip Protection、Solidur
耐用年数 3〜5年(プロ常用)/切創履歴・大きな摩耗で即交換
価格帯 チャップス10,000〜30,000円、防護ズボン20,000〜50,000円、防護靴30,000〜60,000円、ヘルメット一式15,000〜35,000円
日本の法的義務 林野庁安全衛生規則(2020.8施行):下肢切創防護衣の着用義務

EN 381シリーズとISO 11393:規格体系の全貌

EN 381は欧州規格委員会(CEN)が1990年代に整備したチェーンソー作業者保護具の規格群で、装着部位ごとに枝番が付されています。2018年にこれらを統合・近代化した国際規格 ISO 11393 が発行され、現在では両規格が併存しています。

規格 対象 適用部位 代表的試験条件
EN 381-5 / ISO 11393-2 下肢防護衣(チャップス・ズボン) 大腿〜下腿前面・全周 チェーン速度16/20/24/28 m/sで貫通停止確認
EN 381-7 / ISO 11393-4 防護手袋 左手甲(受け側) 左手甲のみクラス指定(右手は通常作業性優先)
EN 381-9 / ISO 11393-5 レギンス・ゲートル 下腿(短時間作業用) EN 381-5に準ずる試験
EN 381-11 / ISO 11393-6 上衣(ジャケット) 胸部・上肢前面 樹上作業特有の上半身切創を想定
EN ISO 17249 防護靴 足部・脛 つま先200J耐衝撃+耐切創
EN 397/EN 12492 ヘルメット 頭部 50J衝撃吸収・耳当・面シールド統合
EN 352-1/-3 聴覚保護具 SNR値(騒音遮断指数)で性能区分

ISO 11393は2018年改定で、試験用チェーンソーをパーキンス・モデルから現行のSTIHL MS 261相当に更新し、チェーン張力・温度・布地の前処理(湿潤・乾燥)を明文化。これにより、1990年代以前の古いEN 381試験データと現行品の比較に用いる際は注意が必要です。日本のJIS T 8125-2は2020年改正でISO 11393-2と完全整合され、2020年以降販売される国内認証品はISO 11393適合と読み替え可能になっています。

耐切創クラスClass 0〜3:チェーン速度と停止能力

EN 381-5/ISO 11393-2は、防護衣がチェーンソーの切創を停止できる「最大チェーン速度」を基準に4等級に分類します。試験では標準試料(25cm四方)に試験用チェーンソーを規定の力(角度・押付力)で接触させ、布地を貫通して内部のフォーム層に達するか否かを判定します。

クラス 耐切創速度 意味 典型的な対応エンジン排気量 典型的適用
Class 0 16 m/s 低速チェーン用、試験合格最低ライン 家庭用25-35cc級 家庭園芸・剪定の補助
Class 1 20 m/s 標準的な家庭〜準プロ域 40-50cc級(MS 251、550XP相当) 家庭薪作り・準プロ伐倒・枝処理
Class 2 24 m/s プロ仕様の中核 50-70cc級(MS 261、572XP相当) 常用プロ林業・大規模造材
Class 3 28 m/s 大型機・高出力チェーン対応 70-100cc級(MS 500i、592XP相当) 大径木伐倒・地ごしらえ重作業

「m/s」はチェーンの線速度で、エンジン回転数×スプロケット歯数×チェーンピッチから算出されます。例:MS 261(最大回転数14,000rpm、7歯スプロケット、3/8ピッチ=9.525mm)でフルスロットル時のチェーン速度は約23 m/s となり、Class 2(24m/s)の防護が推奨域です。一般に、自分の使用機の最大チェーン速度より1段上のクラスを選ぶのが安全側の選定(マージン10〜20%)です。

  • 小型30cc級(MS 180、135 Mark II):最大16-20m/s → Class 1を選択
  • 中型50cc級(MS 261、550XP、572XP):最大22-25m/s → Class 1〜2(プロは2推奨)
  • 大型70cc級(MS 462、572XP上位、ECHO CS-7310SX):25-28m/s → Class 2〜3
  • 超大型100cc級(MS 500i、592XP、Husqvarna 3120 XP):28-32m/s → Class 3必須

注意:高Classほど多層化により重量・厚みが増し、夏季の熱中症リスクが上がります。Class 2基準で約1.4-1.6kg/脚、Class 3で1.8-2.2kgが目安。「過剰装備」は装着拒否や脱着習慣を生み、結果として無防備時間を増やすため、使用機に整合したクラス選定が現実的安全につながります。

