認定林業事業体|年間素材生産1万m³以上の集約構造

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認定林業事業体は林業経営基盤強化法に基づき都道府県知事が認定する林業事業体で、2022年時点で全国1,832事業体、年間素材生産量シェアは推計約75%に達します。認定要件は「林業従事者3名以上の常勤雇用」「事業規模年間素材生産1万m³以上または造林100ha以上」等で、零細・休眠経営体を除外する政策的フィルターとして機能します。本稿では認定林業事業体1,832の組織形態・地域分布・素材生産集約度・補助事業との連動を数値で解剖し、産業集約のフェーズを示します。あわせて、認定取得から更新までの実務手続、補助金優先採択の経路、安全衛生・労務管理の到達水準、収益構造、後継者育成と再造林責務といった、現場経営の実態に踏み込んで定量的に整理します。

この記事の要点

  • 認定林業事業体1,832(2022年)は林業経営体3.4万の5.4%にすぎないが、年間素材生産量シェアは約75%に達する集約構造。
  • 組織形態別では会社が約1,000、森林組合系が約580、その他(任意組合・NPO・第3セクター等)が約250。
  • 1事業体あたり平均素材生産量は約9,000m³、上位100事業体は3万m³以上で素材生産2,200万m³の約3割を担う。
  • 補助事業(造林・路網・主伐再造林)の8〜9割が認定事業体経由で執行され、政策の集約執行装置として機能。
  • 常勤雇用率約75%、労災保険加入率100%、雇用保険98%と非認定事業体(社会保険加入率約60%)を大きく上回る水準。
目次

クイックサマリー:認定林業事業体の基本数値

指標 数値 出典・備考
認定林業事業体数(2022年) 1,832 林野庁集計
2003年認定数 約1,000 20年で約1.8倍
会社(株式・有限・合同) 約1,000 構成比54.6%
森林組合系 約580 構成比31.7%
その他(任意組合・NPO等) 約250 構成比13.7%
林業従事者数(認定事業体内) 約2.7万人 林業就業者全体の62%
1事業体平均素材生産 約9,000m³ 推計
1万m³以上事業体 約400 認定事業体の22%
3万m³以上事業体 約100 素材生産の約30%担う
素材生産量シェア 約75% 国産材2,200万m³に対し
認定有効期間 5年 事業改善計画の更新審査
年間新規認定 50〜80件 取消20〜30件で純増30件前後
経常利益率 2〜4% 補助金込み・推計

認定林業事業体の制度設計

認定林業事業体制度は、1996年改正の林業経営基盤強化法(旧称:林業労働力確保法)により創設されました。事業体が「事業改善計画」を作成し、都道府県知事の認定を受けることで、各種補助事業の優先受託・林業労働力確保支援センターの支援・税制優遇・融資優遇の対象となります。認定の有効期間は5年で、5年ごとに事業実績の審査と更新申請が必要です。1996年の制度創設は、戦後の通年雇用化が進まず季節労務に依存してきた林業現場を、社会保険・通年雇用・装備近代化を備えた近代的経営体へ移行させる政策装置として設計されました。

認定要件の主要項目は、(1)林業従事者の雇用安定化(社会保険加入・通年雇用)、(2)事業規模(年間素材生産1万m³以上または造林100ha以上が目安)、(3)安全衛生体制の整備、(4)林業機械装備の充実、(5)労働者の能力向上計画です。これらを満たし、計画書を提出して都道府県の審査を経ることで認定されます。事業改善計画書は通常50〜80ページの構成で、5年間の素材生産・造林・路網整備計画、雇用計画(新規採用人数・通年雇用率)、安全衛生計画(KY活動・防護具・健康診断)、機械装備計画(高性能林業機械の更新・新規導入)、収支計画を数値で記載することが求められます。

認定取得の実務フロー:申請から交付まで

認定主体は都道府県知事で、林野庁ではありません。各県の林務担当部局が事業改善計画の審査を行い、林業労働力確保支援センターの調査票を基礎資料として書類審査と必要に応じた現地調査が組み合わされます。標準フローは、(1)支援センターでの事前相談(1〜2ヶ月)、(2)事業改善計画書の作成(2〜3ヶ月)、(3)都道府県への申請、(4)書類審査・現地調査(2〜4ヶ月)、(5)認定書交付の5段階です。申請から交付まで通常6〜9ヶ月を要し、新規事業体の場合は事業実績データの蓄積期間も含めて1年〜1年半の準備が必要となります。

