流木災害|山地崩壊と河川インフラ被害

流木災害 | 樹を木に - Forest Eight

2018年7月豪雨(西日本豪雨)では推計約30万m³の流木が河川・海域に流出し、橋梁損壊・河道閉塞・港湾機能阻害を引き起こしました。林野庁・国土交通省の集計によれば、平成29年九州北部豪雨(2017年)では約21万m³、令和元年東日本台風(2019年)では約20万m³の流木が発生し、流木災害は近年の豪雨災害で常態化しています。本稿では、流木災害の発生メカニズム、量的規模、河川インフラ被害、対策技術を、発生量・被害額・対策予算の3軸から解剖します。

この記事の要点

  • 流木災害の年間発生量は近年豪雨1回で20万m³規模。2018年西日本豪雨30万m³、2017年九州北部豪雨21万m³、2019年東日本台風20万m³と災害ごとに大規模発生。
  • 流木による橋梁損壊・河道閉塞は、河川流下能力を最大50%低下させ、堤防越流・氾濫被害を増幅させる。橋梁・港湾の被害額は1災害で数百億円〜2,500億円規模。
  • 対策は「発生抑制」(治山事業による山腹崩壊防止)と「捕捉」(流木止工・スリットダム)の2軸。流木止工は全国で年間約100基規模が新設、累計2,000基以上が稼働中。
  • 事前対策(治山・流木止工)への投資1に対し被害軽減効果は5〜10倍と試算。出典:林野庁、国土交通省、内閣府防災、土木学会。
目次

クイックサマリー:流木災害の基本数値

指標 数値 出典・備考
2018年西日本豪雨流木量 約30万m³ 林野庁・国交省推計
2017年九州北部豪雨流木量 約21万m³ 朝倉市等
2019年東日本台風流木量 約20万m³ 関東・甲信越
2020年7月豪雨流木量 約13万m³ 熊本県球磨川等
流木止工累計設置数 約2,000基 林野庁・国交省合計
流木止工年間新設数 約100基 2023年
スリットダム新設数(治山) 約50-80基/年 林野庁集計
橋梁流失数(西日本豪雨) 約100橋 2018年7月
流木1m³重量(生木) 約1t 含水率含む
流木撤去・処分単価 5,000-15,000円/m³ 災害復旧時
渓流数(山地災害危険地区) 約23万カ所 国交省・林野庁
既設治山ダム数 約13.5万基 林野庁

流木災害の発生メカニズム

流木は山腹崩壊・土石流・渓岸侵食・倒木の4経路から発生します。豪雨時に山腹崩壊が発生すると、立木の根系ごと崩壊地から流出し、渓流に到達した時点で土砂と混合した「土石流」状態になります。この土石流が下流に流下する過程で渓岸の立木を巻き込み、流木量が累積的に拡大します。最終的に河川本流に到達した流木は、橋脚への衝突・橋桁への引っかかり・河道閉塞を引き起こします。

流木発生から下流被害までのプロセス 山腹崩壊から橋梁被害までのプロセスフロー 流木災害の発生プロセス 山腹崩壊 立木+土砂 渓流流下 土石流化 渓岸侵食 追加倒木 本流到達 流木累積 橋脚衝突 河道閉塞 各段階の典型値(西日本豪雨ベース) ・崩壊面積:1渓流当たり1-10ha、立木1ha当たり300-500m³(人工林) ・渓流流下:流速10-30m/s、土石流の80%は土砂・10-15%が流木 ・渓岸侵食:渓流両岸の立木が追加で巻き込まれ流木量2-3倍に ・本流到達:流域全体で20-30万m³規模が下流に集積 ・橋梁被害:流木の橋脚衝突で部分損壊・全流失発生 主要対策:山腹工(崩壊防止)・流木止工(捕捉)・河川改修(流下能力確保)の3点 出典:林野庁・国交省・土木学会論文集(2018-2020年)より作成
図1:流木災害の発生プロセス(出典:林野庁・国交省「流木対策に関する技術指針」より作成)

