一貫作業システム:主伐〜植栽の連続施工で労務4〜6倍効率化

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結論先出し

  • 一貫作業システムは主伐・地拵え・植栽を連続施工する林業の省力化施業モデル。林業機械(ハーベスタ・フォワーダ・グラップル等)を共有することで、伝統的な分散施業と比べ労務4〜6倍効率化を実現。
  • 労務負担削減:従来27人日/ha → 一貫作業4〜6人日/ha(緩斜面)、6〜9人日/ha(中急斜面)。林野庁が「林業の成長産業化」の柱として積極推進中。
  • コンテナ苗(前D01記事)と組み合わせることで効果最大化。植栽期間の通年化+機械化+一貫作業で、再造林コストを30〜50%削減する事例も報告されている。
  • 背景には再造林率30〜40%という構造的課題(林野庁森林・林業白書)。本稿は再造林率向上に向けた一貫作業の役割と、低密度植栽(1,500〜2,000本/ha)・大苗・コンテナ苗を統合した「低コスト造林モデル100〜150万円/ha」の実装条件を整理する。

日本の林業は、戦後造林林の主伐期と再造林の局面に入っており、限定的な労働力で大規模な再造林を効率的に進める必要があります。「一貫作業システム」は、この課題に対する林野庁推進の主要な解決策です。本稿では一貫作業の仕組み・効果・実装方法・支援制度を体系的に整理します。なお関連用語として「主伐再造林一貫作業」「低コスト再造林」「省力化施業」などが用いられますが、本稿では林野庁の用語法に従い「一貫作業システム」に統一します。

目次

1. 再造林率という構造課題

一貫作業を理解する出発点は、日本の再造林率の低さです。林野庁森林・林業白書および都道府県の伐採届データを集約すると、主伐後に再造林(人工造林)が実施される割合は全国平均で30〜40%にとどまります。残り60〜70%は天然更新・放置・転用などに流れ、人工林資源の世代交代が進まない状況にあります。

項目 数値・状況 出典
全国の主伐面積(年間) 約4〜5万ha 森林・林業白書
うち人工造林(再造林) 約1.5〜2万ha 同上
再造林率(全国平均) 30〜40% 同上
再造林率(先進県:宮崎・大分等) 50〜70% 九州森林管理局
再造林率(低位県) 10〜25% 各県統計
再造林の平均コスト(従来) 200〜250万円/ha 林野庁低コスト造林資料
低コスト造林の目標値 100〜150万円/ha 同上

再造林率が低位にとどまる理由は収支構造の悪化です。木材価格は1980年比で約3分の1に下落し、主伐収益は経費を差し引くと残額が乏しい一方、再造林(地拵え・植栽・下刈り10年)には伝統工法で200〜250万円/haを要してきました。所有者が「植えても収支が合わない」と判断すれば、伐採跡地は放置されます。一貫作業システムは、この収支構造を改善し再造林インセンティブを回復するための中核技術と位置付けられます。

クイックサマリ:一貫作業の基本

項目 内容
定義 主伐・地拵え・植栽を連続施工する施業モデル
主要機械 ハーベスタ、フォワーダ、グラップル、植栽機械
従来施業の労務 約27人日/ha
一貫作業(緩斜面) 4〜6人日/ha
一貫作業(中急斜面) 6〜9人日/ha
労務削減率 67〜85%
標準植栽密度(低密度) 1,500〜2,000本/ha
従来植栽密度 3,000本/ha
再造林コスト目標 100〜150万円/ha
主要研究文書 林野庁「低コスト造林技術実証・導入促進事業」(H30)
関連技術 コンテナ苗、大苗、機械地拵え、低密度植栽

従来施業との比較

従来の林業は、主伐・地拵え・植栽を独立した工程として、それぞれ別の労務・機械で順次実施するのが一般的でした:

工程 従来施業 一貫作業
主伐 チェーンソー+ハーベスタ、別事業者 同左、ただし後工程と連続
残材処理 主伐とは別工程 主伐機械でグラップル等が連続実施
地拵え 主伐後数ヶ月〜1年後、別労務 主伐直後に同機械・同事業者
苗木輸送 別輸送、苗畑から現場 フォワーダ等で機械輸送
植栽 地拵え後数ヶ月、別労務 地拵え直後に連続実施
下刈り 植栽後別工程 同左(一貫作業の範疇外)
合計工期 1〜2年 数週間〜数ヶ月
労務(人日/ha) 27人日 4〜9人日

