地拵え(じごしらえ)の技術体系:全刈り・筋刈り・坪刈りと機械化の最前線

地拵え(じごしらえ)の技術体 | 育みと収穫 - Forest Eight

結論先出し

  • 地拵え(じごしらえ)は伐採後の植栽地で枝条処理と雑草木除去を行う準備工程。坪刈り・筋刈り・全刈り・火入れ・棚積みの方式選択が、植栽コスト3〜30万円/ha・労務10〜80人時/ha・後年の下刈り回数まで決定する。
  • 近年はグラップル付き林業機械(ハーベスタ・スイングヤーダ)と地拵機(イワフジ ロータリークラッシャー、キャニコム自走刈機)による機械化が急進し、人力作業の50〜80%省力化を実現。林野庁「下刈り作業省力化の手引き」(令和5年)で全国推進中。
  • 火入れは消防法第3条第1項・市町村火入れ条例の許可制で、現代では限定的。一方、表土流亡・菌根菌群集ダメージへの配慮から低撹乱地拵えが新標準として研究される。生物多様性条約・J-クレジット森林管理方法論でも地拵え強度が炭素収支評価の重要要素になる。

地拵えは林業の植栽サイクルにおいて伐採直後から植栽前に行われる重要工程です。方式と強度の選択が、植栽の活着率・労務量・コスト・後年の下刈り作業頻度・長期的な土壌健全性のすべてに連鎖的に影響するため、施業設計の中核として位置づけられます。本稿では林野庁標準作業仕様・各県林業センターのデータを下敷きに、坪刈り・全刈り・火入れの方式比較、グラップル・地拵機による機械化、コスト構造、消防法・労働安全衛生規則に基づく安全管理、生物多様性配慮までを数値ベースで体系整理します。

目次

クイックサマリ:地拵えの基本指標

項目 内容
定義 植栽地の植生・伐採残材を除去・整理し、植栽効率と苗木の初期成長を向上させる作業
主要方式 坪刈り、筋刈り、全刈り、火入れ、棚積み、機械地拵え
標準コスト 3〜15万円/ha(方式・地形による、強度全刈りで最大30万円/ha)
人力作業時間 10〜80人日/ha(坪刈り10〜25、筋刈り20〜40、全刈り40〜80)
機械作業時間 5〜20機械時間/ha(地拵機・グラップル)
火入れ温度 地表面300〜600℃、ピーク時800℃前後(残材量・含水率による)
雑草抑制効果 全刈りで2〜3年、筋刈りで1〜2年、坪刈りで半年〜1年
主要根拠 林野庁「下刈り作業省力化の手引き」令和5年、各県林業技術センター標準作業仕様

地拵えの目的と機能

地拵えの目的は単なる「草刈り」ではなく、複数の機能を同時に達成する施業設計です。第一に植栽スペースの確保として、苗木を打ち込むための地表面を露出させ、根穴掘削・植え付け作業の効率を上げます。植栽鍬や植穴ドリルが入る空間がなければ、1本あたりの植栽時間は通常の30〜90秒から3〜5分にまで延び、ha当たり植栽工程全体が破綻します。第二に初期競争の軽減として、苗木と雑草木の光・水・養分競合を植栽後数年間にわたり抑制します。スギ・ヒノキ苗の初期成長期に必要な日射量は林床の20%以上が目安ですが、ススキやササの繁茂下では5%以下に低下し、活着不良・成長停滞・枯死の連鎖を招きます。第三に枝条・伐採残材の整理として、主伐で生じる末木枝条(タンキ)を片付け、植栽列・歩行動線を確保します。

枝条処理の重要性は見落とされがちですが、伐採後の残材量はスギ・ヒノキ標準林分で1ha当たり50〜120立方メートル、重量換算で30〜80トンにもなります。これを適切に整理しなければ、植栽作業者が枝条を踏み越えて1日数キロ歩く非効率と、転倒・刺し傷等の労災が発生します。残材を植栽列の外側に集積する「ロウ刈り(windrow)」、斜面に沿って棚状に置く「棚積み」、現地で破砕してチップ化する「チッピング」のいずれかを選択し、残材の物理的処理方針を施業計画段階で確定させる必要があります。

