大苗植栽|下刈りを減らすコンテナ苗60cm以上の使いどころ

大苗植栽で下刈りを減らす

植林したあと、若い林でいちばん手間とお金がかかる作業をご存じでしょうか。木を植えること自体ではなく、その後数年から10年ほど続く「下刈り」――苗木に覆いかぶさる雑草や低木を刈り払う作業です。地拵え・植付・下刈りという再造林の三工程のうち、下刈りは回数がかさむぶん累計コストが大きく、再造林をためらう経済的なハードルの中心になっています。その下刈りを減らせる有力な方法が「大苗(おおなえ)植栽」です。

目次

大苗とは何か、なぜ効くのか

大苗とは、ざっくり言えば苗長おおむね60cm以上・容量300cc以上に育てたコンテナ苗のこと。標準的なコンテナ苗(150cc級、苗長30〜50cm)より一回り大きく育ててから植えます。さらに苗高1m級の「特大苗」も実用段階に入っており、北海道のササ繁茂地や東北のススキ繁茂地で施業の効率を改善しています。

理屈はシンプルです。植えてから数年は、ササやススキが年に1m以上も伸びるのに対し、標準的な苗の年間伸長は数十cm。だから苗木が雑草の下に埋もれた状態が長引き、その間ずっと下刈りが要ります。樹種ごとに「これより背が高くなれば競合に負けにくい」という目安の高さがあり、標準苗ではそこに届くまで何年もかかります。植えた時点ですでに背丈のある大苗なら、より早い年次で雑草の頭を抜けられる。特大苗では、植栽直後から葉が競合植生の上に出て、初期の下刈りを減らせる例も報告されています。

標準苗 vs 大苗の植栽後成長の考え方 標準苗は雑草の臨界高さに届くまで年数がかかり、大苗はより早く到達する。 標準苗 vs 大苗:植栽後の成長イメージ 0cm 50 100 150 樹高(cm) 0 1 2 3 4 5 6 植栽後経過年数 競合植生を抜ける高さの目安 標準苗 大苗(苗長60cm以上) 大苗は早く競合植生を抜けるため、下刈りの回数を減らせる
図1:標準苗と大苗の植栽後成長の考え方(概念図)。

お金の話 ── 苗代は上がるが、下刈り代がそれ以上に減りうる

大苗は苗木単価こそ標準苗より高く(おおむね1.5〜2倍)なりますが、下刈りの回数が減れば、その削減額が苗木費の増加分を上回ることがあります。下刈りは1回あたりの人件費が大きく、それを数回分減らせる効果は無視できません。加えて、植栽密度を従来より下げる「低密度植栽」と組み合わせれば、苗木費の総額を抑えつつ下刈り対象の本数も減るので、省力化が二重に効きます。林野庁は「下刈り省力化の手引き」で、大苗・低密度植栽・一貫作業などを組み合わせた低コスト造林の考え方を示しています。

ただし密度を下げすぎると枝下高が短くなって用材としての価値が落ちるため、目標とする林の姿しだいで適正な密度を決める必要があります。一般材ねらいと無節材ねらいでは、選ぶべき本数が変わってきます。

どこで効くか ── 地域と植生で向き不向きがある

大苗はどこでも万能というわけではありません。効果がはっきり出るのは、ササ・ススキ・クズが繁茂する場所、北海道・東北のような冷涼地、トドマツエゾマツのように初期成長の遅い樹種、そして下刈り作業員の確保が難しい地域です。逆に九州・四国の温暖地では、スギ早生品種の年間伸長が大きく、標準的なコンテナ苗でも早く競合植生を抜けるため、大苗のコスト優位はやや限定的になります。

実際、北海道ではトドマツ・エゾマツ造林でササによる下刈り負担が大きく、大苗導入が積極的に進められています。東北の岩手・秋田でもススキ・クズ繁茂地でスギの大苗化が広がり、エリートツリー(少花粉・無花粉で初期成長に優れた系統)の大苗化によって、花粉症対策と低コスト造林の両立をねらう動きがあります。各地の林業試験場の比較試験でも、大苗区は標準苗区より早く競合植生を抜け、下刈り回数を減らせることが確認されています。

大事なのは「自分の山の植生・気候・労務状況」を見極めること。ササ・ススキが密に茂る場所、シカの多い地域、人手の足りない地域なら、大苗を優先する判断が理にかなっています。

シカ害対策・機械化との合わせ技

大苗のもう一つの利点が、シカ食害への強さです。シカが口を届かせる高さには限りがあるため、最初から樹高を稼げる大苗は食害のリスクを下げられます。ツリーシェルター(苗木保護筒)や忌避剤と組み合わせると相乗効果が大きく、シカ害の多い地域では「大苗+シェルター+忌避剤」の組み合わせが広がっています。

一方で、大苗は重くて嵩張るぶん運搬・植付の負担が増えます。これを補うのが機械化です。オーガ式の小型植穴掘削機を使えば大苗の根鉢に合った植穴を短時間で掘れ、補助の対象にもなっています。急傾斜地では運材索道やモノレールで苗を植栽地の近くまで直送する方式も使われます。

導入前に確認したいこと

大苗を検討するなら、まず植栽予定地のササ・ススキ・クズの茂り具合、シカの生息密度、下刈り班・植付班の確保見通し、地元の苗木業者の大苗対応の可否と発注リードタイムを押さえておきましょう。特大苗は数年前からの発注が前提になることが多いので、事業計画に早めに織り込んでおくと効果を最大化できます。森林環境譲与税や造林補助、各県独自の上乗せ補助も活用できるので、所在市町村・森林管理署・林業普及指導員への事前相談が計画の精度を高めます。

よくある質問

大苗は植えにくくないですか?

標準苗よりやや大きな根穴が要るため植付の手間は少し増えますが、しっかりした根鉢で活着率が高く補植も少ないため、トータルでは標準苗と同等〜やや楽になります。オーガ式の植穴掘削機を使えば掘削の負担は大きく減らせます。

植栽の時期はいつがいいですか?

コンテナ苗の利点を活かせるので、盛夏と厳寒期を除けば春・秋を中心に幅広く植えられます。北海道・東北は融雪後、九州・四国は落葉後が一つの目安です。特大苗は重いので、地盤が緩んだ時期は避けると効率的です。

エリートツリーの大苗化は進んでいますか?

進んでいます。エリートツリーは初期成長が速いので、大苗化と組み合わせると下刈り回数をさらに減らせます。低コスト造林の中核技術として、林野庁・各県の林業センターで種苗の生産が進められています。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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