製材工場の規模別構成は、日本の木材産業がどこまで集約されたかをいちばん鮮明に映す指標です。2023年時点で年産10,000m³以上の大型工場は約260社(全体の6%)にすぎませんが、製材出力では全体の55%を占めます。逆に1,000m³未満の小規模工場は約2,650社と数では多数派なのに、出力シェアは1割に届きません。この「数と出力のねじれ」がどう生まれ、どこへ向かうのか。年代別シェア・設備投資・地域差の3つの角度から見ていきます。
大型6%が出力の55%を生む
まず現在地から。年産1万m³以上の大型工場260社は工場数の6%ですが出力の55%を担い、対する零細工場は工場数の34%を占めながら出力では1.5%。生産性で見れば両者の差はおよそ10倍にもなります。下のグラフが、その偏りを左右で並べたものです。
大型工場の典型は、宮崎・大分の九州ベルト、北海道苫小牧・釧路の合板兼業工場、岡山県真庭の集成材兼業工場など。中国木材グループ、銘建工業、住友林業系列といった顔ぶれで、新設投資は30〜100億円、従業員50〜200人、KD設備や自動製材ラインを完備するのが標準です。一方の小規模工場は、東濃ヒノキ・尾鷲ヒノキ・吉野杉といった銘柄材専門や、造作・建具・家具向けの特殊製材で生き残っています。出力は小さくても、銘柄材市場や伝統建築では欠かせない存在です。
30年で「中央が抜けた」
30年の推移を追うと、ひとつのはっきりした形が浮かびます。大型のシェアは1990年の28%から2023年の55%へ倍増。逆に中小(1,000〜3,000m³)は28%から13%へ半減しました。両端が太り、真ん中が痩せる——いわゆるM字型の空洞化です。
なぜ中央層だけが抜けたのか。理由は大きく3つあります。ひとつはKD乾燥設備(1〜3億円)や自動製材ライン(2〜5億円)といった投資が、年産5,000m³以上でないと回収できないこと。もうひとつは、銘柄材や地域工務店向けのニッチなら年産500〜1,000m³で十分まわること。そして家族経営から法人化する移行コストが、ちょうどこの規模の事業承継期に重くのしかかること。上にも下にも引っ張られて、中規模が薄くなっていったわけです。
大型化を後押ししたJAS構造材化
規模分化を加速させた最大の要因が、構造材のJAS化でした。長期優良住宅や性能表示住宅の普及で、構造材は含水率・寸法精度・等級表示を基準どおり管理することが事実上の市場標準に。これに応えるにはKD材化・機械等級区分・JAS認証が必須で、いずれも一定規模がないと採算に乗りません。実際、新築住宅向け構造材の8割以上がすでにKD材で、稼働率を確保するには年産5,000m³以上の処理量が要ります。プレカット普及率も93%に達し、プレカット工場が求める安定ロットに応えられる大型工場へと、販路が集中していきました。
規模が大きいほど収益も厚くなります。原木をロットで買い叩く交渉力、寸法管理による歩留まり改善、チップ・端材の量産販売、KD・プレカット内製による加工マージン——これらが重なって、大型工場の営業利益率は中小を上回ります。規模拡大がさらなる規模拡大を呼ぶ、自己強化のループです。
地域でくっきり分かれる分布
大型工場の集積地は、原木供給力と物流の両方が揃う九州・東北・北海道に偏ります。九州だけで全国の大型工場の約27%、東北とあわせると半数近くを占めます。下のグラフのとおりです。
反対に近畿(京都・奈良・和歌山)や四国は、銘柄材専門の中小工場が地域木材業の主役。吉野スギや尾鷲ヒノキといった銘柄を守る役割が、規模より優先されてきた地域です。集約一辺倒ではなく、土地の木材文化に応じて構造が分かれているのが日本らしいところと言えます。
これからの行方
今後10〜20年は、大型工場の拡大と中小層の緩やかな縮小が続く見込みです。大型は260社から300社規模へ、出力シェアは6割超へ。欧州の大型製材所が年産30万〜50万m³級(最大100万m³級)であることを思えば、日本でも2030年代に年産20万m³級が現実味を帯びます。ただし1県の素材生産量を圧迫する規模になると、広域集荷の物流コストが拡大の天井になるでしょう。
銘柄材・特殊用途に特化した小規模層は2,500社ほどで底を打ち、安定状態へ。問われるのは中規模1,000〜3,000m³層で、規模を上げて準大型へ進むか、銘柄ニッチへ下りるか——この選択が、産業の最終的な形を決めることになります。

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