結論先出し
- HoHo Wien(オーストリア・ウィーン、2019年完成)は欧州最大級の木造ハイブリッド高層建築。地上24階・高さ84 m・延床19,500 m²。
- 構造:木材75%+鉄筋コンクリート25%のハイブリッド。RCコア+集成材柱梁+CLT-RC合成床。耐火90分・燃えしろ設計でEN・OIB基準適合。
- 設計:Rüdiger Lainer + Partner(ウィーン)、構造WoschitzGroup、発注Cetus Baudevelopment(旧Kerbler)。樹種はオーストリア・トウヒ(Picea abies)主体、地域材中心。
- 用途:ホテル・オフィス・レストラン・住戸の複合。建設費は概ね€60M前後。木材使用により長期間にわたる炭素貯留と環境性能を確保。
HoHo Wien(「Holz Hochhaus(木造高層)」の略)は、2019年にオーストリア首都ウィーン東部の大規模都市開発Seestadt Aspern地区に竣工した、欧州最大級の木造ハイブリッド高層建築です。地上24階・高さ84 m・延床面積19,500 m²、構造重量比で木材75%・RC 25%を達成し、ホテル、オフィス、レストラン、住戸を内包する商業運営される複合用途タワーです。設計は地元のRüdiger Lainer + Partner、構造設計は鋼・木造ハイブリッドに強いWoschitz Group、発注はCetus Baudevelopment(旧Kerbler不動産グループ)。Mjøstårnet(ノルウェー、85.4 m)と並び、世界の中・高層木造建築化の象徴的なベンチマークとなっています。本稿では設計・構造・木材・防火・LCA・受賞歴・コスト・課題まで、数値ファーストで詳細に解説します。
建築計画と立地:Seestadt Aspernという舞台
HoHo Wienの立地であるSeestadt Aspernは、ウィーン市第22区に位置するオーストリア最大の都市開発プロジェクトの一つで、計画面積約240 ha、最終的に約20,000人の住民と20,000人の雇用を生む予定の新興地区です。旧アスペルン飛行場跡地を再開発したサステナブル指向の都市計画で、低炭素・歩行者重視・公共交通指向(TOD)を理念に掲げています。HoHo Wienはその象徴的なランドマークの一つとして、地下鉄U2線のSeestadt駅から徒歩圏に立地し、商業・住居・オフィスの複合機能で地区の活性化に寄与しています。
発注者のCetus Baudevelopment(旧Kerbler不動産グループ)は、ウィーンを拠点とする中堅デベロッパーで、サステナブル建築への先進的な取り組みで知られます。2015年に企画が始まり、約2年の設計期間を経て2016年着工、2019年に竣工しました。総事業費は概ね€65M前後と公表されており、同規模のRC建築と比較して10〜15%程度の上振れにとどまります(プレファブ化により施工期間短縮で相殺)。
設計を担当したRüdiger Lainer + Partnerは1985年設立のウィーン大手で、文化・教育・住宅施設で多数の実績を持ちます。意匠的には、テラコッタ調のセラミック外装と窓周りのアルミディテールにより、内部の木造構造を露出させない欧州的な「都市の表情」を採用しています。一方で内装ではCLT・集成材を積極的に露出させ、ホテルロビーやレストランで木質感を体感できる設計となっています。
計画段階の主要目標は次の5点です:
1. 欧州最大級の木造高層建築の実現:木造化潮流の象徴的なフラグシップ。
2. 商業的成立性の実証:ホテル・オフィス・住宅の複合用途で投資回収可能性を担保。
3. 持続可能性の徹底:地域材活用、CO₂削減、長期間にわたる炭素貯留。
4. 都市環境への貢献:Seestadt Aspernの象徴的建築として街づくりに寄与。
5. 技術ベンチマーク:オーストリア・欧州の木造高層技術のショーケース化。
ハイブリッド構造の詳細:木材75%・RC 25%の根拠