防護衣のタイプ:チャップス・防護ズボン・オーバーパンツ

1. チャップス(chaps):前面のみ覆う着脱式

大腿〜下腿の前面のみを布で覆い、ベルトとストラップで腰に固定する着脱式。北米と日本の家庭ユーザーで普及率が高く、Class 1適合品が中心。前面のみが切創リスクの大半を占める伐倒作業の物理特性(チェーンソーは下方向に振り出される)を踏まえた合理的設計です。

項目 内容
カバー範囲 大腿前面・ふくらはぎ前面(後面・側面は無防備)
長所 軽量(800g〜1.2kg)、通気性良、装着10秒、作業着の上から着用可
短所 側面・後面・股関節内側が無防備、樹上ではNG
主用途 家庭薪作り、地上伐倒の入門〜中級者、レンタル装備
価格 10,000〜30,000円(Class 1)/20,000〜40,000円(Class 2)
主要ブランド Husqvarna Functional、STIHL Function、Clogger Zero、Solidur Comfy

2. 防護ズボン(trousers):全周防護のプロ仕様

大腿から脛まで全周を覆う本格仕様で、欧州プロ林業の標準装備。前面はClass相当の長繊維パッド、後面は薄手の作業用布で構成され、機能性と保護を両立します。膝部・腰部に補強パッチを持つモデルが多く、毎日8時間使用でも3〜5年の耐用年数があります。

項目 内容
カバー範囲 全周(前部はパッド層、後部は通常布)
長所 側面・後面の偶発切創もある程度緩和、通常作業着兼用、樹上対応モデル有
短所 重量(1.4-2.2kg)、夏季は熱負荷大、サスペンダー要
主用途 プロ林業、長時間作業、自治体林業作業班、樹上作業
価格 20,000〜50,000円(Class 1-2標準)/50,000〜80,000円(Class 3・Pfanner Gladiator上位)
主要ブランド Pfanner Gladiator/Ventilation、STIHL FUNCTION ENS、Husqvarna Technical 25、Sip Protection Forest

3. オーバーパンツ(overtrousers):重ね着型

普通のズボンの上から重ね着するタイプ。林道作業・短時間伐採・パトロール作業に向く。Class 1相当が中心で、専用ズボンより軽くて柔軟だが、夏季の熱負荷は大きい。

項目 内容
カバー範囲 全周(オーバー仕様)
長所 常時携行→必要時のみ装着、複数作業者で兼用しやすい
短所 夏季暑さ大、動きにくい、サイズ合わせ難
主用途 樹上補助、特殊作業、検査・パトロール、災害現場の応急チェーンソー作業
価格 15,000〜35,000円

保護原理:繊維のほぐれによるチェーン即停止

防護衣の保護メカニズムは「ハイブリッド保護(hybrid protection)」と呼ばれます。素材は単に切創を「止める」のではなく、チェーン本体を物理的に「停止させる」設計思想です。

  1. 外層のCordura(500-1000デニール耐摩耗ポリアミド)でチェーン歯の一次接触を受ける
  2. 瞬時に外層が破れ、その下の長繊維パッド(Avertic/Dyneema/Kevlar 多層)にチェーンが食い込む
  3. 食い込んだ歯が長繊維を引き出し、繊維がほぐれる
  4. ほぐれた繊維束がチェーンとスプロケットの隙間に絡まる
  5. 絡みでクラッチが滑り、エンジン回転は維持されたままチェーンだけが停止する(典型的に0.05〜0.1秒以下)

つまり防護衣は「チェーンを布で止める」のではなく「チェーンを駆動系から切り離す」仕組みです。1度切創を受けると繊維が大量にほぐれ、再使用すると性能が大幅低下するため、メーカー指定では即交換が標準。Pfanner・Husqvarnaの取扱説明書には「目視で繊維のほぐれが見えたら廃棄」と明記されています。

防護衣の保護メカニズム 繊維のほぐれによるチェーン停止の原理。 防護衣の保護原理:繊維のほぐれによるチェーン停止 (1) 接触 外層 Cordura 内層 Avertic (2) 繊維ほぐれ 長繊維がほぐれる (3) チェーン停止 スプロケット 繊維が絡まり停止 停止時間 0.05〜0.1秒以下/1度切創を受けたら即交換 繊維の再使用不可、保護効果が大幅低下 出典: EN 381規格、Pfanner・Husqvarna・STIHL技術資料
図1:防護衣の保護メカニズム(出典:EN 381規格、各メーカー技術資料)。

