航空レーザ測量(ALS)|全国整備率95%の達成と運用

航空レーザ測量(ALS) | 樹を木に - Forest Eight

航空レーザ測量(ALS:Airborne Laser Scanning)は航空機・ヘリコプターに搭載したLiDARで地表を3次元計測する技術で、日本の森林資源解析の中核装置として急速に普及しました。林野庁は2014年から都道府県のALS整備を支援し、2024年時点で全国の私有林人工林の整備率は95%超に達しました。1ha当たり整備コストは約3,000〜10,000円、データの空間解像度は0.5〜1mグリッド、樹高・本数密度・蓄積・地形の高精度推定が可能です。本稿ではALSの技術原理(10〜30万発/秒のレーザパルス)、整備状況(650万ha到達)、解析手法(DEM・DSM・DCHM)、活用事例(森林経営計画・路網計画・災害評価)、データ流通(J-FOREST等)、今後の展開(地上LiDARとの統合、ドローン併用)までを数値で構造的に整理します。

この記事の要点

  • 私有林人工林整備率:95%超(2024年・林野庁)。整備済面積約650万ha。
  • 本格整備開始:2014年「森林資源情報量整備事業」。10年で達成。
  • 解像度0.5〜1mグリッド、点群密度4〜10点/m²(標準仕様)。
  • 整備コスト:3,000〜10,000円/ha。累計事業費約500億円規模。
  • 樹高±1m以内、本数密度±5〜10%、蓄積±5〜15%(実測対比)。
  • 林野庁ALS交付金:約20億円/年(2024年度)。
  • データ更新サイクル:10年標準(地域差あり)。
  • 活用:森林経営計画・路網計画・所有境界・災害リスク・木材歩留まり予測等6分野以上。
整備率 95% 私有林人工林 2024年時点 整備済面積 650 万ha 2014〜2024年 10年で達成 解像度 0.5 〜1m グリッド 点群4〜10点/m² 整備コスト 3〜10 千円/ha 累計約500億円 林野庁50%補助
図1:ALS整備の主要諸元(出典:林野庁「森林資源情報量整備事業」、森林総合研究所「ALS解析マニュアル」)
目次

クイックサマリー:ALS整備の基本数値

指標 数値 出典・備考
私有林人工林整備率 95%超 2024年・林野庁
整備済面積 約650万ha 私有林人工林
本格整備開始年 2014年 林野庁交付金
空間解像度 0.5〜1m グリッド・標準
点群密度 4〜10点/m² 標準仕様
整備コスト 3,000〜10,000円/ha 委託費・概算
累計事業費 約500億円規模 2014〜2024年
樹高推定精度 ±1m以内 実測対比
本数密度推定誤差 5〜10% 実測対比
蓄積推定誤差 5〜15% 実測対比
林野庁ALS交付金 約20億円/年 2024年度
データ更新サイクル 10年 標準・地域差有
主要活用分野 6分野以上 経営計画・路網・災害等
飛行高度 1,000〜3,000m 固定翼・ヘリ搭載
パルス発射数 10〜30万発/秒 レーザスキャナ仕様

ALSの技術原理

ALSは航空機・ヘリコプターに搭載したレーザスキャナで、毎秒10万〜30万発のレーザパルスを地表に照射し、戻り時間から地表面までの距離を計測する技術です。GNSS(衛星測位)とIMU(慣性計測装置)で航空機の3次元位置・姿勢を高精度に把握し、レーザ計測点を地理座標系に変換します。林分内では、樹冠表面からの反射(ファーストパルス)、葉間を通過した中層からの反射(中間パルス)、地表面からの反射(ラストパルス)が階層的に取得され、樹冠表面と地形面を同時に計測できる点が特徴です。

ALSの計測原理と森林データ取得 航空機からレーザパルスを照射し、樹冠と地表面を同時計測する原理 航空レーザ測量(ALS)の計測原理 航空機 高度1,000〜3,000m レーザパルス10〜30万発/秒 人工林(樹冠表面) 地表面(DEM) 3層パルス取得 ファースト:  樹冠表面 中間:  中層・下層 ラスト:  地表面 解析出力: DCHM(樹高) DEM(地形) DSM(表面) 本数密度 蓄積 傾斜・微地形
図2:航空レーザ測量(ALS)の計測原理(出典:林野庁「航空レーザ測量データ取扱要領」森林総合研究所「ALS解析マニュアル」)