HoHo Wienの最大の特徴は、構造重量比で木材75%・RC 25%という数値に表れる徹底した木造化です。これは欧州・北米の同種高層プロジェクトの中でも極めて高い木材比率で、Mjøstårnetの約85〜90%木材構成、Brock Commons(カナダ、UBC)の混合柱梁+RCコア構成に近い思想と言えます。
構造システムの構成要素は以下の通りです:
| 要素 | 素材 | 役割 | 主要寸法 |
|---|---|---|---|
| コア(EV・階段・設備シャフト) | RC(鉄筋コンクリート) | 耐震ブレース・耐火避難経路 | 壁厚300〜400mm |
| 柱 | BSH集成材(耐火層付) | 鉛直荷重伝達 | 500〜800mm角 |
| 梁 | BSH集成材 | 横架材・床支持 | 幅240〜400mm |
| 床スラブ | CLT+RC合成(厚200mm前後) | 面内剛性・遮音・防火 | CLT 80mm+RC 80mm程度 |
| 外壁 | 木質プレファブパネル | 外装・断熱・気密 | パネル化施工 |
| 内壁(ホテル・住戸) | CLT・木質ボード | 遮音・調湿・木質感演出 | 所要に応じ可変 |
| 基礎・地下 | RC | 地中躯体・耐震・耐水 | 標準仕様 |
RCコアは耐震・耐火・剛性を担い、特にウィーンは比較的低地震ハザード地域(EN 1998の地震Zone 1〜2)ですが、24階という高さでは風荷重が支配的になるため、RCコアでの剛性確保が経済的合理性を持ちます。集成材柱梁とCLT床はプレファブ化された乾式工法で、施工時の重量が軽く、施工速度の向上に寄与しました。竣工までの地上躯体の建方期間は約8ヶ月と、同規模RC建築の概ね70%程度に短縮されています。
木材使用量と樹種:オーストリア・トウヒ主体
HoHo Wienで使われた主要な木材はオーストリア・トウヒ(Picea abies、ノルウェー・スプルース)で、これは中欧の山岳地帯に広く生育し、構造用集成材・CLTの主力樹種です。木材使用量はおよそ3,600 m³(構造材ベース)と公表されており、燃えしろ設計分・予備材を含めるとさらに増えます。木材調達は主にオーストリア国内および隣接する独・スロベニアからのもので、PEFC・FSC等の森林認証材が中心です。
使用された木質構造材の内訳:
1. BSH集成材(Brettschichtholz / Glulam):柱梁の主要部材。スプルース材を等級選別の上、構造用接着剤で積層。耐火等級R90の燃えしろ設計に対応する寸法。
2. CLT(Cross Laminated Timber):床・一部壁体。3〜7層の直交積層パネル。Mayr-Melnhof(オーストリア)、Stora Enso等の主要メーカー製。
3. LVL(Laminated Veneer Lumber):高強度部位の補強用。
4. 木質仕上げ材:フローリング、壁面パネル、家具等。
木材使用に伴う炭素貯留量は推定約2,800 tCO₂eqと公表されており、これは概ね同規模の純RC建築と比較して建設時CO₂排出を約2,800トン分相殺できる計算です。実際のライフサイクルアセスメント(LCA)研究では、HoHo Wienの建設時GHG排出は同等規模RC比でおよそ40%程度低減されると報告されており、長期運用時のエネルギー性能(後述)と合わせ、ライフサイクル全体でも優位性があるとされています。
用途構成と運用:複合機能の収益性
HoHo Wienは複合用途建築として設計され、各階に異なる機能が配置されています。
| 階層 | 主用途 | 規模・特徴 |
|---|---|---|
| 地下1階 | 駐車場・設備 | RC構造、機械式・在来式 |
| 1〜2階 | ロビー・公共スペース・ショップ | 木質露出、地域コミュニティ動線 |
| 3〜7階 | レストラン・カフェ・ウェルネス | 多様な飲食テナント |
| 8〜14階 | ホテル(IntercityHotel等) | 客室約160室、木質感のある内装 |
| 15〜20階 | オフィス・コワーキング | 創造性重視のテナント企業 |
| 21〜24階 | 住戸・サービスアパートメント | 長期賃貸の高層住戸 |
