エアフィルター清掃と燃焼室メンテ:チェーンソー長寿命化の基本

エアフィルター清掃と燃焼室メ | 育みと収穫 - Forest Eight

結論先出し

  • エアフィルター・燃焼系は2サイクルエンジン(チェーンソー・刈払機)の寿命と出力を直接決める入口。木屑・粉塵を捕集できなければ、シリンダーは50〜100時間で偏摩耗に至る事例が報告される。
  • 標準サイクルは始業点検+使用後清掃/週次水洗い/月1交換/年1分解整備(オーバーホール)。混合燃料は50:1(FD級2サイクル油)、長期保管時は30日以内に使い切るのが鉄則。
  • 主要3社(STIHL/Husqvarna/ECHO)はそれぞれ独自のフィルター機構(HD2/AirInjection/G-Force)を持ち、純正フィルターのコスト差は2〜3倍。年間メンテ費用はプロ機で15,000〜35,000円/台が一つの目安となる。

エアフィルターと燃焼系のメンテナンスは、林業機械の整備項目のうち最も日常的でありながら、最も寿命と出力に効く領域です。木屑・樹脂・粉塵が大量に発生する林内では、フィルターを1日清掃せずに高負荷作業を続けただけでもキャブレタジェットの目詰まり、点火プラグのカブり、シリンダーの早期摩耗へとドミノ式に波及します。本稿は2サイクルエンジン構造/吸気・燃料・点火・排気の各サブシステム/日常〜年次メンテナンス/メーカー別の特徴/バッテリー機との比較/故障診断/燃料管理/DIYとプロ整備の境界線/年間費用までを、数値ベース・出典明示で約10,000字に整理します。キャブレタHLニードル調整点火プラグ交換と併読すると、燃焼系の全体像がつかみやすくなります。

混合比50:1FD級2サイクル油標準値フィルター交換月1使用25〜40hプロ用途プラグ点検25h毎/交換100h標準目安年間メンテ15-35k円/台プロ機目安
図1:エアフィルター・燃焼系メンテナンスの主要諸元(メーカー公式・林災防資料を基に整理)
目次

2サイクルエンジンの構造と吸気の流れ

チェーンソー・刈払機の主流は強制空冷・単気筒の2サイクルエンジンです。排気量は刈払機で20〜35cc、チェーンソーで30〜90ccが中心で、出力1kW前後の小型機でも毎分9,000〜13,500rpmという非常に高い回転域で運転されます。クランク室で混合気を一時圧縮し、ピストンの上下動だけで吸気・圧縮・燃焼・排気を行うため、4サイクルのようなオイルパンを持たず、潤滑は燃料に混ぜた2サイクル油に依存します。

吸気は「外気→プレフィルター→メインエアフィルター→キャブレタ→インマニ→クランク室→シリンダー」という直列経路を辿ります。フィルターが1段でも詰まれば、キャブレタは濃混合(過濃)側に振れ、点火プラグのカーボン付着、マフラー内のオイル滴下、出力低下、加速時の息継ぎ等が連鎖的に発生します。STIHL公式やHusqvarna公式マニュアルでも、エアフィルター不良が始動不良の上位3原因として明示されています(出典:STIHL JapanHusqvarna Japan)。

燃焼室の温度は短時間運転でも排気ポート付近で500〜700℃に達するため、フィルター不良で混入した木屑は瞬時に炭化し、シリンダー内壁のクロスハッチ(ホーニング目)を擦り削ります。これがコンプレッション低下、ひいては圧縮抜けによる始動不能の根本原因となります。林業・木材産業安全衛生協会(林災防)の発行資料でも、刈払機・チェーンソーのエンジン故障原因の上位は「整備不良」「不適切な燃料」が占めると整理されています。

エアフィルター:紙・スポンジ・ナイロン・HD2の比較

エアフィルターは材質で大きく4系統に分かれます。捕集効率(µmで表す)と再清掃可否、目安寿命を整理すると次の通りです。

材質 代表機種 捕集効率の目安 再清掃 交換目安
紙(標準) 普及機・ホビー機全般 30µm以上をほぼ捕集 不可(ブローのみ) 25〜40時間/月1回
スポンジ(フォーム) 低価格刈払機、旧型ECHO等 50µm以上中心 水洗い可 3〜6ヶ月
ナイロン/フェルト STIHL中堅機(フェルト) 15〜30µm程度 水洗い・ブロー可 6ヶ月〜1年
HD2(プリーツ・PET) STIHL MS261・MS400等 0.5〜5µmの微粒子まで 水洗い可 最大1年(公式)
二重式(プレ+メイン) Husqvarna 562XP・572XP等 プレ+AirInjection プレ毎日、メイン月1 メイン1年使用例

