緑の雇用で取れる資格一覧|3年間で12種類、自己負担ゼロの仕組み

緑の雇用で取れる資格12種

林業に未経験から入る人が最初にぶつかる壁は、体力ではありません。資格です。チェーンソーを持つにも、集材機を回すにも、丸太を吊るにも、法律で定められた教育の修了証が要る。しかも一つひとつが数万円します。ところが「緑の雇用」事業で採用されると、この十数種類を自己負担なしで、3年かけて順番に取っていくことになります。何がいつ取れて、その先に何があるのか。制度の全体像を整理します。

目次

「緑の雇用」は雇用対策であり、資格取得の仕組みでもある

「緑の雇用」事業が本格的に始まったのは2003年度(平成15年度)。林野庁の補助を受けて全国森林組合連合会が実施し、都道府県の林業労働力確保支援センターが窓口になります。対象は、「林業労働力の確保の促進に関する法律」に基づいて知事の認定を受けた林業経営体(認定事業主)に採用された人です。個人が直接申し込む制度ではありません。就職が先、研修が後という順序になります。

効果は数字に出ています。全国森林組合連合会によれば、事業開始前の新規就業者は年間およそ2,200人でしたが、開始後は年平均およそ3,300人へと約33%増え、累計でおよそ9,000人が「緑の雇用」を通じて林業の担い手になりました。35歳未満の若年者率も平成17年度の14%から10年後には17%へ上がっています。高齢化が止まらない一次産業のなかで、これは珍しい数字です。

「緑の雇用」4段階のキャリアラダートライアル雇用、フォレストワーカー研修3年、フォレストリーダー研修、フォレストマネージャー研修の4段階。「緑の雇用」4段階のキャリアラダートライアル雇用3か月程度・OJTのみ雇ってみる期間。研修は現場だけフォレストワーカー研修1〜3年目/3年間12種類の資格をここで取るフォレストリーダー研修就業5年以上登録すると新人のOJT指導員になれるフォレストマネージャー研修就業10年以上統括現場管理責任者。事業体の要研修を修了すると、区分ごとに農林水産大臣名の登録証が交付される出典: 全国森林組合連合会「緑の雇用」、北海道森林整備担い手支援センター
図1:「緑の雇用」の研修体系。資格が集中するのはフォレストワーカー研修の3年間(出典:全国森林組合連合会ほか)。

研修生の要件はいくつかあります。林業就業経験が通算2年未満であること、おおむね60歳未満であること、そして修了後おおむね5年以上は林業に就く意思があること。「未経験者を育てる」制度なので、すでに何年も現場にいる人は対象外になります。逆に言えば、まったくの異業種からの転職者こそ本命の対象です。

3年間で12種類。年次別の資格マップ

中心になるのがフォレストワーカー(FW)研修で、1年目から3年目まで年次ごとに区切られています。各年次は集合研修(座学と実技)とOJT研修(雇われた事業体の現場での実地指導)の二本立て。新潟県林業労働力確保支援センターの資料によれば、緑の雇用のFW研修は3年間で集合研修78日程度、OJT研修は年100日以上という規模になります。

この集合研修のなかに、資格の講習が組み込まれています。年次が上がるにつれ、扱う機械は重く、危険になっていきます。

フォレストワーカー研修 年次別の取得資格1年目は手道具と玉掛け、2年目は運搬機械、3年目は伐木機械という順で12種類を取得する。フォレストワーカー研修 年次別の取得資格FW1年目普通救命講習刈払機 安全衛生教育伐木等の業務 特別教育玉掛け技能講習小型移動式クレーンFW2年目車両系建設機械 技能講習不整地運搬車 技能講習機械集材装置 特別教育走行集材機械 特別教育はい作業 安全衛生教育FW3年目伐木等機械 特別教育簡易架線集材装置等 特別教育現場の実践研修が中心になる手で伐る → 機械で運ぶ → 機械で伐る。危険度の順にステップを踏む設計年次配分は実施する支援センターにより異なる。上は一般的な構成例
図2:フォレストワーカー研修で取る12種類の内訳(構成例)。年次配分は実施する支援センターによって前後する。
年次 主な取得資格 区分
FW1年目 普通救命講習 消防機関の講習
刈払機取扱作業者に対する安全衛生教育 安全衛生教育
伐木等の業務に係る特別教育(チェーンソー) 特別教育
玉掛け技能講習 技能講習
小型移動式クレーン運転技能講習 技能講習
FW2年目 車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習 技能講習
不整地運搬車運転技能講習 技能講習
機械集材装置の運転の業務に係る特別教育 特別教育
走行集材機械の運転の業務に係る特別教育 特別教育
はい作業従事者に対する安全衛生教育 安全衛生教育
FW3年目 伐木等機械の運転の業務に係る特別教育 特別教育
簡易架線集材装置等の運転の業務に係る特別教育 特別教育