各段階の物理量を補足すると、山腹崩壊1ha当たりの立木発生量は、人工林(スギ・ヒノキ)で300〜500m³、広葉樹混交林で200〜350m³程度です。土石流の流速は急峻地形で10〜30 m/sに達し、運動エネルギーは1m³当たり数十kJ規模で、橋脚や護岸に対する破壊力は極めて大きくなります。流木の主要寸法は長さ5〜20m、直径20〜50cmが標準で、橋梁の桁下クリアランスを下回ると橋桁への引っかかりが発生しやすくなります。

主要豪雨災害での流木発生量

2017年以降の主要豪雨災害では、毎回20〜30万m³規模の流木が発生しています。これは1災害あたり国産丸太年間生産量(2,400万m³)の約1%に相当する規模で、単一のイベントで森林資源量・河川インフラに大きな影響を及ぼします。

主要豪雨災害の流木発生量 2010年代後半以降の豪雨災害における流木発生量を比較する棒グラフ 主要豪雨災害の流木発生量(万m³) 35 25 15 10 5 2017 九州北部 21万m³ 2018 西日本 30万m³ 2019 東日本台風 20万m³ 2020 熊本豪雨 13万m³ 2021 熱海・関東 8万m³ 毎災害で十数〜30万m³規模。降雨量・流域面積・人工林比率により変動。
図2:主要豪雨災害の流木発生量(出典:林野庁・国交省・土木学会の災害調査資料より作成)

2018年西日本豪雨の特異性

2018年7月豪雨(西日本豪雨)は流木発生量30万m³と過去最大規模で、広島県・岡山県・愛媛県を中心に橋梁約100橋が流失または部分損壊し、河川インフラ被害は約4,000億円(うち流木関連は推計1,000億円規模)に達しました。広島県呉市の安浦地区、岡山県倉敷市真備町、愛媛県宇和島市・大洲市等は、流木と土砂の複合被害により広範囲が浸水しました。流木が橋梁に絡みついて河道閉塞が発生し、堤防越流・氾濫被害を増幅させたケースが多く確認されています。

気象学的には、2018年西日本豪雨は梅雨前線の停滞と複数の線状降水帯が西日本に集中したことで、3日間累積雨量が500mm超に達した観測点が多数発生しました。広島県では7月5〜8日の累積雨量が444〜624mmに達し、過去最大規模の山腹崩壊・土石流が同時多発しました。流木発生は山腹崩壊と表裏一体で、降雨量と流木量の相関が極めて強いことが各種解析で示されています。

橋梁・河川インフラ被害の構造

流木による河川インフラ被害は、(1)橋梁の流失・損壊、(2)橋脚の洗掘、(3)護岸の破損、(4)河道閉塞による氾濫、(5)港湾への漂着・航路阻害、の5タイプに分類されます。橋梁被害は流木の橋脚衝突・橋桁への引っかかりが主因で、特に低い橋梁(橋桁下端と河川水位のクリアランスが小さい)が脆弱です。

被害タイプ 主な発生メカニズム 復旧コスト目安
橋梁流失 流木が橋桁に堆積→水圧上昇→橋桁流出 1橋10-100億円
橋脚洗掘 流木衝突+流速増大による橋脚基礎の洗掘 1橋1-10億円
護岸破損 流木の衝突による護岸ブロックの剥離・倒壊 100m当たり数千万円
河道閉塞 流木の堆積による流下能力低下→堤防越流 広域氾濫で数百億円
港湾漂着 河口から海域に流出した流木による港湾機能阻害 撤去費数億円

橋梁設計基準の見直し

近年の流木被害を受け、国土交通省は橋梁設計基準の見直しを進めています。具体的には、(1)橋桁下端と計画高水位のクリアランス(余裕高)の拡大、(2)流木の衝突荷重を含む構造計算の標準化、(3)橋脚の流線形断面の採用、(4)橋脚配置間隔の拡大、等です。新設橋梁ではこれらの基準が標準化されつつありますが、既設橋梁(約75万橋)の更新には数十年規模の時間がかかります。