STIHLのHD2フィルターはポリエステル繊維をプリーツ加工して表面積を拡大したもので、メーカー公称値で従来比5倍の通気量・最大1年寿命とされ、現場での交換頻度を大きく下げられます。HusqvarnaのAirInjectionは遠心分離方式でフィルター手前の段階で粗大粉塵を90%以上落とすため、フィルター本体の寿命が延びる仕組みです。ECHOはG-Forceエンジンエアプリクリーナーで同様の遠心分離を導入しています。

燃料系:キャブレタ・フューエルライン・燃料フィルター

燃料系は「燃料タンク→フューエルライン→燃料フィルター(タンク内ストレーナ)→キャブレタ→噴射ノズル→クランク室」という流れです。最大の故障源は古い混合燃料による樹脂硬化と詰まりで、特にE10ガソリン(バイオエタノール10%混合)は吸湿性が高く、樹脂パーツへの攻撃性も強いため、林業機メーカー各社は「混合燃料は30日以内に使い切る/長期保管はキャブを空にする」ことを共通して推奨しています。

キャブレタはダイヤフラム式(ZAMA/Walbro)が大半で、L(低速)・H(高速)・LA(アイドル)の3つのニードル/スクリューで燃料量を調整します。標準調整値はメーカー機種ごとに「全閉から戻し回転数」で指定されており、例えばSTIHL MS261はLが1回転、Hが3/4回転、LAは2,800rpm付近が公称基準です。フューエルラインは耐ガソリン性ウレタンチューブが主流ですが、2〜3年で硬化・ひび割れするため、年次オーバーホールでの交換が安全です。

燃料フィルター(タンク内のフェルト玉)は50〜100時間または1年で交換が一般的目安です。エンジン回転数が安定しない、加速時に息継ぎがある等の症状が出た場合、まず燃料フィルターの目詰まりを疑います。

点火系:プラグ・点火コイル・フライホイール

2サイクルエンジンの点火はマグネト点火(CDI)で、フライホイール外周のマグネットがイグニッションコイルに高電圧を誘起させ、点火プラグから火花を飛ばす方式です。バッテリーレスで構造が簡素な反面、エアギャップ(フライホイールとコイル芯の隙間、標準0.30〜0.45mm)がずれると始動不良の原因となります。

点火プラグは2サイクル機ではNGKBPMR7AやBPMR6Aの抵抗付きが主流で、電極ギャップは0.5mm前後。点検は25時間ごと、交換は100時間または1年が標準サイクルです。電極のカーボン付着(黒く湿っている)は混合過濃/フィルター詰まりのサインで、白く焼けている場合は希薄燃焼で焼き付き直前の危険信号となります。詳細はプラグ交換(E20)を参照してください。

点火コイルは構造上ほぼメンテナンスフリーですが、樹脂モールドの経年クラックから失火が起きるケースがあり、5年以上使用したプロ機ではテスター点検(一次抵抗0.5Ω前後/二次抵抗3〜5kΩが目安)が推奨されます。

排気系:マフラー・スパークアレスタ

2サイクル排気には未燃焼オイルとカーボンが必ず含まれるため、マフラー内部には使用100〜150時間でカーボンが堆積します。排気抵抗が高まると出力が落ち、最悪の場合マフラー出口の赤熱を招き、林内で火災リスクを生じます。

マフラー出口側の金網がスパークアレスタ(火花防止網)です。日本国内の刈払機・チェーンソー安全規格でも目詰まりは厳禁で、50時間ごとに取り外して真鍮ブラシで清掃/200時間で交換が一つの目安です。米国USFS(米国森林局)の規定でも、林内作業機にはスパークアレスタの装備が義務付けられています。

主要部品のメンテナンス間隔(時間ベース)0h50100200400hエアF清掃毎日(8h)プラグ点検25hエアF交換40hプラグ交換100h燃料F交換100hスパークA200h分解整備400h/年
図2:主要部品のメンテナンス間隔比較(メーカー推奨値より)

