欧州材輸入|オーストリア・ドイツ・フィンランド

欧州材輸入 | Forest Eight

あなたの家の柱や梁、もしかすると遠くヨーロッパのアルプスや北欧の森から来た木かもしれません。日本の住宅建材を語るうえで、欧州材の存在は無視できません。2022年の欧州材輸入額は約3,500億円。木材輸入全体(約1.4兆円)の4分の1を占めます。

とりわけ集成材の依存度は驚くほど高く、日本の集成材消費量約140万m³のうち、なんと約120万m³(85%)が輸入もの。その大部分が欧州産です。国産集成材は20万m³ほどにとどまります。なぜここまで欧州に頼る構造になったのか、その中身を見ていきます。

目次

なぜ日本の住宅は欧州材に頼るのか

きっかけは1990年代以降の住宅工法の変化でした。プレカット工法が普及し(在来軸組工法住宅の95%以上がプレカット)、寸法精度・乾燥度・強度等級が安定した集成材が大量・安定に求められるようになります。

ところが当時の国産材は、乾燥施設もJAS製造能力も不十分でした。そこに、年間生産能力20〜80万m³級の大型工場を持つ欧州メーカーが、寸法の揃ったホワイトウッド集成材を供給できた——。この需給がぴたりと噛み合い、いまの依存構造ができあがったのです。欧州材は北米材(米マツ・SPF)と並ぶ、日本の構造材の二大供給源になっています。

主要4カ国で8割——国別の顔ぶれ

欧州材輸入の相手国別構成 欧州材輸入額の相手国別シェア 欧州材輸入額3,500億円の相手国別シェア オーストリア 30%(約1,000億円) フィンランド 25%(約880億円) ドイツ 15%(約525億円) スウェーデン 10%(約350億円) ルーマニア 6% フランス 4% 他(ノルウェー等) 10% オーストリア・フィンランド・ドイツ・スウェーデンの4カ国で約80%。
図1:欧州材輸入の相手国別シェア(財務省貿易統計をもとに概算)

最大の相手国はオーストリア(約30%、1,000億円規模)。日本の集成材輸入で断トツです。Stora Enso、Mayr-Melnhof Holz、Pfeifer、Hasslacher、binderholzといった世界最大級の集成材メーカーが、日本の住宅メーカーやプレカット工場と長期供給関係を結んでいます。アルプス山岳地帯の年輪が緻密なホワイトウッドを原料に、高度に自動化された大型工場でE65〜E95等の構造用集成材JAS規格に対応——標準柱の120×120mm集成材から中大規模木造用の大断面材まで、ほぼ全用途をカバーできるのが強みです。

2番手はフィンランド(約25%、880億円規模)。こちらは製材・合板・LVL・集成材と幅広く、Metsä Group、Stora Enso、UPMといった大企業が市場を主導します。とくにMetsä GroupのKerto LVLは欧州LVL市場の標準ブランドで、日本でも大規模建築の構造梁・大断面材として広く使われています。残りはドイツ(15%、集成材中心)、スウェーデン(10%、製材中心、レッドウッド比率が高い)が補完的に支える構図です。品目別に見ると、集成材が45%と最大で、製材25%、合板/LVL15%、CLT・建具などが15%という内訳になっています。

ホワイトウッドとレッドウッド——欧州針葉樹の二大樹種

欧州材の主役は2つの針葉樹です。集成材の標準原料となるホワイトウッド(オウシュウトウヒ Picea abies)と、より強度・耐久性を要する場面で使われるレッドウッド(オウシュウアカマツ Pinus sylvestris)。特性を並べると違いがよくわかります。

項目 ホワイトウッド レッドウッド
学名 Picea abies Pinus sylvestris
和名 オウシュウトウヒ オウシュウアカマツ
主産地 オーストリア・ドイツ・北欧 フィンランド・スウェーデン・バルト3国
色味 淡白色〜やや黄白色 淡赤褐色(心材は赤褐色)
密度(気乾) 0.40〜0.45 g/cm³ 0.45〜0.55 g/cm³
耐久性(屋外) 低〜中 中〜高(樹脂分多)
主用途 集成材・構造柱・梁 製材・LVL・大断面構造材・建具

日本の住宅では、ホワイトウッド集成材(120×120mm柱、長さ3m)が在来軸組工法の標準柱として大量に流通します。より強度がほしい梁・桁やLVL原板、外構材にはレッドウッドが選ばれる、という使い分けです。要は強度・耐久性・寸法といった用途要件と、価格バランスで決まります。

ロシア材停止が招いた「第三次ウッドショック」

欧州材の存在感をさらに押し上げたのが、2022年のロシアによるウクライナ侵攻でした。日本政府はロシア産木材の輸入を段階的に停止。それまでロシアからは合板・LVL・製材・丸太を年間1,500〜2,000億円規模で輸入しており、住宅建材や合板原料の主要供給源の一つだったのです。

