やまびこグループ(共立・新ダイワ・ECHO)|国産チェーンソー3ブランドの体制と歴史

やまびこグループの3ブランド

STIHLやHusqvarnaといった欧州勢に隠れがちですが、日本にも世界に通用する老舗の動力機械メーカーがあります。共立(KIORITZ)・新ダイワ(Shindaiwa)・ECHO(エコー)――この3ブランドは、いずれも東証プライム上場の株式会社やまびこ(証券コード6250、本社・東京都青梅市)が展開するものです。共立と新ダイワは国内向け、ECHOは海外(とくに北米)向けと、市場ごとに看板を掛け替えているのが大きな特徴。ここでは3ブランドの成り立ちと、国内林業で選ばれ続けるチェーンソーを整理します。

目次

共立 ── 刈払機で「世界初」を取った農林機械の老舗

共立の出発点は、戦後復興期の農薬散布機械でした。1947年に東京で創業し、当初は背負式の噴霧機を主力に、食糧増産政策にともなう水田・果樹園の防除需要をつかんで国内シェアを築きます。

転機は1950年代半ば。共立は2サイクルエンジンを積んだ肩掛け式の動力刈払機を早くから商品化した先駆メーカーで、「小型2サイクルエンジン+シャフト+金属刈刃」という、いまも続く刈払機の基本構造を広めました。傾斜地や畦、林の縁といった機械が入りにくい場所の草刈りを、鎌の手作業から動力作業へ変えた立役者です。STIHLやHusqvarnaが刈払機に本格参入するのは1960年代後半以降で、この分野では共立が先行していました。

1950〜70年代の拡大造林政策で、日本にはスギ・ヒノキを中心に約1,000万ヘクタールの人工林が造成されます。この膨大な施業を支えるため国産チェーンソーの需要が高まり、共立は1960年代前半に初の国産機を投入。当時主流だった北米製の輸入機に比べて軽くコンパクトで、日本人作業者の体格や急峻な地形に合った設計が支持を集めました。「軽い=扱いやすい」という国内市場の評価軸は、この時期の共立機が作った面が大きいといえます。

現場の主力 ── CS501S・CS621S

共立のチェーンソーは家庭用から大径木プロ機まで揃いますが、国内林業の標準的な選択肢になっているのが中型プロ機のCS501S(50ccクラス・約4.7kg)と、大径木向けのCS621S(62ccクラス・約5.7kg)です。CS501SはSTIHL MS261やHusqvarna 550XPに対抗する位置づけで、やや手頃な価格が魅力。CS621Sは胸高直径40cm前後の大径木伐倒に対応し、東北・北海道のスギ造林地で標準機の一つになっています。始動時の引きひも負荷を軽くする軽量スターターなど、長時間作業の疲労を抑える工夫も共立らしさです。

新ダイワ ── 産業機械の血筋を引く「青と黒」

共立がオレンジ・黒で農林業に根を張ってきたのに対し、新ダイワは溶接機やエンジン発電機といった建設・産業機械の血筋を引くブランドです。源流は戦後の広島の精機メーカーで、1959年に新ダイワ工業として設立され、「欧米の輸入チェーンソーは日本人には大きすぎ重すぎる」という当時の悩みに、軽量・コンパクトな国産機で応えてきました。いまも建設現場のエンジン溶接機(DGW系)は新ダイワブランドが強い領域で、チェーンソーは「産業機械総合メーカーの一部門」という位置づけです。

新ダイワのプロ用チェーンソーは「E」の型番が目印です。中核は中堅プロ機のE2041S・E2050S(いずれも50ccクラス・約4.7〜4.9kg)で、共立CS501Sに相当する林業現場の定番。大径木の伐倒・玉切りが主戦場なら70ccクラスのE2070Sが使われます。

モデル 排気量クラス 重量目安 主用途
E1041S 40cc 約4.2kg 準プロ・農業
E2041S / E2050S 50cc 約4.7〜4.9kg プロ中堅(伐倒・枝払い・玉切り)
E2070S 70cc 約5.7kg プロ大型(大径木)

やまびこ統合後、共立と新ダイワは基幹部品をかなり共通化しており、両者はいわば色違いの姉妹機です。消耗品の互換性を活かして在庫を一本化する事業者も少なくありません。選ぶ決め手は性能差というより「地域のディーラー網・販売チャネル・好み」であることが多いのが実情です。引きひも始動の負荷を軽くするS-Start、層状掃気による低排ガス2サイクルエンジン(EU Stage V・米国EPA Phase 3対応)、ゴムとスプリングを組み合わせたAV機構による防振など、装備は両ブランドで共通しています。