3つの基本データプロダクト

ALSの計測点群(Point Cloud)から派生する基本プロダクトは3つです。第1はDEM(Digital Elevation Model:数値標高モデル)で、地表面のみを抽出した地形データです。第2はDSM(Digital Surface Model:数値表面モデル)で、樹冠・建物等を含む表面標高データです。第3はDCHM(Digital Canopy Height Model:樹冠高モデル)で、DSMからDEMを差し引いた樹高分布データです。これら基本データから、樹高分布・本数密度・蓄積・林分構造・林相区分等の解析プロダクトが生成されます。

データプロダクト 定義 主用途 解像度
DEM(数値標高モデル) 地表面の標高データ 地形解析、路網計画、災害評価 0.5〜1mグリッド
DSM(数値表面モデル) 樹冠・建物含む表面標高 樹冠表面の解析 0.5〜1mグリッド
DCHM(樹冠高モデル) DSM-DEM、樹高分布 樹高推定、林相区分 0.5〜1mグリッド
本数密度マップ 1ha当たり立木本数 本数管理、間伐計画 10〜25mメッシュ
蓄積マップ 1ha当たり材積 森林経営計画、収穫予測 10〜25mメッシュ
傾斜・斜面方位マップ 地形の3次元解析 路網計画、災害評価 0.5〜5mグリッド

整備の進展と95%の達成

林野庁のALS整備支援は2014年「森林資源情報量整備事業」で本格化しました。当初の整備対象は私有林人工林(1人工林面積約670万ha)で、都道府県を実施主体に交付金(事業費の50%補助)を10年計画で投入しました。整備率は2014年の約10%から、2018年50%、2022年85%、2024年95%超へと急速に拡大しました。整備コストは1ha当たり3,000〜10,000円(地形・面積・解像度で差)で、累計事業費は約500億円規模に達します。残りの未整備5%は、離島・国有林の一部・複雑地形等で、2026年頃までの完了が目標です。

ALS整備率の推移 2014年から2024年までの整備率推移 私有林人工林ALS整備率の推移(%) 100 75 50 25 0 2014 2016 2018 2020 2022 2024 10% 25% 50% 70% 85% 95%超 2014〜2024年で10%→95%超に到達。10年で全国整備が概ね完了
図3:ALS整備率の推移(出典:林野庁・森林総合研究所、概算)

都道府県別の整備状況

整備の進捗は都道府県別に差があります。先進県は静岡・三重・徳島・愛知・神奈川等で2018年頃に概ね完了し、人工林比率の高い地域(西日本・中部山岳地帯)が積極的に進めました。一方、面積が大きい北海道・岩手・秋田等は2020年代まで段階的整備を続け、2024年時点で各々90%以上を達成しています。残課題は離島(沖縄・離島地域)、国有林の一部、複雑地形(北アルプス山岳・北海道道東等)です。

整備先進県 整備完了年 主要地形・林相
静岡 2017年頃 富士山麓・南アルプス麓スギ・ヒノキ人工林
三重 2017年頃 紀伊山地スギ・ヒノキ
徳島 2018年頃 四国山地スギ
愛知 2018年頃 奥三河・知多・尾張のヒノキ
神奈川 2018年頃 丹沢山地・箱根スギ
長野 2020年頃 中部山岳カラマツ・スギ
岡山 2020年頃 中国山地ヒノキ
福井 2020年頃 越前スギ・ヒノキ
北海道 2024年予定 道南・道東トドマツ・カラマツ
岩手 2024年予定 北上山地・東北スギ

解析手法と精度

ALSデータからの森林情報抽出は、点群解析と統計モデリングの組合せで行われます。樹高推定精度は実測対比±1m以内、本数密度推定誤差は5〜10%、蓄積推定誤差は5〜15%が標準的な水準です。これらの精度は地上での林分調査(プロット調査)と回帰モデルを校正した結果で、地域・林相・解像度によって変動します。スギ・ヒノキの人工林(単一樹種・整列植栽)は精度が高く、混交林・天然林は精度がやや低くなる傾向です。