この穴を埋めるため、代替供給が欧州材・北米材・東南アジア材へ一斉に向かいました。欧州材集成材の輸入は2022年通年で前年比10〜20%増。日本の住宅メーカーは欧州産集成材への依存をさらに深めました。ただし急な需要拡大は価格急騰も招き、2022〜2023年の住宅建材価格高騰、いわゆる「第三次ウッドショック」の一因となりました。なお、ロシア中心だった白樺合板など一部の特殊品は、いまも代替先の確保に苦労が残っています。

価格はピークから正常化へ向かう

欧州集成材価格の推移 2018年から2024年の輸入価格推移 欧州産集成材輸入価格の推移(円/m³) 160K 120K 80K 40K 0 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 75K 155K 160K 110K 2021〜2022年ウッドショック・ロシア材停止で2倍以上に急騰、2024年正常化途上。
図2:欧州産集成材輸入価格の推移(財務省貿易統計・業界資料をもとに概算)

欧州産集成材(ホワイトウッド集成材、120×120mm柱用)の輸入価格は、ウッドショック前は1m³あたり7万〜8万円で安定していました。それが2021〜2022年に14万〜16万円まで急騰し、2024年現在は10万〜12万円で正常化に向かっています。倍以上に跳ね上がった背景には、コロナ禍での米国住宅需要の爆発と物流停滞、稼働率98%超で増産余地のなかった欧州工場、ロシア材停止による追加需要、欧州〜日本の海上運賃が2020年比3〜5倍に急騰したこと、そして1ドル150円台・1ユーロ160円台まで進んだ円安——これら5つが同時に効きました。

ちなみに欧州から日本までの航海日数は40〜50日と長く、輸入商社や建材メーカーは数カ月分の在庫を抱えるのが普通です。これが需給変動のクッションになっている反面、リードタイムの長さがリスク要因にもなります。

依存リスクと、国産材への転換

欧州材依存の高さは、そのままリスクの高さでもあります。東欧紛争や欧州景気の変動(地政学リスク)、円安局面での輸入価格上昇(為替リスク)、コンテナ運賃の急騰(物流リスク)、欧州側の供給能力——これらがすべて日本の住宅建材市場に直接跳ね返ってきます。2021〜2022年のウッドショックは、まさにこのリスクが一気に顕在化した出来事でした。

そこで活発になっているのが国産材転換の議論です。集成材消費140万m³のうち国産比率を、現状の15%から2030年代に30%超まで引き上げる目標が、林野庁や業界団体で掲げられています。技術的には、JAS認定のスギ・ヒノキ・カラマツ集成材は構造性能で欧州産ホワイトウッド集成材と同等。課題は生産能力・価格・寸法・等級の幅で、住宅メーカーの大量調達ニーズに完全対応するには国産集成材の規模拡大が欠かせません。

もう一つ見逃せないのが、2024年12月に施行されたEUDR(EU森林デューデリジェンス規則)です。欧州市場で流通する木材に、合法性と森林破壊との非関連性を証明する義務を課すもの。日本向け輸出に直接適用されるわけではありませんが、欧州メーカーの運用負荷とコスト上昇が、巡り巡って日本側のCIF価格に反映される可能性があります。日本側もクリーンウッド法との連携運用が議論されているところです。

結局のところ、日本側の戦略課題は「欧州材を維持しつつ、国産材転換を段階的に進め、北米材・東南アジア材も含めた供給源を多角化する」というバランス取りに尽きます。地政学リスク・為替リスクへの耐性を高めるため、3〜4の供給源を併用するポートフォリオ戦略を採る住宅メーカー・建材商社が増えています。

よくある質問

ホワイトウッドとレッドウッドの違いは?

ホワイトウッド(オウシュウトウヒ)は色が淡く密度0.40〜0.45g/cm³で、加工性に優れた集成材原料の標準樹種です。レッドウッド(オウシュウアカマツ)はやや色が濃く密度0.45〜0.55g/cm³、強度・耐久性が高く、製材・LVL・大断面構造材に使われます。どちらも欧州針葉樹林の主要構成樹種です。

国産材で欧州材集成材を代替できますか?

技術的には可能です。JAS認定のスギ・ヒノキ・カラマツ集成材は、構造性能では欧州産ホワイトウッド集成材と同等です。ただし生産能力・価格・寸法・等級の幅に課題があり、住宅メーカーの大量調達に完全対応するには国産集成材の規模拡大が必要。林野庁の支援事業で生産能力増強が進められており、2030年代に国産比率30%超が目標です。

EUDRは日本にどう影響しますか?

EUDRは2024年12月施行で、欧州内で流通する木材に合法性・森林破壊非関連性の証明を義務付けます。日本向け輸出には直接適用されませんが、欧州メーカーの運用負荷やコスト上昇が日本側のCIF価格に反映される可能性があります。日本国内のクリーンウッド法との連携運用も議論されています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次