同じ「木材を輸入する」でも、その中身はこの30年で様変わりしました。1990年代までは丸太(ログ)で買って国内の製材所で挽くのが当たり前でしたが、いまは製材・集成材・LVLといった加工済みの製品で輸入するのが主流です。財務省の貿易統計を見ると、2023年の輸入丸太は約220万m³。1996年のピーク約1,800万m³に対して、なんと8分の1まで縮みました。代わりに輸入製材が約470万m³、集成材が約95万m³、合板が約200万m³。「原木輸入から製材輸入へ」という、地味だけれど大きな転換が起きていたわけです。
1996年の日本は世界最大の丸太輸入国でした。北米・南洋・ロシア・ニュージーランドから年1,800万m³が運ばれ、2万社を超える国内製材所の原料になっていたのです。それが2023年には220万m³。残っているのは米国の米マツ大径材、ニュージーランドのラジアータパイン、カナダの米マツ・カラマツが中心で、丸太を受け入れる港のバースや原木置場も整理が進み、輸入インフラそのものが再編期に入っています。
なぜ丸太から製材へ動いたのか
この転換は、相手国・運搬・国内産業の3つの理由が重なって起きました。下の図がその全体像です。
まず相手国の事情です。インドネシアは2001年に丸太輸出を完全禁止、マレーシアも州ごとに段階的に規制し、ロシアは2008年に関税を大幅に引き上げました。狙いはいずれも自国の製材産業を育て、付加価値を国内に残すこと。日本の輸入業者は丸太をあきらめ、現地の加工品を買うほかなくなったわけです。次に運搬の経済性。丸太はスカスカで容積効率が悪く、1コンテナに20〜25m³しか積めませんが、製材なら38〜42m³入ります。海上運賃が長期で上がるなかで、この差は無視できません。そして国内側の事情。1980年に約2万社あった製材所は2024年には約4,400社まで減り、輸入丸太を挽く受け皿が細りました。プレカット工場が高度化して寸法精度のそろった製材を求めるようになったことも、製材直輸入を後押ししています。
いまの輸入製材を支える顔ぶれ
形態別で最大なのが輸入製材の約470万m³です。柱になるのはカナダのSPF・米マツ製材、スウェーデン・フィンランドのホワイトウッド/レッドウッド製材、米国の米マツ・SYP製材。かつて2割超を占めていたロシア製材が2022年に止まったため、相対的にカナダと北欧のシェアが広がりました。用途で見ると構造用ランバー(2×4工法・羽柄材)が約45%、内装造作材が約25%、梱包・パレットと家具向けが残りという内訳です。とりわけ2×4住宅の構造材はカナダSPFがほぼ業界標準で、JAS規格・性能等級の認証システムも横断的に整っています。北欧マツ系は寸法精度と強度等級の安定、それにFSC・PEFC認証のカバー率の高さ(9割超)が評価され、近年シェアを着実に伸ばしています。
集成材は約95万m³で、2000年代の25万m³から4倍に拡大しました。主役はオーストリア産のホワイトウッド集成材です。1980年代から集成材・CLT技術の世界的拠点だっただけあって、強度等級や寸法精度、認証カバー率が高く、Stora EnsoやKLHといった大手が年産10〜30万m³規模の工場で対日供給しています。日本の集成材工場が年産5〜10万m³規模であることを考えると、この規模の経済が価格・品質の競争力を支えているわけです。もっとも国産集成材も2010年代後半の設備投資ラッシュで急速にキャッチアップし、価格差は10〜15%以内まで縮まってきました。なお合板は約200万m³で、マレーシア・インドネシア・中国の3国で9割。構造用は国産カラマツ・スギ合板に押されて縮小傾向ですが、型枠用(コンクリート工事の使い捨て)は耐水性などの特殊性能ゆえラワン系の代替が難しく、南洋材主軸が続いています。
国産材とは、用途ごとに住み分けている
輸入製材470万m³と国内製材出力900万m³の関係は、量だけ見れば「輸入が国産の半分強」ですが、用途別には強く競合する部分とそうでない部分があります。下の表のように、勝ち負けが一律に決まっているわけではありません。
| 用途 | 輸入材主軸 | 国産材主軸 | 競合の度合 |
|---|---|---|---|
| 2×4工法構造材 | カナダSPF・米マツ | 国産材2×4は試行段階 | 輸入材ほぼ独占 |
| 在来軸組工法 柱 | 欧州集成材(ホワイトウッド) | 国産集成材(スギ・ヒノキ) | 強い競合 |
| 在来軸組工法 梁・桁 | 欧州集成材(レッドウッド) | 国産集成材(カラマツ・ベイマツ等) | 強い競合 |
| 羽柄材・下地材 | 北欧マツ系・カナダSPF | 国産スギ羽柄材 | 価格競合 |
| 構造用合板 | マレーシア・中国合板 | 国産カラマツ・スギ合板 | 国産シェア拡大中 |
| 型枠用合板 | 南洋材ラワン合板 | 国産材代替限定的 | 輸入材ほぼ独占 |
住宅メーカーの調達は「輸入材を主軸に、国産材を一定比率」という二刀流が標準です。CO2削減や地域貢献の文脈で国産材の使用率を開示する動きが広がり、ZEHやLCCM住宅、ESG投資の評価軸が後押しするかたちで、国産材の調達比率はじわじわ上がっています。
輸入を縛りはじめた「合法性」と為替
もうひとつ、近年の輸入実務で重みを増しているのが合法性の確認です。2025年4月施行のクリーンウッド法改正で、輸入業者は相手国の合法性証明書類の取得、サプライチェーン情報の5年保管、現地工場監査などが義務になります。大手商社は社内体制で対応できますが、中小や直接取引の住宅メーカーには相応の負担。とくに南洋材原料を集約して二次加工する中国経由の合板は、伐採地までの追跡が難しく、合法性確認コストが輸入価格の5〜10%相当まで上がると見られています。逆に言えば、FSC・PEFC認証を取っていれば書類整備の負担で済むので、認証材を選ぶ経済合理性はいっそう強まる方向です。
為替の影響も無視できません。欧州製材の対日価格は、2022年のロシア材停止以降、FOB価格・運賃・円安の三重圧力で2020年比1.6〜1.8倍まで上がりました。€1が10円円安に振れると輸入製材1m³あたり700〜1,100円のコスト増。住宅1棟で構造材を20〜25m³使うので、円安局面では1棟あたり1.5〜3万円のコストプッシュになります。メーカーはプレカットの歩留まり改善や高強度等級化による断面縮小、そして国産材比率の引き上げで、この円安耐性を高めようとしています。
振り返ると、日本の木材輸入は「丸太から製材へ」という形態の転換と、総量そのものの半減という、二つの変化を同時にくぐり抜けてきました。2030年に向けては、原木換算で3,000〜3,500万m³水準に落ち着きつつ、相手国はカナダ・北欧・オーストリアに集中し、合法性コストや気候変動による森林リスクを見据えて相手国を分散させる――そんな構造が定着していきそうです。価格と寸法精度に加えて「環境価値の見える化」が新しい評価軸になりつつあるのも、これからの輸入木材を考えるうえで見逃せないところです。

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