このような垂直ミクストユースは、欧州大都市の大型オフィスビルでは比較的珍しく、HoHo Wienの商業的特徴の一つです。各用途の動線分離、騒音・振動対策、設備系統の独立、アクセス管理など、計画上の複雑さは増しますが、運用面では需要のリスク分散として機能し、コロナ禍でもホテル・オフィスの空室率変動を住戸・レストランで吸収するなど、レジリエンスが評価されました。
運用評価の主要指標:
1. 入居率:竣工後数年で各用途の入居率は概ね90%超と高水準。木造というブランド価値が需要を後押し。
2. 賃料水準:周辺類似オフィス・住戸と比較して同等以上。プレミアム賃料を支払うテナント層も存在。
3. メンテナンス:木材露出部の経年管理は計画的(5年・10年点検)。竣工後の主要な構造的問題報告なし。
4. 利用者満足度:ホテル滞在者・オフィス利用者へのアンケートで木質内装への高評価。
5. メディア・観光価値:建築見学需要も継続的にあり、Seestadt Aspernの観光ランドマーク化に寄与。
防火対策:耐火90分と燃えしろ設計
24階という高さでの木造化において最大の技術課題は防火です。HoHo Wienは欧州耐火基準(EN 13501)およびオーストリア建築技術規格(OIB-Richtlinien)の耐火等級R90(90分耐火)を達成しています。これは同等規模のRC建築と同じ水準で、同等の安全性を木造ハイブリッドで実現したことが、認証取得の最大のハードルでした。
主な防火対策:
1. 燃えしろ設計(charring design):木材は表面から炭化するため、所定の炭化深度(スプルース集成材で約0.65〜0.7 mm/分)を見込んで構造計算上の有効断面を残す。R90では概ね59〜63 mm程度の燃えしろを確保。
2. 石膏ボード等の被覆層:避難動線・公共部の集成材柱梁は2層の石膏ボードで被覆し、追加耐火層を確保。
3. RCコアによる避難経路:エレベーター・階段・ロビーはRCコアで構成し、火災時の避難・消防活動経路を耐火構造で確保。
4. スプリンクラー全館設置:自動消火設備を全居室・共用部に設置。
5. 区画分割:各住戸・客室・オフィスゾーンを耐火区画で分離し、延焼防止。
6. 早期警報・煙制御:高度な火災検知・煙制御システム(加圧排煙等)を装備。
7. 実大火災試験:構造ディテールについて実大規模の火災試験を実施し、想定通りの挙動を実証。
これらの設計は欧州の主要な建築防火研究機関(オーストリア木材産業研究所Holzforschung Austria等)と連携して開発・検証され、後続の中・高層木造プロジェクトにおける標準的な参照モデルとなっています。
- Holzforschung Austria(オーストリア木材研究所)
- OIB-Richtlinie 2「Brandschutz」(オーストリア防火基準)
環境性能とLCA:建設時排出40%削減
HoHo Wienの環境性能は、設計段階から定量目標として組み込まれていました。建設時のCO₂排出評価(embodied carbon)と運用時のエネルギー性能、双方の最適化が図られています。
1. 建設時GHG排出:木材構造化により、概ね同規模RC比で建設時GHG排出を約40%低減と公表。CLT・集成材の製造時排出はRC・鋼材より一般に大きく低い。
2. 炭素貯留:構造木材中に固定された生物起源炭素は推定2,800 tCO₂eq。建築物の存続期間中、この炭素は大気から隔離。
3. 運用時エネルギー:地域熱供給(Aspern地区の低炭素電力・地域暖房)と高断熱外皮、効率的な熱回収換気で運用エネルギー消費を低減。
4. 認証:オーストリアの建築サステナビリティ認証klimaaktiv(Goldレベル)等を取得。
5. 解体時の循環:CLT・集成材の解体後リユース・リサイクルを想定した接合ディテール設計。
6. 室内環境:木質露出による調湿効果、低VOC材料選定、自然採光最大化。
注意点として、純粋な「カーボン・ネガティブ建築」と評価するには木材の森林側の更新(再造林)と全ライフサイクルでの境界条件設定が前提となります。HoHo Wienで使用された木材は持続可能な森林管理(PEFC・FSC)認証材が中心ですが、建築のLCA評価は前提条件次第で結論が変わるため、欧州レベルでの標準化(EN 15978、EN 15804)に準拠した数値の解釈が重要です。