主要保護繊維:素材の物理特性

繊維 メーカー 引張強度(cN/dtex) 特徴
Avertic Pfanner(墺) 非公開(高クラス) 多繊維配合、繊維長長く絡まり性能高
Dyneema SK78 DSM(蘭) 35-40 UHMWPE、同重量で鋼の15倍の引張強度、水に浮く
Kevlar 29/129 DuPont(米) 23-25 パラ系アラミド、300℃まで強度保持
Twaron Teijin(日/蘭) 23-25 Kevlar同等、欧州採用多
Engtex Engtex AB(瑞) 非公開 長繊維ポリエステル、中位モデル向け
Cordura 1000D Invista(米) —(外層) 耐摩耗ナイロン、外層耐久のみ

絡まり性能は引張強度よりも繊維長と摩擦係数が支配的。Dyneemaは強度最高だが表面が滑らかで絡まりにくく、Aramid系との組み合わせが定石です。

EN ISO 17249:防護靴の規格詳細

足部はチェーンソー切創の第二多発部位(全切創の約25%)。防護靴はEN ISO 17249(2013改定/2020増補)でClass 1:20 m/s、Class 2:24 m/s、Class 3:28 m/s(Class 0廃止)の耐切創性能、つま先200J耐衝撃(SBランク以上)、耐滑足底(SRA/B/C)を必須要件とします。形態はハイカット(脛保護)が標準。革製ハイカット(Haix Protector、Meindl Airstream)と長靴型(STIHL ProMark、Aigle Parcours)が日本の現場標準で、ともにClass 2、価格30,000〜60,000円。

頭部・聴覚・面部防護:ヘルメット一式の規格

EN 397(産業用ヘルメット)は50J衝撃吸収、EN 12492(登山・樹上作業用)は側方衝撃に強く、樹上作業者向け。多くのチェーンソー用ヘルメットは耳当(EN 352-1)と面シールド(EN 1731 メッシュ式または EN 166 透明式)を統合した「3-in-1」構成です。

装備 規格 性能数値
ヘルメット(地上) EN 397 50J衝撃吸収、側方衝撃 -10/-20/-30/-40℃対応
ヘルメット(樹上) EN 12492 あご紐強度50daN、側方衝撃強化
耳当(イヤーマフ) EN 352-1 SNR値24-30dB(チェーンソー110dB→残留80dB前後)
面シールド(メッシュ) EN 1731 F(衝撃F級) 木屑・小枝の貫通防止、視界確保
面シールド(透明) EN 166 1F 飛来粒子・薬液対応、メッシュより視界明瞭
主要統合製品 Pfanner Protos Integral、Husqvarna Forest、STIHL Advance X-Vent、Petzl Vertex Vent + EN 352耳当 15,000〜35,000円

耳当のSNR(Single Number Rating)は、装着時に得られる平均的な遮音性能(dB)。チェーンソーの作業時騒音は100-115dB、これを長期暴露すると騒音性難聴のリスクがあります。SNR 25以上のイヤーマフが推奨され、林野庁規則でも装着が義務化(2020.8〜)。

防護手袋・上衣:上肢の規格

EN 381-7(ISO 11393-4)は防護手袋の規格で、左手甲のみがClass指定です。これは右利き使用者がチェーンソーを右手で握り、左手で前ハンドルを保持するため、キックバック時に切創が起きやすいのが「左手甲」だからです。右手甲は通常作業性を優先し、Cordura等の耐摩耗素材のみが用いられます。

装備 規格 主要仕様 価格
防護手袋 EN 381-7/ISO 11393-4 左手甲のみClass 0/1指定(多くは Class 0)、掌は牛革 5,000〜12,000円
上衣(樹上) EN 381-11/ISO 11393-6 胸部・上腕前面に長繊維パッド、Class 0-1 30,000〜60,000円
レギンス(短時間用) EN 381-9/ISO 11393-5 下腿のみカバー、Class 1相当 10,000〜20,000円

上衣(防護ジャケット)は樹上作業者専用装備で、地上作業では不要。アーボリスト(樹上伐採作業員)は宙吊り姿勢で作業するため、地上では起こりえない胸部・腕部の切創リスクがあり、ISO 11393-6でこれを規定しています。日本の都市部の支障木伐採・剪定でアーボリスト技術を採用する事業者では、上衣の装着が必須です。