解析項目 標準精度 主要解析手法
樹高(DCHM) ±1m以内 DSM-DEM差分、ピーク検出
本数密度 ±5〜10% 個別木検出、ピーク密度
蓄積(材積) ±5〜15% 樹高×本数×断面積回帰
樹種・林相区分 80〜90%精度 点群形状・樹高分布の特徴量
傾斜・斜面方位 ±0.5度以内 DEM解析、3次元勾配計算
微地形(沢・尾根) 解像度依存 等高線・水流解析

主要活用分野(6分野)

ALSデータは森林政策・林業実務の幅広い分野で活用されています。

活用分野 具体内容 担当主体
森林経営計画 市町村単位の蓄積・本数・林齢分布の把握、間伐計画 市町村・森林組合
所有境界・地番図整備 所有者不明森林の境界確認、地番図の精度向上 市町村・林務担当
路網計画・施業計画 森林作業道・林道の最適配置、施業計画 森林組合・素材生産業者
木材歩留まり予測 立木材積から伐採後の製材歩留まり予測 素材生産業者・製材業者
災害リスク評価 地すべり・崩壊リスク、流域防災評価 都道府県・砂防事業者
炭素ストック評価 森林吸収量の精緻化、J-クレジット申請 都道府県・森林組合

これらの活用は、それまで現地調査・経験に依存していた業務を、定量的・面的なデータに基づいて行うことを可能にし、林業の生産性向上と意思決定の精度向上に寄与しています。特に森林経営計画では、ALSデータと市町村の地番図・所有者情報を統合した「森林クラウド」プラットフォームが普及しつつあります。

データ流通とJ-FORESTプラットフォーム

整備されたALSデータは、林野庁の「J-FOREST」プラットフォームを通じて全国的に共有されつつあります。J-FORESTは森林組合・林業事業体・自治体・研究機関等が森林資源データを共有するクラウド基盤で、ALSの基本プロダクト(DEM・DCHM・蓄積マップ等)をWeb GIS形式で閲覧・ダウンロード可能にします。一部のデータは公開(オープンデータ)、一部は事業者限定の有償データという階層構造で運用されています。

都道府県別のALSデータは、各都道府県の森林環境課・林務課が管理し、市町村・森林組合・素材生産業者・コンサルタント・研究機関にライセンス契約で提供されます。データ取扱要領(林野庁策定)に従って、データの加工・再頒布・商用利用の条件が定められています。これにより、林業バリューチェーン全体でのデータ連携が制度的に可能となりました。

地上LiDARとドローン併用:3層計測へ

ALSの上空計測に加えて、近年は地上LiDAR(TLS:Terrestrial Laser Scanning)とUAV搭載LiDAR(ドローン)を組み合わせた3層計測が普及しつつあります。地上LiDARは個別木の幹形・枝下高・直径等の精緻計測(ミリ単位)が可能で、伐採前の収穫予測や個別木材歩留まり予測に活用されます。UAV搭載LiDARはALSより低空・高解像度(点群密度数百点/m²)で、小面積の精緻把握に適しています。

計測手法 解像度・点群密度 主用途
ALS(航空機・ヘリ) 0.5〜1mグリッド、4〜10点/m² 広域・全国整備、森林経営計画
UAV LiDAR(ドローン) 10〜30cmグリッド、100〜500点/m² 小面積精緻把握、個別森林
TLS(地上LiDAR) ミリ単位、100万点/木 個別木材歩留まり、形質計測
衛星LiDAR(GEDI等) 25mグリッド、希薄 大陸規模の樹高分布、温暖化研究

3層計測の組合せにより、広域(ALS)→中域(UAV)→個別木(TLS)と段階的にズームインする森林資源解析が実用化しつつあります。これは林業のスマート化(スマート林業)の中核技術として、林野庁の「スマート林業構築実践事業」等で実証・普及が進められています。

