日本の林業を「誰が」担っているのか。その姿を映す数字が林業経営体数です。2020年農林業センサスで33,891経営体。2000年には119,344あったので、20年でおよそ7割が消えた計算になります。ただ、内訳を見ると話はもっと立体的です。経営体の約88%は家族経営体ですが、その3分の2は実は素材を1本も売っていません。逆に、わずか6%の会社経営体が素材生産の約6割を担う──「数の多数派」と「生産の主役」がくっきり分かれた、二極化の産業なのです。
家族・会社・組合・その他──4つの顔
センサスの組織形態でみると、家族経営体29,807(87.9%)、会社経営体2,159(6.4%)、森林組合・生産森林組合1,290(3.8%)、その他635(1.9%)という構成です。ここでいう林業経営体とは、3ha以上の保有山林で林業作業を行うか、年200m³以上の素材生産を行う者を指します(山林を持つだけの「林家」約83万戸とは別物です)。
実務の世界では、この法的区分とは別に「森林組合」「素材生産業者」「自伐型林業」「株式会社林業」という4つの顔で語られます。森林組合は1組合あたり職員30〜40名・年3,000〜5,000m³規模、素材生産業者は5〜30名で5,000〜30,000m³、株式会社林業は10〜50名で5,000〜50,000m³、そして自伐型は1〜3名で100〜300m³。大型供給を組合と会社が担い、自伐型が地域の小ロットを支える──そんな棲み分けが進んでいます。
家族経営体の3分の2は「休眠」
数のうえで圧倒的な家族経営体ですが、その実態は見た目と違います。過去1年に素材を販売したのは約9,000にとどまり、残る約20,000は販売実績ゼロ。つまり3分の2は「育林のみ」か「休眠状態」で、現実の木材供給チェーンには参加していません。背景にあるのは深刻な高齢化で、世帯主が65歳以上の経営体が約75%、後継者が決まっているのは2割未満です。家族経営体の山林面積は平均約25ha、会社経営体の平均500ha超とは20倍の開きがあります。
6%の会社が、生産の6割を握る
会社経営体2,159は数では6.4%ですが、素材生産量シェアでは約6割。1経営体あたりの平均素材生産量は約6,000m³で、家族経営体(約180m³)の30倍以上です。法人格の内訳は株式会社が約1,400、有限会社約500、合資・合同会社約260で、株式会社化が進んでいます。事業の中身は伐出専業、育林併営、流通併営、製材兼営とさまざまで、製材・加工まで手がける垂直統合型ほど補助金への依存度が低く、収益が安定する傾向があります。
組織林業を束ねる森林組合と認定林業事業体
森林組合は森林組合法に基づく協同組合で、2022年時点で全国621組合、組合員約146万人。1990年代に約1,800あった組合数は、平成の大合併と並行して30年で3分の1に集約されました。事業の柱は造林・間伐の森林整備事業(収入の約45%)と主伐・搬出の素材生産事業(約30%)で、整備事業は造林補助への依存が高く、収入の6〜7割を公的補助が占めます。年5万m³超を扱う上位50組合がある一方、常勤事業が造林補助受託だけという零細組合もあり、組合の間でも二極化が進んでいます。
もう一つの軸が認定林業事業体です。これは「林業労働力確保促進法」に基づき都道府県が認定する事業体で、2022年で1,832。雇用管理の整備や年200日以上の雇用などが要件で、認定されると補助事業の優先採択、緑の雇用助成、公共発注の入札参加といった特典が得られます。だからこそ年1,000m³以上を扱う中堅の多くが認定取得へ動きます。取得率は組織形態で大きく違い、もともと労働・社会保険を整えている森林組合は約93%が認定済みなのに対し、会社経営体は約46%。事業規模が大きいほど取得率が高い関係が定着しています。
実働しているのは2,000経営体足らず
3.4万という総数のうち、年2,000m³以上を生産する「実働経営体」は約1,900に絞り込めます。これは認定林業事業体1,832とほぼ重なる集合で、日本の素材生産2,200万m³の8〜9割を、この2,000に満たない経営体が担っています。森林経営計画の認定経営体、森林組合、認定林業事業体という3つの枠組みが重なり合い、「2,000経営体規模の組織林業セクター」が補助事業・路網整備・主伐再造林の主体になっているのです。
20年で7割減という縮小も、その中身はほぼ家族経営体の消滅です。決定打は立木価格の長期低落で、スギ立木価格は1980年の約22,700円/m³から2020年の約3,200円/m³へと9割近く下がりました。家族経営の収入源だった50年生立木の価値が大きく目減りし、機械投資もできず、補助の輪からも外れた零細経営が静かに退場していった──それがこの20年でした。一方、会社経営体は2,400から2,159へ1割減にとどまり、認定林業事業体はむしろ8割増えています。
これから入るなら、どの形か
新規参入はいま、二極化しています。一方は株式会社・合同会社を設立し、補助事業と素材生産を軸に5名以上の雇用を目指す道。法人化すれば公共調達の要件を満たしやすく、銀行借入で高性能機械(1台3,000万〜6,000万円)も導入でき、通年雇用や事業承継も明確になります。近年は設立が手軽な合同会社(LLC)も増え、製材から設計施工までを一体化する「6次産業化型」の林業会社も地方で目立ちはじめました。
もう一方が自伐型林業です。森林所有者やその家族が、軽架線や小型ハーベスタで年100〜300m³を自ら伐り出すモデルで、全国に約2,000経営体。ただし専業で生計を立てるには安定した施業地の確保が最大の壁で、現実には特用林産・観光・農業との複業で年収500万〜700万円を組み立てるケースが多数派です。高知発の「土佐の森」型をはじめ、施業地を共同で確保する自伐型協同組合の枠組みが各地に広がっています。

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