土場に積んだ丸太を、トラックの荷台へ。この積み込みを担うのがトラッククレーン(ユニック)です。林業事業体が必ず一台は持っている機械であり、これを操作するには小型移動式クレーン運転技能講習の修了証が要ります。学科13時間+実技7時間の20時間・3日間。玉掛け技能講習とセットで受けるのが定番です。
5トンと1トン、二つの境目
移動式クレーンの資格は、つり上げ荷重によって三段階に分かれます。
5トン以上なら移動式クレーン運転士免許――安全衛生技術試験協会の国家試験です。1トン以上5トン未満なら技能講習。1トン未満なら特別教育で足ります。
「小型移動式クレーン」という名称は、この真ん中の区分(つり上げ荷重1トン以上5トン未満)を指す法令用語です。林業で使うトラッククレーンは2〜3トン級が主流なので、ちょうどこの区分にあたります。
なお、クレーンを運転する資格と、荷を掛ける資格は別です。運転が小型移動式クレーン運転技能講習、荷掛けが玉掛け技能講習。一人で積み込みを完結させるには両方が要ります。緑の雇用で同じ年次に両方が配置されているのは、そのためです。
20時間の中身――力学と原動機に6時間
学科13時間の構成が特徴的です。「小型移動式クレーンに関する知識」6時間で構造・安全装置・作業方法を扱い、「原動機及び電気に関する知識」3時間で油圧回路と電気系統を、「運転に必要な力学に関する知識」3時間で荷重・モーメント・安定度を学びます。
力学で中心になるのは「作業半径と定格荷重の関係」です。移動式クレーンは、ブームを伸ばして遠くを吊るほど、吊れる重さが小さくなります。これは転倒モーメントの問題で、車体の支点からの距離が長くなるほど、同じ重さでも倒れやすくなるからです。運転席には作業半径ごとの定格荷重表が貼ってあり、これを読めることが必須になります。
もう一つがアウトリガーです。車体から張り出して接地させる支柱で、これを最大に張り出さなければ定格荷重表どおりの能力は出ません。「狭いから片側だけ出す」「敷板を入れずに軟らかい地面に直接置く」――移動式クレーンの転倒災害は、ほぼこのどちらかです。
林業の土場という特殊な環境
教習所の実技は、水平な舗装路面で行われます。しかし林業の土場は違います。
- 地面が軟らかい――林道の待避所や作業土場は未舗装で、雨のあとはアウトリガーが沈む。敷板の携行が必須になります
- 傾斜がある――完全に水平な土場は少ない。車体の水平出しに時間をかける必要がある
- 荷の重さが読めない――丸太の質量は樹種と含水率で変わる。生のスギ材は乾材より重い
- 上方に支障物がある――残存木の枝、林道沿いの電線。ブームを立てる前に頭上を見る
- 狭い――アウトリガーを最大張り出しできない場面が多く、その場合は定格荷重が大きく下がる
とくに最後の点は重要です。アウトリガーを中間張り出しにすると、定格荷重表は別の(小さい)値に切り替わります。最大張り出し時の数字を覚えたまま作業すると、能力を超えた荷を吊ることになる。
受講資格・費用と、免除
受講に資格制限はありません。時間の短縮は、すでに関連資格を持っている場合に効きます。
| 保有資格 | 受講時間の目安 |
|---|---|
| なし(全科目受講) | 20時間・3日間 |
| 建設機械施工管理技術検定合格者など | 17時間程度 |
| クレーン・デリック運転士免許保有者など | 16時間程度 |
受講料は2〜4万円が目安。玉掛けとのセット講習なら5日前後でまとめて取れます。実施しているのはコマツ教習所、コベルコ教習所、キャタピラー教習所、日本クレーン協会、各地のクレーン学校など、都道府県労働局長の登録を受けた教習機関です。
なお、実技には実機が要るため、教習所まで通う必要があります。林業機械の特別教育と違い、山の中で開催されることはまずありません。緑の雇用の研修では、支援センターが日程を押さえてくれます。
「木材を扱うクレーン」の落とし穴
最後に、林業ならではの論点を一つ。トラッククレーンのフックにグラップル(つかみ具)を付けて丸太をつかむ作業は、玉掛けではありません。ワイヤロープを掛けていないからです。
しかし、グラップルで挟んだ荷が落ちる危険は玉掛けと変わりません。つかみ方が浅ければ滑り落ちますし、旋回中に振れれば人に当たります。資格の区分と、実際の危険は必ずしも一致しない。法令が求める資格を揃えたうえで、その先を現場で埋めていくしかありません。
林業の労働災害では、伐木作業中の死亡が全体の約7割を占めます。積み込み中の災害は数としては多くありませんが、起きれば重篤になります。土場は「山を出たあと」の場所で、気が緩みやすい。20時間の講習の価値は、そこにあります。

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