具体的な改訂内容として、道路橋示方書(2017年・2024年改訂)では流木を含む水流による作用の評価が明文化され、橋脚への衝突荷重の標準値(おおむね100〜500 kN/本程度を構造規模により設定)が示されました。流木衝突を考慮した橋脚断面・基礎設計が、新設橋梁・大規模補修橋梁で適用されています。既設橋梁に対しては、流木の引っかかりを軽減する流線形整流ガイド・橋脚周辺の流速低減工等の付加対策が、優先度の高い橋梁から導入されています。

流木止工の構造と配置

流木止工は、流木を発生源・中流域で捕捉する専用工法で、林野庁・国土交通省が連携で全国に整備しています。代表的な工法はスリットダム(透過型治山ダム)、流木止用スクリーン、ネット式流木止工で、累計約2,000基が稼働中です。

流木止工の代表的タイプ スリットダム・流木止用スクリーン・ネット式流木止工の構造を示す 流木止工の代表的3タイプ タイプ1:スリットダム 透過型構造で、平常時は土砂・水を通過させ、 大規模出水時に流木・大粒径礫を捕捉。 スリット幅0.5-2m、堤高5-15m。 タイプ2:流木止スクリーン 既設ダムの下流側または独立構造として 縦格子・斜め格子で流木を効率的に捕捉。 既設治山ダムへの後付け改良が容易。 タイプ3:ネット式 高張力ワイヤーネットで流木を弾性捕捉。 小規模渓流向け、施工コスト低い。 大規模出水で破断リスクあり。 3タイプの選定基準 ・流域規模・流木予測量に応じて使い分け ・スリットダムは大規模流域、スクリーンは中規模、ネットは小規模渓流 ・既設治山ダムへのスクリーン後付けが現在主流(コスト効率重視)
図3:流木止工の代表的3タイプ(出典:林野庁・国交省「流木対策に関する技術指針」より作成)

新設・改良の動向

近年の流木災害頻発化を受け、林野庁・国交省は流木止工の新設を加速しています。年間の新設数は約100基(うち治山事業約50基・砂防事業約50基)で、累計設置数は2,000基規模。既設治山ダム(13.5万基)への流木止スクリーン後付け改良は、コスト効率(1基1,000万〜3,000万円程度)の観点から優先的に進められています。新設のスリットダム1基は5,000万〜2億円規模、ネット式は500万〜2,000万円規模で、規模・流域条件により幅があります。

整備優先順位は、(1) 過去に大規模流木被害が発生した流域、(2) 下流に住宅地・橋梁等の重要インフラがある流域、(3) 急峻地形・人工林が集中する流域、(4) 山地災害危険地区指定地、を中心に決定されます。林野庁・国交省・都道府県が連携で「流域単位の総合対策計画」を策定し、複数の流木止工を最適配置するアプローチが主流です。

港湾・海域への漂着流木と費用構造

河川を経て海域に到達した流木は、港湾の航路を阻害し、漁業・物流に被害をもたらします。2018年西日本豪雨では瀬戸内海全域で漂流木の確認が相次ぎ、広島港・呉港・松山港等で漂流物撤去が継続的に行われました。撤去費用は1m³当たり数千円〜1万円規模で、災害1回当たり数億〜数十億円の撤去事業が発生します。

流木災害の費用構造 流木災害における対策・復旧の費用構造を示す 流木災害1回あたりの費用構造(西日本豪雨ベース、推計) 橋梁復旧 約1,000億円 河川復旧 約700億円 流木撤去・処分 約300億円 山地復旧 約400億円 港湾・漁業 約100億円 合計(推計) 約2,500億円 流木災害は単なる森林被害ではなく、河川・港湾・農地・住宅まで広がる複合災害。 事前対策(治山・流木止工)への投資1に対し被害軽減効果は5-10倍と試算される。
図4:流木災害の費用構造(出典:内閣府防災・国交省・林野庁災害復旧資料より作成、概算)