連続施工により失われる時間(事業者の段取り替え・苗木の二次輸送・地拵え跡の雑草侵入等)が圧縮され、結果として労務とコストの両方が縮小します。特に地拵え後すぐに植栽することで、雑草の再侵入による下刈り負担も軽減される副次効果があります。

一貫作業の機械化体系

一貫作業の実装には、林業機械の有機的組み合わせが必要:

1. ハーベスタ

立木を伐倒・枝払い・玉切りする多機能機械。1台で伝統的なチェーンソー作業者複数人分の生産性。日本国内ではコマツ・日立建機・キャニコム・ヤンマー等の機種が主流。本体価格は3,000万〜6,000万円帯で、林業事業体・森林組合の主力投資対象です。1日あたり生産量は緩斜面で30〜60m³、中斜面で20〜40m³が目安となります。

2. フォワーダ

玉切りした材を林道まで運搬する自走式運搬車。グラップル付きでレイアウト効率良く積み込み・運搬可能。10t積級が標準で、1日10〜20往復、80〜160m³の搬出能力を持ちます。一貫作業では空荷時に苗木コンテナを現場へ運ぶ「逆積み」運用が効果的です。

3. グラップル付建機

残材整理・地拵え・苗木運搬を兼用する多目的機械。専用グラップル(つかみ機構)を装着した油圧ショベル。0.25〜0.45m³級が標準で、機械地拵えでは1日0.3〜0.6haの作業量。残材を集積する「すじ置き」「ヤード集積」のパターンを地形に応じて選択します。

4. 機械地拵え機

イワフジロータリークラッシャー等(前D04記事)が、主伐残材を破砕しながら地拵えを実施。粉砕材は地表に残置することで土壌侵食抑制と養分供給の二重効果が得られます。1日0.4〜0.8ha、急斜面では0.2〜0.4haが目安。

5. 植栽機械(部分的)

北米・欧州では機械植栽が一部実用化されていますが、日本では現状ほぼ手植え。コンテナ苗(前D01記事)の活用で植栽労務を半減できます。1人日あたりの植栽本数は、裸苗で200〜300本に対し、コンテナ苗では400〜600本に達します。

6. 機械作業道(フォレストロード)

一貫作業の前提となるのが、林内に密に配置された機械作業道です。幅員2.5〜3.5m、間隔100〜150m、縦断勾配12%以下を目安に開設し、ハーベスタ・フォワーダの稼働範囲をhaあたり最大化します。作業道密度は欧州標準で30〜40m/haとされ、日本の人工林でも林野庁が同等水準を目標に整備を進めています。

一貫作業システムのフロー 主伐〜地拵え〜植栽を連続実施する施業モデル。 一貫作業システム フロー ①主伐 ハーベスタ チェーンソー ②残材整理 グラップル フォワーダ ③地拵え 機械地拵え機 人力併用 ④植栽 コンテナ苗 手植え 作業期間の違い 従来:主伐から植栽まで1〜2年 一貫作業:数週間〜数ヶ月 労務削減 従来:27人日/ha 一貫作業:4〜9人日/ha 主要機械の使い回し 同一機械が複数工程で活躍 機械稼働率最大化 事業者の連携 主伐・地拵え・植栽が同一 事業者の場合が増加 出典: 林野庁「低コスト造林技術実証・導入促進事業」H30, 関東森林管理局マニュアル
図1:一貫作業システム フロー(出典:林野庁・関東森林管理局資料)。

2. 工程別の機械投入時間と労務配分

労務削減効果を工程別に分解すると、削減幅は地拵えと植栽で大きく、主伐部分は機械化先行のため横ばいとなります。下表は緩斜面15度・面積1haを想定したモデル試算です。

工程 従来(人日/ha) 一貫作業(人日/ha) 機械稼働時間(h/ha)
主伐・造材 6〜8 2〜3 ハーベスタ8〜12h
残材整理・搬出 4〜6 1〜2 グラップル6〜10h
地拵え 8〜10 0.5〜1 クラッシャー4〜8h
苗木運搬 1〜2 0.2〜0.5 フォワーダ1〜2h
植栽 6〜8 1.5〜2.5(コンテナ苗) —(手植え)
合計 25〜34人日 5〜9人日 機械19〜32時間