刈払機(ブラシカッター)の燃焼系で特に気をつける点

刈払機はチェーンソーよりも地面に近い位置で運転されるため、土砂・砂塵・草の汁等の侵入リスクが格段に高い機械です。エンジン排気量は20〜35ccと小型ですが、スロットル全開での連続運転時間が長いため、エアフィルター・燃料フィルター・点火プラグへの負担はチェーンソーと同等以上です。チェーンソーと比較した場合の独自ポイントを整理します。

  • 本体角度:背負式・両手棹式ともキャブレタが斜めに傾いた姿勢で稼働するため、ダイヤフラム式キャブの燃料切れを起こしやすい。タンクキャップのエア抜き穴詰まりも始動不良の隠れ原因。
  • 振動:刈刃側からの強い振動でフューエルラインが擦れて穴あきになりやすく、年1回の目視点検を必須とする。
  • 夏季の高温:真夏のアスファルト近傍では機体表面が60℃を超え、ガソリン蒸気が発生しやすい。パーコレーション(高温始動不良)対策として10分以上の休憩を挟む運用が安全。
  • ナイロンコード+粉塵:ナイロンコード使用時は粉塵量が金属刃より多く、エアフィルター清掃は半日おきが望ましい。

始業・終業の日常点検(5分でできる)

林災防の刈払機・チェーンソー特別教育テキストでも、「始業前点検は5分、終業後点検は10分」が現場標準として示されています。具体的なチェック項目は次の通りです。

始業前(5分):①燃料・チェーンオイル量/②エアフィルターの目視(粉塵堆積の有無)/③チェーンの張り(垂れ下がり3〜5mm)/④ハンドガード・ブレーキ動作/⑤始動5回以内・チョーク復帰確認/⑥アイドリングでチェーンが動かないこと(クラッチ正常)/⑦排気色(白煙の出すぎは過濃のサイン)。

終業後(10分):①外装の木屑・樹脂のブロワ清掃/②エアフィルターの取り外しと打ち付け清掃/③ガイドバーの溝清掃と上下反転/④チェーンの目立て(必要時)/⑤燃料を抜くか満タンで結露防止/⑥スプロケットへのグリスアップ/⑦工具と一緒にケース収納。

週次・月次・年次のメンテナンスサイクル

「日次・週次・月次・年次」の4階層で組み立てると抜け漏れがなくなります。プロの現場(個人林業事業体)は次の標準サイクルに沿うことが多いです。

頻度 主な作業 所要時間 消耗品費目安
日次(毎日) エアF打ち付け清掃/外装ブロワ/燃料補給/チェーン張り調整 10〜15分 0円(消耗なし)
週次 エアF水洗い/スプロケットグリス/ガイドバー反転/工具点検 30分 500円程度
月次 エアF交換/プラグ点検/燃料F点検/チェーン目立てまたは交換 1時間 1,500〜3,000円
年次 分解整備(キャブO/H・燃料ライン交換・コンプレッション計測・スパークアレスタ清掃) 3〜4時間 5,000〜15,000円

年次オーバーホールはDIYで可能な範囲(フィルター・プラグ・燃料系)と、プロ整備推奨の範囲(クランクシール・コンプレッション計測・キャブのバルブ交換)に分かれます。コンプレッションは新品で1.0〜1.4MPa(10〜14kgf/cm²)が標準で、0.8MPaを下回ると本格的なオーバーホールの目安となります。

主要メーカー別の特徴:STIHL/Husqvarna/ECHO

STIHL(ドイツ・1926年創業):HD2フィルターと電子制御燃料噴射「M-Tronic/STIHL Injection」を備えた中・上位機が主流。フィルター純正価格は2,000〜3,500円で他社比やや高めですが、HD2は1年無交換が公称値。修理ネットワークは全国の正規ディーラー網が密で、5年保証(家庭用)/2年保証(業務用)が一般的です。

Husqvarna(スウェーデン・1689年創業):AirInjectionによる遠心プレ分離が特徴で、フィルター清掃間隔を実用的に長く保てます。AutoTuneと呼ばれる自動調整キャブ(X-Torq+AutoTune)を上位機に搭載し、標高・気温・燃料に応じて自動的に空燃比補正を行います。プロ向けプレミアム機(572XP等)は12〜18万円帯が中心。

