日本の普通合板の生産は2023年で約253万m³。ピーク期からは減りましたが、その中身はこの四半世紀でまるごと入れ替わりました。1990年代まで合板といえば東南アジア産のラワン(南洋材)が定番で、国産材を使った合板はわずか数%。それが今や合板用素材の国産材比率は94.5%。原料の出どころが正反対になったのです。何がこの逆転を起こしたのかを、用途・原料・産地の順に追っていきます。

合板は何に使われているか
普通合板の使い道で圧倒的に多いのが構造用合板、つまり住宅の壁・床・屋根の下地材です。2023年の普通合板253万m³のうち、構造用は約223万m³で全体のおよそ9割を占めます。残りはコンクリート型枠用が約20万m³、内装下地や一般用途が残りといったところ。耐震性能を支える部材なので、新築住宅の動向に需要が直結しているのが特徴です。2023年の生産量が前年比17.2%減と大きく落ち込んだのも、住宅着工の減少がそのまま効いた結果でした。
数%から9割超へ、四半世紀の逆転劇
本題の国産化です。1990年代の合板はラワンやメランチといった南洋材が主原料で、合板用素材に占める国産材比率は数%にすぎませんでした。それが2010年代に5割を超え、2023年には94.5%へ。下のグラフが、その右肩上がりの軌跡です。
この転換は、3つの追い風がほぼ同じ時期に重なって起きました。技術面では、針葉樹の原木をきれいに薄く剥く(旋削する)ロータリーレースや、針葉樹向けの耐水接着剤、JAS構造用合板の規格が整い、針葉樹でも構造用に使える合板を量産できるようになりました。原料面では、戦後に植えたカラマツ・スギの人工林がちょうど利用期を迎え、原木が大量に出せる状態に。政策面では、林野庁が2000年代から国産材合板の原木調達や設備転換を補助し続けました。技術・原料・政策が噛み合った結果が、この急角度の上昇カーブです。
南洋材側に逆風が吹いたことも大きい要因でした。インドネシア・マレーシアの違法伐採問題や原木輸出規制、価格高騰が重なり、南洋材の調達コストが急上昇。「国産に切り替えざるを得ない」事情と「切り替えられる」条件が、同時にそろったわけです。
主役はスギ、続くカラマツ
では今、どんな木が使われているのか。合板用素材の樹種別構成はスギ約55%、カラマツ約19%、ヒノキ約16%、その他の針葉樹が1割ほどです(令和5年)。かつて主役だったカラマツをスギが上回り、ヒノキの利用も広がってきました。
スギが主役なのには理由があります。九州・東北を中心に戦後の人工林が大量に主伐期を迎えて原木供給が潤沢なこと、層の組み方や接着を工夫すればスギの強度でも構造用合板の規格をクリアできること、そして地元のスギ需要の受け皿として合板工場が期待されてきたこと。宮崎・大分・熊本の九州ベルトでは、スギ原木の一大需要先になっています。一方のカラマツは、針葉樹のなかでは強度・密度が高く構造用に向くこと、北海道・長野に大規模な造林地があること、製材だと厄介な「ねじれ」も薄く剥く合板加工なら問題にならないこと、を強みに北海道の合板工場群を支えています。ヒノキやトドマツの利用拡大も進行中です。
工場はわずか30社台、超大型の世界
製材工場が全国約3,700社あるのに対し、普通合板を生産する工場は30社台。1工場あたりの年産は7万m³規模で、製材工場の平均の何十倍にもなる超大型産業です。剥皮・蒸煮・単板切削・乾燥・接着・プレス・検査までの一貫ラインが必要で、新設には大規模な投資と広い用地が要り、おいそれと新規参入できる世界ではありません。だからこそ既存工場の増設・大型化が産業発展の軸になっています。
立地は原木供給力と物流で決まり、北海道・東北・九州に集中します。北海道・東北はカラマツ・スギの資源と港湾、九州は資源と消費地物流、関東は首都圏への近さが強み。セイホク、林ベニヤ産業、日新といった大手が原木調達価格の指標を形づくり、地域の素材生産事業体や森林組合と長期契約を結んで原木を確保しています。
輸入を押し返し、輸出も視野に
国産が増えたぶん、輸入は縮みました。合板輸入はピーク時(2000年代前半)の年500万m³超から、近年は250〜300万m³規模へと半減。中国・ベトナム・マレーシア産の低価格品は依然多いものの、円安と物流コスト上昇で価格優位が薄れ、クリーンウッド法による合法性確認の負担も輸入材ほど重くのしかかります。国内で使われる合板に占める国産合板の比率は、量・質ともに高まってきました。
今後の課題は、住宅着工の長期減少です。2030年代には新設着工が年60〜70万戸規模まで縮むとみられ、合板需要にも縮小圧力がかかります。それを補う方向として、中大規模木造でのCLT・LVL併用、非住宅建築の内装木質化、そして高品質を武器にした輸出市場の開拓が進められています。南洋材依存からの脱却を成し遂げた合板産業が、次にどんな成長軸を描けるか。国産材サプライチェーン強化の代表例として、これからも目が離せません。

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