森林整備地域活動支援対策|4メニューの交付単価と使い方

地域活動支援交付金

植林や間伐といった「施業」にお金が出ることは知られていますが、その手前――誰が持っている森かを確かめ、境界を確定し、所有者の合意をとりつける作業にも支援があります。それが「森林整備地域活動支援対策」です。2002年度に「森林整備地域活動支援交付金」として創設され、現在は林業・木材産業循環成長対策交付金のメニューのひとつとして運用されています。零細な所有が細かく分かれた日本の森をまとめていく、いわば「入口」を支える制度です。ここでは何にいくら出るのか、誰がどう使うのかを、令和8年度版の交付単価にもとづいて見ていきます。

目次

「施業」ではなく「施業の準備」を支える

この対策の最大の特徴は、支援の対象が施業そのものではなく、施業を実施するための準備活動だという点です。森林整備事業が植栽や間伐という施業の実施に対する補助なのに対し、こちらは情報の収集・整理、森林の調査、境界の測量、所有者との合意形成、施業計画の作成といった前段階を支援します。林業の工程でいえば、いちばん最初のつまずきやすい部分を後押しする制度です。

背景にあるのは、林業採算性の悪化による生産活動の停滞と、森林所有者の高齢化・不在村化です。植栽や間伐に補助があっても、その前段(境界確認や所有者調整)でつまずいて施業に至らない。林野庁の制度解説も、こうした状況で「適時適切な森林施業が十分に行われない森林が発生する」ことを制度の出発点として挙げています。そこを補うために、面的なまとまりをつくる活動そのものにお金を出す、という設計になっています。

森林整備地域活動支援対策と森林整備事業の役割分担 準備段階の地域活動を支援対策が、施業そのものを森林整備事業が支える関係を示す図 支援の守備範囲:施業の「手前」を支える 森林整備地域活動支援対策 ・森林経営計画の作成に向けた活動 ・森林境界の明確化(調査・測量) ・所有者不明森林の所有者探索 ・既存路網の簡易な改良 森林整備事業 ・地拵え・植栽 ・下刈・除伐などの保育 ・間伐(保育間伐・搬出間伐) ・施業そのものへの補助 支援対策は「面積×交付単価」を上限に活動経費を交付する定額方式。 森林整備事業は施業の実施に対する補助で、両者は前後の関係にある。 交付対象者は市町村長と実施協定(3年以内)を結んだ者と市町村。 出典:林野庁「林業・木材産業循環成長対策交付金」令和8年度版リーフレット
図1:森林整備地域活動支援対策と森林整備事業の役割分担

何にいくら出るのか

現行の支援メニューは4つです。㋐森林経営計画作成促進、㋑森林境界の明確化、㋒森林所有者の探索、㋓森林経営計画作成・森林境界の明確化に向けた条件整備。それぞれに全国一律の交付単価(国費)が定められています。

メニュー/支援内容 交付単価(国費) 対象森林
㋐森林経営計画作成促進 ①経営委託 28,000円/ha 森林経営計画が作成されていない森林
 ②共同計画等 6,000円/ha 同上(計画作成に向けた活動)
 ③間伐促進 22,000円/ha 森林経営計画が作成されている森林
㋑森林境界の明確化 ①簡易な測量(コンパス・ハンディGPS等) 31,000円/ha 境界が不明な森林
 ②精度の高い測量(トータルステーション等) 40,000円/ha 同上
 ③航測法(リモートセンシングデータを活用/現地立会の省略が可能) 43,000円/ha 同上
 ④森林境界案の作成 28,000円/ha 同上
㋒森林所有者の探索 3,000円/ha 林地台帳・森林簿・登記簿を確認しても所有者が確認できなかった森林
㋓条件整備(既存路網の簡易な改良) 26,000円/ha ㋐㋑の対象森林に到達するための作業路網

単価の読み方には注意が必要です。これは「実費の何割を補助する」という補助率ではなく、面積×単価で計算した額を上限として、実際にかかった活動経費を支払う方式です。林野庁の一問一答も「交付金の交付額は、積算基礎森林の合計面積に交付単価を乗じた額が上限となります」と説明しています。活動経費が上限を下回れば活動経費の額が、上回れば上限額が交付額になります。

活動経費には、人件費・燃料費・通信運搬費・会議室や機械器具の借料が含められます。交付対象者本人や従業員が活動した場合の労務費、適切な計算手法で地域活動分として算出した一般管理費も対象です。そのかわり、出役簿・領収書・費用計算書といった証拠書類の整備と保存が求められます。

加算措置もあります。不在村森林所有者を対象に現地立会いや訪問、説明会を行った場合、㋐と㋑でそれぞれ8,000円/haが上乗せされます。ただし㋐と㋑を併せて実施しても、この加算を二重に適用することはできません。

集約化がなぜ効くのか

対策の中核は、零細に分かれた所有森林をまとめて一体的に施業できる状態をつくることです。㋐森林経営計画作成促進の対象になるのは、森林経営計画の認定基準を満たす面積以上の森林を対象とした活動で、所有者リストの作成から意向確認、境界の合意、計画の起案までが一連の流れになります。単価が「経営委託28,000円/ha」と「共同計画等6,000円/ha」で大きく違うのは、経営の委託まで取り付ける活動のほうが手間も成果も大きいからです。

面積のカウント(積算基礎森林)は、原則として森林簿の情報によります。森林簿と現況がかけ離れている場合は、現地調査の結果や森林所有者からの聞き取りで、もっとも正確と判断される面積を使うことになっています。