順番には理屈があります。1年目は手に持つ道具――刈払機とチェーンソー。それに、地上から荷を扱う玉掛けと小型移動式クレーン。2年目は木を運ぶ機械――フォワーダ(走行集材機械)、不整地運搬車、そして作業道をつくるバックホウ(車両系建設機械)。3年目でようやく木を伐る機械――ハーベスタやプロセッサ(伐木等機械)、スイングヤーダやタワーヤーダ(簡易架線集材装置等)に触ります。

なお、この年次配分は全国一律ではありません。実施主体である都道府県の支援センターが、地域の作業体系や機械の保有状況に合わせて組み替えています。急傾斜地が多く架線集材が主体の地域では架線系が早まりますし、緩傾斜で車両系が中心の地域では逆になります。

「特別教育」「技能講習」「免許」はどう違うのか

一覧を眺めると、同じ「資格」と呼ばれるものに三つの種類が混ざっていることに気づきます。この区別は、林業を続けるうえで最後まで効いてきます。

特別教育・技能講習・免許の関係上から免許、技能講習、特別教育。難易度は違うが、無資格就業が違法である点は共通する。特別教育・技能講習・免許の関係免許林業架線作業主任者国家試験に合格し、実務経験を証明して労働局長が交付技能講習玉掛け・クレーン・車両系登録教習機関でのみ実施。学科・実技に修了試験がある特別教育チェーンソー・林業機械事業者の義務として行う教育。全時間の出席が修了条件難易度は違うが、無資格で就かせれば事業者が労働安全衛生法違反に問われる点は同じ根拠: 労働安全衛生法 第59条第3項・第61条、労働安全衛生規則 第36条
図3:三つの階層。「特別教育だから軽い」わけではなく、就業制限の強さが違うだけ(根拠:労働安全衛生法59条3項・61条)。

特別教育は、労働安全衛生法第59条第3項に基づいて事業者が行う義務のある教育です。修了試験はなく、定められた科目を全時間受ければ修了になります。事業者自身が行っても構いませんが、実際には登録教習機関や林業・木材製造業労働災害防止協会(林災防)に委託するのが一般的です。

技能講習は同法第61条の就業制限業務に対応します。都道府県労働局長の登録を受けた教習機関でしか実施できず、学科・実技それぞれに修了試験があります。落ちれば補講と再試験です。玉掛け、小型移動式クレーン、車両系建設機械、不整地運搬車がこれにあたります。

免許は国家試験です。林業で関係するのは林業架線作業主任者免許で、公益財団法人 安全衛生技術試験協会の試験に合格し、実務経験3年以上を証明して初めて交付されます。緑の雇用の標準カリキュラムには含まれておらず、自分で取りに行くものです。

ただし「特別教育だから軽い」という理解は誤りです。無資格の作業者を就かせれば、事業者はどちらでも労働安全衛生法違反に問われます。違うのは難易度であって、強制力ではありません。

なぜここまで資格を積むのか

理由は労働災害の統計にあります。厚生労働省「令和6年の労働災害発生状況」によれば、令和6年の林業の死亡者は31人、休業4日以上の死傷者は1,167人。全産業の死亡746人と比べれば小さな数字に見えますが、就業者数で割ると景色が変わります。

林業の死亡災害は10年間ほぼ横ばい平成27年から令和6年までの林業の死亡者数は28人から41人の範囲で推移し、令和6年は31人。林業の死亡災害は10年間ほぼ横ばい林業の労働災害による死亡者数の推移(人)38H2741H2840H2931H3033R136R230R328R429R531R610年間、30人前後から下がりきらない。資格制度が細かくなってきた理由がここにある令和6年 林業の労働災害死傷年千人率23.3全産業平均2.35死亡31人の内訳伐木作業中22人50歳以上21人出典: 厚生労働省「令和6年における労働災害発生状況(確定値)」、林野庁
図4:林業の死亡者数の推移(出典:厚生労働省「令和6年における労働災害発生状況(確定値)」)。死傷年千人率は全産業平均の約10倍。

