ヒノキ人工林257万ha|立木価格はスギの2.4倍、でも若い山は0.6%

ヒノキの山に若い木が足りない

ヒノキは、スギに次ぐ二番手の人工林だ。面積は256.9万ha、人工林全体の4分の1。二番手と呼ばれて怒るかというと、たぶん怒らない。値段は一番手だからだ。

令和7年3月末の山元立木価格は、スギが1m³あたり4,026円、ヒノキが9,494円。山に立っている状態で、ヒノキはスギの2.4倍で取引されている。工場に着いた丸太(素材)でも、スギ15,400円に対してヒノキ25,300円と1.6倍の差がある。

山の上の値段はスギの2.4倍、工場に着く値段は1.6倍山元立木価格は令和7年3月末、素材価格は令和7年の年平均山元立木価格(円/m³)スギ4,026円ヒノキ9,494円素材価格(円/m³)スギ15,400円ヒノキ25,300円
図1:出典:林野庁「令和7年度 森林・林業白書」第1部第2章(山元立木価格は前年同月比でスギ−2.4%、ヒノキ+6.2%。素材価格はスギ15,400円、ヒノキ25,300円で、前年よりスギ500円安、ヒノキ3,000円高)。倍率は編集部の計算。素材は製材品・合板等の原料になる丸太。立木価格と素材価格は算出方法が違うため、差し引きでの比較はしていない。

ところが山の中身を見ると、ヒノキは「稼ぎ頭」という言葉から想像する姿とは、少し違う。

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値段は上、でも1haの蓄積はスギより少ない

ヒノキ人工林の蓄積(立木の幹の体積)は、合計で8.1億m³。1ha当たりに直すと315m³だ。スギは462m³、人工林全体の平均は352m³。ヒノキの山は、面積ではスギの6割弱(441.1万haに対して256.9万ha)、蓄積では4割(20.4億m³に対して8.1億m³)だ。

値段は上でも、1haの蓄積はスギより少ない計画対象森林の人工林(令和4年3月31日現在)1ha当たりの蓄積(m³/ha)スギ462m³ヒノキ315m³人工林全体352m³46年生以上(10齢級以上)の面積の割合スギ79.6%ヒノキ67.2%人工林全体74.7%10年生以下(1〜2齢級)の面積の割合スギ1.4%ヒノキ0.6%人工林全体1.7%
図2:出典:林野庁「森林資源の現況」(令和4年3月31日現在)の樹種別・齢級別の面積と蓄積(計画対象森林の立木地)。面積はスギ441.1万ha、ヒノキ256.9万ha、人工林全体1,007.7万ha。1ha当たり蓄積と割合は編集部の計算。

単価の差と、蓄積の差。この二つを掛け合わせたときに何が起きるかは、1haの立木の値打ちを示す公表資料がないので、ここでは計算しない。分かるのは、「値段が高い」と「山に木がたくさんある」は別の話だということだ。

51〜55歳だけがやたら多い

年齢構成のほうが、はるかに極端だ。ヒノキ人工林を5年刻みの齢級で見ると、最大は11齢級(51〜55年生)の36.7万ha。ここだけで全体の14%ある。そこから若いほうへ向かって、面積はなだらかに細っていく。

51〜55年生の山だけが、突出して多いヒノキ人工林の齢級別面積(万ha、令和4年3月31日現在)0204011.12346.0567891036.7111213141516171819205.421+齢級(1齢級=5年。11齢級=51〜55年生、17齢級以上=81年生以上)25年生以下 4.9%26〜45年生 28.0%46〜80年生 59.7%81年生以上 7.4%
図3:出典:林野庁「森林資源の現況」(令和4年3月31日現在)表4-1 人工林ヒノキの齢級別面積(計画対象森林の立木地、計256.9万ha)。割合は編集部の計算。この表は「立木地」だけが対象で、伐採跡地や未立木地は含まない。

1〜2齢級(10年生以下)は、合計で1.6万haしかない。全体の0.6%だ。年あたりに換算すると、51〜55年生の山が1年あたり約7.3万ha相当なのに対し、10年生以下は約0.16万ha。約46分の1になる。1学年300人の学校に、新入生が6〜7人しかいない計算だ。

念のため書いておくと、この表は「立木地」だけが対象で、伐採したばかりの跡地や、植えたばかりで立木として数えられない場所は含まれない。若い林が実際より少なく出ている可能性はある。ただ、3〜5齢級を見ても、4齢級は11齢級の9%、5齢級は16%。若い側が細い傾向は、表の定義の話では説明がつかない。