認定林業事業体1,832の組織形態別構成 会社1,000・森林組合系580・その他250の構成比を円グラフと棒グラフで表示 認定林業事業体1,832の組織形態別構成(2022年) 会社 54.6% 1,000 組合 31.7% 13.7% 事業体類型別構成 会社(株式・有限・合同)約1,000 森林組合系 約580 任意組合・NPO等 約250 補助事業優先受託 造林・路網整備・主伐再造林等 税制・融資の優遇 林業基盤整備資金・税制特例 認定有効期間5年・更新審査あり
図1:認定林業事業体1,832の組織形態別構成(出典:林野庁認定林業事業体一覧2022年度)

認定要件の細部:通年雇用と社会保険加入

認定要件で最も実質的なフィルターとなるのが「通年雇用」と「社会保険加入」です。認定事業体には全雇用者の70%以上を通年雇用化する目標が設定され、社会保険は労災原則100%、雇用保険98%以上、健康保険・厚生年金も原則加入が求められます。非認定の零細事業体(社会保険加入率約60%)と明確に差別化される要件で、認定事業体雇用者の年間勤務日数は標準210〜220日です。事業改善計画書は事業体の現状実績、5年間の数値目標、雇用安定化計画、安全衛生計画、機械装備計画、能力向上計画、収支計画の7構成で、数値根拠と実現可能性が審査の中核となります。

素材生産規模別の集約度

認定林業事業体1,832の素材生産規模分布は、(1)1万m³未満が約1,400(76%)、(2)1万〜3万m³が約330(18%)、(3)3万〜10万m³が約85(5%)、(4)10万m³以上が約15(1%)となります。1事業体平均は約9,000m³で、上位100事業体(3万m³以上)が国産材素材生産2,200万m³の約30%を担います。すなわち、認定事業体の中でもさらに上位5%(100事業体未満)に素材生産が集中する強い集約構造です。この上位層は高性能林業機械の保有台数も多く、ハーベスタ・フォワーダ・プロセッサのフルセットを複数班体制で運用できる規模感を有します。

認定林業事業体の素材生産規模別分布 事業体数と素材生産量シェアを規模別に並列で表示 認定林業事業体の素材生産規模別分布(2022年) 事業体数(事業体) 1万m³未満 1,400 (76%) 1〜3万m³ 330 (18%) 3〜10万m³ 85 (5%) 10万m³以上 15 (1%) 素材生産量シェア(%) 1万m³未満 17% 1〜3万m³ 28% 3〜10万m³ 20% 10万m³以上 10%
図2:認定林業事業体の素材生産規模別分布と生産量シェア(出典:林野庁集計より推計、2022年度)

10万m³以上の超大規模事業体

素材生産10万m³以上の事業体は全国で約15あり、そのほとんどが北海道(道有林経営や民間大手)と九州(宮崎・大分の大手林業会社)に集中しています。これらは1社で製材・合板工場まで川下統合し、年商数十億円規模の事業を展開します。たとえば北海道の主要法人は道内の素材生産から製材・合板・チップ生産まで垂直統合し、年間素材生産量は20万m³を超えます。九州の主要事業体も製材一貫体制で同等の規模感です。これら超大規模事業体は自社所有の施業団地と国有林・公有林の請負を組み合わせ、年間を通して安定した素材供給ロットを確保することで川下工場の稼働率を支える役割を担います。雇用人数は1社あたり80〜200人規模に達し、地域雇用の中核として位置づけられます。

1〜3万m³の中堅事業体:地域中核としての役割

素材生産1〜3万m³の中堅事業体は約330で、全認定事業体の18%、素材生産量シェアの28%を占めます。この層は1〜2班の伐採チームと2〜3台の高性能林業機械を保有し、地域の主伐再造林・間伐の中核として機能します。雇用人数は1社あたり15〜40人規模で、社内に施業計画担当・現場監督・機械整備担当を配置できる組織深度を持ちます。県内の補助事業執行において、市町村別エリア担当として複数の森林経営計画地を一括受託する事例が多く、施業集約化の現場執行装置となっています。経営的には素材販売収入と造林・保育の補助金収入が概ね6:4の構成で、素材価格変動への耐性は超大規模層よりやや低いものの、補助金により損益のレジリエンスを確保しています。

