地方の山あいに行くと、たいてい「○○森林組合」という看板を見かけます。あまり目立たない存在ですが、これが日本の私有林を支える縁の下の力持ちです。全国に621組合、組合員はおよそ150万人。私有林を持つ人の約7割が加入しており、彼らが管理に関わる森林面積は私有林全体の6割、約870万haに及びます。この記事では、明治からの長い歴史を持つ森林組合が、どんな組織で、どう数を減らしてきて、いま何を担っているのかを整理します。
明治40年からの118年
森林組合の起源は、1907年(明治40年)の森林法改正でつくられた「森林組合」にさかのぼります。当初は治山治水のための強制加入組織で、植林や防火帯整備を地域に義務づけるもの。いまの協同組合とはだいぶ性格が違いました。戦後、1951年の森林法でGHQの民主化政策のもと任意加入の協同組合に転換し、組合員が出資金を出して共同事業を行う形になります。そして1978年の森林組合法で、いまに続く3層組織や事業区分が明文化されました。この法律はその後も改正を重ね、2019年には森林経営管理制度との連携が強化されています。
単協・県森連・全森連の3層
森林組合は全国を3層でカバーします。市町村レベルの単位森林組合621が組合員と直接向き合う実働部隊。その上に都道府県ごとの県森連47があり、苗木流通や素材市場の運営、研修を担います。頂点に全国森林組合連合会(全森連)が立ち、政策提言や緑の雇用事業の運営を行います。
単協の仕事は大きく5つ。造林・下刈・間伐の「森林整備」、伐採・搬出の「素材生産」、素材市場の運営や委託販売の「販売」、苗木や林業用品を供給する「購買」、製材・加工の「林産」です。全国の事業総取扱高は約2,300億円。その内訳を見ると、森林整備と素材生産の二つで3分の2を占めます。
| 事業区分 | 取扱高(億円) | 構成比 | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| 森林整備事業 | 約780 | 34% | 造林・下刈・間伐の受託 |
| 素材生産事業 | 約720 | 31% | 伐採・搬出・主伐再造林 |
| 販売事業 | 約470 | 20% | 素材市場・委託販売 |
| 購買事業 | 約180 | 8% | 苗木・肥料・林業用品供給 |
| 林産事業 | 約150 | 7% | 製材・加工・販売 |
| 合計 | 約2,300 | 100% | 2022年度全国合計 |
30年で組合数は6割減った
森林組合のいちばん大きな変化は「数の激減」です。1990年に1,668あった組合は、2022年には621へ。32年で約63%減りました。理由は合併です。林野庁と全森連は1996年に広域合併推進方針を打ち出し、組合員1,000人以上・職員20人以上・取扱高3億円以上を目安に統合を進めました。かつて1町1組合だったのが、いまは5〜10市町村にまたがる広域組合が当たり前になっています。
合併には大きく3つの波がありました。1960〜70年代の「市町村合併に連動した第1波」、1990年代の「広域合併推進の第2波」、2000〜2010年代の「経営基盤強化の第3波」です。効果ははっきり出ています。1組合あたりの事業総取扱高は1990年の約0.7億円から2022年の約3.7億円へと5倍に。専門技術職員を置ける組合が増え、施業集約化や森林経営計画づくりの力も上がりました。一方で、組合の担当エリアが市町村5〜10にまたがるようになり、組合員との距離が遠くなる、参加意識が薄れる、という副作用も出ています。
稼ぎ頭は整備と素材、でも3割は赤字
では経営はどうか。621組合のうち経常黒字は約430組合(約7割)、赤字が約190組合(約3割)です。組合あたりの平均取扱高は3.7億円ですが、ばらつきが大きく、上位50組合は10億円超、下位100組合は1億円未満という二極化があります。
赤字組合の事情はだいたい3つに分かれます。人口減少で組合員が減り事業量が縮んだ「人口減少地域型」、スギ・ヒノキ価格の低迷で素材生産の利幅が薄くなった「市況低迷型」、合併しすぎて管理コストが増えた「合併不調型」。立て直しの方策としては、認定林業事業体への登録、森林経営管理制度の市町村受託、J-クレジット(森林吸収源クレジット)の販売、木質バイオマス事業などが挙げられます。なかでも市町村受託は、2024〜2030年に集中して出てくる経営委託の受け皿として、安定収益源になると期待されています。
市場の主役ではないが、地域のインフラ
森林組合をどう位置づければいいか。素材生産量のシェアで見ると20〜25%にとどまり、民間の林業会社(約60%)のほうがずっと大きい。だから「市場の主役」ではありません。ただし、補助事業の取りまとめ、苗木の流通(系統苗畑が全国シェア約45%)、森林経営計画の策定では中心的な役割を担っています。とくに小さな山主にとっては、相談できる唯一の窓口であることが多い。つまり「主役ではないが、地域林業のインフラ」と捉えるのが正確です。
そして2019年施行の森林経営管理制度が、いま森林組合に新しい役割を与えようとしています。所有者の管理意思が確認できない私有林を市町村が引き受け、適切な担い手に再委託する仕組みで、約7割の市町村が森林組合を主要な再委託先と見込んでいます。2024〜2030年に約30万haが市町村に移管される見通しで、その相当部分が組合に回ってくる可能性がある。組合員の高齢化や所有者不明化、専門人材の確保といった逆風はありますが、この制度をうまく取り込めるかどうかが、これからの森林組合の体力差を分けていきそうです。

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