日本の合板生産は2023年で約310万m³。数字だけ見ると地味ですが、その中身はこの25年でまるごと入れ替わりました。1990年代まで合板といえば東南アジア産のラワン(南洋材)が定番で、国産材を使った合板はわずか5%未満。それが今や国産材比率85%超。原料の出どころが正反対になったのです。何がこの逆転を起こしたのかを、用途・原料・産地の順に追っていきます。

合板は何に使われているか
310万m³の使い道で圧倒的に多いのが構造用合板、つまり住宅の壁・床・屋根の下地材です。これだけで全体の約75%(230万m³)を占めます。残りはコンクリート型枠用が12%、内装下地や家具用が13%といったところ。耐震性能を支える部材なので、新築住宅の動向に需要が直結しているのが特徴です。
5%から85%へ、25年の逆転劇
本題の国産化です。1990年代の合板はラワンやメランチといった南洋材が主原料で、国産材比率は3〜5%にすぎませんでした。それが2010年に50%を超え、2023年には85%超へ。下のグラフが、その右肩上がりの軌跡です。
この転換は、3つの追い風がたまたま同じ時期に重なって起きました。技術面では、針葉樹の原木をきれいに薄く剥く(旋削する)ロータリーレースや、針葉樹向けの耐水接着剤、JAS構造用合板の規格が整い、針葉樹でも構造用に使える合板を量産できるようになりました。原料面では、戦後に植えたカラマツ・スギの人工林がちょうど主伐期を迎え、原木が大量に出せる状態に。政策面では、林野庁が2003年から「合板用国産材安定供給対策」で原木調達や設備転換を補助し続けました。技術・原料・政策が噛み合った結果が、この急角度の上昇カーブです。
南洋材側に逆風が吹いたことも大きい要因でした。インドネシア・マレーシアの違法伐採問題や原木輸出規制、価格高騰が重なり、南洋材の調達コストが急上昇。「国産に切り替えざるを得ない」事情と「切り替えられる」条件が、同時にそろったわけです。
主役はカラマツ、伸びるスギ
では今、どんな木が使われているのか。原木の樹種別構成はカラマツ約45%、スギ約30%、ヒノキ約10%、その他針葉樹が15%ほどです。
カラマツが主役なのには理由があります。針葉樹のなかでは強度・密度がトップクラスで構造用に向くこと、北海道50万ha・長野24万haという大規模な造林材があること、そして製材だと厄介な「ねじれ」も、薄く剥く合板加工なら問題にならないこと。北海道の合板工場群はこのカラマツを年間100万m³超も使い、北海道カラマツの市場価格(m³あたり1万2千〜1万3千円ほど)の目安をつくる存在にもなっています。一方のスギは、強度で一歩譲るぶん層の組み方や接着を工夫して規格をクリアし、2000年代後半から急伸。宮崎・大分・熊本の九州ベルトを中心に、地元のスギ需要を押し上げる役割も果たしています。
工場はわずか30社、超大型の世界
製材工場が全国4,400社あるのに対し、合板工場はたった約30社。1工場あたり年産10万m³規模で、製材工場の平均の40倍以上という超大型産業です。新設には50〜200億円、従業員も50〜300人。剥皮・蒸煮・単板切削・乾燥・接着・プレス・検査までの一貫ラインが必要で、おいそれと新規参入できる世界ではありません。だからこそ既存工場の大型化が産業発展の軸になっています。
立地は原木供給力と物流で決まり、北海道が10社(約30%)、東北・九州が各6社、関東4社という分布。北海道・東北はカラマツ・スギの資源と港湾、九州は資源と消費地物流、関東は首都圏への近さが強みです。林ベニヤ産業、セイホク、日新といった大手が原木調達価格の指標を形づくり、地域の素材生産事業体や森林組合と長期契約を結んで原木を確保しています。
輸入を押し返し、輸出も視野に
国産が増えたぶん、輸入は縮みました。合板輸入は2000年の約580万m³から2023年には約280万m³へ、ほぼ半減。中国・ベトナム産の低価格品は依然多いものの、円安と物流コスト上昇で価格優位が薄れ、クリーンウッド法による合法性チェックの負担も輸入材ほど重くのしかかります。総需要に占める国産合板の比率は2000年の33%から2023年の53%へと、量・質ともに国産化が進みました。
今後の課題は、住宅着工の長期減少です。2030年代には60〜70万戸規模まで縮むとみられ、合板需要にも縮小圧力がかかります。それを補う方向として、中大規模木造でのCLT・LVL併用、オフィスや商業施設の内装木質化、そして高品質を武器にした輸出市場(年10万m³規模を2030年に30万m³へ)の開拓が進められています。南洋材依存からの脱却を成し遂げた合板産業が、次にどんな成長軸を描けるか。国産材サプライチェーン強化の代表例として、これからも目が離せません。

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