ECHO(共立・1947年創業):国内メーカーで部品供給が安定。G-Forceエアプリクリーナーは遠心分離式で、ホビー〜セミプロ機での評価が高いです。純正フィルターが1,000円前後と安価なのも特徴で、年間メンテ費用を抑えやすい傾向です。新ダイワゼノア(Husqvarna傘下)マキタ等も国内で同様のラインナップを展開しています。

バッテリー式モデルのメンテナンスはどう変わるか

STIHL MSAシリーズ、Husqvarna 540iシリーズ、マキタ40Vmaxシリーズなどのバッテリーチェーンソーでは、エアフィルター・点火プラグ・キャブレタ・燃料系・マフラーといった2サイクル特有の整備項目がすべて消えます。代わりに発生する整備項目は次の3つです。

  • バッテリーセルの管理:充電サイクル500〜1,000回、満充電・全放電を避け20〜80%の範囲で運用、保管温度0〜25℃、長期保管は50〜60%充電。
  • モーターブラシ/ベアリングの点検:ブラシレスモーター主流で基本メンテフリーだが、ベアリング異音は早期にディーラー診断。
  • チェーン・バー周りの整備:従来機と同等。むしろ静音で連続作業しやすい分、目立て頻度は上がる。

燃料・オイル管理が不要になることで、年間メンテ費用は2サイクル機の半額〜2/3程度に下がる事業者の報告もあります。一方でバッテリー本体の更新が10年で2〜4万円/本必要になるため、機械総寿命でみたコストはほぼ拮抗するというのが現状の実感値です。

故障診断:始動不良・出力低下・煙の症状別フローチャート

現場での代表的なトラブルとその切り分けを症状別に整理します。

症状 第一に疑う原因 切り分けの手順
始動しない(火花あり) 古い燃料/キャブ詰まり 新しい混合に交換→キャブクリーナー噴霧→始動
始動しない(火花なし) プラグ/コイル/停止スイッチ プラグ交換→ギャップ点検→コイル抵抗測定
アイドリング不安定 エアF詰まり/LAスクリュー/二次エア F清掃→LA調整→キャブインマニのエア漏れ点検
加速で息継ぎ 燃料F詰まり/Lニードル/フューエルライン硬化 燃料F交換→L再調整→ライン目視
出力低下・最高回転落ち マフラーカーボン/Hニードル/コンプレッション低下 マフラー清掃→H調整→圧縮計測
白煙が多い 2サイクル油過多/古い燃料/Lリッチ 混合比再確認→新品燃料→Lリーン側に再調整
黒煙が出る エアF詰まり/Hリッチ F清掃・交換→H再調整
マフラー赤熱・焼き付き気味 希薄燃焼/2次エア吸込 即停止→Hリッチ側→クランクシール点検(プロ)

「症状→原因仮説→簡易検証→部品交換」の順で進めるのが鉄則で、最初からキャブを分解しないことが、結果的に修理時間を半分にします。

燃料管理:混合比・劣化・オイルブランド比較

2サイクル機の心臓は混合燃料です。STIHL/Husqvarna/ECHOいずれも標準混合比は50:1(ガソリン1Lに対し2サイクル油20mL)で、JASO規格FD級以上のオイルが指定されています。

2サイクル油 JASO規格 特徴 価格目安
STIHL HP Ultra FD 合成・無灰・低煙・長寿命 1L 2,800〜3,500円
Husqvarna XP+ FD 合成・JASO FD・燃料安定剤入り 1L 2,500〜3,200円
ECHO PowerBlend Gold FD 半合成・煙少なめ 1L 1,800〜2,500円
ヤマハ オートルーブスーパー FD 国産・入手容易 1L 1,500〜2,200円
缶入り混合済み(アスペン2/STIHL Motomix) 無鉛・芳香族カット・2年保管可 5L 4,000〜6,000円

古い燃料の弊害は深刻で、30日経過した混合燃料は揮発成分が抜けキャブ詰まりの主因になります。長期保管時は「アスペン2」「STIHL Motomix」等のアルキレート燃料(無鉛・芳香族成分カット・2年保管可)を使うとトラブルが激減します。価格は通常ガソリンの約3倍ですが、年間使用量の少ないユーザーやレンタル機にとってはコストパフォーマンスが高い選択肢です。