北米・他地域の規格:ASTM F1897・CSA Z259

北米はEN 381でなくASTM F1897が主規格、OSHA 1910.266でプロ林業の装着義務を定めます。ASTMはClass 0〜4の5等級でEN 381より細分化されていますが概ね相互互換で、Pfanner・Husqvarna・STIHLはEN・ASTM両規格適合品を販売。カナダはCSA Z259.17、米国農務省・林務省は適合製品の認定リストを毎年公開。日本国内ではCE・ASTM・JISいずれの認証品も流通可で、輸入品を選ぶ際はCEまたはJIS適合表示の確認が林野庁規則上の実務手順です。

JIS T 8125:日本規格と林野庁着用義務

日本のJIS T 8125-2(防護衣)・JIS T 8125-3(防護靴)は、いずれもISO 11393/EN 381シリーズと整合化されており、2020年改正で試験条件と適合表示が完全互換となりました。労働安全衛生法・厚生労働省ガイドライン・林野庁規則のいずれも、本JISへの適合をもって「適切な防護衣」として認めています。

項目 内容
JIS T 8125-1 共通要求事項(試験方法、適合表示)
JIS T 8125-2 下肢防護衣(チャップス・ズボン)、ISO 11393-2整合
JIS T 8125-3 防護靴、EN ISO 17249整合
JIS T 8125-4 防護手袋、ISO 11393-4整合
適合製品例 STIHL Japan、Husqvarna、Pfanner、Sip Protection、Solidur(CE品も互換可)

林野庁「チェーンソーによる伐木等の業務に係る安全衛生規則」は、2019年8月に改正、2020年8月1日から施行。これにより、すべてのチェーンソー作業従事者は以下の防護具着用が法的義務となりました(事業主は支給・点検・記録義務)。

  1. 下肢の切創防護衣(防護ズボンまたはチャップス、JIS T 8125-2/EN 381-5/ISO 11393-2 適合)
  2. 頭部保護具(ヘルメット EN 397 等)
  3. 聴覚保護具(イヤーマフ・耳栓、SNR 25以上推奨)
  4. 顔面保護具(メッシュ面シールド EN 1731 等)
  5. 足部の保護具(防護靴 EN ISO 17249/JIS T 8125-3 適合 推奨)
  6. 手袋(EN 381-7 適合 または同等品)

違反時は労働安全衛生法第119条・第120条により、6月以下の懲役または50万円以下の罰金。さらに労災事故時の事業者責任が加重され、刑事責任・民事賠償が問われます。

主要メーカー製品例:選定の手引き

メーカー 主要モデル Class 価格帯
Pfanner(墺・最高級) Gladiator/Ventilation、Arborist、Protos Integralヘルメット 1-2 ズボン50-80k/ヘルメ25-35k
STIHL(独) FUNCTION ENS/X-LIGHT 1-2 25-45k
Husqvarna(瑞) Technical 25、Functional、Classic 1-2 22-45k
Clogger(豪) Zero ChainGuardチャップス、Ventilated Trousers 1 18-38k

夏季対策・通気性設計

日本の高温多湿環境では、通気性は単なる快適性でなく「装着率」を決める安全要件。メッシュ通気孔(背面・大腿後部・膝裏)配置、Pfanner Ventilation・Clogger Zero等の軽量素材、クールベスト併用、早朝・夕方の二部制、WBGT 28℃以上で1時間毎の休憩義務が標準対応です。女性林業従事者向けには、Pfanner Lady、Husqvarna Women’s Line、Clogger Arborist Pro Womenがサイズ・軽量化(同Class比-10〜15%)で展開中。

メンテナンス・寿命:長持ちさせる実務

項目 推奨実務
洗濯 機械洗濯(メーカー指定温度、通常30-40℃)/柔軟剤NG(繊維がほぐれる)/漂白剤厳禁
乾燥 陰干し(直射日光・乾燥機NG、紫外線でアラミドが劣化)
収納 湿気避け、平置き/ハンガー長期吊しは形状維持に不利
定期点検 毎月:縫製・ファスナー・ストラップ確認/毎週:摩耗・繊維ほぐれ確認
耐用年数 3〜5年(プロ毎日使用)/5〜8年(家庭使用週1〜2回)
切創後 即交換(保護性能消失)/繊維のほぐれが目視できる場合も交換
洗濯回数の目安 50〜100回程度で機能低下、目安として年20回まで

洗濯時の注意で見落とされがちなのが「柔軟剤の使用禁止」。柔軟剤は繊維表面の摩擦係数を下げ、絡まり性能を悪化させます。漂白剤・酸性洗剤も同様の理由でNG。中性洗剤・通常温度の機械洗いが原則です。乾燥機も繊維熱劣化の原因となるため、必ず陰干しを徹底してください。