第四の機能として病虫害発生源の除去があり、スギカミキリ・キクイムシ・キクイゾウムシ・スギノアカネトラカミキリ等の前世代由来害虫が残置枝条で繁殖するのを抑える効果を持ちます。第五に更新樹種の選択的支援があり、目的樹種以外の前生稚樹・萌芽枝を抑制することで、人工造林の樹種純度を確保します。第六に下刈り作業基盤の整備として、植栽後数年間の下刈り作業を効率化する地表条件を作ります。地拵えの精度がそのまま下刈り回数(標準5〜7回)と総コストを左右する点で、長期費用対効果の起点とも位置づけられます。

地拵えの主要方式

坪刈り(つぼがり)

植栽予定の各個体周辺半径1〜2 mの円形範囲のみを刈り払う最小撹乱方式です。1ha・3,000本植栽の場合、刈り払い面積はわずか約3,000〜12,000平方メートル(全面積1万平方メートルの30〜120%、重複考慮で実質40〜70%)。坪外の雑草木は植栽後の遮光・蒸散抑制に作用し、夏季の苗木乾燥を緩和する正の効果も報告されます。

項目
適用 急傾斜地、貴重生態系、低密度植栽、保護林
労務 10〜25人日/ha
コスト 3〜8万円/ha
長所 労務最少、表土・有機物層保全、生物多様性維持
短所 苗木と雑草の競争激化、補植率増、下刈り頻度増(年2回×3年)

筋刈り(すじがり)

植栽列に沿って幅1〜2 mの帯状に雑草木を刈り取り、列間(幅約1〜2 m)は雑草木を残す折衷方式です。表土流亡リスクの高い緩斜面〜急斜面で広く採用され、コスト・効果・生態系保全のバランスがよいため、現代日本の標準方式の一つになっています。列間残置部分は雨滴衝撃を緩和し、土壌侵食を抑える緩衝帯としても機能します。

項目
適用 緩〜急斜面、表土保全重視地、一般的造林地
労務 20〜40人日/ha
コスト 6〜12万円/ha
長所 労務中、表土・有機物層保全、生物多様性維持
短所 列間雑草の苗木への影響、後年の下刈り作業がやや複雑化

全刈り(ぜんがり)

植栽地内のすべての雑草木・低木を地表面付近で刈り取る最も強度の高い方式で、日本の人工林造林で歴史的に標準化されてきた手法です。植栽効率と初年度の苗木成長を最大化する一方、表土露出による侵食、有機物層(A0層)の喪失、菌根菌群集の撹乱というコストを伴います。

項目
適用 標準的な緩斜面の造林地、機械化施業
労務 40〜80人日/ha
コスト 10〜15万円/ha(人力)、5〜10万円/ha(機械)
長所 植栽効率最大、初年度の競争最小、機械化容易
短所 労務多、表土流亡、有機物層消失、菌根菌ダメージ

火入れ(ひいれ)

伐採残材・雑草木を計画的に焼却する伝統的方式で、戦前は全国で広範に行われましたが、現代では消防法第3条第1項および市町村火入れ条例の許可を要し、限定的施業となっています。火入れ温度は地表面で300〜600℃、ピーク時800℃前後に達し、灰分カリウム・カルシウムが土壌に還元されて短期的な肥沃化が起こります。一方で有機物層は完全に消失し、土壌微生物・菌根菌群集にも深刻な影響を及ぼします。

  • 長所:労務少(5〜15人日/ha)、コスト3〜6万円/ha、灰分による土壌肥沃化、害虫卵駆除、雑草種子の高温処理
  • 短所:森林火災リスク、CO2排出(残材1トンあたり約1.6トンCO2)、有機物層完全消失、許可制度厳格、近隣住民調整
  • 許可要件:消防法に基づく市町村への火入れ届出、事前の防火帯整備(幅5m以上)、消火用水の準備、無風〜微風の天候、降雨予報等の事前確認
  • 適用:限定的(一部の山岳地域、専門施業、ササ密生地の前処理)

棚積み(たなづみ)

伐採残材を斜面に水平方向に棚状に積み上げる方式で、急傾斜地の土砂流出防止と植栽スペース確保を両立します。労務は40〜70人日/haとやや多いものの、残材を有効活用しつつ斜面安定に寄与する点で評価されます。