メーカーサポートと修理ネットワーク

STIHL・Husqvarnaは原則「正規ディーラー販売」で、量販店扱いを抑えています。これは販売直後からの整備サポートを担保するためで、購入店=修理店として継続関係が結ばれます。ECHO(共立)は全国の農機店・ホームセンターの販売網が広く、純正部品の郵送対応も可能です。

修理費の概算は次の通りで、機械本体価格の30%を超える修理は買い替え検討の閾値とするのが業界の経験則です。

  • キャブレタO/H:5,000〜12,000円(部品+工賃)
  • キャブ本体交換:12,000〜25,000円
  • シリンダー+ピストン交換:25,000〜60,000円
  • クランクシャフト・ベアリング:40,000〜80,000円
  • マフラーASSY交換:6,000〜15,000円

DIY整備とプロ整備の境界線

DIYで完結できる範囲とプロに任せるべき範囲を、はっきり線引きしておくと安全です。

区分 作業内容 必要工具
DIY推奨 エアF清掃・交換/プラグ交換/燃料F交換/フューエルライン交換/チェーン目立て プラグレンチ・トルクスドライバー・ピンセット
DIY中級 キャブHL再調整/スパークアレスタ清掃/マフラー外側カーボン除去 マイナスドライバー・耐熱ブラシ・タコメーター
プロ推奨 キャブO/H/クランクシール交換/コンプレッション計測/コイル交換/シリンダー研磨 専用治具・コンプレッションテスタ・真空圧テスタ
プロのみ クランクベアリング交換/ピストン交換/マグネット着磁確認 専用プラー・ベンチプレス・着磁器

キャブのHニードルを誤って薄く(リーン)し過ぎると1分以内にピストン焼き付きを起こすため、タコメーターなしでのH調整は推奨されません。安全側はやや濃いめ(最高回転を100rpmほど落としたところ)に振るのが定石です。

年間メンテナンス費用の目安

業務でチェーンソーを稼働させるプロ機(年間500〜1,000時間使用)と、家庭用機(年間20〜40時間使用)で、年間メンテ費用は次のように分解できます。

  • プロ機(500h/年):エアF12個 1.5万円/プラグ4本 2,000円/燃料F4個 1,500円/チェーン目立て・交換 8,000円/2サイクル油10L 2.5万円/チェーンオイル30L 1.5万円/年次O/H 2万円 = 合計約8〜12万円
  • セミプロ機(200h/年):エアF4個 5,000円/プラグ2本 1,000円/燃料F2個 700円/2サイクル油3L 7,500円/チェーンオイル10L 5,000円/年次O/H 1万円 = 合計約3〜4万円
  • 家庭用機(30h/年):エアF2個 2,000円/プラグ1本 500円/2サイクル油1L 2,000円/チェーンオイル3L 1,500円/2年に1回ディーラー点検 5,000円換算 = 合計約1〜1.5万円

整備費を「燃料込みの稼働コスト」として時給換算すると、プロ機で1時間あたり160〜240円、家庭用で1時間あたり330〜500円程度が現実的なレンジです。家庭用は稼働時間が短いため、固定費(フィルター・プラグ)の按分が大きくなります。

FAQ:よくある質問(10項目)

Q1. 始動できないとき最初に確認すべきは?

A. 燃料の鮮度・タンク内残量・チョーク位置の3点です。30日以上経った燃料は新品に入れ替え、プラグを外して目視で湿り(カブり)を確認してください。これだけで7割は解決します。

Q2. 混合比を50:1ではなく25:1にしても良い?

A. 旧型機では25:1指定もありましたが、現行の2サイクル機・FD級オイルでは50:1が標準です。25:1にすると2サイクル油過多→マフラーオイル滴下/プラグカブり/カーボン堆積を招きます。

Q3. ガソリンは何号を使えば良い?

A. レギュラーガソリン(オクタン価89以上)で問題ありません。E10含有の場合は30日以内に使い切るか、長期保管時はアルキレート燃料に切り替えます。

Q4. プラグが毎月真っ黒になる原因は?

A. ①エアフィルター目詰まり ②キャブのHニードルが濃い ③長時間アイドリング ④2サイクル油過多 ⑤プラグの番手違い、のいずれかです。①と②で9割を占めます。

Q5. エアフィルターの水洗い後、すぐ装着して良い?