受賞歴と国際的評価
HoHo Wienは竣工以来、欧州を中心に多数の建築賞・木造建築賞を受賞しています。
1. WAN Sustainable Buildings Award:サステナブル建築部門での評価。
2. Austrian Holzbaupreis(オーストリア木造建築賞):国内木造分野での主要賞。
3. Vienna Real Estate Award:ウィーン都市開発・不動産分野での評価。
4. CTBUH(Council on Tall Buildings and Urban Habitat):高層建築国際組織からの注目プロジェクト選出。
5. Living Architecture / Holz Design Awards:ヨーロッパ木造設計賞のノミネート・受賞多数。
建築メディアでも『dezeen』『Architectural Review』『Bauwelt』『Detail』等で大きく取り上げられ、欧州の『木で建てるまちづくり』のフラグシップとして位置付けられています。
欧州の他のmass timber事例との比較
HoHo Wienは単独の作品ではなく、欧州・北欧の中・高層木造化潮流の中で評価されるべきです。代表的な事例との比較:
| プロジェクト | 所在 | 竣工 | 高さ・規模 | 主要構造 |
|---|---|---|---|---|
| HoHo Wien | オーストリア・ウィーン | 2019 | 24階・84 m | 木材75%+RCコア |
| Mjøstårnet | ノルウェー・Brumunddal | 2019 | 18階・85.4 m | 純木造に近い(CLT・GLT) |
| Treet | ノルウェー・ベルゲン | 2015 | 14階・49 m | 木造モジュラー+GLT |
| Brock Commons Tallwood House | カナダ・UBC | 2017 | 18階・53 m | 木造柱梁+RCコア |
| Sara Kulturhus | スウェーデン・Skellefteå | 2021 | 20階・75 m | 純木造(CLT・GLT) |
これらの比較から見えるのは、欧州・北米の高層木造化が2015〜2021年の短期間に急速に集積したこと、各国・各プロジェクトで構造方式が多様(純木造/ハイブリッド)であること、いずれも国・地域の支援制度・材料認証・防火基準整備と連動していることです。HoHo Wienは特に商業的成立性の面でベンチマークとなっており、Mjøstårnetが純木造志向、Sara Kulturhusが文化施設複合、Brock Commonsが学生寮単機能であるのに対し、HoHo Wienは複合用途・大型・商業ベースという点で独自性があります。
工事期間とコスト:8ヶ月の建方
HoHo Wienの全体工程は概ね2016年着工〜2019年竣工の約3年で、内訳は基礎・地下RC工事、地上躯体工事(木造ハイブリッド)、外装・内装、設備工事、引渡しに分けられます。地上躯体の建方は約8ヶ月と、同規模RC建築の概ね70%程度の期間で完了しました。これはCLT・集成材のプレファブ化と、Woschitz Groupによる詳細な施工計画の貢献が大きい点です。
主要なコスト指標(公表値・推定):
1. 総事業費:概ね€60〜65M。
2. 単価:延床m²あたり概ね€3,300〜3,500。同規模RCより約10〜15%上振れ。
3. 上振れ要因:CLT・集成材の素材単価、燃えしろ設計分の追加木材、火災試験等の認証コスト、ハイブリッド構造特有の接合部設計。
4. 削減要因:プレファブ化による工期短縮、軽量化による基礎縮小、施工労務削減、リース・賃料収入の早期発生。
5. 運用コスト:木材露出部のメンテナンスコストは標準的なRC建築よりやや高め、ただしブランド・賃料プレミアムで相殺。