1万m³未満の小規模事業体:地域に根差した経営

素材生産1万m³未満の小規模事業体は約1,400で、全認定事業体の76%を占めますが、素材生産量シェアは17%にとどまります。この層は雇用人数3〜10人規模で、家族経営から脱却して通年雇用と社会保険加入を達成した、いわば「中小法人化」の段階に位置します。経営は素材生産・造林・特用林産・受託管理を組み合わせた複合型が多く、地域の森林所有者との長期信頼関係に支えられた小ロット施業を担います。中山間地域や林業基盤の弱い県では、5,000m³規模でも認定事業体として地域の唯一の施業者となるケースもあり、政策的にも零細経営とは区別された地域中核として支援対象となっています。

地域分布:林業県への集中

認定林業事業体1,832の都道府県別分布は、北海道が約170(9%)、東北6県が計約340(19%)、九州・沖縄が計約290(16%)、四国4県が計約130(7%)と、伝統的な林業県への集中が顕著です。一方、関東圏(茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川)は計約110(6%)にとどまります。県別最多は岩手県(約100)、最少は東京都・大阪府(各10未満)です。地域分布は森林資源量だけでなく、戦後造林政策の蓄積、地域製材産業の存在、自治体の林政体制の充実度といった複合要因で決まります。

地域ブロック 事業体数 構成比 特徴
北海道 約170 9.3% 大規模事業体集中
東北6県 約340 18.6% スギ主産地
関東 約110 6.0% 中小事業体中心
中部・北陸 約260 14.2% 長野・岐阜中心
近畿 約180 9.8% 奈良吉野材集中
中国 約220 12.0% 広島・岡山多い
四国 約130 7.1% 高知が中心
九州・沖縄 約290 15.8% 宮崎・大分・熊本

九州ブロック:垂直統合と再造林の先進地

九州・沖縄の認定事業体約290は全国比16%を占め、特に宮崎県(約80)・大分県(約70)・熊本県(約60)に集中しています。九州の特徴は、(1)製材一貫の垂直統合事業体が多い、(2)主伐再造林の実施率が全国平均より高い(4〜6割超)、(3)コンテナ苗の普及が早く再造林コスト削減で先行、の3点です。宮崎県は素材生産量で全国上位の常連で、年間200万m³級の素材を産出し、認定事業体が県内施業の主体となっています。大分県は集成材・合板の地域産業が発達し、認定事業体が安定した素材供給を担うことで川下産業の稼働率を支えています。

東北ブロック:スギ主産地の中堅集積

東北6県の認定事業体約340は全国比19%で、岩手県(約100)・秋田県(約70)・福島県(約60)・宮城県(約50)・山形県(約40)・青森県(約30)の構成です。東北は戦後造林の本格化が遅れたためスギ齢級構造の主伐ピーク到来が九州より遅く、認定事業体も地域の主伐転換を主導する立場にあります。冬季積雪期の通年雇用確保が課題で、除雪業務・育林業務・木材加工との組み合わせで稼働日数を維持する事業体が中心です。岩手・秋田・福島では大規模国有林の請負が認定事業体経営の大きな柱で、林野庁・東北森林管理局との安定した取引関係が経営基盤を支えています。

認定要件と更新審査の実態

認定要件のうち事業規模については、林野庁の運用上「年間素材生産1万m³以上」または「造林事業100ha以上」が目安とされますが、実際には都道府県により運用に幅があります。中山間地域の小規模事業体については、地域の事情を考慮して2,000〜5,000m³規模でも認定する例があり、認定事業体1,832のうち約3割は厳密な1万m³基準を下回ります。県の運用方針は林業基本計画で公表されており、林業県(北海道・東北・九州)では1万m³基準が標準的に求められる一方、近畿の一部や離島・中山間地域の県では地域中核としての機能を重視して柔軟に運用されています。

更新審査では、(1)5年間の事業実績、(2)労働者の社会保険加入率(目標100%)、(3)労災発生状況、(4)林業機械の更新状況、(5)次期5年計画の妥当性が評価されます。更新時の認定取消は年間20〜30件程度で、主な理由は事業実績の大幅未達と労働災害多発です。実績未達の判定は「計画値の70%未満」が一般的な基準で、素材生産・造林・雇用のいずれかでこれを下回ると、改善期間を経ても更新不可となるケースがあります。労働災害については、5年間で死亡災害発生または休業4日以上の労災が複数発生した場合に重点的な現地調査が入り、安全衛生体制の根本的改善が求められます。

