日本の森林は、2023年度に年間約4,800万t-CO2を吸収しました。これは日本の年間CO2排出量(約11億t)のおよそ4%にあたります。決して小さくない数字ですが、実はこの吸収量、2010年代半ばの約5,200万t-CO2をピークにじわじわ減ってきています。なぜ減るのか、これからどうなるのか。林野庁や環境省のインベントリデータをもとに、数字を追いながら整理してみます。
吸収量がだんだん減っているわけ
森林の吸収量は、年ごとに上下しながらも、2000年代後半から長い下り坂に入っています。理由はひとつ、森が「歳をとった」からです。木が一番元気にCO2を吸い込むのは成長最盛期の15〜40年生あたり。日本の人工林の多くは戦後の拡大造林期(1950〜70年代)に一斉に植えられたため、いまその大半が50年生を超え、成長のスピード=吸収のスピードが落ちてきているのです。
| 年度 | 吸収量(万t-CO2) | 主要林齢 | 動向 |
|---|---|---|---|
| 2014ごろ | 約5,200 | 50年生中心 | 近年のピーク |
| 2018 | 約4,900 | 50-60年生 | 減少進行 |
| 2023 | 約4,800 | 50-65年生 | 確報値 |
| 2030予測 | 約3,800 | 60-70年生 | 地球温暖化対策計画の目標 |
1ヘクタールあたりで見ると、成長期の林では年10t-CO2前後を吸うのに、高齢の林では数t-CO2以下まで落ちます。日本のスギ・ヒノキ人工林は8齢級(41〜50年生)以上が7割前後を占め、若い林(1〜15年生)はごくわずか。この偏りこそが、吸収量低下の構造的な原因です。
どの木が、どれだけ吸っているか
吸収量の中身を樹種で分けると、人工林の主役であるスギとヒノキの存在感が際立ちます。面積では天然林(広葉樹中心)のほうが広いのに、吸収量では人工林が全体のおよそ6割を担っているのが特徴です。成熟した天然林は年成長量が小さいため、面積のわりに吸収が伸びないのです。下の表は、面積と林齢構成からのおおまかな内訳イメージです。
| 樹種・林相 | 面積の目安 | 吸収量シェア(推計) |
|---|---|---|
| スギ人工林 | 約444万ha | 3割前後 |
| ヒノキ人工林 | 約260万ha | 1割台半ば |
| カラマツ・その他人工林 | 約320万ha | 2割弱 |
| 天然林(針葉樹・広葉樹) | 約1,480万ha | 4割弱 |
スギとヒノキの2樹種だけで全体のおよそ4割強。地域でみると、森林面積が大きい北海道・東北・中部が三大吸収源です。
木材製品も「炭素の貯金箱」
森そのものの吸収量に加えて、もうひとつ見逃せないのがHWP(収穫木材製品)です。伐った木を製材や合板、紙にして使い続けるあいだ、その中の炭素は逃げずに固定されたまま。これを毎年1,000万t-CO2規模、別枠でカウントします。建築材の半減期はIPCCの既定値で約35年と長く、長く使うほど炭素を抱え込む時間も延びます。森林本体とHWPを合わせると、森林分野全体では年5,000万〜6,000万t-CO2規模の脱炭素貢献になります。
2030年・2050年に向けて
第7次環境基本計画と温対法に基づく地球温暖化対策計画では、2030年度の森林吸収量を約3,800万t-CO2確保することが目標とされています。これは2030年度の削減後排出量のおよそ5%にあたり、エネルギー・産業・運輸・民生に並ぶ「第5の柱」と位置づけられています。
高齢化した森を若返らせる鍵は、伐って・使って・また植える「主伐と再造林」のサイクルです。ただ、いまの再造林率は約4割にとどまり、残りは植え直されないまま。短期的には若い林を増やすと吸収量が一時的にさらに下がるという悩ましさもあります。そこで、伐期を80〜100年に延ばす長伐期化や、木材を長く使ってHWPを増やす工夫、森林J-クレジットによる経済価値化などを組み合わせ、2050年カーボンニュートラルに向けて吸収量を粘り強く支えていくのが、これからの森づくりの方向性です。
「年1,000円の森林環境税って何のため?」と思ったことがある人もいるかもしれません。あの税金も、間伐や植林、木材利用を支える財源として、こうした吸収量の維持に静かに効いています。国産材を選ぶ、森林ボランティアに参加するといった身近な行動も、めぐりめぐって森の吸収力を支える一歩になります。
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