森林CO2吸収量|年間4,800万t-CO2(2023)の構造

森林CO2吸収量 | Forest Eight

日本の森林は、2023年度に年間約4,800万t-CO2を吸収しました。これは日本の年間CO2排出量(約11億t)のおよそ4.4%にあたります。決して小さくない数字ですが、実はこの吸収量、ピークだった2014年度の5,500万t-CO2からじわじわ減ってきています。なぜ減るのか、これからどうなるのか。林野庁や環境省のインベントリデータをもとに、数字を追いながら整理してみます。

2023年度 4,800 万t-CO2 日本排出の4.4% 最新確報値 2014年ピーク 5,500 万t-CO2 過去最大 林齢40年生中心 2030年目標 3,800 万t-CO2 温対法目標 減少傾向想定 HWP吸収 1,000 万t-CO2 収穫木材製品 別途算定
図1:森林CO2吸収量の主要諸元(出典:環境省温室効果ガスインベントリ2025年版、林野庁)
目次

吸収量がだんだん減っているわけ

森林の吸収量は、年ごとに上下しながらも、2000年代後半から長い下り坂に入っています。理由はひとつ、森が「歳をとった」からです。木が一番元気にCO2を吸い込むのは成長最盛期の15〜40年生あたり。日本の人工林の多くは戦後の拡大造林期(1950〜70年代)に一斉に植えられたため、いまその大半が50年生を超え、成長のスピード=吸収のスピードが落ちてきているのです。

年度 吸収量(万t-CO2) 主要林齢 動向
2000 約7,800 30-40年生 ピーク前期
2008 約7,500 40-50年生 緩やか減少開始
2014 約5,500 50年生中心 算定変更後のピーク
2018 約4,900 50-60年生 減少進行
2023 約4,800 50-65年生 確報値
2030予測 約3,800 60-70年生 温対法目標

1ヘクタールあたりで見ると、16〜25年生では年25t-CO2ほど吸うのに、61〜80年生では年7t-CO2程度まで落ちます。日本のスギ・ヒノキ人工林は8齢級(41〜50年生)以上が約7割を占め、若い林(1〜15年生)はわずか3%。この偏りこそが、吸収量低下の構造的な原因です。

どの木が、どれだけ吸っているか

4,800万t-CO2の中身を樹種で分けると、人工林の主役であるスギとヒノキの存在感が際立ちます。面積では天然林(広葉樹中心)のほうが広いのに、吸収量では人工林が全体の約6割を担っているのが特徴です。成熟した天然林は年成長量が小さいため、面積のわりに吸収が伸びないのです。

樹種・林相 面積 吸収量 シェア
スギ人工林 444万ha 約1,400万t-CO2 29%
ヒノキ人工林 260万ha 約700万t-CO2 15%
カラマツ人工林 100万ha 約350万t-CO2 7%
その他針葉樹・人工林広葉樹 216万ha 約500万t-CO2 10%
天然林(針葉樹) 320万ha 約500万t-CO2 10%
天然林(広葉樹) 1,160万ha 約1,350万t-CO2 28%
合計 2,500万ha 約4,800万t-CO2 100%

スギとヒノキの2樹種だけで全体の44%。地域でみると、森林面積が大きい北海道(約960万t)、東北(約880万t)、中部・北陸(約900万t)が三大吸収源です。

木材製品も「炭素の貯金箱」

森そのものの吸収量に加えて、もうひとつ見逃せないのがHWP(収穫木材製品)です。伐った木を製材や合板、紙にして使い続けるあいだ、その中の炭素は逃げずに固定されたまま。これを毎年約1,000万t-CO2分、別枠でカウントします。建築材なら半減期は約35年と長く、長く使うほど炭素を抱え込む時間も延びます。森林本体とHWPを合わせると、森林分野全体では年約5,800万t-CO2の脱炭素貢献になります。

2030年・2050年に向けて

第7次環境基本計画と温対法に基づく地球温暖化対策計画では、2030年度の森林吸収量を3,800万t-CO2確保することが目標とされています。これは2030年度の削減後排出量(約7.6億t-CO2)の5%ほどにあたり、エネルギー・産業・運輸・民生に並ぶ「第5の柱」と位置づけられています。

高齢化した森を若返らせる鍵は、伐って・使って・また植える「主伐と再造林」のサイクルです。ただ、いまの再造林率は約4割にとどまり、残りは植え直されないまま。短期的には若い林を増やすと吸収量が一時的にさらに下がるという悩ましさもあります。そこで、伐期を80〜100年に延ばす長伐期化や、木材を長く使ってHWPを増やす工夫、森林J-クレジットによる経済価値化などを組み合わせ、2050年カーボンニュートラルに向けて吸収量を粘り強く支えていくのが、これからの森づくりの方向性です。

「年1,000円の森林環境税って何のため?」と思ったことがある人もいるかもしれません。あの税金も、間伐や植林、木材利用を支える財源として、こうした吸収量の維持に静かに効いています。国産材を選ぶ、森林ボランティアに参加するといった身近な行動も、めぐりめぐって森の吸収力を支える一歩になります。

出典・参考

  • 環境省「温室効果ガスインベントリ報告書」(2025年版)
  • 林野庁「森林・林業白書」(令和6年度)
  • 第7次環境基本計画/地球温暖化対策計画(2024年改定)
  • IPCC 2006 Guidelines for National Greenhouse Gas Inventories
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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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