流木の有効利用:バイオマス・木質マルチ・建材

流木は被害発生後、撤去・処分が中心ですが、近年は有効利用の試みも進んでいます。具体的には、(1)バイオマス燃料(チップ化して発電所利用)、(2)土木工事用木質材料、(3)木質マルチ・堆肥原料、(4)観光・芸術用途(オブジェ・建材)、等です。2018年西日本豪雨で発生した30万m³の流木は、約半分が現地破砕後にバイオマス発電所に搬入され、残りは焼却処分・最終処分されました。

流木のバイオマス利用は、災害廃棄物処理コストを削減しつつ再生可能エネルギー供給に貢献する一石二鳥の対策として、近年自治体・木質バイオマス発電事業者が連携で取り組んでいます。1m³当たり3,000〜5,000円のチップ化コストに対し、発電所での受入価格3,000〜6,000円で、コスト的にほぼ均衡する計算です。塩分・泥土の含有が懸念点で、現地での選別・洗浄プロセスが品質確保の鍵です。

木質マルチ・堆肥原料としての利用は、農業・園芸事業者への供給チャネルが整っており、被災地周辺の地域循環型利用として一部で実装されています。ただし供給量は災害発生量の数%にとどまり、メイン処分ルートにはなっていません。災害廃棄物処理計画(市町村が事前策定)の中で、流木の優先処分ルート(バイオマス発電・焼却処分・最終処分)の組み合わせが地域条件に応じて定められています。

森林管理と流木災害の関係

流木発生量は森林管理の状況と密接に関連します。間伐遅れの密生人工林では、林床植生が乏しく根系の発達が浅いため、山腹崩壊時に立木が流木として流出しやすい構造です。一方、適切に間伐された森林・複層林・広葉樹混交林では、根系発達が良好で崩壊リスクそのものが低減します。林野庁の調査では、間伐遅れ林分の流木発生係数は適切管理林分の2〜3倍と報告されています。

流木災害軽減の観点でも、間伐推進・複層林化・広葉樹混交林化は重要な政策軸であり、災害対策と林業振興の両立を目指す総合的な森林管理が求められます。森林環境譲与税の市町村事業でも、防災林整備(間伐・路網整備・複層林化)に予算配分される事例が増えており、災害リスクの高い流域での森林整備が進んでいます。

地域別の流木災害事例:九州・中国・四国・関東

地域別に主な流木災害事例を整理すると、九州(2017年九州北部豪雨:朝倉市・東峰村等の福岡・大分両県、流木量21万m³、橋梁損壊多数)、中国・四国(2018年西日本豪雨:広島・岡山・愛媛、流木量30万m³、橋梁約100橋損壊)、関東(2019年東日本台風:千葉・神奈川・福島・宮城等、流木量20万m³)、九州(2020年7月豪雨:熊本県球磨川流域、流木量13万m³、橋梁・住宅広域被害)が代表的です。

災害名・年 主要被災地 流木量 橋梁被害 主要な要因
九州北部豪雨2017 福岡県朝倉・東峰村、大分県日田 約21万m³ 多数損壊 線状降水帯・人工林集中
西日本豪雨2018 広島・岡山・愛媛各県 約30万m³ 約100橋損壊 梅雨前線停滞・多重線状降水帯
東日本台風2019 千葉・神奈川・福島・宮城等 約20万m³ 多数損壊 大型台風・広域豪雨
熊本豪雨2020 熊本県球磨川流域 約13万m³ 橋梁・河川広域被害 集中豪雨・流域広範囲
熱海土石流2021 静岡県熱海市 約8万m³ 住宅地直撃 盛土崩壊+豪雨

事例から共通する被害増幅要因は、(1) 線状降水帯による短時間集中豪雨、(2) 急峻地形+人工林集中による山腹崩壊の同時多発、(3) 河川・橋梁の流下能力不足(流木堆積で河道閉塞)、(4) 流域単位の総合対策の遅れ、の4点です。これらを踏まえ、近年の防災基本計画では「流域治水」(流域全体での治水・治山・砂防の連携対策)が政策の柱となり、流木止工整備・橋梁更新・森林管理が一体運用される方向に進んでいます。