ECHO ── 北米で育てた「海外専用ブランド」

共立は早くから海外へ目を向けました。1972年、米国イリノイ州にECHO Incorporatedを設立し、北米向けブランド「ECHO」を立ち上げます。当時の米国市場はMcCullochやHomeliteなど地元勢がひしめいており、共立は「新興ブランドを米国で育て、独立系の専門ディーラー網に深く食い込む」戦略を取りました。

この戦略が当たり、ECHOは北米のOPE(屋外動力機器)市場でSTIHL・Husqvarnaに次ぐ第3勢力へと成長。とくに刈払機(ストリングトリマー)でトップシェア帯に入り、日々機械を酷使する造園業者向けの業務機で高い信頼を獲得しました。いまもグループの海外売上を牽引する成長エンジンです。

ECHOの売り方を一言でいえば「日本品質の中身を、STIHL同等機より手頃な価格+長期保証で」。基幹部品やエンジンの2サイクル設計は共立・新ダイワと共通で、そこに北米向けの頑丈なフレーム・大径ハンドル・長尺バー対応・EPA/CARB認証をまとわせています。家庭・プロ問わず長期保証を付けるのも特徴で、大規模林業ではSTIHLに譲るものの、準プロ・小規模事業者・農場・市町村・公園管理といった中間市場で強みを発揮しています。

北米でシェアを伸ばした決定打が、大型量販店(Home Depotなど)と独立ディーラー(数千拠点)の2層流通です。STIHLが「ディーラー専売・量販店には卸さない」姿勢を貫くのに対し、ECHOは逆を行きました。量販店の集客力で家庭用機の認知を広げ、プロ機ライン(CS-501P・CS-680・CS-7310など)は独立ディーラー専用にする。こうして「量販店で買えるプロ品質ブランド」という認知と、ディーラー網の維持を両立させています。フラッグシップのCS-7310(73.5ccクラス)は最大80cm(32インチ)バーまで装着でき、西海岸のダグラスファーやレッドウッドの伐倒に投入されます。

やまびこグループの3ブランド体制 共立・新ダイワが国内、ECHOが海外を担うブランド戦略。基幹部品は共通化。 やまびこグループ 3ブランド体制 株式会社やまびこ 共立(KIORITZ) 国内・農林業中心 CS501S / CS621S オレンジ・黒 新ダイワ(Shindaiwa) 国内・建設/産業含む E2041S / E2050S 青・黒 ECHO(エコー) 海外・北米中心 CS-501P / CS-7310 米国組立 基幹部品を共通化しつつ、市場と販売チャネルごとに商品を最適化
図1:やまびこグループの3ブランド体制(公式資料を参照)。

2008年、共立と新ダイワが統合して「やまびこ」へ

2000年代、屋外動力機器の世界市場はSTIHL・Husqvarnaの二強と、電動化を進める米国勢の挟み撃ちで再編が加速しました。そんな中、2008年に共立と新ダイワ工業が経営統合し、株式会社やまびこが誕生します。開発・購買・生産・販売を集約し、グループ売上は1,500億円超、海外売上比率は7割前後にまで拡大しました。生産工場や基幹部品を共通化しながら、国内農林の「共立」、国内の兄弟ブランド「新ダイワ」、北米中心の「ECHO」と、市場ごとに商品を最適化する体制です。

国内での強みは「止まらない支え方」

国内のチェーンソー市場では、STIHL・Husqvarna(ゼノア)の欧州勢と、共立・新ダイワのやまびこ勢、そしてマキタ・HiKOKIの電動工具勢が競い合っています。プロ用大径木機ではSTIHL・Husqvarnaが優勢な一方、地域林業や準プロの層では共立・新ダイワが根強く支持されています。とくに岩手・青森・北海道・四国・九州といった地域林業の現場では、地域ディーラー網と修理対応の早さが評価されています。

この強さの源泉が、全国に張りめぐらされた販売・修理ディーラー網です。森林組合や素材生産業者にとって、チェーンソーが止まる時間はそのまま売上の損失。半日以内に修理や代替機を確保できるかどうかは死活問題です。共立・新ダイワは農機・林機の総合ディーラーを軸に部品在庫を厚くし、純正部品供給の速さが現場で繰り返し評価されてきました。欧州勢が技術の先進性と最大級のプロ機ラインで攻めるのに対し、やまびこ勢は軽さ・適正価格・きめ細かな国内サポートで勝負する構図です。

電動化には、北米ECHOブランドの56V「eFORCE」シリーズを軸に対応を進めています。住宅地や公園での騒音規制強化、自治体の機械更新需要を背景に、今後数年で国内でも電動・ハイブリッド機の比重が高まる見込みです。詳しくはバッテリーチェーンソーの動向を参照してください。なお、ECHO製品は日本では正規流通しておらず、日本で「ECHOと同じ中身」が欲しければ、ほぼ同じプラットフォームの共立CS501S・CS621Sや新ダイワE2041S・E2050Sを選ぶことになります。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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