ポイントは地拵え工程で発生する大幅削減です。従来は人力での残材整理+筋刈り・坪刈りが主流で、1ha当たり8〜10人日の重労働でしたが、機械地拵えではクラッシャー1台で半日〜1日で完了します。植栽もコンテナ苗と組み合わせれば1人日400〜600本ペースで進み、1,500〜2,000本/ha水準なら3〜5人日(複数人で実施すれば暦日1〜2日)で完了します。

3. 低コスト造林モデルとコスト試算

林野庁の低コスト造林ガイドおよび森林総合研究所の試算を統合すると、一貫作業+コンテナ苗+低密度植栽のフルパッケージで再造林コストは100〜150万円/haに抑えられます。下表は再造林(地拵え〜下刈り10年)の総コスト比較です。

項目 従来モデル 低コスト造林モデル(一貫作業)
地拵え 15〜30万円/ha 5〜15万円/ha(機械化)
苗木代(密度) 3,000本/ha × 100円 = 30万円 1,500本/ha × 80円 = 12万円
植栽労務 20〜25万円/ha 10〜15万円/ha(コンテナ苗)
下刈り(5〜7年想定) 80〜120万円/ha 40〜70万円/ha(低密度・大苗で回数減)
除伐・保育 30〜50万円/ha 20〜30万円/ha
段取り・諸経費 15〜25万円/ha 5〜10万円/ha(連続施工で削減)
再造林総コスト 200〜250万円/ha 100〜150万円/ha
削減率 40〜55%

これは適用条件で大きく変動しますが、適切に実装すれば再造林コストを大幅削減できる試算です。下刈り部分の削減は、低密度植栽と大苗(前D03記事)の組み合わせが効きます。低密度植栽(1,500〜2,000本/ha)は植栽本数自体を半減させ、大苗は植栽1〜3年で雑草を被圧する競争優位を確保するため、下刈り回数を従来の5〜7回から2〜3回に減らせる事例が報告されています。

4. 労務削減効果の詳細

森林総合研究所(FFPRI)・林野庁の研究データを統合すると、地形別の労務削減効果は次の通り:

地形 従来施業 一貫作業 削減率
緩斜面(〜15度) 27人日/ha 4〜6人日/ha 78〜85%
中斜面(15〜25度) 27人日/ha 5〜7人日/ha 74〜81%
急斜面(25〜35度) 27人日/ha 6〜9人日/ha 67〜78%
急峻地(35度以上) 27人日/ha 7〜12人日/ha 56〜74%

緩斜面・緩中斜面で効果が大きく、急斜面では機械投入が制約されるため削減効果が限定的。日本の林業現場の傾斜分布を考えると、平均的な労務削減効果は60〜75%程度と試算されます。

傾斜別の労務(人日/ha)比較 緩斜面ほど一貫作業の効果が大きい。 傾斜別 労務(人日/ha) 30 20 10 0 緩〜15° 27 5

中15〜25° 27 6

急25〜35° 27 7.5

急峻35°+ 27 9.5 従来 一貫作業 出典:林野庁・FFPRI 公開資料を基に概算

図2:傾斜別の労務(人日/ha)比較。緩斜面で削減率が最大。

5. コスト削減効果(再造林部分)

労務削減+機械稼働率向上による総合的なコスト削減:

項目 従来施業 一貫作業
主伐コスト 50万円/ha 50万円/ha(変わらず)
地拵え 15〜30万円/ha 機械地拵えで5〜15万円/ha
植栽(裸苗) 20〜25万円/ha コンテナ苗+効率化で12〜18万円/ha
輸送・段取り 分散コスト 統合で15〜25%削減
合計(再造林部分) 40〜70万円/ha 20〜40万円/ha
削減率 30〜50%

これは適用条件で大きく変動しますが、適切に実装すれば再造林コストを大幅削減できる試算です。

6. 実装の前提条件

一貫作業を成功させるための前提条件:

  1. 事前計画の徹底:主伐前から植栽計画を確定、苗木手配・機械稼働計画を準備
  2. 機械投入が可能な地形:緩斜面〜中斜面が望ましい
  3. 苗木の事前確保:コンテナ苗の早期発注、現場での仮保管設備
  4. 事業者の継続性:主伐・地拵え・植栽が同一事業者または密接連携の事業者
  5. 機械の調達:所有または安定した借用
  6. 労働力の安定:技能労働者の確保
  7. 道路・林道整備:機械搬入・苗木搬入の経路
  8. 苗木仮置き場(モイストデポ):日射・乾燥を避けた一時保管点を作業道沿いに設置
  9. 気象連動の段取り:豪雨予報時は地拵え〜植栽を前倒し、極暑期は早朝シフト

7. 地域別の実装事例

地域 事例 特徴
北海道 道有林・国有林 大面積緩斜面、機械化容易、再造林率高位
東北 岩手・秋田・福島 急斜面多、限定的実装、ウインチ機の導入進行
関東 茨城森林管理署マニュアル化 急傾斜地での標準化試行、関東森林管理局が公開
中部 長野・岐阜 急峻地多、コンテナ苗主体の植栽切り替え
近畿・中国 奈良・島根・鳥取 小規模分散、森林組合主導の連携実装
九州 大分・宮崎・熊本 低コスト造林モデル先行、再造林率全国最高水準
四国 高知・愛媛 急峻地で部分的実装、自伐型林業との並列

九州(特に大分・宮崎)は早くから低コスト造林モデルを実装してきた地域で、コンテナ苗・低密度植栽・一貫作業の三点セットを標準化しています。再造林率も全国平均を大きく上回り、50〜70%の県が出てきています。一方、東北・四国の急峻地では機械投入の制約が大きく、ウインチ付ハーベスタや架線系(タワーヤーダ)との組み合わせが模索されています。

8. 関連技術との組み合わせ

一貫作業の効果を最大化するため、以下の関連技術と組み合わせるのが標準:

  • コンテナ苗(前D01記事):植栽期間通年化、植付効率向上(1人日400〜600本)
  • 大苗植栽(前D03記事):下刈り回数を5〜7回から2〜3回に削減
  • 機械地拵え(前D04記事):地拵え労務を1/8〜1/10に削減
  • 低密度植栽(前D05記事):1,500〜2,000本/haで苗木代・植栽労務・下刈り全てを削減
  • 森林簿のスマート化:施業計画の精緻化、伐採区画の最適化
  • LiDAR森林計測(前A05記事):事前の林分情報取得、機械作業道の最適配置
  • 収穫予測モデル:主伐〜次回主伐の長期収支シミュレーション

これらの統合的活用が「スマート林業」の中核要素となります。林野庁は「林業イノベーション推進総合対策」の中で、これらの技術パッケージを地域単位で導入する事業体を補助対象としています。

9. 支援制度

制度 所管 適用範囲
低コスト造林技術実証・導入促進事業 林野庁 一貫作業の試験導入
森林整備事業 林野庁 植栽・育林の補助
林業・木材産業循環成長対策 林野庁 機械整備の支援
下刈り省力化推進事業 林野庁・都道府県 機械化施業
森林環境譲与税 総務省 市町村事業
都道府県の独自補助 都道府県 地域別の追加支援
林業労働力確保支援 林業労働力協会・都道府県 緑の雇用、機械操作研修

10. 課題と限界

一貫作業の普及には複数の課題が残ります:

  1. 初期投資:林業機械の導入コストが大きい(ハーベスタ単独で3,000〜6,000万円、フルセットで1〜2億円)
  2. 事業計画の整合:主伐〜植栽の事業者連携が困難な地域
  3. 急傾斜地での機械投入制約:日本の林業地の多くが急斜面
  4. 労働力確保:機械操作の技能労働者不足。林業労働力協会の試算では、林業従事者は約4万人で30年前の3分の1
  5. 苗木の安定供給:コンテナ苗の地域内生産体制
  6. 木材価格の低位:投資回収への影響
  7. 所有者合意形成:分散所有・不在村所有による施業区画のまとまりにくさ

これらに対し、林野庁・各都道府県・林業労働力協会が支援制度・人材育成・地域連携の体制整備を継続中です。とくに森林経営管理制度(2019年施行)に基づく市町村への森林集積は、一貫作業に必要な「まとまった事業地」の確保に効きはじめています。