気候変動と流木災害の将来予測

気候変動下での豪雨頻発化は、流木災害発生頻度・規模の両方を押し上げる方向で作用します。気象庁データによれば、1時間降水量50mm以上の発生回数は1980年代に対し2010年代で1.4倍、80mm以上では1.7倍と顕著に増加しています。今後の温暖化シナリオ(RCP8.5想定)では、21世紀末までに50mm/h超の発生回数がさらに2倍程度に増加する予測があります。

流域単位での将来リスク評価では、過去数十年の災害履歴・降雨確率・流域地質・人工林比率を入力とした統計モデルで、2030〜2050年の流木発生量が現状比1.3〜1.8倍に増加するケースが多く示されています。これに対する適応策として、(1) 流木止工整備加速、(2) 橋梁設計基準の段階的引き上げ、(3) 間伐・複層林化の優先地区指定、(4) リアルタイム降雨レーダー+流域モデルによる早期警戒、等が政策議題に上がっています。

流域治水と流木対策の統合政策

2020年代に入り、国土交通省・林野庁・農林水産省が連携した「流域治水」政策が本格化しています。これは流域全体での治水・治山・砂防・農地保全・森林管理を一体的に推進する政策で、各省庁の縦割りを横断する設計です。流木対策も流域治水の主要課題として位置付けられ、(1) 山地(治山ダム・流木止工)、(2) 渓流(砂防ダム・スリットダム)、(3) 河川(流下能力確保・橋梁更新)、(4) 海岸(漂着流木撤去)の4段階対策が連動する形で進められています。

具体的な実施事業としては、(1) 国交省「流域治水プロジェクト」(一級水系109水系で計画策定)、(2) 林野庁「治山・林道計画」(五箇年計画)、(3) 農水省「農地・農業用施設」、(4) 都道府県の地域防災計画、等が連動運用されます。流域単位の対策費用は数百億円〜1,000億円規模になることもあり、複数年度での段階的実施が標準です。費用対効果(事業費1に対する被害軽減効果5〜10倍)が明示的に評価され、公共事業の優先順位決定にも活用されています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 流木災害は今後さらに増えますか?

気候変動下での豪雨頻発化、高齢人工林の増加(間伐遅れ林分の拡大)、地震活動の活発化が複合的に作用し、今後20年程度は流木災害発生量の増加傾向が続く見通しです。一方、流木止工の整備拡大、間伐推進、橋梁設計基準の見直しが進むことで、被害規模の拡大は一定程度抑制できる可能性があります。

Q2. 流木止工2,000基は十分ですか?

日本の渓流数は約23万カ所(山地災害危険地区指定数)で、流木止工2,000基はその約1%にすぎません。重点対策が必要な渓流は11万カ所と推計され、流木止工の整備優先順位付けと、既設治山ダムへのスクリーン後付け改良の組合せで効率化が進められています。完全な整備には30〜50年規模の時間が必要です。

Q3. 流木撤去のコストは誰が負担するのですか?

河川内・港湾内の流木撤去は、国土交通省(一級河川・主要港湾)、都道府県・市町村(二級河川・地方港湾)が予算負担します。災害発生時は災害復旧事業として国費補助率が引き上げられ、自治体負担の軽減が図られます。森林内・治山事業区域内の流木は林野庁が処理を担当し、所有者負担は限定的です。

Q4. 海岸への漂着流木は再利用できますか?

海水浸漬した流木は塩分含有量が高く、バイオマス燃料・木質マルチへの利用が制約されます。瀬戸内海・日本海では年間1〜10万m³規模の漂着流木が確認され、自治体が撤去・処分を担当します。一部は塩抜き処理を経てバイオマス利用される事例がありますが、コスト的に成立しにくく、焼却処分が中心です。

Q5. 流木災害対策の今後の重点は?

(1)既設治山ダムへの流木止スクリーン後付け改良の加速、(2)橋梁設計基準の見直しと既設橋梁の更新、(3)流域単位での総合的災害対策(治山・砂防・河川の連携)、(4)ICT・センシング技術活用によるリアルタイム流木監視、(5)発生量予測モデルの精度向上、の5軸が今後10年の重点課題です。流木災害は単独対策では効果が限定的で、流域全体での総合対応が成功の前提条件です。

Q6. 民有林の所有者にできる対策は?

