東京・日本橋本町。製薬会社の本社が集まる街区で、地上18階・高さ約84mのオフィスビルが仕上げ段階に入っています。日本橋本町三井ビルディング &forest――三井不動産が事業主、竹中工務店が設計施工を担う、国内最大かつ最高層の木造賃貸オフィスビルです。2024年1月着工、2026年9月竣工予定。木造の高層建築が「実験」から「賃貸市場の商品」へ移った地点を示す建物になります。
まずは基本データ
| 所在地 | 東京都中央区日本橋本町一丁目 |
|---|---|
| 用途 | 賃貸オフィス(店舗等を併設) |
| 着工 / 竣工予定 | 2024年1月 / 2026年9月 |
| 規模 | 地上18階/高さ 約84m/延床面積 約28,000m² |
| 構造 | 木造混構造(ハイブリッド木造) |
| 耐火技術 | 竹中工務店が開発した木造耐火技術を国内で初適用 |
| CO2削減 | 躯体部分で建築時CO2排出量を一般的なS造比 約3割削減見込み |
| 事業主 / 設計施工 | 三井不動産 / 竹中工務店 |
| 旧名称 | (仮称)日本橋本町一丁目3番計画 |
「日本一高い木造ビル」の位置づけを整理する
木造高層建築の記録は、条件のつけ方で答えが変わります。整理しておきます。
| 純木造として最高 | 大林組Port Plus(横浜・2022年)地上11階・高さ約44m。柱梁を含む主要構造部が木のみ |
|---|---|
| 木造混構造として最大・最高層 | 日本橋本町三井ビルディング &forest 地上18階・高さ約84m。木と鉄・RCを組み合わせる |
| 耐火木造の商業施設として初の高層 | HULIC &New GINZA 8(銀座・2021年)地上12階 |
&forestは「純木造」ではありません。木造混構造、つまり主要構造部材に木材を活用しながら、鉄骨やRCと組み合わせて高さを稼ぐ方式です。純木造で18階・84mを成立させるのは現在の技術では非常に困難で、Port Plusの11階・44mがその最前線にあたります。一方で賃貸オフィスとして市場に出すには、賃料が取れる床面積と階数が要る。混構造は、その事業要求と木造化を両立させるための現実解です。
国内初の木造耐火技術
18階建てのオフィスビルは、最上位の耐火性能が求められます。竹中工務店はこのプロジェクトで、同社が開発した木造耐火技術を国内で初めて適用しました。
同社は2013年の大阪木材仲買会館で耐火集成材「燃エンウッド」を実用化し、2021年のHULIC &New GINZA 8で12階建てへ展開してきました。3階建て、12階建て、そして18階建て。10年余りをかけて段階的に高さを更新してきた技術の系譜が、ここに到達しています。この積み上げ方は、木造高層化が一足飛びには進まないこと、そして一棟ごとの実績が次の一棟の前提条件になることをよく示しています。
躯体CO2を約3割削る
環境面の効果として公表されているのは、一般的な鉄骨造オフィスビルと比較して、躯体部分の建築時CO2排出量を約3割削減できる見込みという数字です。
この「建築時」という限定が重要です。建物のライフサイクルCO2は、運用時(空調・照明などのエネルギー)と、建設・解体時(材料製造と工事)に大別されます。ZEB化などで運用時の排出を削っていくと、相対的に建設時の排出――いわゆるエンボディドカーボン――の比重が上がる。鉄とセメントは製造時のCO2排出が大きい材料ですから、そこを木に置き換える効果が直接効いてきます。
加えて木材は、大気中のCO2を炭素として固定したまま建物内に貯蔵します。都市に木造ビルを建てることを「都市の森林(Urban Forest)」と呼ぶのは、この炭素貯蔵機能を指した表現です。ただし効果が成立する条件は、伐採後に確実に再造林されること。木造化の環境価値は、建物側だけでは完結しません。
賃貸オフィスであることの意味
この建物が賃貸オフィスであるという点は、見落とされがちですが決定的です。自社ビルや公共建築であれば、多少コストが上がっても環境価値や象徴性で決裁できます。賃貸オフィスはそうはいきません。テナントが賃料を払って選ぶ商品であり、収支が合わなければ成立しない。
近年、大企業のオフィス選定では、入居ビルの環境性能が自社のサプライチェーン排出量(Scope3)に算入されることから、環境認証や低炭素性が実際の判断材料になってきました。木造オフィスは、その要求に対して分かりやすい答えを提示できます。木造化が「善行」ではなく「賃料の取れる差別化要素」として位置づけられたこと――&forestが示すのは、そういう市場の変化です。
よくある質問
Q. 日本一高い木造ビルになりますか?
木造混構造としては国内最大・最高層になります。ただし主要構造部を木のみで構成する純木造としては、大林組Port Plus(地上11階・高さ約44m)が国内最高です。比較する際は「純木造か混構造か」の区別が必要です。
Q. いつ完成しますか?
2024年1月着工、2026年9月竣工予定として公表されています。本記事は公表資料にもとづく計画値を記載しており、実際の竣工時期や仕様は変更される可能性があります。
Q. 木造にするとCO2はどれくらい減るのですか?
公表されているのは、一般的な鉄骨造オフィスビルと比べて躯体部分の建築時CO2排出量を約3割削減できる見込みという数字です。運用時を含むライフサイクル全体の値ではありません。

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