11. 北米・欧州との比較

項目 日本 北米(カナダ・米北西部) 北欧
機械化度 最高
機械植栽 限定的(手植え主流) 普及 標準
地形 急斜面多 緩斜面多 緩斜面多
事業規模 小〜中 大規模 大規模
労務 4〜9人日/ha 1〜3人日/ha 1〜3人日/ha
作業道密度 15〜25m/ha(目標30〜40m/ha) 20〜30m/ha 30〜40m/ha
植栽密度 1,500〜3,000本/ha 1,000〜1,500本/ha 1,800〜2,500本/ha

地形の制約は大きいが、機械化のポテンシャルは依然存在。今後10〜20年で日本の機械化度・労務効率がさらに向上する見通しです。北欧では植栽機械(Bracke、M-Planter等)が標準装備で、1人日あたり600〜1,000本のペースを実現しています。日本の急峻地では同水準は難しいものの、緩斜面・緩中斜面に限れば北欧水準に近づける余地があります。

12. 気候変動・極端気象への適応

気候変動下での極端気象(豪雨・台風・極暑)の頻度増加は、一貫作業の段取りにも影響:

  • 夏季極暑期の作業困難化(労務安全・苗木乾燥の両方)
  • 豪雨後の路面・斜面の悪化(作業道補修コストの増加)
  • 植栽期間のシフト(春先の前倒し、秋季植栽の拡大)
  • コンテナ苗による植栽期間の柔軟化(活着率を維持しつつ通年植栽が可能)
  • 機械作業道の排水構造改良(横断溝・洗い越し配置の見直し)

これらに対応するため、より柔軟な施業スケジューリング・気象連動した機械稼働計画が求められます。コンテナ苗の植栽期間柔軟性は、この適応にも寄与します。森林総合研究所では、温暖化による植栽好適時期のシフト(特に北日本での秋植え拡大)を分析する研究も進められています。

13. 効果検証の指標

一貫作業の効果を現場で検証するための指標を、事業者・行政の双方で標準化することが重要です。代表的な指標は次の通り:

カテゴリ 指標 目標値の例
労務 合計人日/ha 5〜9人日/ha
機械 機械稼働時間/ha 20〜35時間/ha
コスト 再造林総コスト 100〜150万円/ha
工期 主伐〜植栽完了 3ヶ月以内
苗木 植栽活着率 90%以上
初期成長 植栽3年目樹高 1.5〜2.0m
下刈り 5年累計回数 2〜3回
再造林率 主伐区画の再造林比率 地域目標70%以上

これらの指標を事業ごとに記録・公表することで、地域内のベンチマーク比較が可能になり、一貫作業の改善サイクルが回り出します。林野庁の「森林・林業基本計画」でも、こうしたPDCAの徹底が重視されています。

14. 採算性シミュレーション(収支ケース別)

一貫作業の経済効果を、主伐収益と再造林コストの収支で比較します。下表は1ha当たりの試算で、樹齢50年のスギ人工林、立木価格5,000円/m³、蓄積400m³/haを前提にしています。

ケース 主伐収益 再造林コスト 収支差
従来工法(裸苗・3,000本/ha) +200万円/ha −230万円/ha −30万円/ha
一貫作業のみ導入 +200万円/ha −170万円/ha +30万円/ha
一貫作業+コンテナ苗+低密度 +200万円/ha −130万円/ha +70万円/ha
フルパッケージ+大苗 +200万円/ha −110万円/ha +90万円/ha

主伐収益と再造林コストの収支差がプラスに転じるかどうかが、所有者の再造林意思決定を左右します。従来工法では収支マイナスとなり「植えても損」が常態化していましたが、フルパッケージ導入により所有者が再造林に踏み切る経済的動機が回復します。これが再造林率向上の根本的なドライバーになります。なお実際には木材価格・搬出距離・補助金活用度で大きく変動し、補助金(森林整備事業等)を含めれば収支差はさらに改善します。

15. リスク管理と契約上の留意点

一貫作業は連続施工であるがゆえに、工程のどこかで遅延・トラブルが発生すると全体が連鎖的に影響を受けます。事業者・所有者間の契約・体制整備で備えるべき主要リスクを整理します。