森林経営計画との統合

ALSデータは森林経営計画の作成・更新に直接活用されます。森林経営計画は5〜10年単位で市町村・森林組合が作成する林分単位の管理計画で、間伐・主伐・更新・路網整備の年次スケジュールを定めます。ALSの蓄積マップ・樹高マップ・本数密度マップを基礎に、林分ごとの施業判断(間伐強度・主伐タイミング)が定量的に決定可能になります。これは経験ベースの林業から、データドリブン林業への転換を意味する重要な変化です。

具体的な活用フローは次の通りです。第1にALSデータから市町村全域の蓄積・樹高分布を取得。第2に施業履歴・所有境界データと統合。第3に林分ごとの施業優先度を統計モデルで評価。第4に路網計画・補助金申請・素材生産事業者への発注に反映。第5に施業後の更新ALSデータで効果検証。このサイクルが10年単位で回ることで、計画的な森林経営が可能になります。

森林組合・市町村の活用事例

ALSデータの実装は森林組合・市町村レベルで進んでいます。先進事例として静岡県・三重県・岡山県・徳島県の森林組合では、ALSデータを活用した林分管理システムを2018年頃から本格運用し、間伐対象林分の自動抽出・路網計画・木材歩留まり予測を効率化しています。これにより林業従事者1人当たりの管理可能林分面積が拡大し、生産性向上が定量的に確認されています。

事例地域 具体活用 効果
静岡県・天竜地区 間伐対象林分の自動抽出(蓄積30m³/ha以上) 調査工数50%削減
三重県・尾鷲地区 路網計画の最適化(傾斜・微地形考慮) 路網密度向上、コスト20%削減
岡山県・備中地区 木材歩留まり予測(樹高×断面積) 製材計画の精度向上
徳島県・那賀地区 所有境界の確定支援(現地立会の事前資料) 境界確定時間50%削減
長野県・木曽地区 災害リスク評価(崩壊地予測) 砂防事業との連携強化
愛媛県・久万地区 森林経営計画の自動化 計画作成時間70%削減

これらの事例は、ALSデータを単に取得するだけでなく、現場の業務フローに組み込むためのシステム開発・人材育成・コンサルティング支援が必要であることを示しています。林野庁・都道府県は「スマート林業構築実践事業」「先進的林業機械導入事業」等で、ALSを含むデジタル技術活用のモデル事例を全国に展開する政策を継続中です。

地理情報システム(GIS)との統合

ALSデータはGIS(地理情報システム)と統合することで、その真価を発揮します。市町村の地番図・所有者情報・施業履歴・補助金履歴・路網データ・水系図等とALSデータを重ね合わせることで、林分単位・所有者単位・流域単位での総合管理が可能となります。GISプラットフォームとしては、ESRI ArcGIS、QGIS(オープンソース)、SUPERMAP、各都道府県の独自開発「森林クラウド」等が併用されています。

統合データ 提供主体 主用途
地番図・地籍情報 市町村税務課・農業委員会 所有境界の確定
所有者情報 市町村林務課 森林経営計画への参加促進
施業履歴データ 森林組合・素材生産業者 過去の伐採・植栽記録
補助金履歴 都道府県・市町村 補助金重複防止
森林作業道・林道網 森林組合・市町村 路網計画
水系図・砂防情報 国土交通省・砂防事業者 災害リスク評価
気象データ 気象庁 気候変動影響評価

ALSが拓く新サービス:MMS・歩留予測アプリ

整備されたALSデータは、林業以外の新サービスにも活用されています。モバイルマッピングシステム(MMS)では、車載LiDAR・スマートフォンLiDARで現地調査時に取得したデータを、ALSデータの上位精度版として林分内の個別木情報を補完します。これは森林組合のフィールドワーカーがタブレット・スマホで直接データ取得・閲覧できる仕組みで、調査現場でのリアルタイム判断を可能にします。

歩留まり予測アプリは、ALSの樹高・本数密度データから、伐採後の製材歩留まり(製材品質×数量)を予測する民間サービスです。これにより素材生産業者・製材業者の発注計画・在庫管理・価格設定が定量化され、商取引の透明性が向上します。J-FOREST等のプラットフォームと連携した有償サービスとして、複数のスタートアップ・コンサルタントが参入しています。