死傷年千人率23.3――労働者1,000人のうち23人が年に一度は4日以上の休業災害に遭う計算です。全産業平均2.35の約10倍で、全業種で最も高い水準が続いています。しかも死亡31人のうち22人(約7割)が伐木作業中21人(約7割)が50歳以上。ベテランが、最も基本的な作業で亡くなっています。

過去10年を並べると、林業の死亡者数は平成27年の38人から令和6年の31人まで、30人前後で横ばいです。全産業の死亡者数が同じ期間に972人から746人へ約23%減ったのとは対照的で、下げ止まっている。装備も機械も良くなったのに数字が動かない――だから制度のほうを動かす、という流れが続いています。

資格制度が年々細かくなってきたのは、この数字への応答です。2014年(平成26年)12月には労働安全衛生規則が改正され、それまで運転資格の規制がなかったハーベスタ・プロセッサ・フォワーダ・スイングヤーダなどが「車両系木材伐出機械」としてまとめて規制対象になり、3種類の特別教育が新設されました。2020年8月には伐木等の業務に係る特別教育が胸高直径による区分を廃止して18時間に一本化されています。

受講料は誰が払うのか

この十数種類を自費で取ると、講習料だけで20〜30万円規模になります。玉掛けで2〜4万円、小型移動式クレーンで2〜4万円、車両系建設機械の技能講習は受講資格によっては10万円近い。林業機械の特別教育も1機種あたり2〜4万円です。

緑の雇用では、この費用が事業への補助でまかなわれ、研修生の自己負担は原則として生じません。加えて研修期間中の賃金相当分も事業体へ助成されるため、給料をもらいながら資格を取る形になります。個人へ直接お金が振り込まれる給付金ではない点は誤解されやすいので、押さえておいてください。

ここは制度の要です。林業事業体の多くは小規模で、新人ひとりに30万円の講習費を先払いできるところは多くありません。緑の雇用は「未経験者を雇うコスト」を下げることで、参入の入口を広げてきました。

FW登録の先にあるもの――FLとFM

3年間の研修を修了すると、研修修了者名簿への登録を国に申請できます。登録区分は林業作業士(フォレストワーカー)現場管理責任者(フォレストリーダー/FL)統括現場管理責任者(フォレストマネージャー/FM)の3つで、それぞれ農林水産大臣名の登録証が交付されます。

FL研修は就業5年以上、FM研修は10年以上が対象で、いずれも10日程度の集合研修です。ここで扱うのは機械の操作ではなく、作業計画、原価管理、班員への指導、労働安全のマネジメント。伐る人から、伐らせる人への転換点です。

制度上も重要な意味があります。北海道森林整備担い手支援センターの資料によれば、令和4年度以降、緑の雇用のOJT指導員になれるのはFLまたはFM研修の修了者に限られます。事業体がこれから新人を採ろうとするなら、先にFLかFMを一人つくっておかなければならない。資格は個人のものであると同時に、事業体が新人を受け入れるための資格でもあるわけです。林業のキャリアの分かれ道については林業のキャリアパスでも整理しています。

これから林業に入る人が最初にやること

順番を間違えないでください。資格を取ってから就職するのではなく、就職してから資格を取ります。緑の雇用の対象になるのは認定事業体に採用された人だけなので、先に自費で講習に通う必要はありません。むしろ就業経験が2年を超えると、1年目研修の対象から外れてしまいます。

やることは三つです。第一に、都道府県の林業労働力確保支援センターに問い合わせて、その県で緑の雇用を実施している認定事業体のリストを手に入れること。第二に、全国森林組合連合会が各地で開く「森林(もり)の仕事ガイダンス」のような就業相談会に足を運ぶこと。第三に、応募先が認定事業体かどうかを必ず確認すること。認定を受けていない事業体に採用されても、緑の雇用の研修は受けられません。

もう一つの入口が林業大学校です。こちらは学生の立場で1〜2年学び、在学中に同じような資格群を取得します。緑の青年就業準備給付金の対象になる学校もあり、雇われる前に技術を身につけたい人には有力な選択肢です。どちらを選んでも、最終的に手に入る修了証の顔ぶれは大きくは変わりません。

個別の資格を詳しく知る

本サイトでは、緑の雇用で取得する資格を一つずつ掘り下げた記事を用意しています。カリキュラムの中身、法令上の根拠、受講先、費用の目安まで、受ける前に知っておきたいことをまとめました。

資格は集めること自体が目的ではありません。ただ林業の場合、修了証の枚数がそのまま任せられる仕事の幅であり、命を守る知識の量でもある。3年間で12枚という設計は、決して過剰ではないのです。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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