  • 苗木の納期遅延:コンテナ苗の生産は気象に左右されるため、納期遅延時の代替手段(隣接苗畑からの融通、植栽時期の繰り下げ)を契約に盛り込む。
  • 機械故障:ハーベスタ・クラッシャー等の故障時のバックアップ機械、修理対応時間を事業計画に織り込む。
  • 気象トラブル:豪雨・台風による作業道崩壊、連続施工の中断リスク。気象予報連動の予備日を設定。
  • 労働災害:機械作業の集中による事故率上昇。労働安全衛生法・林業労働安全衛生規則の遵守、KY活動の徹底。
  • 所有者間調整:分散所有地での施業区画統合における合意形成、利益配分ルールの事前明確化。
  • 活着率の悪化:植栽後の干ばつ・獣害(シカ食害)による再植栽コスト発生。獣害柵設置と一貫作業の組み合わせを標準化。

これらのリスクを事業者単独で抱え込むのは負担が大きく、森林組合・市町村・県の支援体制と連携した地域単位のリスクシェアリングが現実的です。森林経営管理制度に基づく市町村の関与は、こうしたリスク分散の枠組みとしても機能し始めています。

16. 実装ステップ(事業者向けチェックリスト)

  1. 主伐の1〜2年前に再造林計画を策定し、苗木数量を地元苗木業者と内示契約。
  2. 主伐区画の地形・作業道密度・搬出方式(車両系か架線系か)を確定。
  3. 同一事業体または連携事業体で主伐〜植栽の年間スケジュールを統合。
  4. 主伐着手と並行して、コンテナ苗の生産・出荷スケジュールを確定。
  5. 主伐完了後、グラップル・クラッシャーをそのまま投入し、残材処理〜地拵えを連続実施。
  6. 地拵え完了直後(数週間以内)に植栽を実施し、雑草侵入前に活着を確保。
  7. 植栽後3年は活着率と成長量を年次モニタリングし、必要に応じて補植。
  8. 下刈りは大苗・低密度・除草マットの組み合わせで省力化、5年累計2〜3回を目標。
  9. 事業終了後、労務・コスト・活着率を記録し、地域の標準値と比較。

よくある質問(FAQ)

Q1. 一貫作業はどのくらい労務削減できますか

A. 緩斜面で78〜85%、中斜面で74〜81%、急斜面で67〜78%。地形・規模で大きく変動しますが、最低でも50%以上の削減効果が期待できます。

Q2. 中小規模事業者でも実装可能ですか

A. 機械の自社所有はハードルが高いが、機械リース・近隣事業者との連携で対応可能。森林組合等の広域事業体での実装が現実的解です。

Q3. 急斜面ではどう対応しますか

A. ウインチ付ハーベスタ、急斜面対応機械の活用、または部分的人力作業との組み合わせ。茨城森林管理署のマニュアルが急傾斜地での実装事例として参照されます。架線系(タワーヤーダ)と組み合わせる事例も増えています。

Q4. 機械植栽の日本での実装は

A. 限定的。北米・欧州で実用化されている機械植栽機は日本の地形・コンテナ苗規格に最適化されておらず、本格実装はまだです。研究段階で複数の試験が進行中。

Q5. 主伐収益が再造林コストを賄えるか

A. 木材価格次第ですが、一貫作業による再造林コスト削減で、収支均衡可能性が拡大しています。特に大径材生産+低密度植栽との組み合わせで、収益性が改善します。再造林コストを150万円/ha以下に抑えられれば、一般的な主伐収益(200〜400万円/ha)の範囲内で再造林を完結できる試算です。

Q6. 再造林率を上げるには何が必要ですか

A. 一貫作業によるコスト削減に加え、所有者への情報提供、森林経営管理制度による集積、補助制度の活用が三位一体で必要です。九州の先進県では市町村・森林組合・苗木業者・事業体の連携体制が機能しており、再造林率50〜70%を実現しています。

Q7. 苗木の事前確保はどう進めますか

A. コンテナ苗は生産に1〜2年を要するため、主伐の1〜2年前に苗木業者と数量・樹種・規格を確定する必要があります。地域内の苗畑容量を超える場合は、隣接地域からの調達・複数年契約での平準化が選択肢になります。

Q8. 一貫作業と自伐型林業は両立しますか

A. 規模と機械投資の前提が異なります。自伐型は小型機械・小面積を継続施業する形態で、一貫作業(中〜大型機械・連続大面積)とは別の選択肢です。両者を地域内で共存させ、地形・所有形態に応じて使い分ける運用が現実的です。

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