国際比較:先進国における森林LiDAR整備

世界的にもALS整備は進んでおり、先進国の整備状況は以下の通りです。

国・地域 整備率 主な政策・予算規模
日本 私有林人工林95%超 林野庁年20億円、累計500億円
フィンランド 全森林100%(2010年完了) 森林局主導、衛星・ALS統合
スウェーデン 全森林95%超 Swedish Forest Agency主導
ノルウェー 全森林80%超 農林食料庁主導
米国 連邦森林局・州別差大 USDA Forest Service他
カナダ 州別差大、約60% 各州林業局
ドイツ 州別差大、80%以上 各州林業局
オーストリア 全国90%以上 連邦森林局主導

日本の95%超は世界トップクラスの整備率で、特に10年で達成したスピードが国際的に評価されています。フィンランドは早期から完全整備を達成しており、衛星・ALS・地上LiDARの統合運用、AI解析の先進事例として参考にされています。日本のALS整備技術・運用知識の国際展開(東南アジア・南米等の途上国支援、欧米先進国との技術交流)が次の段階の機会として期待されています。

解析ソフトウェアと民間ベンダー

ALSデータの解析には専用ソフトウェアが必要で、商用ソフト・オープンソース・国産独自系の3系統が主流です。商用ソフトはLAStools(米国rapidlasso、米国市場標準)、TerraScan(フィンランドTerrasolid)、Global Mapper(米国Blue Marble)、ESRI ArcGIS LASプロセッシング等。オープンソースはCloudCompare、PDAL(Point Data Abstraction Library)、PCL(Point Cloud Library)、QGIS LASTools等。国産独自系では森林総合研究所開発の解析ツール、各都道府県・民間ベンダーのカスタムシステムが運用されています。

主要解析ソフトウェア 提供元 特徴
LAStools 米国rapidlasso 高速処理、LAS規格標準
TerraScan フィンランドTerrasolid 高精度個別木抽出、欧州標準
Global Mapper 米国Blue Marble GIS統合、可視化
ArcGIS LAS Toolset 米国ESRI GIS統合、商用標準
CloudCompare オープンソース 研究・ビジュアル比較
PDAL オープンソース 大規模処理、Python統合
QGIS LASTools オープンソース QGIS連携、無償
森林総研解析ツール 森林総合研究所 日本林分向け、無償提供

民間解析ベンダーとしては、アジア航測、パスコ、国際航業、KKM、フォレストデジタル、エヌジェーシー、SAGRI等が、ALSデータの取得から解析までの一貫サービスを提供しています。これら企業は林野庁・都道府県・市町村・民間林業事業者を顧客として、整備事業の実装と継続的なメンテナンス・解析を担います。

データ品質管理と検証フロー

ALSデータの品質管理は、整備事業の信頼性を支える重要な工程です。林野庁の取扱要領に基づき、検証ステップとして以下が実施されます。

  • 第1ステップ:航空計測時のキャリブレーション:GNSS・IMU・スキャナの較正、計測前後の検証飛行で位置精度を確認。
  • 第2ステップ:点群データの幾何補正:GNSS基準点との照合、ストリップ間調整で連続性を確保。
  • 第3ステップ:分類・フィルタリング:地表面・植生・建物等を自動分類、誤分類点を手動修正。
  • 第4ステップ:プロダクト生成:DEM・DSM・DCHM・蓄積マップ等を規定解像度で生成。
  • 第5ステップ:地上検証:プロット調査での実測値とALS推定値の比較、回帰モデルの校正。
  • 第6ステップ:成果物検査:林野庁・都道府県の検査基準に基づく成果物確認、納品。

これら6ステップの検証フローを経たデータは、林業実務での信頼性が確保されます。地上検証は林分内に20〜30箇所のプロット(10m×10m〜25m×25m)を設定し、立木の樹高・直径・本数を実測してALS推定値と比較する作業です。各都道府県・地域の代表的林相(スギ・ヒノキ人工林・天然林等)でプロットを設定することで、地域特性に応じた精度確保が図られます。