地拵え3方式の概念図 全刈り、筋刈り、坪刈りの違いと植栽地内の雑草除去パターンを可視化。 地拵え3方式の比較 全刈り 全面刈り・最大労務 10〜15万円/ha 筋刈り 列に沿って帯状・中労務 6〜12万円/ha 坪刈り 苗周辺のみ円形・最少労務 3〜8万円/ha 植栽苗 刈取済 残置(雑草木) 出典: 林野庁「下刈り作業省力化の手引き」を参照
図1:地拵え3方式の比較(出典:林野庁「下刈り作業省力化の手引き」を参照)。

機械化:グラップル・地拵機の最前線

従来の人力地拵え(刈払機・チェーンソー・鎌による作業)から、現在は建機ベースのアタッチメント機械自走式地拵機への転換が急速に進んでいます。林野庁の令和5年資料では、機械地拵えの導入で人力20〜80人日/haが機械5〜20機械時間/haに圧縮、労働災害リスクも大幅低減と報告されます。北海道・東北の大面積国有林、九州の民有林大規模団地、近畿の集約化森林経営計画地等で先行導入が進み、令和2年代後半には機械地拵え実施面積が全国地拵え面積の30%を超えたと推計されます。

グラップル・ハーベスタ系(建機装着型)

主伐作業に投入されるベースマシン(10〜20トン級バックホー)にグラップル・グラップルバケット・ハーベスタヘッドを装着し、伐採と並行して残材集積・地拵えを連続施工する方式です。ウエダ製・松本製作所製のアタッチメントが代表的で、一貫作業システムの中核を担います。残材を植栽列の外側に集積する「ロウ刈り」(windrow)、斜面の等高線方向に棚状に並べる「コンタリング」、植栽予定列を確保した上で残材を整地する「列状集積」など、出力後の残材配置を施業設計で決められる柔軟性が強みです。グラップルの開閉トルクは10〜30kN・m級で、直径30cmまでの末木枝条を一掴みで集積できます。

地拵機(自走式専用機)

機械 特徴 主用途 作業能率
イワフジ ロータリークラッシャー 切株破砕+下刈り兼用、強力なロータリー刃 強度地拵え・切株処理 0.3〜0.5ha/日
キャニコム自走刈機(BFCシリーズ) 軽量2.5t・車幅1.6m・小回り、緩傾斜地特化 緩傾斜地の全刈り・筋刈り 0.4〜0.7ha/日
ウエダ アタッチメント 建機装着型、汎用性高い 機械化施業全般 建機性能に依存
大型ブッシュカッター 大規模施業、大型ベースマシン 北海道国有林等大面積 0.8〜1.2ha/日

機械化のメリットは(1)人力20〜80人日/ha → 機械5〜20機械時間/haの大幅省力化、(2)刈払機による足腰疲労・反動キックバック等の労災リスク低減、(3)地拵え品質の均一化、(4)大面積一括施工、の4点に集約されます。一方で導入限界として、傾斜30度を超える急傾斜地・狭小地・特殊地形では機械投入が困難で、人力作業が依然必要な現場が多く残ります。林業機械の損料は1機械時間あたり5,000〜15,000円とまだ高額で、小規模施業地での投資回収にも課題があります。さらに、機械搬入のための作業道整備が不十分な現場では、機械化のメリットを享受できないため、森林作業道規定(林野庁・幅員2.5m以上、勾配上限18度等)に従った路網整備が前提条件となります。

一貫作業システムとの統合

近年のスマート林業では、主伐・地拵え・植栽を連続施工する「一貫作業システム」が推進されています。これは林業機械(ハーベスタ・グラップル・スイングヤーダ等)と組み合わせて、伐採直後の地で地拵え・植栽まで一気に進める施業モデルで、機械稼働率最大化・労務調整効率化・植栽期間短縮を同時に実現します。コンテナ苗(根鉢付き苗木)との相性が良く、伐採後30日以内に植栽を完了する高速サイクルが構築できます。林野庁が「林業の成長産業化」の柱として推進中で、令和10年代までに全国の人工林造林の50%を一貫作業化する目標が掲げられています。

コスト構造の分解

地拵えコストは方式・地形・機械化率で3〜15万円/haと大きく変動します。標準的な内訳は以下の通り。

方式 労務費 機械損料 燃料・消耗品 諸経費 合計(万円/ha)
坪刈り(人力) 2.0〜5.0 0.2 0.3〜0.5 0.5〜2.0 3〜8
筋刈り(人力) 4.0〜8.0 0.3 0.5〜0.8 1.0〜3.0 6〜12
全刈り(人力) 8.0〜12.0 0.5 0.8〜1.2 1.5〜3.0 10〜15
機械全刈り(地拵機) 2.0〜4.0 2.0〜4.0 0.5〜1.0 0.5〜1.5 5〜10
火入れ 1.5〜3.0 0.2 0.5 1.0〜2.0 3〜6