更新時の改善指導と猶予措置

更新審査で課題が発見された場合、即座に認定取消ではなく、課題項目の書面通知・改善計画書提出・支援センターによる指導モニタリング(6〜12ヶ月)・改善状況の再確認を経て、改善が認められれば更新承認となります。実務的には改善指導を受けた事業体の約7割が更新を達成し、取消に至るのは慢性的な経営難・労災多発の事業体に限られています。

素材生産集約と政策効果

認定林業事業体1,832が国産材素材生産2,200万m³の約75%(約1,650万m³)を担うという推計は、次のような政策的含意を持ちます。第1に、補助事業の交付対象を認定事業体に集中させることで、政策効果を集約できます。実際、造林補助・路網整備補助・主伐再造林補助の8〜9割は認定事業体経由で執行されています。第2に、林業労働者の社会保険加入率向上・労災減少などの施策を、認定事業体経由で重点実施できます。第3に、森林経営計画の認定面積拡大、施業集約化、森林経営管理制度の市町村受託の各局面でも、認定事業体が実務担当として政策と現場を媒介する位置にあります。

認定林業事業体と林業経営体の対比 認定林業事業体1,832と全林業経営体33,891を素材生産量シェアで対比 認定林業事業体の集約効果(事業体数と素材生産量シェア) 林業経営体総数 33,891 5.4% 認定外94.6%(家族経営体・小規模事業体) ↑ 認定林業事業体1,832 国産材素材生産量 2,200万m³ 認定事業体 75%(1,650万m³) 非認定 25% 認定林業事業体は経営体数の5.4%にすぎないが素材生産量の75%を担う典型的な集約構造。 補助事業の8〜9割が認定事業体経由で執行され、政策の集約執行装置として機能する。 ※素材生産量シェアは林野庁集計から推計。区分の境界は概数。
図3:認定林業事業体の集約効果(出典:林野庁森林・林業白書・木材需給表より推計)

補助金優先採択の実務:採択率と金額規模

認定事業体への優先採択は、(1)造林補助(植栽・下刈・除伐・間伐)、(2)路網整備補助(林業専用道・森林作業道)、(3)主伐再造林補助、(4)林業機械リース補助、(5)人材育成補助(緑の雇用研修)の5領域で機能します。標準的な採択率は認定事業体で90〜95%、非認定では60〜70%にとどまり、明確な差があります。1事業体あたりの年間補助金受給額は、素材生産1万m³規模の中堅事業体で1,500〜3,000万円、3万m³規模で5,000〜8,000万円、10万m³級では1〜2億円規模に達し、経常損益の補完装置として機能しています。補助金は経費補填型と作業量比例型が組み合わされ、現場の実施量に応じて変動するため、計画値どおりの執行が経営安定の要件となります。

緑の雇用研修と人材投入の経済性

緑の雇用研修は新規採用者を3年間で段階的に育成する制度で、1〜2年目月額9万円、3年目月額3〜6万円が事業体に交付されます。研修修了者の3年定着率は約70%で非研修者(約50%)を大きく上回り、新規採用1名あたり3年で200〜250万円規模の支援が流入する設計となっています。

収益構造と経営の持続性

認定林業事業体の収益構造は、(1)素材販売収入が売上の50〜65%、(2)造林・保育の補助金収入が25〜35%、(3)受託管理・特用林産その他が10〜15%という構成が標準的です。経常利益率は2〜4%程度と低水準で、製造業全体の平均(5〜7%)を下回ります。利益率を圧迫する主要因は、(1)素材価格の伸び悩み(スギ立木価格は1980年比で4〜5割の水準)、(2)燃料費・機械リース費の上昇、(3)人件費の上昇(緑の雇用普及で初任給水準が上昇)の3点です。一方で補助金収入が損益の安定化要因として機能しており、補助金を含めた経常損益が黒字を維持する事業体が大半です。

労務費の構造:年収水準と通年雇用化

認定事業体の林業従事者の年収水準は、現場作業員(経験5〜10年)で年350〜420万円、現場リーダー(経験10年以上)で年450〜550万円、管理職で年600〜750万円が標準的です。非認定の零細事業体(年250〜320万円)と比較して20〜40%高水準で、社会保険料込みの労務単価では月額40〜55万円相当となります。労務費は売上の40〜50%を占める最大コスト要素で、人件費の上昇分を素材価格に転嫁できない場合は補助金で吸収する構造となっており、補助金依存からの脱却には素材価格の構造的回復、もしくは付加価値の高い長伐期材・大径材生産への転換が長期課題となります。