2025〜2030年の展望

ALS整備95%超の達成後、次の10年の展望は3軸で議論されています。

  • 第1に更新サイクルの維持:10年で1回の更新を継続する場合、年間60〜70万haペースで再計測が必要で、年間予算50〜60億円規模が想定されます。
  • 第2に解析の高度化:AI・機械学習を活用した個別木検出・樹種判別・枝下高推定の精度向上。森林総合研究所・大学・民間ベンダーが研究を進めています。
  • 第3にデータ連携の深化:J-FORESTプラットフォームの普及、地番図・所有者情報・施業履歴・流通履歴とのリンク、サプライチェーン全体での活用。

長期的には、ALS+UAV+TLS+衛星LiDARの統合的「森林データインフラ」が、林業・林政・森林環境政策・気候変動政策の共通基盤となる方向です。日本のALS整備95%超は世界的にも先進例で、欧州・北米・東南アジア等への技術輸出・国際協力の機会も期待されています。

よくある質問(FAQ)

Q1. ALSとUAV LiDARの違いは?

ALSは航空機・ヘリ搭載で広域(数百〜数千ha/便)、解像度0.5〜1m、点群密度4〜10点/m²。UAV LiDARはドローン搭載で小面積(数〜数百ha/便)、解像度10〜30cm、点群密度100〜500点/m²。広域整備にはALSが、小面積精緻把握にはUAVが適し、両者を組み合わせた階層的解析が標準的になりつつあります。

Q2. ALSデータは誰が入手できますか?

都道府県の森林環境課・林務課が管理し、市町村・森林組合・素材生産業者・コンサルタント・研究機関にライセンス契約で提供されます。一部はJ-FORESTプラットフォームでオープンデータとして公開され、誰でも閲覧・ダウンロードできます。商用利用・再加工・再頒布の条件はデータ取扱要領で規定されています。

Q3. 整備コストは誰が負担するのですか?

林野庁の森林資源情報量整備事業で事業費の50%補助、残り50%は都道府県(一部市町村負担あり)。整備済データは都道府県の財産として管理され、林業実務・施策立案・研究等に活用されます。1ha当たり3,000〜10,000円のコストは、データの長期的活用価値(10年以上)を考えると安価な水準です。

Q4. 樹高±1mの精度はどう実現されているのですか?

ALSの計測点群(点群密度4〜10点/m²、距離精度数cm)から、樹冠の最高点(ピーク)と地表面(最低点)を抽出して差分を取ります。地上での実測(プロット調査の樹高測定)と統計回帰モデルでキャリブレーションを行い、樹種・地域・樹齢ごとに補正係数を最適化します。スギ・ヒノキの人工林では±1m以内、混交林・天然林ではやや精度が下がる傾向です。

Q5. 残り5%の未整備地域はいつ完了しますか?

離島(沖縄離島・伊豆諸島等)・国有林の一部・複雑地形(北アルプス・北海道道東等)が中心で、林野庁は2026年頃までの完了を目標としています。これら地域は飛行困難・地形複雑・季節制約等で計測コストが高く、優先度の整理と予算配分の調整が継続中です。

Q6. 整備後のデータ更新は?

標準は10年サイクルでの再計測です。施業実施・災害発生・データ古化等で更新ニーズが生じた場合、都道府県判断で部分更新も実施されます。年間予算は50〜60億円規模が必要で、林野庁の継続的予算確保が課題となっています。

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  • 所有者不明森林|境界確定と現代的処理

まとめ

航空レーザ測量(ALS)は2014年の本格事業開始から10年で、私有林人工林の整備率95%超・整備済面積650万haを達成し、日本の森林資源解析の中核データ基盤として確立しました。解像度0.5〜1m・点群密度4〜10点/m²の標準仕様で、樹高±1m・本数密度±5〜10%・蓄積±5〜15%の精度を実現。整備コスト3,000〜10,000円/ha・累計事業費約500億円・林野庁交付金20億円/年規模で運用されています。森林経営計画・路網計画・所有境界・災害リスク・木材歩留まり予測・炭素ストック評価の6分野以上で活用され、UAV LiDAR・地上LiDARとの統合による3層計測がスマート林業の基盤となります。J-FORESTプラットフォームでのデータ流通、AI・機械学習活用、10年サイクルの更新が次の10年の主要テーマで、世界的にも先進的な森林データインフラとして国際協力の機会も期待されています。

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