(1) 適期間伐の実施(25〜30年生で1回目間伐、その後10年間隔程度)、(2) 渓流沿い20〜30mの保護林帯設定(広葉樹混交化)、(3) 林道・作業道の適切な排水設計、(4) 森林経営計画の認定取得による補助金活用、等が現実的な選択肢です。森林環境譲与税を活用した市町村事業との連携も有効で、災害リスクの高い流域では市町村と所有者の協働で森林整備を進める事例が増えています。

Q7. ICT・センシングによる流木監視はどこまで進んでいますか?

カメラ・水位センサ・降雨計を組み合わせた渓流監視システムが、過去20年で大規模災害が発生した一部の重点渓流に整備されています。AI画像解析による流木検出(2020年代の研究フロント)、衛星SAR・光学画像による広域監視も実用化が進みつつあります。実装は限定的ですが、今後5〜10年で重点渓流への配備が拡大する見通しです。LPWA(低消費電力広域無線)通信網を活用した低コストな分散型センサネットワークの研究も進行中で、過疎地域の中小河川でも導入できる経済水準が見えつつあります。

Q8. 流木災害保険・補償制度はありますか?

家屋・農地・事業設備への流木被害は、火災保険の水災特約・地震保険・農業保険等で部分的にカバーされます。橋梁・道路・河川等の公共インフラは、災害復旧事業として国費補助(通常2/3〜10/10)が適用されます。森林(民有林)の立木被害は、森林保険(全国森林組合連合会)の対象で、契約済みの森林所有者は被害立木1m³当たり数千円〜1万円程度の保険金を受け取ることができます。

Q9. 流木の処分は環境への影響はありませんか?

流木のチップ化・バイオマス発電は、適切な選別・洗浄が行われれば環境影響は限定的です。ただし、塩分含有量の高い海岸漂着流木は、燃焼時の腐食リスクや排ガス処理の追加コストが発生します。焼却処分は災害廃棄物の標準ルートとして確立しており、ダイオキシン対策・排ガス管理を行った専用施設で処理されるため、環境影響は規制値以下に抑制されます。最終処分場での埋立は、容量圧迫のため可能な限り回避する方針が一般的です。

Q10. 流木災害発生時の地域住民の備えは何が有効ですか?

(1) 居住地域のハザードマップ(土砂災害警戒区域・浸水想定区域)の確認、(2) 自治体の防災情報・避難情報の入手手段の整備(防災行政無線・メール・スマートフォンアプリ)、(3) 避難経路と避難先の事前確認、(4) 早めの避難判断(特に夜間豪雨時)、(5) 周辺渓流・河川の異常を察知したら速やかに避難、の5点が基本です。流木災害は土石流と一体で発生することが多く、土石流警戒区域の住民は特に高い警戒が必要です。

Q11. 山林所有者向けの間伐補助制度はありますか?

森林整備事業(林野庁)、森林環境譲与税(市町村)、都道府県の独自補助等、複数の補助制度があり、間伐費用の概ね2/3〜全額が国・自治体から補助される仕組みです。森林経営計画の認定を受ければ補助率が優遇されるため、市町村の林務担当窓口・森林組合への相談が第一歩です。流木災害リスクの高い流域では、自治体が優先支援する事例も増えています。

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まとめ

流木発生量1豪雨で20-30万m³・流木止工2,000基・橋梁約75万橋の更新課題という3つの数字は、流木災害が森林・河川・橋梁・港湾を横断する複合災害であることを示します。気候変動下での豪雨頻発化、人工林の高齢化、地震活動の活発化により、今後20年は流木災害が常態化する見通しです。治山・砂防・河川の3省庁連携による総合対策、流域単位での災害管理、間伐・複層林化による発生抑制、流木のバイオマス利用、橋梁設計基準の見直し等の複合的取組みが、流木災害の被害軽減と森林資源の有効活用の両立の鍵となります。事前対策投資1に対する被害軽減効果5〜10倍という試算は、防災投資の経済合理性を裏付けるもので、今後の財政・施策優先順位を決める基本論拠となります。

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