労務費単価は1日あたり1.5〜2万円(地域差大)で計算しています。山行費・運搬費は諸経費に算入されます。施業地の搬入路距離が遠い・小面積分散等の条件では諸経費比率が膨らみ、実勢コストはさらに上振れします。森林整備事業(林野庁)・低コスト造林推進事業(都道府県)等の補助制度を活用すれば、自己負担はおおむね3〜5割程度に圧縮可能です。

安全管理:消防法・労働安全衛生規則の遵守

地拵え作業は林業労災発生率が高い工程の一つで、刈払機の反動・転倒・刃の接触・蜂刺傷・転落等が代表的災害原因です。労働安全衛生規則第151条以下、第484条(伐木作業等)、林業労働災害防止規程等に基づく対策が必要となります。林業の労災発生率(千人率)は全産業平均の10倍以上と高く、地拵え・下刈り工程はその中でも上位を占めるため、安全管理は施業計画の最優先事項として位置づけるべきです。

  • 個人保護具:保護メガネ・耳栓・防振手袋・チャップス(防護ズボン)・滑り止め付き地下足袋またはチェーンソーブーツ。ヘルメット・面ガード・防護襟(首部保護)は必須。長時間作業時は腰部保護ベルト・サポーターも有効。
  • 刈払機の取り扱い:始動時は地面に置き、足で固定。作業中は左右15m以内に他の作業者を入れない。傾斜地では下方からの作業を避け、刃のキックバック発生角(10時〜2時方向)を意識する。チップソーは欠け・摩耗の事前点検を毎朝実施。
  • 火入れの法的要件:消防法第3条第1項・市町村火入れ条例で、事前の市町村届出(実施日の7〜14日前まで)、防火帯整備(幅5m以上、可燃物完全除去)、消火用水・消火器・じょれん等の準備、風速3m/s以下の気象条件、降雨予報の事前確認、近隣住民・林野庁機関・消防署への事前通知が義務付けられます。違反時は森林法・消防法による罰則が適用される。
  • 急傾斜地作業:傾斜35度以上では作業者の固定(安全帯)、下方への落石・転落防止、複数人での作業を原則とします。単独作業は原則禁止で、必ず連絡手段(無線・携帯電話)を確保する。
  • 熱中症・蜂被害:夏季は休憩30分ごと・水分補給を徹底(1日2〜3L目安)。スズメバチ巣の事前確認、蜂被害時のエピペン携行も推奨されます。アシナガバチ・スズメバチの活動最盛期(7〜9月)は特に警戒レベルを上げる。
  • 機械作業の安全:地拵機・グラップル運転は林業機械作業者特別教育の修了が必要。ベースマシンの転倒防止のため、作業前に地形確認・キャビンガード装着・ROPS(横転時保護構造)対応機の選定を徹底する。
  • 作業計画書:施業着手前に作業計画書(リスクアセスメント・KY活動・連絡体制・救急搬送路)を作成し、現場責任者・作業者全員で共有することが労働安全衛生規則上の前提となります。

生物多様性配慮と低撹乱地拵え

強度の全刈り地拵えは、表土・有機物層・菌根菌群集にダメージを与え、長期的な土壌劣化と種多様性低下を招くリスクが認識されつつあります。これを回避する「低撹乱地拵え(low-intensity site preparation)」の研究と実装が国内外で進行中です。林床植生は地拵え後の数年間で最大80%が消失し、回復には10〜20年を要すると報告されます。土壌中の菌根菌群集も、強度撹乱で多様性が30〜50%低下し、再構築には15年以上が必要とされます。

低撹乱地拵えの主な特徴:

  • 筋刈り・坪刈り中心、全刈り回避
  • 有機物層(A0層)の物理的保全(落葉層・腐植層を撹乱せず残す)
  • 母樹保残施業(mother tree retention)との組み合わせによる菌根菌ネットワーク(CMN)の連続性確保
  • 広葉樹・低木の選択的残存(保残木方式)
  • 残材の現地保留による有機物・養分循環維持
  • 急傾斜地・水源域・希少種生息地での優先適用
  • 機械投入経路と作業エリアの空間的限定