関連認証と購入時の確認事項

製品タグでの確認項目は、CE(EN 381-5・EN ISO 17249)/JIS(T 8125-2/3/4)/UL(米、ASTM F1897)/ANSI/製造年月(5年ルールの起点)/サイズ(欧州46-58・日本M-3L対応)。輸入品では「CE-certified」表記のみでClass明示がないものは避け、「EN 381-5 Class X」または「ISO 11393-2 Class X」が明記されたものを選んでください。

事業者の管理義務:林野庁規則の実務

事業主は労働安全衛生法・林野庁規則に基づき、(1)適切な防護衣の支給(自費購入の強制禁止)、(2)サイズ・規格の確認、(3)月次の状態点検と記録、(4)切創後・摩耗時の即交換(在庫ストック必須)、(5)特別教育に使用方法を含む、(6)支給・点検・交換日の3年以上保存、を遵守する義務があります。違反時は労安衛法第120条(30万円以下の罰金)、第119条(6月以下の懲役または50万円以下の罰金)、業務上過失致死傷罪、民事賠償義務が問われます。

よくある質問(FAQ)

Q1. Class 1とClass 2、Class 3の選び方の決定的な基準は?

A. 使用するチェーンソーのチェーン速度(m/s)で選択します。家庭用小型機(30-40cc)はClass 1(20 m/s対応)、プロ準大型機(50-70cc、MS 261・572XP級)はClass 1〜2、超大型機(70cc以上、MS 462・MS 500i級)はClass 2〜3が標準。自分の使用機の最大チェーン速度に対し1段上のクラスを選ぶと安全マージン10〜20%が確保できます。複数機種を使い分けるプロは、最大の機種に合わせてClass 2を1着持つのが基本構成です。

Q2. 防護衣に切創を受けた場合の対応は?

A. 即交換が原則。1度切創を受けた防護衣は内部の長繊維がほぐれており、次回切創時の保護性能が大幅低下しています。中古再使用や繕いはNG。Pfanner・Husqvarnaの取扱説明書も「目視で繊維のほぐれが見えたら廃棄」と明記。事業者は予備在庫を確保し、切創発生時は即時交換できる体制を組むことが規則上も実務上も必要です。

Q3. 夏季の熱中症リスクで装着を諦めてもいいですか?

A. 絶対にNG(林野庁規則違反)。通気性高モデル(Pfanner Ventilation等)、クールベスト、早朝・夕方シフト、WBGT 28℃以上で1時間毎の休憩で対応するのがプロの基本です。

Q4. 防護衣は普通の作業着としても使えますか?

A. 短時間ならOKですが、重量(Class 2で1.4-1.6kg/脚)と通気性で長時間は疲れます。チェーンソー作業時のみ装着し、移動・休憩時は通常作業ズボンに着替える二着体制がプロ林業の標準です。

Q5. 防護靴は普通の安全靴と何が違いますか?

A. 普通の安全靴(JIS T 8101 S1〜S5等)はつま先200J耐衝撃と耐滑のみ。防護靴は加えてEN ISO 17249/JIS T 8125-3の耐切創性能(Class 1〜3、20-28 m/s対応)を持ち、チェーンソー切創からも足を保護します。価格は普通の安全靴の2〜3倍(30,000〜60,000円)ですが、林野庁規則の対象作業ではこちらが推奨。長靴型と革製ハイカット型があり、雨天や濡地が多いなら長靴型、足首保護重視なら革製ハイカットを選ぶのが目安です。

Q6. 古いEN 381の試験データと現在のISO 11393のデータは互換ですか?

A. 概ね互換ですが、2018年のISO 11393改定で試験用チェーンソー機種・チェーン張力・布地前処理が更新されたため、1990年代以前の旧EN 381試験データは現行品と直接比較できません。中古品・年数が経った在庫品を選ぶ際は、製造年月とClass表示を確認し、製造から5年以内・未使用品を優先してください。

Q7. 上衣(防護ジャケット)は地上作業でも必要ですか?

A. 地上作業では不要です。EN 381-11/ISO 11393-6の上衣は樹上作業者(アーボリスト)専用装備で、宙吊り姿勢で胸部・腕部に切創リスクがあるための規格。地上の伐倒・造材ではチェーンソーが下方向に振り出され、上半身に当たる物理確率が極めて低いため、上衣の規格適合は要求されません。

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