機械集材装置の特別教育と林業架線作業主任者免許|林業で唯一の免許

林業で唯一の国家免許がある

木を完全に空中に浮かせて、谷を越えて運ぶ。機械集材装置は日本の林業がもっとも長く使ってきた集材技術であり、労働安全衛生法が古くから規制対象にしてきた設備でもあります。運転するには特別教育が、一定規模の作業を指揮するには林業架線作業主任者免許という国家資格が要ります。林業で数少ない「試験に落ちることのある資格」です。

目次

機械集材装置とは何か

安衛則第36条第7号は、機械集材装置をこう定義します。「集材機、架線、搬器、支柱及びこれらに附属する物により構成され、動力を用いて、原木又は薪炭材を巻き上げ、かつ、空中において運搬する設備」

キーワードは「空中において運搬する」。荷の一部でも地面に接した状態で運ぶなら、それは簡易架線集材装置という別の区分になります。この一句だけで、必要な資格も事業者の義務も変わってきます。

なお、似た設備に運材索道があります。こちらは「架線、搬器、支柱などで構成され、原木等を一定の区間、空中で運搬する設備」で、積み込む位置と降ろす位置が決まっているもの。機械集材装置と同じく古くから規制対象です。

特別教育は14時間。半分がワイヤロープ

機械集材装置の運転業務には、安全衛生特別教育規程第9条に基づく特別教育が必要です。

機械集材装置 運転特別教育のカリキュラム学科6時間、実技8時間の合計14時間。安全衛生特別教育規程第9条に定められている。機械集材装置 運転特別教育のカリキュラム学科教育機械集材装置に関する知識3hワイヤロープに関する知識2h関係法令1h実技教育集材機の運転4hワイヤロープの取扱い4h合計14時間。学科・実技ともワイヤロープが半分近くを占める出典: 安全衛生特別教育規程 第9条(昭和47年労働省告示第92号)
図1:機械集材装置の特別教育カリキュラム(出典:安全衛生特別教育規程第9条)。

科目の並びを見ると、この設備の性格がよく分かります。学科6時間のうち2時間がワイヤロープに関する知識、実技8時間のうち4時間がワイヤロープの取扱い。合計14時間の実に4割強がロープに費やされます。

学科の「機械集材装置に関する知識」3時間では、集材機の種類と構造、索張り方式、集材方法を扱います。実技の「集材機の運転」4時間は基本操作と応用運転。ドラムの巻き取り速度、制動、荷の振れの止め方――手だけで覚える領域です。

この特別教育に修了試験はなく、全時間の受講が修了の条件です。受講料は林災防の各支部などで2.5〜4万円が目安になります。

作業主任者の選任――ここから国家資格の話になる

特別教育を修了すれば運転はできます。しかし、一定規模の作業には作業主任者の選任が別途必要です。労働安全衛生法施行令第6条第6号がその線引きを定めています。

林業架線作業主任者を選任すべき作業原動機7.5kW超、支間の斜距離合計350m以上、最大使用荷重200kg以上のいずれかに該当する場合。林業架線作業主任者を選任すべき作業次のいずれかに当てはまる機械集材装置・運材索道の作業では、林業架線作業主任者免許を持つ者から作業主任者を選任しなければならない原動機の定格出力7.5kWを超える支間の斜距離の合計350m以上最大使用荷重200kg以上対象作業=組立て・解体・変更・修理と、これによる集材または運材の作業根拠: 労働安全衛生法施行令 第6条第6号
図2:作業主任者の選任要件(出典:労働安全衛生法施行令第6条第6号)。

原動機の定格出力が7.5kWを超える支間の斜距離の合計が350m以上最大使用荷重が200kg以上。このいずれかに当てはまる機械集材装置または運材索道について、組立て・解体・変更・修理の作業、およびこれによる集材・運材の作業を行うときは、林業架線作業主任者免許を持つ者のなかから作業主任者を選任しなければなりません。

実際の現場でこの基準を下回る機械集材装置はほとんどありません。つまり、機械集材装置を使う作業には事実上つねに作業主任者が要ると考えておくべきです。作業主任者は、作業の方法と労働者の配置を決め、器具・工具・要求性能墜落制止用器具・保護帽の機能を点検し、作業中は直接指揮します。

林業架線作業主任者免許試験

免許は公益財団法人 安全衛生技術試験協会が実施する国家試験に合格して取得します。北海道・東北・関東・中部・近畿・中国四国・九州の各安全衛生技術センターで、おおむね年1回の実施です。

林業架線作業主任者免許試験の概要4科目各10問、180分。各科目40%以上かつ合計60%以上で合格。合格率は6割台。林業架線作業主任者免許試験の概要試験の構成科目数4科目1科目あたり10問100点試験時間180分科目免除者135分受験料8,800円合格の条件各科目40%以上合計60%以上合格率(2022年)66.4%合格率(2023年)62.6%受験資格なし受験に制限はないが、免許の申請には林業架線作業の実務経験3年以上を証する書類が要る試験科目:機械集材装置及び運材索道の知識/林業架線作業の知識/関係法令/力学出典: 公益財団法人 安全衛生技術試験協会
図3:林業架線作業主任者免許試験(出典:公益財団法人 安全衛生技術試験協会)。

試験科目は4つ。機械集材装置及び運材索道に関する知識林業架線作業に関する知識関係法令、そして林業架線作業に必要な力学に関する知識。各科目10問100点で、試験時間は180分(科目免除者は135分)です。

合格基準は各科目40%以上かつ合計60%以上。この「各科目40%以上」が曲者で、力学だけを落として不合格になる人がいます。合格率は6割台(2022年66.4%、2023年62.6%)で、国家試験としてはやさしい部類ですが、無勉強で通る試験ではありません。

力学の中身は、索にかかる張力の計算、荷重の分解、モーメント、滑車の力の関係といったところ。高校物理の力の合成・分解が理解できていれば十分に対応できます。受験に資格制限はありません。誰でも受けられます。

試験に受かっても、すぐには免許が出ない

ここが他の免許と違うところです。免許の申請には、林業架線作業の業務に3年以上従事した経験を証する書類の添付が必要になります。試験は経験がなくても受けられますが、免許そのものは実務を積んでいなければ交付されません。

したがって現実的な順序はこうなります。①就業して機械集材装置の特別教育を受ける、②3年以上、架線集材の現場に立つ、③その間か後に免許試験を受ける、④実務経験を証明して免許を申請する。緑の雇用のフォレストワーカー研修3年を終えたあたりが、ちょうど受験を考える時期にあたります。

職長・安全衛生責任者教育を受けてフォレストリーダーを目指す人にとって、この免許は強い裏づけになります。架線を張れて、その作業を法的に指揮できる人は、どの事業体でも重宝されます。

古い技術が、また要る技術になっている

架線集材は、路網とフォワーダに押されて一時は衰退しました。しかし、急傾斜地の作業道が豪雨で崩れる事例が相次ぎ、山を傷めずに木を出す方法としての価値が見直されています。

技術者は減りました。索を張れる人、地形を読んで支柱の位置を決められる人は、いま全国で高齢化しています。林業架線作業主任者免許は、その技術を継承する人にだけ与えられる資格です。合格率6割の試験に受かるだけなら難しくありません。難しいのは、3年の実務のほうです。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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