安全衛生・労務管理の到達水準

認定事業体の労働災害発生率(千人率)は約25で、林業全体平均(約30)より低い水準ですが、製造業平均(約3)と比較すると依然として10倍前後の高さです。死亡災害は全国の林業で年間約30件発生し、そのうち認定事業体の発生件数は10〜15件程度です。事故要因の上位は、(1)伐倒作業中の被災(伐倒木の跳ね上がり・想定外の倒れ方向)、(2)チェーンソー作業中の自損、(3)斜面歩行中の転倒・滑落、(4)林業機械の運転中の事故です。認定事業体ではKY活動(危険予知活動)の毎日実施、防護具(ヘルメット・チェーンソー防護ズボン・耐切創手袋・安全靴)の装着義務、月次安全衛生委員会の開催、年1回以上の特別教育(伐木・チェーンソー・刈払機)の実施が標準化されています。

健康管理:健診・粉塵・振動

林業の特殊健康診断項目には、(1)振動障害健診(チェーンソー使用者対象)、(2)粉塵健診(製材・チップ作業者対象)、(3)腰痛・頸肩腕症候群健診が含まれ、認定事業体では年1〜2回の定期実施が義務化されています。チェーンソー使用時間の上限管理(1日2時間以内、連続10分以内)、振動レベルの低い機種への更新、チェーンソー作業の機械化代替(ハーベスタ導入)が進められ、振動障害の新規発生は2000年代と比較して半減傾向にあります。一方、高齢従事者(55歳以上)の腰痛・関節症が増加傾向にあり、現場負荷を軽減する機械化と作業ローテーションの設計が課題となっています。

認定事業体の今後の課題

認定林業事業体の課題は3つに整理できます。第1に、林業従事者の確保・育成です。認定事業体が雇用する林業従事者約2.7万人のうち、35歳未満は約20%にとどまり、新規参入支援が急務です。第2に、収益性の向上です。素材価格の伸び悩みと人件費・燃料費上昇により、認定事業体の経常利益率は2〜4%程度と低水準で、補助金依存からの脱却が長期課題です。第3に、再造林の確実な実施で、主伐後の再造林率が4〜5割にとどまる現状を改善する責務が認定事業体に集まっています。これらに加えて、デジタル化(GIS・ドローン・林業ICT)の本格導入、長伐期・大径材への施業転換、CLT・大断面集成材といった新規需要先との連携強化が経営戦略上の論点となっています。

世代交代と後継者:35歳未満の構成比

認定事業体の林業従事者約2.7万人のうち、35歳未満は約5,400人(20%)、36〜49歳は約9,500人(35%)、50〜64歳は約9,700人(36%)、65歳以上は約2,400人(9%)という構成です。林業全体(35歳未満比率約17%)よりわずかに若年比率が高いものの、製造業平均(約30%)と比較すると依然として中高年偏重の構造です。世代交代を進めるには、緑の雇用研修の修了後の定着支援、現場リーダー育成、給与・福利厚生の改善、住居支援(地方移住者向け)の組み合わせが必要で、認定事業体の経営戦略において人材投資が中核論点となっています。経営者世代についても、創業世代の引退期を迎える事業体が増加しており、事業承継・M&Aの実務支援が次期5年の重要テーマです。

主伐再造林率と認定事業体の責務

主伐後の再造林率は全国平均で4〜5割にとどまり、認定事業体が施業した主伐地でも同水準で推移しています。再造林が進まない要因は、(1)植栽・下刈の高コスト(1ha当たり80〜120万円)、(2)森林所有者の経済的余力不足、(3)獣害(ニホンジカ)による植栽木の食害、の3点です。認定事業体は補助金を活用したコンテナ苗導入、低密度植栽(1ha当たり1,500〜2,000本)、植栽と下刈の機械化により再造林コストを6〜8割に圧縮する取り組みを進めており、宮崎・大分など九州の認定事業体では再造林率6割超を達成する事例も出ています。森林経営管理制度の市町村受託拡大により、所有者不明森林の主伐再造林を認定事業体が担う仕組みが整備されつつあり、再造林率向上の政策装置として認定事業体への期待が高まっています。