HoHo Wien以降、欧州では木造高層のコスト・パリティ(RCと同等コストでの実現)が次の業界目標となり、CLT・集成材の量産化、プレファブ・モジュール化の精度向上、設計標準化により2020年代に入って徐々に縮小しつつあります。
市場・業界での評価
HoHo Wienの竣工は、欧州の建築・不動産市場に対して以下のメッセージを発信しました:
1. 木造高層は商業的に成立する:複合用途・大規模・市街地立地で、収益建築として運用可能。
2. 欧州規制は対応可能:EN・OIB等の既存防火・構造基準のもとで、24階規模の木造化が認証取得できる。
3. 木材サプライチェーンは耐久:オーストリア・北欧のCLT・集成材産業は大規模物件を支える供給能力を持つ。
4. デベロッパー視点での魅力:ESG投資指標、賃料プレミアム、テナント獲得力という観点で、木造化は事業上の差別化要素となる。
5. 都市計画との親和性:低炭素都市づくりを掲げる自治体(ウィーン、ストックホルム、コペンハーゲン等)の重点支援対象。
その後、欧州各国で類似プロジェクト(ロンドン、ベルリン、パリ、アムステルダム等)が続々と企画・着工されており、HoHo Wienは「木造化の事業可能性を示した」プロジェクトとして広く参照されています。
課題と今後:認証・メンテ・進化
HoHo Wienとそれに続く中・高層木造プロジェクトには、いくつかの継続課題があります:
1. 規格・認証の標準化:EU内で各国基準が異なり、設計のたびに個別評価が必要なケースが多い。EN 1995(Eurocode 5)やCEN/TC 124等での標準整備が進行中。
2. 防火試験コストの低減:実大規模火災試験のコストは大きく、新しい構造ディテールごとの再評価が事業性を圧迫。試験データの共通化・公表が課題。
3. 長期メンテナンス:竣工後5年・10年・20年の経年挙動データはまだ十分蓄積されていない。HoHo Wien自身が今後の貴重なリファレンス。
4. 防音・床振動:複合用途では音響性能要求が異なり、CLT-RC合成床の最適化が継続課題。
5. 生物劣化対策:屋外露出部の防腐・防虫処理、雨水処理ディテールの長期信頼性。
6. 解体時のリユース:CLT・集成材の再利用市場は未成熟、接合金物・接着剤の影響評価が必要。
7. 樹種・サプライ多様化:欧州はトウヒ偏重、気候変動による樹種転換(例:広葉樹利用)への対応研究が進行。
これらの課題に対し、欧州研究プロジェクト(Horizon Europe等)、業界団体(CEI-Bois、innovawood)、認証機関等の連携で対応が進められており、HoHo Wienはその実証ベースの一つとなっています。
FAQ:よくある質問10選
Q1. HoHo Wienの正確な高さと階数は?
A. 地上24階、軒高および総高は約84 mです(公表値)。延床面積は約19,500 m²。同時期に竣工したMjøstårnet(85.4 m)と並び、欧州・世界の中・高層木造のトップクラスに位置しています。
Q2. 「木造75%」とは何を指す?
A. 構造躯体(柱・梁・床・壁)の重量に占める木材構造材の比率です。コア・基礎のRC、合成床のRC層、各種金物等を除いたうえで、木材構造材が概ね75%を占めます。建築全体の質量比ではなく、構造重量比であることに注意。
Q3. 樹種は何ですか?
A. 主要な樹種はオーストリア・トウヒ(Picea abies)です。BSH集成材・CLTの主流樹種で、欧州中部の管理林から計画的に伐採・調達されています。一部の仕上げ材で広葉樹(オーク等)も使用。
Q4. 耐火性能はどう確保していますか?
A. 欧州の耐火等級R90(90分耐火)を達成しています。集成材柱梁は燃えしろ設計(約60mmの追加断面)、避難動線はRCコア、共用部の柱梁は石膏ボード被覆、全館スプリンクラー、煙制御システム等の多層防御で実現。
Q5. 同等規模のRC建築と比べてコストは?
A. 公表値・各種研究によれば、HoHo Wien竣工時で概ね10〜15%の上振れと推定されます。ただし工期短縮、ブランド価値、賃料プレミアム等を考慮すると、長期事業性では相応の競争力があります。
Q6. 一般人がホテルとして泊まれますか?