A. ダメです。湿気を吸ったままエンジンを回すとシリンダー内に水分が入り、性能低下と腐食の原因になります。日陰で4〜8時間以上完全乾燥させるか、スペアフィルターと交換運用してください。

Q6. 純正部品と互換部品、どちらを使うべき?

A. エアF・プラグ・燃料Fなど消耗品は信頼ブランド(NGK・OREGON・Stens等)の互換でも実用上問題ありません。ただしキャブ本体・コイル・シリンダーキットは純正一択。粗悪互換でのトラブル報告が多発しています。

Q7. 年に数回しか使わない機械の保管方法は?

A. ①燃料を完全に使い切る、②キャブの燃料も空にする(アイドリングで自然停止させる)、③プラグを外して数滴の2サイクル油を入れピストンを保護、④乾燥した室内に立て置き、が標準手順です。

Q8. バッテリー機と2サイクル機、結局どちらが得?

A. 年間50時間以下のホビー用途ではバッテリー機が圧倒的に有利(整備不要・静音・即始動)。年間500時間以上のプロ用途では、現状でもパワー・連続稼働・補給容易性で2サイクル機が優位です。年間100〜300時間のセミプロ層が選択の分かれ目です。

Q9. アイドリング時にチェーンが回ってしまう。直せる?

A. まずLAスクリューを反時計回りに少しずつ回し、アイドリング回転を2,500〜2,800rpm付近まで下げます。それでも回る場合はクラッチシューの摩耗、クラッチドラムのベアリング異常、強すぎるリターンスプリング、いずれかなのでディーラー診断が必要です。

Q10. メーカー保証を維持するために守るべきことは?

A. ①指定2サイクル油(FD級以上)の使用 ②指定混合比50:1の遵守 ③定期点検記録の保管 ④純正フィルター・プラグの使用 ⑤改造(マフラー加工・リミッタ解除等)をしない、の5点です。STIHL・Husqvarnaともこれを満たすと最長5年の保証延長制度があります。

季節別の運用ポイント

日本の林業現場は四季の差が大きく、燃焼系の調子も季節で変動します。気温・湿度・標高に合わせたチューニングを意識すると、トラブル率は大きく下がります。

  • 春(3〜5月):越冬保管後の再始動シーズン。キャブのダイヤフラム硬化が出やすく、初回始動時はキャブクリーナーをスロットルから一吹きしてから始動するとスムーズ。混合燃料は必ず新調する。
  • 夏(6〜8月):気温30℃超ではガソリンの体積膨張でタンク内圧が上がり、燃料漏れ・パーコレーションが発生しやすい。Hニードルは1/16〜1/8回転リッチ側に振り、休憩を頻繁に挟む。
  • 秋(9〜11月):もっとも安定する季節。年次オーバーホールはこのタイミングが理想で、冬支度として燃料系の総点検・スパークアレスタ清掃をまとめて行う。
  • 冬(12〜2月):気温5℃以下では空気密度が高くなり相対的に混合がリーン側に傾く。寒冷地の高所作業ではチョーク使用時間を長めに、Hニードルは1/16リーン程度の微調整で対応。バッテリー機は低温で出力低下するため、予備バッテリーは保温ケース運用が望ましい。

標高1,000mを超える高所では空気密度が約10%低下するため、Hニードルを1/8〜1/4回転リーン側に再調整するのが伝統的な目安です。AutoTuneやM-Tronicを搭載した最新機ではこの調整が自動化されており、ユーザーは混合燃料の鮮度管理だけに集中できます。

まとめ:燃焼系メンテは「日次×サイクル管理」がすべて

エアフィルターと燃焼系のメンテナンスは、特殊な工具も知識も必要としない代わりに、「毎日の5分」と「月次・年次のサイクル管理」を継続できるかで結果が大きく分かれます。50:1混合燃料・FD級オイル・30日以内の使い切り・月1のフィルター交換・100時間ごとのプラグ交換・年1の分解整備、この6つの数字を守るだけで、プロ機なら1,000時間超の稼働、家庭用機なら10年超の寿命が現実的なレンジに入ります。詳しいキャブ調整はキャブレタHL調整、点火系の手当てはプラグ交換、機種カテゴリ全体の比較はチェーンソーカテゴリトップを併せて参照してください。

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