これは「Mother Tree」概念(Suzanne Simard)に通底する施業哲学で、欧州・北米の再生型林業(regenerative forestry)と整合します。日本でも一部の保護林・水源涵養林・特殊用途林で試行され、生物多様性条約(CBD)の愛知目標・昆明モントリオール枠組(GBF)への貢献にもつながります。J-クレジット制度の森林管理プロジェクト(FO-001/002/003方法論)でも、地拵え強度が炭素収支評価の重要要素として扱われ、低撹乱地拵えは土壌炭素貯蔵維持の点で評価されます。強度全刈りでは有機物層分解促進・土壌呼吸加速で短期的な炭素放出(ha当たり数t-CO2)が起こる一方、低撹乱地拵えは土壌炭素貯蔵を維持できるため、炭素クレジット市場での評価向上にもつながる可能性があります。

支援制度

制度 所管 適用範囲
森林整備事業 林野庁 地拵え・植栽の補助(標準単価ベースで概ね5〜7割補助)
下刈り省力化推進事業 林野庁・都道府県 機械地拵え・大苗活用に対する追加支援
森林環境譲与税 総務省・市町村 市町村独自の森林整備事業に充当
低コスト造林推進事業 都道府県 地域別の追加支援、林業労務確保
緑の雇用事業 林野庁 地拵え・下刈り作業の担い手育成

これらの制度を組み合わせれば、自己負担を3〜5割程度に圧縮できる施業地が多く、機械化導入時には機械損料の補助・林業機械リース支援も活用可能です。

樹種別・地域別の最適地拵え

条件 推奨地拵え 理由
スギ・ヒノキ標準造林(緩斜面) 機械全刈り 初期成長重視、コスト効率、機械化容易
急傾斜地スギ・ヒノキ 筋刈り・棚積み 表土流亡防止、人力作業
カラマツ造林(北海道) 機械地拵え 大面積・労務効率・ササ繁茂対策
トドマツ・エゾマツ造林 機械地拵え・強度筋刈り ササ繁茂対策、寒冷地適応
広葉樹混交林造成 坪刈り中心 多様性保全、低コスト
水源涵養林 筋刈り・坪刈り 土壌保全、水質維持
保護林・希少種地 坪刈り 生態系保全、低撹乱優先

地拵えと炭素・気候変動への配慮

地拵えの強度・方式は、森林の炭素フラックスに直接影響します。強度全刈り地拵えは、有機物層の分解促進・土壌呼吸加速で短期的な炭素放出(ha当たり数t-CO2)を引き起こします。一方、低撹乱地拵えは土壌炭素貯蔵を維持し、長期的なCO2吸収量を向上させます。J-クレジット制度の森林管理プロジェクト(FO-001/002/003方法論)では、地拵え強度・撹乱範囲が炭素収支評価の重要要素として扱われ、低撹乱施業はクレジット創出量の増加要因となります。

気候変動下では、降雨パターンの変化・極端気象(集中豪雨・干ばつ)の増加で、地拵えのタイミング・方式選択がより慎重な判断を要求するようになっています。豪雨後の表土流亡が顕在化する地域では筋刈り・棚積みへの転換、夏季高温による苗木乾燥被害が増える地域では坪刈り+雑草残存で遮光環境を確保する等、気候適応型の地拵え設計が研究されつつあります。森林管理者は地域の気候変動シナリオを踏まえた施業計画の見直しが求められます。

地拵えの作業時期

地域 最適時期 理由
北海道・東北 残雪期〜初春(4〜6月) 植栽期に間に合わせ、雑草未繁茂
関東甲信越 晩秋〜早春(11〜3月) 植栽前整備、雑草休眠期
九州・四国 晩秋〜冬(11〜2月) 植栽期前、雑草休眠期

植栽の数週間〜数ヶ月前に実施するのが理想で、雑草木の再生長前に植栽できるようタイミングを合わせます。一貫作業システムでは主伐・地拵え・植栽を同一機械稼働期間に連続施工し、機械稼働率の最大化と植栽期間の短縮を両立します。地域別には、北海道では主伐後の積雪期前(10〜11月)に粗地拵えを行い、融雪後の精地拵えと植栽を残雪期〜初春に実施する2段階方式が標準。本州中部では晩秋〜早春の落葉期に地拵えを集中させ、雑草休眠期間を最大限活用する施業歴が定着しています。九州・四国の温暖地では雑草休眠期間が短く、地拵え後30〜60日以内の植栽実施が望ましいとされます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 地拵えなしで植栽できますか

