山から出した丸太を、土場でトラックに積む。この積み込みのとき、丸太にワイヤロープを掛けてフックに吊り、降ろしたら外す――この一連の作業を玉掛けといいます。単純に見えますが、労働安全衛生法上は就業制限業務。つり上げ荷重1トン以上のクレーンで玉掛けをするには、玉掛け技能講習の修了証が要ります。学科12時間+実技7時間の19時間・3日間。しかも修了試験があります。
1トンで資格が分かれる
玉掛けの資格には二つの階層があります。
境目はクレーンのつり上げ荷重1トン。ここを超えると技能講習(労働安全衛生法第61条の就業制限業務)、下回れば特別教育(同法第59条第3項)です。
間違えやすいのは、判定するのが「吊る荷の重さ」ではなく「クレーンのつり上げ荷重」だという点です。300kgの丸太を吊る場合でも、使うクレーンのつり上げ荷重が2.9トンなら、技能講習修了者でなければ玉掛けできません。林業の土場で使うトラッククレーン(ユニック)はたいてい2〜3トン級ですから、実務上は技能講習が前提になります。
緑の雇用でフォレストワーカー1年目に玉掛け技能講習が置かれているのは、このためです。小型移動式クレーン運転技能講習とセットで受けるのが一般的で、この二つを持って初めて「積み込みまで自分でできる」状態になります。
19時間の中身
カリキュラムは玉掛け技能講習規程で定められています。
学科12時間のうち7時間が「玉掛けの方法」。ワイヤロープの選定、掛け方の種類(あだ巻き、目通し、半掛け、あや掛け)、玉掛用具の点検、荷の重心の見極め方まで扱います。3時間の「力学」では、質量と重力、力の合成と分解、モーメント、そしてつり角度と張力の関係を学びます。
この「つり角度」が、玉掛けでいちばん重要な知識です。2本のロープで荷を吊るとき、ロープの角度が開くほど、1本にかかる張力は大きくなります。角度0度なら荷重の半分ずつですが、120度まで開くと1本あたり荷重と同じ張力がかかる。荷は軽いのにロープが切れるのは、たいていこれが原因です。試験にも必ず出ます。
実技7時間のうち6時間が玉掛け作業、1時間が合図です。合図は手や旗による定型動作で、「巻き上げ」「巻き下げ」「ゆっくり」「停止」「非常停止」など。声が届かない現場で、これが唯一の意思疎通手段になります。
修了試験がある――落ちることもある
技能講習が特別教育と決定的に違うのは、修了試験があることです。学科は筆記試験、実技は実際に荷を吊る実技試験。どちらも合格しなければ修了証は出ません。
実技試験で落とされる典型は次のようなものです。
- 指差呼称の省略――手順を飛ばすと減点になる
- 荷の下に入る――吊り荷の下は立入禁止。一歩でも入れば重大な減点
- 目測の大きな誤り――荷の質量や重心の見積もりが実際と大きくずれる
- 合図の不明瞭さ――動作が小さい、運転者を見ていない
とはいえ、講習をまじめに受ければ通ります。不合格になった場合は補講と再試験の機会があるのが一般的です。
受講資格と時間の短縮
玉掛け技能講習の受講に資格制限はありませんが、すでに関連資格を持っていれば科目が免除されます。
| 保有資格 | 受講時間の目安 |
|---|---|
| なし(全科目受講) | 19時間・3日間 |
| クレーン・デリック運転士免許、移動式クレーン運転士免許、小型移動式クレーン運転技能講習修了、床上操作式クレーン運転技能講習修了など | 16時間程度・2日間 |
登録教習機関では小型移動式クレーンと玉掛けのセット講習を設定しているところが多く、まとめて受けたほうが日数も費用も抑えられます。受講料は2〜4万円が目安。緑の雇用の研修に乗れば自己負担は原則ありません。
林業の玉掛けは、建設現場とは条件が違う
教習所で扱う荷は、たいてい規格の決まったコンクリートブロックや鋼材です。しかし林業で吊るのは丸太。条件がかなり違います。
第一に、質量が読みにくい。同じ長さ・同じ太さに見えても、樹種と含水率で重さが変わります。伐り倒したばかりの生材は、乾いた材の1.5倍以上になることもある。
第二に、重心が偏っている。丸太は元口と末口で太さが違うため、中央で吊れば必ず傾きます。掛ける位置をずらして水平を出す判断が要る。
第三に、滑る。樹皮が付いた生材は、ワイヤが滑って荷が抜けることがあります。目通しで確実に締めるか、複数本を束ねるときの掛け方を工夫するか。
第四に、足場が悪い。土場は水平ではなく、雨が降ればぬかるみます。
19時間の講習は共通の基礎を教えてくれますが、丸太の玉掛けは現場で覚え直す部分が大きい。修了証は入場券であって、技能そのものではありません。
いちばん多い災害の型
玉掛け関連の労働災害でもっとも多いのは、「荷が落ちる」と「荷にはさまれる」です。落ちるのは掛け方の不備、はさまれるのは荷の下や旋回範囲に入ったから。
どちらも、講習で必ず言われることを守れば防げます。吊り荷の下に入らない。荷が完全に静止するまで手を出さない。合図者は一人に決める。単純な三つですが、急いでいるとき、疲れているとき、これが崩れます。
林業の現場は少人数です。運転者と玉掛け者が同じ人という場面すらある。だからこそ、自分ひとりで手順を守り切れるかどうかが問われます。

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