A. はい、IntercityHotel等のチェーンホテルが入居しており、通常の予約サイトから宿泊予約が可能です。客室は約160室規模で、木質感のある内装を体験できます。
Q7. 見学ツアーはありますか?
A. 一般公開エリア(ロビー・レストラン・公共部)は自由に訪問可能です。専門的な構造見学は事前予約制で、オーストリア建築家協会・木材産業団体等のツアーを通じて参加するのが一般的です。
Q8. Mjøstårnetとの違いは?
A. Mjøstårnetはノルウェー・Brumunddal、18階85.4 mで純木造に近い構造(RC利用最小限)。HoHo Wienは24階84 m、木材75%+RCコアの明確なハイブリッド。設計思想の違いに加え、用途(Mjøstårnetはホテル・住宅・オフィス、HoHo Wienは加えてレストラン・公共スペース)も異なります。
Q9. 日本国内に同規模の事例はありますか?
A. 2026年時点で24階規模の木造ハイブリッド事例は商業稼動段階ではまだなく、有明体操競技場、住友林業のW350研究、各地の中層木造ビル(Port PlusヨコハマやFlatsWoodsなど10〜10数階級)が日本の代表事例です。建築基準法上の準耐火・耐火要件、地震荷重の大きさが課題。
Q10. 建物の耐用年数は?将来は解体される?
A. 標準的な構造耐用年数は50年以上を想定し設計されています(適切なメンテナンス前提)。集成材・CLTは適切な防湿・防腐・防火管理下で長寿命を維持可能で、欧州には築100年以上の集成材建築事例も存在。解体時にはCLT・集成材のリユース・リサイクル、化石燃料代替バイオマス利用等の循環設計も検討されています。
都市計画上の意義:低炭素都市ウィーンへの寄与
HoHo Wienは単独の建築として注目されるだけでなく、ウィーン市の都市気候戦略と整合した重要な事例でもあります。ウィーン市は2040年カーボンニュートラルを目標に掲げ、新築建築の低炭素化、地域熱供給の脱炭素化、グリーン建築の補助制度等を進めています。Seestadt Aspern全体が「スマートシティ」のテストベッドとして指定されており、HoHo Wienはその木造化の旗艦事例です。
都市計画の観点で重要な点は次の3つです:
1. 既存都市基盤との接続:U2線Seestadt駅至近、自転車インフラ・歩行者動線・公共スペースとの連続性を確保し、自家用車依存を抑制する設計。
2. 地区エネルギーシステム:低炭素地域熱供給、太陽光発電パネル、電気自動車充電インフラ等の地区規模スマートインフラに統合。
3. 多用途・社会的混合:オフィス・ホテル・住戸・公共スペースのミクストユースで昼夜・週末の活動が連続し、地域の生活感が維持される。
こうした都市計画との密な統合は、HoHo Wienを単なる「珍しい木造高層」ではなく、21世紀の持続可能な都市づくりの一つの解として位置付ける重要な要素です。
まとめ:欧州mass timberの里程標
HoHo Wien(24階・84 m・19,500 m²、木材75%+RC 25%、2019年竣工)は、欧州・世界の中・高層木造建築化潮流における極めて重要な里程標です。Rüdiger Lainer + Partnerによる都市的意匠、Woschitz Groupによる構造設計、オーストリア・トウヒを主体とする3,600 m³級の構造材使用、R90耐火性能、推定2,800 tCO₂eqの炭素貯留、8ヶ月で完了した建方、約€60Mの事業性、複合用途による収益分散、klimaaktiv Gold認証、複数の建築賞、そしてウィーン市の低炭素都市戦略との整合――これらが揃った稀有な事例として、Mjøstårnet、Sara Kulturhus、Brock Commons、Treet等と並び、世界の建築界が長く参照する作品となっています。日本を含む各国の中・高層木造プロジェクトは、HoHo Wienの設計・施工・運用知見を糧に、次の世代の都市建築を構想する段階に進んでいます。

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