FAQ:認定林業事業体に関するよくある質問

認定林業事業体になるメリットは何ですか

主なメリットは(1)造林補助・路網整備補助等の優先受託、(2)林業労働力確保支援センターからの雇用支援(緑の雇用研修等)、(3)林業基盤整備資金等の融資優遇、(4)林業就業促進資金(無利子)の対象、(5)税制優遇(林業就業促進税制)です。これらは年間で1事業体あたり数百万〜数千万円規模の経営支援に相当し、中堅事業体では補助金収入が経常損益の安定化要因として大きな比重を占めます。

認定要件の「1万m³」は厳格ですか

運用上の目安であり、都道府県により厳格度に幅があります。林業県(北海道・東北・九州)では1万m³以上が標準的に求められる一方、中山間地域や林業基盤の弱い県では2,000〜5,000m³規模でも認定される例があります。造林100ha以上を満たせば素材生産規模が小さくても認定対象となるため、造林専業の事業体も含まれます。県の林業基本計画で運用基準が公表されており、申請前に県の林務担当部局に事前相談することが推奨されます。

森林組合は自動的に認定されますか

自動認定ではありません。森林組合621のうち認定事業体登録済みは約580(93%)で、残り約40組合は事業規模・組織体制の要件を満たさず未登録です。認定を受けるには事業改善計画書を作成し都道府県の審査を経る必要があり、5年ごとの更新も必要です。森林組合系の認定事業体は通常、組合の事業推進部門が認定単位となり、組合員サービス部門・購買部門は別途運営される構造です。

認定事業体の雇用者は通年雇用ですか

認定要件として「林業従事者の通年雇用化」が掲げられており、認定事業体の常勤雇用率は約75%です。ただし冬季積雪地域では事業休止期間があり、季節雇用や月給制兼業が一部残ります。社会保険加入率は労災100%、雇用保険98%、健康保険・厚生年金は約85%に達し、非認定事業体(社会保険加入率約60%)と大きな差があります。年間勤務日数は標準で210〜220日、降雪地域でも除雪・育林・木材加工との組み合わせで稼働日数を確保する事業体が多くなっています。

認定取消はどのような場合に起きますか

認定取消の主な事由は、(1)5年間の事業実績が計画を大幅に下回る場合、(2)労働災害が連続発生し安全衛生体制に問題があると判断された場合、(3)補助金の不適切受給が発覚した場合、(4)事業体の解散・合併です。年間20〜30件程度の取消があり、新規認定(年間50〜80件程度)でほぼ補填されています。実績未達による取消では、まず改善指導が入り改善計画提出・モニタリング期間を経るため、即時取消となるのは補助金不正受給など重大な事案に限られます。

認定取得から実際の補助金優先採択までどのくらいかかりますか

標準的なタイムラインは、(1)申請から認定書交付まで6〜9ヶ月、(2)認定後の補助事業申請の最初の年度交付まで3〜6ヶ月で、合計1年〜1年3ヶ月程度です。緑の雇用研修や林業機械リース補助といった一部の補助事業は認定後すぐに申請可能で、これらは認定書交付後1〜2ヶ月で交付決定となるケースもあります。認定取得そのものに直接の交付金はなく、各種補助事業を通じて間接的に経営支援が流入する設計となっています。

認定事業体の事業承継・M&Aは増えていますか

創業世代の経営者が70歳前後を迎え、事業承継問題が顕在化しています。直近5年で年間20〜40件のM&A(吸収合併・株式譲渡・事業譲渡)が確認されており、地域内中堅事業体による小規模事業体の吸収、製材・合板会社による上流統合、ファンド系資本の参画といった多様な形態が出ています。認定地位は譲渡先に承継可能ですが、事業改善計画の見直し申請が必要です。

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まとめ

認定林業事業体1,832は林業経営体3.4万のわずか5.4%にすぎませんが、国産材素材生産2,200万m³の約75%を担い、補助事業の8〜9割を執行する産業集約の中核です。会社1,000・森林組合系580・その他250という組織構成で、上位100事業体(3万m³以上)が素材生産の3割を集中担当する強い集約構造を形成。林業労働力の通年雇用化・社会保険加入率向上・再造林率向上の政策実施装置として、今後も中心的役割を担います。今後5〜10年の論点は、創業世代から次世代経営者への承継、35歳未満比率の引き上げ、主伐再造林率の改善、補助金依存からの脱却に向けた付加価値向上型施業への転換であり、認定制度はこれらの政策誘導装置として運用の精緻化が求められます。

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