反対側はどうか。46年生以上(10齢級以上)は全体の67%。樹齢が46年を超えた山が、ヒノキ人工林の3分の2を占める。「銘柄ヒノキ」のように80年以上かけて育てる山(17齢級以上)は、19.1万ha、7.4%。蓄積では全体の9.0%だ。たとえば木曽谷の国有林では、80年生以上の人工林ヒノキに極印を打って「木曽ひのき」として売る取り組みを、平成25年度から行っている(中部森林管理局)。

どこにあるのか

面積の大きい順に、高知21.6万ha、岐阜20.9万ha、静岡14.1万ha、岡山13.8万ha、愛媛12.2万ha。上位5県で全国の32%、上位10県で53%になる(図4)。

上位10県で、全国のヒノキ人工林の53%計画対象森林のヒノキ人工林(令和4年3月31日現在)ヒノキ人工林の面積(万ha)高知県21.6万ha岐阜県20.9万ha静岡県14.1万ha岡山県13.8万ha愛媛県12.2万ha和歌山県11.9万ha広島県11.2万ha三重県10.9万ha熊本県10.9万ha鹿児島県9.1万haうち46年生以上の割合高知県78.9%岐阜県68.7%静岡県85.1%岡山県63.5%愛媛県75.3%和歌山県81.8%広島県56.2%三重県82.6%熊本県71.7%鹿児島県79.8%
図4:出典:林野庁「森林資源の現況」(令和4年3月31日現在)表4-1の都道府県別データ(人工林ヒノキ、計画対象森林の立木地)。46年生以上=10齢級以上。割合と順位は編集部の計算。

北海道は表の上でほぼゼロで、東北6県を合わせても3.9万ha、全国の1.5%にすぎない(福島が2.6万ha)。ヒノキは暖かい西側の木だ。同じ上位10県でも、静岡(85%)・三重(83%)・和歌山(82%)は46年生以上が8割を超え、岡山(64%)・広島(56%)は若い山の比率が相対的に高い。

ここまでは、すべて令和4年3月末の表から言えることだ。次の「森林資源の現況」が出れば、伐られずに残った山は齢級がひとつ繰り上がり、ピークは11齢級から12齢級に移る。表の中身は、価格のように毎年は動かない。

これから植えるヒノキは、どうなっているか

令和6年度の人工造林面積は、全樹種で3.5万ha(白書)。ヒノキだけの内訳は、今回確認した資料には出ていない。

成長の早い苗木の普及は、ヒノキではまだ小さい。成長量が対照個体のおおむね1.5倍以上とされる「特定苗木」の令和6年度の生産は、全体で751万本。内訳はスギ649万本、グイマツ88万本、ヒノキ13万本(8県)だった。

ヒノキの素材価格は、前年より3,000円高い。しかし価格表は毎年更新されるのに対し、齢級の表が動くのは5年に1度、齢級ひとつ分だ。ヒノキの話は、値段より年齢のほうが、ずっと動かない。

公表資料では確認できなかったこと

  • 全国のヒノキ人工林の再造林率。樹種別に主伐面積と再造林面積を並べた数字は、今回確認した白書のページには出ていない。以前の版にあった「全国平均で3〜4割」は、出典が確認できないため載せていない。
  • ヒノキの再造林にかかる費用とシカ対策費。以前の版にあった1ha当たりの金額は、出典が確認できないため載せていない。
  • 銘柄ヒノキ(木曽・吉野・東濃など)の立木価格が一般のヒノキの何倍か。地域別・銘柄別の立木価格は、今回の資料では確認できなかった。
  • 以前の版にあった「岡山が全国最大」「1ha当たり蓄積500m³前後」は、令和4年の林野庁の表では確認できなかった(面積1位は高知、1ha当たり蓄積は全国で315m³)。

ヒノキの値段が高いことと、ヒノキの山が若返っていないことは、どちらも統計に出ている事実だ。両者のあいだを結ぶ数字、たとえば樹種別の再造林率が見つかれば、この記事に足したい。

関連記事:スギの人工林についてはスギ人工林の記事、丸太価格の推移はヒノキ素材価格の記事とスギ素材価格の記事、日本全体の森林の構造は森林面積の記事にまとめた。

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この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

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