製材工場数4,400社|1980年比で1/4に減少した産業集約

製材工場数4,400社 | Forest Eight

日本の製材工場は、2023年時点で約4,400社(農林水産省「木材統計」)。1980年には約17,000社あったので、40年あまりで実に4分の1にまで減りました。消えた工場は約12,600社、年あたり300社ペースの純減です。ただ、これは単なる衰退ではありません。製材出力(生産量)は3分の1に縮みましたが、1工場あたりの平均出力はむしろ約1,700m³から約2,200m³へ拡大しています。少数の大きな工場に生産が集まり、たくさんの小さな工場が静かに姿を消した──「集約」という産業の地殻変動が、この数字の裏で起きてきました。

カンナくずのマクロ撮影
木材加工のカンナくず (Photo by Chuck Danger on Unsplash)
目次

40年で工場数1/4──三つの淘汰の波

工場数の減り方を時期で追うと、大きく三つの波がありました。第1波は1980年代後半、バブル期の住宅着工急増と大型製材所の新設競争で中小工場が淘汰された局面。第2波は1990年代後半〜2000年代前半、住宅着工の減少と輸入材シェア拡大による全方位的な廃業局面。第3波は2010年以降で、合板用材への転換、JAS構造材化、人工乾燥(KD)工程の必須化といった設備投資の負担増に、小さな工場が対応しきれず退出した局面です。

製材工場数の推移1980-2023 1980年から2023年までの製材工場数推移を折れ線で示す 製材工場数の推移1980-2023(千社) 18 14 10 6 2 1980 1990 2000 2010 2020 2023 17,000社(1980) 9,200社(2000) 4,400社(2023) 40年で約12,600社が廃業・統合。年300社規模の純減ペース。
図1:製材工場数の推移1980-2023(出典:農林水産省「木材統計」歴年版)

6%の工場が出力の55%──二極化する製材業

いま残る4,400社の中身を見ると、構造がはっきり二つに割れています。年産1万m³以上の大型工場は約260社で全体の6%にすぎませんが、出力シェアでは約55%を握ります。一方、年産1,000m³未満の小規模工場は約2,650社で工場数の60%を占めながら、出力はわずか7%。大型と小規模の1工場あたり出力の差は実に40倍ほどに開いており、「数では多数派だが生産はごくわずか」という小規模工場の姿が浮かびます。

規模別工場数と出力シェア 大型・中規模・中小規模・小規模工場の工場数と出力比率を比較 製材工場の規模別構成(2023) 工場数構成 大型 6%(260社) 中規模 17%(750社) 中小規模 17%(740社) 小規模 60%(2,650社) 出力シェア 大型 55% 中規模 25% 中小13% 大型工場は数で6%だが出力で55%。小規模工場は数で60%だが出力で7%。
図2:製材工場の規模別構成2023(出典:農林水産省「木材統計」、林野庁「木材産業の動向」)

大型工場の主役は、住宅構造材中心のJAS製材所、合板原木と兼業する大型工場、集成材・LVL併設工場の3タイプ。宮崎・鹿児島・大分・北海道・岩手・秋田に集まり、年産2万〜10万m³級の超大型工場も珍しくありません。一方、小規模工場の多くは、東濃・尾鷲・吉野といった銘柄材の伝統製材や、造作・建具・家具向けの特殊材製材といったニッチに生きています。出力シェアは小さくても、地域の工務店供給や付加価値市場では替えのきかない存在で、家族経営から従業員10名ほどの規模が一般的です。

なぜ大きくなければ続かないのか

1工場あたりの平均出力は40年で約1,700m³から約2,180m³へ上がりました。ただし、これは大型工場が出力を一気に伸ばした結果で、中小規模工場の生産性はほぼ横ばいです。年産1万m³以上の大型工場の平均出力は、約8,000m³から約20,000m³へと2.5倍に拡大しました。

背景にあるのは設備投資のハードルです。自動製材ラインやコンピュータ制御のカットソー、KD材需要に対応する乾燥設備、JAS構造材やプレカット材の規格化対応──これらは数億円から数十億円規模の投資になります。一定以上の規模でなければ採算が合わないため、中小工場にとって参入・更新の壁が一気に高くなりました。「大きくなければ続けられない」という構造が、集約を後押ししてきたわけです。

市場の地殻変動が集約を駆動した

工場の集約は、それ単体で起きたのではなく、川下の市場構造の変化と連動しています。新築住宅着工は1990年の170万戸から2023年の80万戸へと半減し、製材の最大顧客である住宅構造材市場そのものが縮みました。同時に、集成材・LVL・CLTといったエンジニアードウッドが台頭。構造用集成材の生産は1980年の約30万m³から現在200万m³前後へと大きく伸び、製材の代替・補完として住宅市場に食い込みました。

さらに決定的だったのがプレカットの普及です。かつて5%未満だったプレカット率は、いまや在来工法の9割超。住宅向け構造材は事実上、プレカット工場を経由するのが標準になりました。製材所は「丸太→製材→大工施工」という単線の流れから、プレカット工場や集成材工場への一次加工材供給者へと立ち位置が変わり、安定した品質と供給力を問われるようになったのです。プレカットに対応できない小さな製材所が流通から外れていったのも、集約を速めた一因でした。

これからの20年

集約はまだ続きます。年あたりの純減ペースは2010年代の約200社から2020年代は約150社へ緩んだものの、高齢経営者の引退による自然廃業の圧力は根強く、2040年頃には3,000社台前半まで減る可能性があります。一方で大型工場は拡大を続け、出力シェアは60%を超える見通しです。

ただ、すべてが大型に飲み込まれるわけではありません。生き残るのは、輸出にも対応する超大型工業製材、地域工務店を支える中堅製材、吉野杉や尾鷲ヒノキのような銘柄材専門製材、建具・楽器・桶樽などの特用製材、残材をエネルギーに変えるバイオマス連動製材──おおむねこの5タイプに収斂していくとみられます。なかでも近年は、対中国・韓国・台湾向けのスギ製材輸出が国内市場の縮小を相殺する戦略として広がりつつあり、国内依存からの脱却が産業構造の次の局面を形づくりそうです。

関連記事

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

ハウスメーカーで住宅の構造を担当したのち、林業の世界へ。林業・木材・建築の3領域を横断する視点で、Forest Eight の記事を編集しています。

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次