集約化には壁もあります。不在村所有者や所有者不明の森林は合意形成の対象から漏れがちで、実際、㋒森林所有者の探索(3,000円/ha)は「林地台帳、森林簿、登記簿を確認しても所有者が確認できなかった森林」を対象に、戸籍や住民票等の資料を使った探索を支援するメニューとして独立して置かれています。所有者不明森林については2019年施行の森林経営管理制度が市町村による経営管理権設定の道を開いており、その入口の探索作業をこの対策が支えている、という関係です。

交付までの4ステップと交付額の決まり方 協定締結から交付金の交付までの手続きの流れと、上限額の考え方 交付までの流れ 1. 協定を締結 市町村長と/3年以内 2. 活動を実施 出役簿・領収書 3. 結果を報告 実施状況報告書 4. 交付 市町村が確認後 交付額は「積算基礎森林の合計面積 × 交付単価」が上限。 活動経費がそれを下回れば、活動経費の額が交付される。 面積は原則として森林簿の情報で確認する。 出典:林野庁「森林整備地域活動支援対策 制度の解説【一問一答】」令和8年7月更新
図2:協定締結から交付までの手続きと、交付額の決まり方

境界の明確化に手厚い単価がついている理由

単価表を見ると、㋑森林境界の明確化が31,000〜43,000円/haと最も手厚いことに気づきます。林地の境界はそもそも曖昧で、境界が決まらなければ経営計画も施業もはじまらないからです。

興味深いのは手法ごとに単価が分かれている点です。コンパスやハンディGPSによる簡易な測量が31,000円/ha、トータルステーションなど性能の高い機器を用い基準点等と結合する測量が40,000円/ha、そしてリモートセンシングデータを活用した航測法が43,000円/haで最も高く、しかも現地立会の省略が可能とされています。さらに、リモセンデータから森林境界推測図をつくり地元精通者が確認する「森林境界案の作成」が28,000円/haで別立てになっています。境界案を作成した森林については、次年度以降に森林所有者等の合意を取得して境界を確定することが前提です。

㋓条件整備(26,000円/ha)は、㋐㋑の活動を実施するために必要な既存路網の簡易な改良――土留や排水施設といった手当てを支援するものです。ただし㋑のうち航測法と森林境界案の作成は、現地に立ち入らない手法であることから条件整備と同一森林・同一時期には実施できないとされています。

誰が使えるのか

交付対象者は、市町村長と森林整備地域活動実施協定を締結し、協定に沿って地域活動を行う者と市町村です。森林所有者、森林組合、林業事業体などが該当し、森林所有者や事業体で構成する地域協議会を組織して協定を結ぶこともできます。複数の者がまとまって一つの協定を締結することも可能で、面的なまとまりを確保しやすくするための扱いです。協定期間は3年間が限度です。

細かいところでは、森林所有者が自己の所有林で活動する場合、㋐の単価は「共同計画等」(6,000円/ha)が適用され、経営委託や間伐促進の単価は使えません。大企業でも自社有林以外の私有林で活動するなら対象になりますが、自社有林を積算基礎森林に計上することはできません。境界の明確化についても、隣接所有者等の立会を求めずに自分の森の境界を明確にしただけでは対象になりません。制度が「面をまとめること」に向いていることが、こうした条件からも読み取れます。

地域活動を第三者に委託することもできますが、合理的・効率的と認められる場合に限られ、委託先にも作業日誌・出役簿・実施状況の写真といった書類の作成と保管を契約で求めることとされています。

これからの論点

制度としては、リモートセンシングを使った境界明確化にすでに高い単価と現地立会省略という優遇がついており、デジタル技術による省力化を単価設計に織り込む方向がはっきり出ています。一方で、相続未登記や所有者不明の森林をどこまで探索コストに見合う形で処理できるかは残された課題です。㋒の単価が3,000円/haと他メニューより低く置かれていることは、探索そのものより「探索の前段で所有者の所在をどれだけ絞り込めているか」が効くことを示しています。実際、㋒は先行する活動で所有者不明森林リストが作成されていることが協定締結の前提とされています。

財源面では、市町村に直接配分される森林環境譲与税との使い分けも論点です。譲与税は市町村の裁量が広い一方、この対策は活動メニューと単価が全国一律に決まっているため、事業体にとっては見通しが立てやすい。地味ですが、森を動かすための最初の一押しを担う制度だといえます。

よくある質問

Q. 誰が申請できますか?

市町村長と森林整備地域活動実施協定を締結した者と、市町村です。森林所有者、森林組合、林業事業体のほか、これらで構成する地域協議会も対象になり得ます。まず活動を行う森林や活動期間などを定めた実施計画書を作成し、市町村長と協定(3年間が限度)を結ぶところから始まります。

Q. 森林整備事業との違いは何ですか?

森林整備事業は植栽・間伐など施業の実施に対する補助、この対策は施業の前段階となる地域活動への支援です。方式も異なり、森林整備事業が補助率方式なのに対し、こちらは面積×単価を上限に活動経費を交付する定額方式です。両者は前後で補完する関係にあります。

Q. 単価の満額がもらえるのですか?

いいえ。単価×面積はあくまで上限です。実際にかかった活動経費がそれを下回れば、交付されるのは活動経費の額になります。逆に活動経費が上限を超えた場合は、上限額までの交付にとどまります。

Q. 同じ森林で複数のメニューを同時に使えますか?

組み合わせによります。たとえば㋐の「共同計画等」と「間伐促進」は、間伐促進が経営計画作成済みの森林を前提とするため同一森林・同一時期には実施できません。㋑の航測法と㋓条件整備も、航測法が現地測量や立会を必要としない手法であることから併用できません。詳細は林野庁の一問一答に組合せ表があります。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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