A. 理論的には可能(無地拵え植栽)ですが、活着率と初期成長の劇的低下が予想されます。坪刈り程度の最小地拵えでも、苗木周辺1m半径の雑草除去はほぼ必須です。

Q2. 地拵えと下刈りの違いは

A. 地拵えは植栽前の整備、下刈りは植栽後の若齢林管理での雑草除去です。地拵えで一度クリアにしても、雑草・低木は数年で再生し、繰り返しの下刈り作業が必要となります(標準で植栽後5〜7年、年1〜2回)。

Q3. 機械地拵えはどの地形まで対応可能ですか

A. 機械の種類で異なるが、概ね傾斜30度以下が標準。35度を超える急傾斜地では人力作業が依然必要。最新の小型自走機械(キャニコム等)は緩傾斜地・準急傾斜地での実用域を拡大しています。

Q4. 火入れ地拵えは現代でも行われますか

A. 限定的に行われます。消防法・市町村火入れ条例の許可制、森林火災リスク、CO2排出、近隣住民調整の難しさから、戦前のような広範な実施はなくなりました。一部の山岳地域・専門施業で残るのみです。

Q5. 全刈りと低撹乱地拵え、どちらが将来主流になりますか

A. 用途次第。生産性重視の人工林では機械全刈り(または機械化筋刈り)が主流継続見通し。生物多様性・水源涵養・カーボン貯蔵を重視する場面では低撹乱地拵えへのシフトが進行中。施業目的別の使い分けが現実的です。

Q6. 地拵えコストを下げる現実的な方法は

A. (1)機械化導入(地拵機・グラップル)、(2)一貫作業システム化(主伐・地拵え・植栽の連続施工)、(3)筋刈り・坪刈りの採用、(4)森林整備事業・低コスト造林推進事業等の補助活用、(5)コンテナ苗導入による植栽工程の短縮との組み合わせ、が代表的選択肢です。施業地の集約化・団地化を進めれば、機械搬入コスト・諸経費を分散できるため、団地共同施業計画の活用も有効です。

Q7. 火入れ地拵えのCO2排出量はどの程度ですか

A. 残材1トンの完全燃焼で概ね1.6〜1.8トンのCO2が排出されると推定されます。スギ・ヒノキ標準林分の残材量50〜120立方メートル/ha(密度0.4〜0.5として20〜60トン/ha)を全量火入れすると、ha当たり30〜100トンCO2の排出となります。J-クレジット制度の森林管理プロジェクトでは、この排出分が炭素クレジット計算の控除要素になるため、火入れ実施は気候変動対応の観点から慎重判断が必要です。

Q8. 雑草抑制効果はどのくらい持続しますか

A. 全刈り地拵えで2〜3年、筋刈りで1〜2年、坪刈りで半年〜1年の雑草抑制効果が標準です。地域の雑草種・気温・降水量で大きく変動し、九州〜四国の温暖湿潤地ではススキ・クズ・タケ類が半年〜1年で全面再生長することもあります。地拵え方式の選択は、想定される下刈り回数・コストとセットで判断するのが合理的です。

Q9. 地拵えの環境影響を最小化する施業設計のポイントは

A. (1)筋刈り・坪刈り中心に方式選択、(2)有機物層(A0層)の物理的保全、(3)残材の現地保留・チッピング活用、(4)母樹・保残木の選択的残存、(5)作業道・機械搬入路の最適配置、(6)施業時期の調整(鳥類繁殖期・積雪期回避)、の6点が中核です。これらを満たす低撹乱地拵えは、長期的な土壌健全性・生物多様性・炭素貯蔵維持に貢献します。

Q10. 地拵え後、植栽までの最適期間は

A. 数週間〜数ヶ月が理想で、雑草木の再生長前に植栽を完了させるタイミング設計が肝要です。一貫作業システムでは伐採後30日以内、標準的な分離工程でも翌春までに植栽を完了するのが標準です。地拵え後の放置期間が長すぎると雑草再侵入で再地拵えが必要になり、追加コスト・労務が発生します。

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